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掌編小説達  作者: 青い山
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3/26

血を吸っただけなのに

お題はヴァンパイア!

 昔々、あるところに一人のお嬢様と一人の執事がいました。




「貴方、ヴァンパイアになりなさい」

「……はい?」


 お嬢様の部屋に夕食を運びにきた私に、お嬢様はそう言い放った。

 ヴァンパイア。それは、人の血を吸う化物のことだ。

 お嬢様は、私がそれになれと仰っている。


「僭越ながら申し訳ますが、それはどうしてでしょうか?」

「殺したい奴がいるからよ」


 その言葉を聞いた途端、背中に冷たいものが走る。

 お嬢様の瞳は冷めきっていた。


「そいつを殺すために、貴方をヴァンパイアにしたいのよ」

「お、お嬢様はどうして私を?」

「別に。ただ、貴方が一番使い勝手がいいからよ」


 そうだろうな。俺がヴァンパイアになったところで、お嬢様の執事なんて沢山いる。

 俺がいなくなったところで、お嬢様への影響は皆無なのだ。

 でも、それでもそんな役ご免だ。俺は化物になりたくなんかない。


「お嬢様。一度考え直してみるのはいかがでしょうか?私がヴァンパイアにならずとも、傭兵団や親衛隊から派遣すれば、と愚考します」

「確かに愚考ね。それでは、お父様に悟られてしまうじゃない……」


 旦那様に悟られるのを忌避している?

 もしや、お嬢様が殺したい人物は――


「私がお父様を殺したいってことを」


 なんてことだ。俺の頭に衝撃が走る。

 お嬢様は旦那様を殺したがっている。

 それは、俺の契約主を殺したがっているのと同義。

 仮に旦那様が殺されれば、契約は破綻し、影響は私以外の使用人にまで及ぶ。

 なにより、そうなればこの家は没落する。

 それだけは阻止せねば!


「聡明なお嬢様なら、ここで旦那様を殺めるのが愚策だと理解しているはずです!なのに、何故!?」

「お父様が浮気しているからよ」

「……は?」


 浮気?あの愛妻家で知られる旦那様が?

 そんなはずない!


「それは、勘違いでは?」

「いいえ、私は見たわ。パーティーの最中お父様がお母様とは別の女性と一緒に踊っているのを」

「……なる、ほど」


 なるほど。勘違いが過ぎないか?

 そりゃ、パーティーなんだし接待で踊ることくらいあるだろう。


「お嬢様、それは接待の一環で……」

「さっきからゴチャゴチャと煩いわね!私が見たこと考えたことが真実なのよ!お前は、とっとヴァンパイアになってお父様を殺してきなさい!」


 お待ちください!という前に、お嬢様は懐から取り出した注射器を俺の身体に打ち込む。

 それは、服を貫通し、俺の体内へ容易く侵入した。


「ぐ……ああああぁぁ!」


 血が沸騰しているようだ。

 頭が焼かれているようだ。

 

「ハハハ!さあ、ヴァンパイア!お父様を殺してきなさい!」


 駄目だ!ここで、旦那様を殺せば、この家は……。

 最後の理性が、執事として矜持が、俺の身体を動かした。


「お嬢様ぁ!貴方をここで止める……!」

「ちょっ……、何をする!いっ……ああああぁぁ!」


 俺はお嬢様の首元に噛みつき、血を吸う。

 殺さないギリギリのところで……ってまずっ!


 うえっ!血、まずっ!


 ちょっと待て!まず!

 俺が死ぬて!嘘だろぉ――!?




 そしてその後、ヴァンパイアになりかけた執事は人間に戻り、目が覚めたお嬢様は自分の誤解だったと気付くのでした。

 めでたしめでたし。

書き上げた時間36分。本文33分。推敲3分。

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― 新着の感想 ―
なんというか。 作品の終わらせ方ってやっぱ個性が出るのかもね。 私も色々疑問点入れてみた。 見たくなかったらスクロールしないでおくれ。  …
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