やり返せ卵焼き
お題はマスタード!
俺は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の水谷を除かなければならぬと決意した。
俺には仕返しの仕方がわからぬ。俺は、町の一般家庭出身の高校生である。
口笛を吹き、ネッ友と遊んで暮らして来た。けれども、恨み事に対しては、人一倍敏感であった。
ということだ。要するに、水谷という友人に対する恨みを晴らすのには、どうすればいいか分からないのだ。
「……料理でやり返すか?いや、塩と砂糖間違えたは卵焼きでは関係ない……」
ふむ。お手上げである。
いや、そんな簡単に諦めては駄目だ。この恨みは必ず果たさなければならない。
なんたって、これは俺だけの問題じゃない……!
「そうだ……。よしあった!これでいいんじゃないか……?」
俺は、冷蔵庫を締め、邪悪な笑みでそう呟いやのだった。
「おー!お前の弁当、今日もすげーな!」
「だろ。卵焼きならくれてやってもいいぜ」
「本当か?全部?」
「馬鹿一つだけだ」
そう言って、俺は三つある内の、一つをつまみ水谷のコンビニ弁当の中に突っ込む。
「サンキュー!じゃあ、頂きます!うーん、うま……って、辛!辛すぎだろ!ゴホっ!辛っ!」
「本当か?すまん、お前には辛すぎたかもしれん。これ飲め」
「お、サンキュー……って、これも辛!」
その叫びを聞いて、俺はほくそ笑むのだった。
時は遡り、冷蔵庫の前で邪悪な笑みを浮かべていたところまで戻る。
やり返す方法は決まった。
それは、マスタードで卵焼きを作るというものだった。
しかし、マスタードだけだと粘り気が強すぎて卵焼きなんて作れっこない……。
「どうするか……」
水で薄めるか?いや、それだと混ざらないしな……。
ここは無難に、溶き卵と一緒に混ぜるか。
あ、塩を追加すれば塩辛くなるのでは?
名案だ!
「グヘヘ……。水谷、俺の恨みは深いぞ!」
ということで、卵焼きを作った。もちろん、ちゃんと自分用も作った。
「でもこれだけだと心配だ……」
油断させて食べさすことはできても、苦しめられなきゃ意味がない。
……!そうだ!水筒二本用意して、その中身を辛くすればいいのでは!?
「今日の俺は冴えてるな……。よし、じゃあ塩をたっぷりと入れて……ここは……わさびなら溶けるか?いや、七味でも……」
「辛!辛いってこの卵焼きと水!?お前絶対なんかしただろ!」
「黙れ愚民。お前は俺の推しキャラ『スーナちゃん』を罵倒したんだぞ!?この罪の重さが分からないのか!?お前はそこまで愚かなのか!?」
「知らんわ!『スーナ』よりも『ミーナ』だろ!?」
「呼び捨てにするな!くそ!この唐揚げぶち込んでやらぁ!」
「おい、それも絶対なんかあるよな……!ぐはっ……!辛――くない!?うま!」
「あ……!」
しくった!
間違えて俺の傑作唐揚げを……。
「美味いなこれ!」
「やり返した俺が愚かだったのか!?」
「もっと食べよ」
「くそ……。俺の唐揚げ。いや、ニ個作ったから大丈夫……ない!?唐揚げがない!?」
「美味かったぞ」
「お、お前ー!」
これを機に、俺は恨みを晴らさないと決意した。
書き上げた時間27分。本文25分。推敲2分。




