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掌編小説達  作者: 青い山
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26/30

友達を蔑ろしたお前へ

お題は発売日!

 四限の終了を知らせるチャイムがなり、クラス中が一気に騒がしくなる。

 その様子を呑気に眺めながら俺――清水忠史は緩慢な動作でカバンの中からお弁当箱を取り出す。

 

「さて……いただきま……」

「清水!今日が何の日か覚えているだろうな!?」

「おわ!?」


 バン!といきなり叩かれた衝撃とともにそんな声が聞こえてくる。

 かなり強いし、大きめだったので俺は掴んでいた卵焼きを落としてしまった。

 俺の弁当の中で唯一冷食じゃないやつなのに……!


「おい、聞いてるか!?今日は『クラ転』の最新巻発売日で……」

「まず謝れよ!俺の落とされた卵焼きをお前は弁償してくれるのか!?」


 悲痛な声で、涙を滲ませながら訴えた。

 今日の卵焼きは、結構上手に出来たのでそれなりに悲しかったのだ。


「はあ?別にそんなのどうでもいいだろ?それよりも『クラ転』が……」

「どうでもよくないから謝ってくれって言ってんだろ!?それはさすがに酷いだろ……」

「……はー……。仕方ねーな。悪かったよ。お前は、友達より卵焼きを優先するほど器が小さいんだな」

「は!?そいうことじゃないだ……」


 ろ。と、言うとしたところで、瀬島は去っていってしまった。

 確かに俺も言い過ぎたところもあった……いや、ないな。

 俺は一貫して謝れって言ってきたんだ。親しき仲にも礼儀ありと言うし、俺は間違っていない。


 そう自分を慰め、落ちた卵焼きを拾ってから俺は再び食事を開始した。




「おい!?『クラ転』の最新巻発売日だろ!?もっと喜べよ!」


 そんな声を聞いたのは、ホームルームが終わり、下駄箱に向かおうとしていた道中のことだ。

 声で、瀬島であると分かった。

 俺の中の野次馬精神に抗えず、聞き耳を立てることにした。


「だからさ……。俺別にその『クラ転』だっけ?に興味なんてねーよ」

「どうしてだよ!?現代人で『クラ転』知らないやつはいないだろ!?」

「いやここにいるだろ。とにかく、俺はそれを読まないからな。買うのに付き合うくらいはいいけどさ……」

「はっ!お前が『クラ転』知らない流行遅れのやつでがっかりしたよ……。付いてこなくていいよ。お前がいると、『クラ転』が可哀想だしな!」


 瀬島と話しているのは、俺の友達である金児金太だと分かった。

 それにしても瀬島……。こんな言い方はさすがに酷いだろ……。

 俺は、瀬島が立ち去っていくのを確認すると、金児に近付く。


「金児、さっきの瀬島に言われたこと気にすんなよ?」

「清水……ありがと。俺さ結構優しいタイプだと思ってたんだけど、さすがにさっきのは怒ったぜ」

「それが普通だよ。逆にすぐに言い返さなかったお前はすごいよ」

「まじでありがと清水」

「気にすんな!友達だろ?」

「そうだな!じゃあ、帰ろうぜ!」


 そうして、俺と金児は帰路についた。




 翌日の朝。


「いやー面白かったな、『クラ転』!ようお前ら!『クラ転』読んだか!?あー、お前らが読むはずもないか!」

 

 俺と金児が話しているところに、瀬島が乱入してきた。

 ここまでは想定通り、あとは……


「なあ瀬島」

「何だよ金児?」

「お前さ……本当に最低な人間だな!」


 いつもは温厚な金児が、こうな風に怒ればさすがに瀬島も驚くだろう。

 案の定、瀬島は口を大きく開けて、呆けた顔をしている。


「本当そうだわな。お前、こっちくんな。あと一生喋りかけてくんな」

「は、はあ!?なんだよその態度!?親しき仲にも礼儀ありって言うだろ!?謝れよ!?」

「全て自分に言っているようだが、反省と受け取っていいのか?」

「はあ!?」

「ま、こんなやつ親しくもないし、そもそも顔も知らないからな。金児、給水器行こうぜ」

「そうだな」

「お、おいお前ら!待てよ!待ってくれよ――!」


 その後、瀬島が必死に謝ってきた。

 俺は無視してもよかったが、金児が「さすがにもういいだろ」と言ったので、許す方針になった。

 あー、まじ金児神!

書き上げた時間33分。本文32分。推敲1分。

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― 新着の感想 ―
まず、「クラ転」について 一応作品名なんだから『クラ転』にせんと 「いやここにいつだろ。とにかく、俺はそれを読まないからな。買うのに付き合うくらいはいいけどさ……」 おそらく「r」を「t」に打ち損…
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