黒で塗りつぶして
お題は証明写真!
まだまだ残暑が続くが、暦の上では今日――九月一日から秋となるそうだ。
と、そんなことはどうでもよく、今はそれよりも考えたいことがある。
「もう一度言ってくれ、お前いまなんて?」
「だーかーらー!証明写真の取り方が分からないって言ってんの!」
「なるほど……。因みにどうして証明写真が取りたいんだ?」
「いや、バイト始めようと思って。履歴書つくる時に必要じゃん?」
「そういうことか。まあ、付き合ってやるよ。今日の放課後空いてるか?」
「おう、空いてるぜ!俺は年中暇だからな!」
陰キャの鑑のようなメンタルだなと思いつつ、俺は付近の証明写真を取る場所を思い出していた。
「本当にここでいいのか?」
「いや、この文字読めない?「証明写真」ってでかでかと書いてあるじゃんか」
「確かに。でも暗いし怖い……」
「安心しろ」
「……この中で取ればいいのか?」
「ああ」
俺たちが今いるのは、スーパーの裏だ。
写真屋に言ってもよかったが、手軽さで言えばこっちの方が幾分もマシなのである。
「これ、入っていいんだよな?」
「全然大丈夫。呪われたりしないから」
「盛大なフラグを立てんなよ!絶対いなくなるなよ!?」
「分かった分かった。さっさと取ってこい」
絶対に逃げるなよ、と里村の目が訴えてくる。
それに、早くいけ、と手で返す。
すると、観念したように中に入っていった。
全く。今の時代ネットで調べればなんでも解決する時代なのに。
中から、「あれおかしい?え?俺の金!?嘘ー!」
という悲痛な声が聞こえてきた頃、外は大分涼しくなっていた。
残暑が厳しかったはずだが、太陽が遮られているからか?
……あいつ、なんやかんや三十分くらいこもってるな。有名な証明写真スポットだったら大行列が出来てるぞ。
有名なんてないか。
「おーい、里村。まだか?」
「いや、おかしいんだよ!ちょっと、見てくれないか!?」
声を荒げながら、里村は出てくる。
その顔は、困惑と恐怖の二色が支配していた。
「どうした?自分の顔に絶望か?」
「それもしたけど!違うんだよ!五枚買ったんだけどさ、一枚だけ明らかにおかしいのがあって。えーと……これだ。真っ暗なんだよ。これ故障?」
「……故障なんじゃないか?」
「そうなのか……?あーいやでも、これ三枚目に取ったやつだ。おかしくないか?それ以降はなんの問題もなく取れてんのに?」
「確かにおかしい」
俺たちはしばらくその場で考えたが、特にこうだという落とし所が見つけられなかった。
「まあ、一枚あれば十分だろ」
「そうなんだけどさ……。俺の金……」
「バイトするんだったらいいじゃんか。その分を取り返してやる!っていう勢いの方が稼げるんじゃないか?」
「ポジティブだな!」
それから、俺たちはそれぞれの帰路についた。
翌日の学校にて。
「あれ?里村はいないのか?」
「ん?里村って誰だ?」
「…………は?里村は里村だろ。クラスメイトだぞ!?」
「おいおい落ち着け。本当に里村って誰だ?お前寝ぼけてんじゃねーの?」
「……っ!し、写真もある!それで思い出すだろ!?」
「そうとも限らないが…………すまん、やっぱり分からない。ていうか、これ真っ暗じゃんか」
「は!?……は?本当だ。真っ暗……。あれ?里村って誰だっけ?」
書き上げた時間29分。本文26分。推敲3分。




