豚に真珠ならぬ人間に情報
お題はネットワーク!
「おはよう多田!聞いたか!?夏祭りのとき、松井が花川さんに告ったらしいぜ!」
「あーそれな。知ってる知ってる。たしかオーケーされたんだっけ?」
「そう!知ってんだな!じゃあ、倉林が海で海月に刺されたことは!?」
「待て待て、まず倉林って誰だ?」
「ん?ああ!そっか、倉林って三組か!」
新学期が始まり、最初にした会話がこれだ。
話しかけてきたのは梶亮輔。小学校時代からの付き合いだ。
「どうして三組の情報をお前が知ってるんだ?」
「ネットワークってやつだよ」
「現代っ子の鑑か」
「そうか?別に珍しいことでもないだろ?あ、じゃあこれは知ってるか!?北野さん、今年家族で北海道行ったらしぞ!」
「知らない。もしかしてそれもそのネットワークから?」
「イエス」
「すげーな。そんなのも手に入るのか」
俺は、高校生だからって情報網を舐めちゃいけないんだなーと思いながら聞いていた。
「いやーそれで江島がさ……」
「そういえば今日って食堂やってないんだよな?」
「そうだな。昼どうする?」
「うーん……。ファミレスでいいんじゃね?家帰ったら結構遅くなりそうだし」
「あー……そういば今日用事あんだった。あと金欠。ごめん」
「そうなのか?じゃ適当に買ってくか」
その後、全校集会が行われた。
無駄に長い校長の話は、学期始めはとくに長い。
四十五分しっかり寝て、それから課題集めやなにやらで、結局学校を後にしたのは午後一時すぎだった。
「コンビニでいいよな……」
財布の中身と相談した結果、今日の昼はコンビニのおにぎりに決定した。
俺は財布から十円玉十五枚を取り出す。
店員にむっちゃ睨まれたが、無視した。
そのままイートインスペースに直行しようと思った、その時。
見慣れたシルエットが視界に映り込む。
そう、梶だ。
「あいつの家こっち方面じゃないよな……」
気になったので、静かに後をつけていく。
梶はやたらと周りを気にしていた。
「……路地?」
そう呟いたのは知らない路地を見かけたからではない。
梶が路地に入っていったからだ。
「あいつ、何してんだ?」
少し考えてから、そっと路地をのぞく。
すると――
「梶さん、今回の情報はかなりレアですぜ……」
「そうか。まあいい。で、何円だ?」
「これでどうです?」
「……万いくか」
「へへへ。それくらい希少なんですぜ……」
「分かった。聞こう」
……おいおいどうなってるんだ。
梶は知らない男と話していた。用事ってこれ?
それにしてもあいつ、金欠とか嘘じゃんか。金あるやん。しかも一万!
「多田って知ってますか?」
「多田……ああ知ってる。俺のダチだ」
「……!そうなんですね……。実は多田には妹がいるらしく……」
「そうなのか!?そんなの聞いたことないぞ!」
「ええ。だからレアと言ったんですぜ……」
「続きはあるのか?」
「はい。どうやら異母兄妹でして……。二人は禁断の恋を……」
……なんだこれ?
俺に妹?禁断の恋?ねーよ、そんな物語展開!出鱈目じゃねーか!
おいおい、ネットワークってこのことか?じゃあ、もしかして他の情報とかも全部デマなんじゃねーか?
「ありがとう。明日からかってみるさ」
「へい。お役に立てて嬉しいです。でなんですけど……以後お会いするのが難しくなりそうでして……」
「そうなのか。まあいいさ。これまでの働きで十分だった」
「あいがとうございます」
そう言うと、男は路地の深くへ梶は出口へ歩きだした。
なるほど。出鱈目言ったから、その責任追及から逃れるためにこれが最後ってか……。
見事に騙されたな。てかなんで知らない男が俺の情報知ってんの?
謎は尽きないが、ひとまず路地から出てきた梶に声をかける。
「よう梶」
「……!た、多田!?お前どうしてこんなとこに……」
「俺に妹いないぜ」
「…………は?」
その呆けた顔がどんな情報よりも価値があると思えた。
書き上げた時間42分。本文37分。推敲5分。




