これは俺のせいではない
お題は水面下!
「灰原……ふざけるなよ」
十年一緒にいた友達から向けられる明らかな敵意の目。
その視線に俺は驚かずにいられなかった――。
時は、昼休みまで遡る。
俺は、とある場所に呼び出された。
それは、食堂。
あらかじめ買っておいた食券を出し、ご飯を受け取ってから目的の人物を探す。
「こっちだこっち。灰原」
俺を呼ぶ声がしたので、そちらを向くと探していた人物がいた。
菊川零士――小学校時代からの腐れ縁である。
「どうした零士。食堂に呼び出して?」
「実はな……内密に相談したいことがあってな。それで呼び出したんだ」
「……どうしてこんな人目につきやすいところを選らんだ?」
「ああ。木を隠すなら森の中ってな」
「なるほど」
確かに、暗い倉庫とかに呼び出したら、怪しいと思われてしまうだろう。
でも食堂なら呼び出してもなんの問題もないし、小声で話せば喧騒が声を掻き消してくれる。
「で、その内密に相談したいことってなんだ?」
「実はだな……俺の告白の台詞を一緒に考えてほしいんだ」
「なるほど。いかにも怠そうなミッションだ」
「だろ?でもこういう恥ずかしいことはお前くらいにしか気軽に話せないんだ。頼む!知恵を貸してくれ!」
「まあ別にいいが?」
「さすが灰原だ!それでこそ親友ってもんだろ!」
バシバシと背中を叩きながら言ってくる。
やめろ、痛い。
手を払い、俺はそれでと切り出す。
「告白したい女子は……斎藤さんか?」
「おおそうだ。どうして分かった?」
「お前最近女バレの練習見に来てるだろ。しかもずっと斎藤さん目で追ってるし」
「どうしてバレてた!?俺結構目立たないようにしてたのに!」
「バトミントン部の練習区域からは丸見えだぞ」
「そうなのか……」
女バレの斎藤さんは、確かに可愛い。
でも彼氏いる噂が立っている。
それを知ってのことなら、ただの馬鹿としか言いようがない。
「どういうところが好きになったんだ?」
「え!?いや、それはだな……。斎藤さんの太も……」
「やめだやめ。水面下から水面上に引っ張り上げてやる」
「ああ嘘だ嘘!ごめんふざけた……わけじゃないけど!見損なわないで!」
こんな特殊性癖を隠し持ってたとは……。
十年くらいの付き合いの中で、一番軽蔑したぞ。
「まあいい。じゃあ告白ではその性癖を全開にして攻めていけ。そうすれば痛烈なビンタを食らえるぞ!」「やだ!そんなことしたら俺社会的に抹消されちゃう!」
「斎藤さんがお前を触ってくれるんだぞ?どうして喜ばない?どうしてその拒絶を受け入れない?」
「怖い!目が怖い!」
やれやれ、所詮こいつの愛なんてこんなもんなんだろ。
「もういっそ、好きですだけで押し切ってみたらどうだ?ストレートの方が相手もくるもんだろ」
「そ、そうか……って、お前うどん食べるスピード早すぎだろ!もう食べ終わったの!?」
「片付けてくるから、その間に斎藤さんへの告白を考えておくんだな」
「ちょいちょい声がでかい」
俺はそう言って席を立ち、食器を返却口に返す。
返したら、すぐに席に戻り……ってあれ?あいつのまわりの空気が凍ってるぞ?
ていうか黒くなっててる……。
「どうした?」
「お前、これを見越しての大声だったらまじで尊敬するぜ」
「は?どういうこと?」
「……偶然だったんだな……。俺はつくづく運がない男だ」
「本当にどうした?」
「こんどから、水面下の密約は水中で話そう。それでこそ水面下だ」
「いや、だから――」
本当にどうした?
そう聞く前に、零士は席を立ち上がり食堂を出ていってしまった。
零士から呪詛を聞かされたあと、俺は部活に向かっていた。
道中、俺はダブルスのペアの天野と出会った。
「よう灰原!聞いたか?菊川ってやつ、斎藤さんから振られたらしいぜ?」
「そう、なのか……。告ったのか?」
「いいや、どうやら食堂で告白文を考えてたら、無理ですって言われたらしい」
そうして、俺は零士の怨嗟の意味を知るのだった。
書き上げた時間35分。本文28分。推敲7分。




