海苔さえあれば海苔弁は作れる
お題は手口!
『姉に弁当を作ってもらうための手口を教えてくれ』
『俺に姉はいないぞ』
『関係ないだろ!妹持ちのお前なら!』
『妹と姉は全く違うだろ』
どうしてこいつは、わざわざ授業中に、しかも手紙でこんなことを聞いてくるんだ?席隣だぞ?
今は、睡眠人口が多くなってきた四時間目の理科の授業。
先生の絶対零度のギャグに笑う者などおらず、大半は寝てるか授業を受けている風を装っているかのどちらかだ。
『どうして手紙で?』
『スリルがあっていいだろ!こういうのは、女子とやりたいんだけど、生憎この話題は男友達としかできないんでな』
『話題に限らずお前は女子と手紙を回せないだろ』
『うるせー!細かいことは気にすんな!』
結構大事だなことじゃないかと思うが、スルーした。
『そうだな。俺の場合は自発的に作ってくれるから、手口とかよく分からんが』
『リア充ルートか!は!』
『どうも、リア充です』
『うぜー!じゃあ、俺は非リアルートで攻めてくわ!』
『具体的な攻略手順は?』
『懇願、土下座、七転八倒、平身低頭、日常茶飯時不協和音!』
『なるほど、嫌われるってことか』
なけなしの語彙力を絞り出したことが伝わってくるだけ評価してやる。
『まあ、俺は頑張って粘るよ』
『そうか。頑張れよ』
そこで、授業終了のチャイムが鳴る。
気怠げな空気は一瞬にして霧散し、教室は昼休みの空気へと様変わりする。
「ヒャッハー!昼休みだぜ!チャイムの音は、まさに天使の囁き!さあ!お前の弁当を見せろー!」
「どうして?理由は?」
「眼福!」
「弁当に使うやつがいるとは驚いた」
ワードチョイスだけは一丁前なこいつだが、言っていることは大したことはない。
俺は、カバンの中から風呂敷を取り出し、結び目を静かに解――こうとしたら、横から手が伸びてきて、風呂敷は回収される。
「おせーな!もっと、飛びつけ!」
「品がない」
「高校生は下品の集合体だ!」
「全世界の高校生に土下座だな」
弁当の中身は、日替わりだ。
今日は、金平ごぼうと葉野菜のサラダ、サバの味噌煮、ミニトマトとご飯だ。
確かに、眼福だ。
「すげーな!お前の妹、将来ホテルで働いているだろうよ!」
「馬鹿言え。五つ星ホテルだ」
「まじか!」
俺は、お箸を持ち、手を合わせる。
「「いただきます!」」
「てめー、横取りすんな」
「無理だな!この弁当は俺のもんだ!」
「渡さんぞ」
「妹をか?」
「あったりめーだ」
そうして、昼休みが流れていく。
翌日、昼休みにて。
「うおー!みろ!非リアルートが通って、お姉ちゃんに作ってもらったぜー!」
「まじか。懇願、土下座……あとなんだっけ?」
「七転八倒、平身低頭、日常茶飯時不協和音!海苔弁らしいぜ!……奪うなよ」
「お前じゃないんだし、奪わねーよ」
「よし、せーので開けるぞ!」
「「せーの!」」
期待を込めて、開けた弁当の中身は――
「……確かに海苔弁じゃん」
「おいおい。海苔しか入ってねーじゃねーか!」
一面に敷き詰められた、海苔だった。
書き上げた時間43分。本文40分。推敲3分。




