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生前、落ち度がないのに地獄行きって酷すぎません?

「さてと……」そう言って羅夢は閻魔大王の部屋へ向かった。

「失礼しますよ」と言って入っていくと氷雨と縛斬がいた。縛斬は羅夢に気が付くと慌てて挨拶をした。羅夢は軽く手を振るとソファーに座った。そして閻魔大王を見ながら言った。


「閻魔大王様、今回も地獄乙女から依頼を請けましたので報告します」と言って立ち上がった。

そして閻魔大王を見据えながら言った。


「今回は呪い殺された女性の処遇の依頼でしたので、地獄送りにしておきました。以上です」そう言って報告を終えるとまた座った。すると氷雨が口を開いた。


「ご苦労様です。地獄乙女の依頼は毎回楽でいいですね。単純ですから」

「ええ、まあそうですね。こちらもわざわざ生前の記憶など見る手間が省けますからね。見たところで地獄は決定してますから」

「しかし今回は珍しく落ち度がないとの事だが念のため確認しておくか」と浄玻璃鏡を作動させて連れてこられた女性の生前の記録を映し始めた

「なるほど……確かに落ち度がない。地獄乙女の言っていた通りだ。問題ない」と言って閻魔大王は納得した様子だった。


「これで地獄の業火に焼かれたりすり潰されたりするのか。可哀そうな感じもするな」と氷雨が言うと縛斬は頷いて同意した。


「それどころかとてもやさしい子じゃないですか。みんなからも慕われて。逆に呪った方は完全にエゴと言うか自己中と言うか」と閻魔は憤慨した様子で言った。

「まったくですな……しかし呪術師の方も儲けてるんでしょうね」と氷雨は苦笑いをしながら言った。


「まあ、あれだけ金を集めていれば十分過ぎるほどの利益を出しているんだろう。今度何か土産でも持って来てもらおうか。もちろん呪わない品でね」と閻魔が笑いながら言った。


「そうですね、機会があれば是非そうしましょうか。呪い殺した人数でポイントが貯まる方式でどうでしょう?」と氷雨が冗談めかして言うと閻魔は大笑いして言った。

「いいねえ!それは最高のアイデアだよ!よし、次来た時に提案してみるか」と言って楽しそうにしていた。


「ところで地獄乙女さんはどちらの地獄を選ばれましたか?」と縛斬が尋ねると氷雨が答えた。


「灼熱地獄ですね」と言われた瞬間に三人とも苦笑いしてしまった。灼熱地獄とはその名の通り燃える釜の中で煮られ続け死ねないので永遠と熱くて苦しい地獄である。当然その様子も見ることが出来るとあって、彼女が選ぶのはその中でも最も過酷と言われるもので有名である。

「まあ……そうだろうと思ったよ」と閻魔大王が言うと氷雨は深くため息をついた。


「さぞ無念だったのでしょうね……何の落ち度もないのに」と縛斬は同情的な目を向けた。すると羅夢が口を開いた。

「なんだか可哀そうよね。でも地獄で裁かなくてはいけない。だったらさ、私の部下として使いたいんだけどダメかな?」と言ったので

「え?お前がそれ言う?誰よりも残酷で冷酷なお前が?」と氷雨が驚いて尋ねると

「まあね。契約は地獄行きって事だけでしょ?だったら地獄で働くのだってありでしょ」


「まぁ、それはそうだな……それでお前は彼女を使ってどうしたいのだ?」


「うーん……特に何も考えてないけど……とりあえず働きぶりを見て判断するかな」と羅夢が言ったので閻魔大王は笑った。

「よしわかった!では、羅夢君の下で衆合地獄でしばらく働かせよう」

「ありがとうございます!」そう言って羅夢は頭を下げると立ち上がり部屋を出て行った。


「しかし……あいつは一体何を考えているんだろうな……」と氷雨が言うと縛斬も同意するように頷いた。

「さあな……だが少なくともあの女は落ち度がないのに呪い殺されたんだ。同情する余地はあるだろう」と閻魔大王は静かに答えたのであった。

#####


呪い殺された女性の所へ行くと地獄の業火に焼かれて悲鳴をあげていた。

「なんで、なんで私がこんな目に、私悪い事なんてしてませんん。お願いします。助けてください!」と泣き叫んでいた。

「あれは本当に辛そうですね……」と黄鬼が言うと縛斬は頷いて言った。

「ああ、そうだな。しかし罪もない者が苦しんでいる姿を見るのは忍びないな」と言って悲しそうな顔をした。羅夢が彼女を指さして

「彼女がそう?地獄乙女が恨みのある亡者として連れて来たの」

「そうです」と黄鬼は答えると羅夢は彼女に話しかけた。


「初めまして、私は衆合地獄の獄卒長をしている羅夢。あなたを迎えに来たの。生前の名前は?」

「柊美琴です」


「そう。私は美琴ちゃんの上司になるわけね。よろしくね」と手を差し出すと美琴は恐る恐る握手をした。

「美琴ちゃんはこれから衆合地獄で働く事になるから頑張ってね」


「え?働く?働くって?ここでですか?」と混乱している様子で言った。

「そう。これからは私の部下として働いてもらう事になるわ」と羅夢が言うと美琴は困惑した顔で答えた。

「えっと……その……私には無理だと思います……」と恐縮した様子で言った。


「じゃあ、このまま永遠に焼かれる事になるけど」と羅夢が言うと、

「……それはイヤです」と俯いて小声で言った。それを聞いて羅夢は満足げに微笑みながら言った。

「なら働けばいいじゃない。地獄で。もちろんちゃんと給料も出すし休みだってあるわよ」と言うと美琴は驚いて言った。


「ほ、本当ですか?」と目を輝かせながら言った。羅夢は大きく頷いて言った。

「ええ、本当よ。どうする?やる?やらない?どっち?」

と尋ねると美琴は少し考えた後で答えた。


「やります。やらせて下さい!お願いします」と勢いよく答えた。それを聞いて羅夢は満足げに微笑んだ。そして手を差し伸べた。

「ほら、じゃあ助けてあげなさい、ほら早く!」と黄鬼に命令する。

「あっ、はい」と黄鬼は慌てて彼女を業火から引っ張り出した。


「うぅ……まだ体が熱いよぉ……」と涙目になりながら美琴は言った。すると羅夢は優しく微笑みながら言った。

「大丈夫よ。すぐに慣れるわ。それにこれからあなたは私の部下として働くんだから」と言うと彼女は頷いて言った。


「はい!」と元気よく答えた。それを聞いて羅夢はさらに嬉しそうに微笑んで言った。

「よろしい!じゃあ行きましょうか!そこの鬼くんも一緒に来て頂戴」と言って歩き出した。

それを見ていた黄鬼は呆然としていたが慌てて追いかけるように後を追った。

「あれ?ところで名前は何て言うんだい?」と羅夢が尋ねると黄鬼は緊張しながら答えた。

「は、はじめまして。黄鬼と申します!」と頭を下げながら言った。


「黄鬼くんって言うんだ。よろしくね」と言って微笑んだ。

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」と言って彼も頭を下げたのであった。


#####

衆合地獄

「こちらが食堂でこちらが更衣室、トイレは共同で、休憩室はこちらになります」と黄鬼は説明していく。

それを聞きながら美琴は緊張した面持ちで周りを見渡していた。

「とりあえず、今日は見学だけということで。明日から本格的に働いてもらうから」と言って黄鬼は立ち去って行った。

「あの……羅夢さん……私、本当にここで働くんですか?」と不安そうな顔をして言った。

「もちろんよ。美琴ちゃんみたいな可愛い女の子ならすぐに馴染めると思うわ」

「はぁ……」と返事をするもののあまり自信なさげだ。それを察したのか羅夢は笑顔で言った。

「それにねあなたの仕事はお使いなどの雑用がメインよ。雑用と言い方は酷いかな。サポートと言った方がいいかな」と言って頭を撫でた。

すると彼女は少し安心した様子で微笑んだ。

「まあ、罪人の拷問なんてあなたには無理っぽいしね。気持ち的にという事ではなく肉体的、物理的にって意味だけど。暴れる亡者なんて押さえつけられないでしょ?」

と聞くと彼女はこくこくと頷いて答えた。

「じゃあ、今からあなたの働く場所を案内するわね。ついて来て」と言って歩き出したので美琴はその後について行った。そしてやって来たのは……衆合地獄の獄舎だった。


「ここが衆合地獄よ。地獄の第三階層にある女の欲望で堕とされた亡者の為の刑罰を執行する場所ね」

と言いながら美琴に中を見せて説明した。そこには無数の亡者たちが拷問器具に繋がれて苦しみに悶えていた。それを目の当たりにして彼女は怯えていた。

「ど、どうしよう。やっぱり無理です!わたしにはムリです!」と訴えるような目で見つめてくるが羅夢はニヤリと笑って言った。


「無理なの?別にあなたが使う訳でもないのに?だったらあなたはこれを使われる立場になるのよ。それも永久に。それでもいいの?」


そう言われてしまうと断るわけにもいかないので渋々頷いた。

「わ、わかりました……やってみます」と彼女は小さく呟いた。

「よろしい。じゃあ、明日からよろしくね」と言って羅夢は背中をポンッと叩いた。

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