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地獄乙女登場!

「これって、いくらなんでもこの金額は多すぎると思うけど…」

そう言って青嵐は羅夢に問いかけた。

「ああ、これ?いいのよ、別に。だってこの前捕まえた男がかなりの大富豪だったのよ。だから全部私が貰う権利があるってわけ」


「でも……さすがにこれは……」

「いいじゃない。せっかく手に入れたんだから。あの欲しかった山の重さでプレスしてグリグリすり鉢状にすり潰す機械が買えるわよ¥^^」

「はぁ……そうなんですか……」とため息混じりで答えると羅夢は自信満々に言った。

「そうよ!これでまた面白い拷問道具が増えたわ。楽しみだわ!」

そう言いながら羅夢はプレス機をいじっていた。それを横目に見ながら青嵐は思った。

(本当に……羅夢さまは何を考えているのかしら……)


そこに縛斬ばくざんがやって来た。

「あら、いらっしゃいませ」


「やあ、青嵐さん、こんにちは。羅夢さん、いますか?」


「ああ、いらっしゃい。羅夢さんならあちらですよ」と山の重さのプレス機をいじっている羅夢を指差した。


「ああ、ご苦労様です。どうぞ」とプレス機を置き、縛斬を招き入れた。

「いえいえ、こちらこそお邪魔します」とお辞儀をして、羅夢と青嵐の元へ歩いていった。


「えーっと……今日来たのは……」

「ええ、実はですね……お願いがありまして……」

「お願い……ですか?」


「はい。実は……私の地獄にも新しい設備を入れたいと思いまして……どうかお金を貸していただけないでしょうか?」

「ふむふむ」と羅夢は頷く。

「で、どのくらい必要なの?」

「そうですね……1億円ほど」

「わかったわ。トイチでいいなら貸せるけど?」


「えっ?」

「あ、いや……あの……」縛斬は驚いた顔をしている。それもそのはずだ。よりによってトイチとは。いくらなんでも暴利すぎる。

普通なら相手にされないだろう。


「ええと……その……年利5%程度でお願いできないかと……」と縛斬が言うと羅夢は首を左右に振った。


「だめね。そんな低利じゃあ、私の儲けにならないでしょ」

「はぁ……」と縛斬は項垂れる。しかし羅夢は続けて言った。


「ああ、でも……アンタには個人的にお世話になった事があるから……今回だけ特別にサービスしてあげてもいいかなぁ……」


「えっ!ほんとうですか!……ありがとうございます」


「いいわよ別に。私だって鬼じゃないんだし」

「そ、そうですよね」と縛斬は苦笑いした。が、

「いやれっきとした鬼ですよね。まぎれもなく地獄の。それも獄卒長レベルの」と青嵐が突っ込みをいれた。

「う、うるさい!解ってるわよ。それくらい」そう言いながら羅夢は金庫を開け1億円を取り出すと縛斬に手渡した。

「さて……と。じゃあ早速契約書を作るとしますか」

そう言って机の引き出しから紙を取り出し書き始めた。


「えーっと、借入金額1億円、返済期限30年、金利年利5%、支払い方法は月々一定額の元金均等払い方式で……」

と書いていく。


「あ、あの……羅夢さん……?ちょっとお聞きしたいんですけど……本当にその条件でいいんですか?」


「ええ、勿論よ。だってあなたには個人的に色々と恩があるものね。大サービスよ」と羅夢は微笑みながら言った。

「そ、そうですか……ありがとうございます」

と縛斬はほっとした表情を浮かべた。

「よし!完成!縛斬さん、署名捺印して。二通作成したから」と言ってペンを渡した。


「はいじゃあこれ」と青嵐は受領印を押すと一枚を縛斬に渡した。


「よし、これで契約完了。後は支払いだけね」


「はい!必ず期日までにお支払い致します!」と言って縛斬は頭を下げた。

「あ、そうだ……ついでだから返済の方法とか教えておくわね」と羅夢が言うと青嵐も頷いた。


「わかりました」

「まずは……この返済シミュレーション表を見て頂戴」


そう言って青嵐は紙を渡す。そこには毎月の返済額と総額の欄があった。

「毎月114万9,831円の返済になります」


「はい、わかりました」と縛斬はメモ帳に書き込んだ。


「次に……銀行の預金口座番号と支店名をお教え下さい。こちらで引き落としますので」

「は、はい」と言ってメモ帳に書いた内容を見せる。


「はい、これで終わりです。今後ともよろしくお願い致しますね」と青嵐が言った。


「こちらこそ!本当にありがとうございました!」と縛斬が深々と頭を下げた。


「おいおい、縛斬さんよ、もう少し堂々としてていいのに」と羅夢が言った。

「はい、解っていますが……やはり……このような事をするのは初めてで……」

「まあ、そうだろうね。でも気にする必要はないさ」と羅夢は笑いながら言った。そして青嵐の方を向き言った。


「さてと……これで終わりかな?他に何かある?」

「いえ、特にはありません」


「じゃあ、さっさと片付けて次にいこうか」

そう言って契約書をしまうと立ち上がり伸びをした。


「ん~!気持ちよかった!」と言ったあと羅夢は微笑みながら言った。

「これからも宜しく頼むわよ、縛斬さん」

「は、はいっ!もちろんです!」そう言って二人はその場を後にしたのであった。


#####


その後、二人は書類を整理していた。そこに黄鬼がやって来て言った。


「羅夢さんに面会を求めてる方がおりますが‥」

「誰?」

「地獄乙女と言っておりますが。お会いになりますか?」

「おお、待ってたんだ。ここに連れて来て頂戴」


そう言って黄鬼に連絡するよう頼むと青嵐に言った。


「いいネタを仕入れてきたようね」と羅夢が言うと青嵐は苦笑いして答えた。

「はい……。そうですか」

そう言って二人は顔を見合わせた。


そこへ地獄乙女と名乗る女がやって来た。長い髪をポニーテールにし、着物姿の綺麗な女性だ。

「ご無沙汰しております。羅夢さま。今日もまた穢れた亡者をお願いします。代金はこれで」


そう言って風呂敷に包まれた金子を取り出した。羅夢は受け取ると中を確認する。中には札束があった。

「ありがとう、いつも助かるわ」と言って立ち上がり手を差し伸べた。それを見た黄鬼は思わずドキッとした表情を浮かべたがすぐに平静を取り戻して言った。


「さあ、こちらです。案内しますね」


「はい、お願いします」そう言って部屋を出て行った。

そして二人は廊下を歩きながら話していた。

「それにしても……今回の依頼は随分と手が込んでいましたね」

「そうですね。ここまで大掛かりな依頼は久しぶりですよ」

「それにしても……毎回毎回よくこんな依頼がきますよね……」

「まあ、それだけ怨みを持った人が多いって事なんでしょうね」

「なるほど……そんなものですかね……」

そんな話をしながら三途の川まで出向くと青嵐と一緒に亡者が一人いた。

「この人が今回呪い殺された亡者です。まあ、人を呪わば穴二つって言いますからそのうちに呪った側もここへ来ることになりますが」


「へー。そうですか。悪い事をしてるようには見えないんだけどねえ。なんで呪われたのさ?」と羅夢は興味深そうに聞いた。

「恋愛感情のもつれって事です。何でも彼女と結婚してた男性を好きだった女性がいて、それで彼女が死ねば自分の物に出来ると考えて私に呪い殺すように依頼してきたんですよ」

「えっと、じゃあこの女性は逆恨みで殺されただけって事なの?」

「まあ、そういう事になりますね。落ち度がないのに地獄行き。これが呪い殺される事の末路ですから」


「なるほどね。罪もない人を地獄に送るのだからそれによる報酬もきっちり貰う。良い商売だわ」


そう羅夢は嘲笑するように言った。

「ええ、お蔭さまで儲かっておりますわ」と地獄乙女は笑顔で答える。


そして黄鬼に言った。


「さあ、この方を地獄に案内してあげて下さいな」


「はい、わかりました」

そう言って黄鬼は亡者を連れて行った。その後ろ姿を見送りながら羅夢が言った。


「それにしても……どうしてみんな簡単に人を呪ったり恨んだり出来るのかしら?」と羅夢は首を傾げながら言った。

「簡単ですよ。自分の欲を優先させるための手段として使うのですから。大した労力も要らないですし」

「そういうものなの?」


「ええ、そういうものです」と地獄乙女が言うと羅夢は納得したような顔をした。そして

「報酬ありがとね。じゃあ私はこの事を閻魔様に報告に行くから」と言って去っていった。

それを見送りながら地獄乙女は青嵐に言った。


「あの人の心の中もよっぽど淀んでいるみたいですけどね」と言うと青嵐は苦笑いしながら言った。

「まあ、そういう方ですからね……」

「では、私も帰るとしますか。依頼主にお金を貰いに行かないといけませんから」

そう言って地獄乙女は帰って行った。その後ろ姿を見て青嵐は思った。

(あの人も相当な怨みを持っているようだな……)

そう思いながら自分の職場に戻るのであった。

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