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ひかりちゃんの過去 その二

「例えばお前の彼氏だ。星川はお前の他にも複数の女を侍らせていた。まあ、所謂女遊びってやつだ。お前はそのうちの一人でしかない」

「え……」

と絶句するひかり。

「どうだ。もうこれだけでも相当なもんだろ」


そう言われてひかりは頭を抱える。しばらく考え込んだあと「続けて」と言った。

「ああ、それでお前が妊娠してしまった。それは星川の子供だったんだ」

「え……」とまた驚くひかり。

「そして産むか産まないか迷った末にお前は産むことを選んだ。理由は愛する星川の子供だったからだ」

とそこまで聞いた時にひかりは泣き出してしまった。

「羅夢さん……。もういいです」


「そうか、悪かったな嫌なことを思い出させちまって……」

と言うとひかりは

「でもなぜ付き合う事になったのですか?そこが一番の謎です」と泣き顔で尋ねると

「さっき言ったろう。ルックスが好みで不良ぽくてかっこいいと思ったからだ。そして男がちょっとナンパしただけなのに真に受けて‥」

とそこまで言って

「まあ、そんなとこだ」

そしてお菊の方を見ると


「お前なあ。ひかりが泣いてるだろ?」と怒る。

するとお菊は肩を竦めながら言った。

「もう、しょうがないわねえ。ま、これも経験ということで、私も似たような人生だったからよくわかるわよ」

と言いながら慰める。羅夢も

「そうだよなあ。お菊ちゃんもご主人様の大切な皿とやらをうっかり割ってしまって大激怒されそれを苦に…て感じだったわよね。たしか…それから皿の枚数を数えてばかり…」

「羅夢さん!!」


お菊が大声をあげたので二人は驚いた。

「その話は二度としないでね。地雷よ地雷」

と言ったので

「な、なんだよ。お菊がひかりちゃんの過去を聞いてくるからだろ。そんなに怒ることねーじゃねーかよ」と羅夢が言うと

「はあ?」と睨みつけるお菊。そして再びひかりに向き直ると「ま、いいわ」と言って話を戻す。

「ひかりちゃんも大変だったのね……」と言うとひかりは「はい、もうショックでした」と言って泣いている。そして


「しかし私には子供がいたんですね。子供を残して自殺って…、なんだか自分の事も許せない気分にもなって来ましたよ…」


と言うひかりにお菊は「あらあ、また自己嫌悪に入っちゃったみたいね。ま、こればかりはねえ……」と言った。

そして羅夢も「ま、そうだな……」と言ったあと続けて「でもお前、自分の子供のことすら忘れてるんだよな?そこがまた変だよな」と言う。

「うーん、どうなんでしょう。自分が母親という感覚も正直言ってわからないですね……」と言ったところで羅夢が


思い出したかのように言った。


「あ、でもな、今もお前の子供は生きてるぞ。お前の両親が…」


と言うとひかりは「え?本当ですか!」と食い入るように聞いた。

「ああ、お前の両親が育ててくれてる。良い人たちだな、きっと」と言うとひかりは「そうですかあ」と涙をぬぐいながら安堵した表情を見せた。それを見て


「お、良かったじゃねえか。親御さんが育ててくれてるんだってさ。まあ、お前自身が忘れちまったことはある意味幸運だったのかもな」

と言うと、お菊が言った。「そうね。良かったわね。でも逆にひかりちゃんは両親のことを思い出さないの?」

と聞くとひかりは

「はい、まったく思い出せません。なんだか不自然なくらいにすぽーっと抜けていて」と答える。

「うーん、不自然だわねえ」

と二人で首を捻ると羅夢が言う。

「ま、どっちにしても今のひかりにとっては思い出せないのが幸運だったんだよ」

と言うと二人も納得したような顔をして頷く。

そしてひかりは羅夢に向かって「ありがとうございます」と言って頭を下げた。

その様子を見て羅夢は

「気にすんなって。それよりも飯食ったか?まだなら奢ってやるよ」と言うとひかりは

「え!いいんですか?」と喜びの声を上げた。

そしてお菊も

「あら?それは嬉しいわね」と乗っかると

「おいおい、お前はいらねーだろ!」と羅夢は文句を言った。

「た・べ・ま・す!」

と強引にねだるお菊だった。そして三人は、メニューを眺めていたが、

「お客さん!いい加減に注文してくれませんかね!ここは食堂で休憩室ではないのですよ」と店員に注意されるのであった。


「そ、そうでした。すみません」

と謝るとお菊は「もう、二人のせいよ。ほら早く決めてね」と言った。そして再びメニューとにらめっこをする。

「じゃあ、私はかつ丼で」とひかり、

「あたいは冷やし中華な!」

「あたいって…」とお菊が突っ込むのも無視して羅夢は注文する。

「私は、ねえ、‥‥えーと!えーと!」

「何してんだよ、早く決めろよ!」

「あー、もうじゃあチョコレートパフィとたいやきとラムネと‥‥んー、あとお寿司で」

「…」


とポカンとする二人。

「おいおい、そんなに食うのかよ?」と羅夢が言うと

「しょうがないでしょ!好きなんだから。お代は自分で出すわよ!もう!」

と膨れっ面になる。そしてお菊は自分の分だけ払おうとしたが……、

「いいよいいよ、いいっての。そんなに高いもんじゃねーだろ?奢ってやるよ」

と羅夢は言った。

「あら?いいの?」と聞くと羅夢は笑顔で

「ああ、気にすんな。それに女に財布を出させる訳にはいかないしな」

と言った。

「それって嫌味にしか聞こえませんけど…あなただって女でしょ。どびっきりいい女の部類の」とお菊が言うが

「はは、そうか?私っていい女なのか?」

と言うとお菊は呆れたような顔をした。


その後、料理が届くと

「頂きます!パクっ!うまー!」

とたいやきを食べるお菊、ひかりはかつ丼を「おいしい!」と言って食べ、羅夢も冷やし中華をすすりながら食べ始めた。


「しっかしよく食べれるな、あんなショックな話の後なのに…」

と羅夢が言うと、ひかりが

「私は美味しいものは美味しいですから!」と言ったので

「あー、はいはい」と適当に受け流した。

そして料理があらかた片付いたところでひかりが聞いた。


「あ、そうだ。そう言えば私の子供の事なんですけど」


「ん?どうした?」


「やっぱり少しだけ気になります。元気に育ってくれてるでしょうか……」

と言うと羅夢は少し考えてから答えた。

「ああ、それは大丈夫だと思うぜ。閻魔様が話してたからな。お前の遺影の前で手を合わせて泣いてるお前の母ちゃんがとても心配してたってさ。孫を育てるのは大変だろうけど、お前の母ちゃんにとっちゃ可愛い曾孫なんだからしっかり育ててくれるさ」

と聞いたひかりは安心したようだ。

「そっか……そうですよね。そうだと良いですね」

と嬉しそうにしている。

「なんだ?もしかして会いたいのか?」

と聞くとひかりは

「はい、でも……それは絶対叶わないのですよね」

と言うと羅夢は少し悩んだ後で言う。

「ああ、まあ、そうだな。しかし高校生で子持ちって言うのも冷静に考えてみると凄い事なんだよな」

と感心したように言う。

「高校生で母親なんて凄い!と言うべきなんですかね?」

とひかりが聞くと、羅夢が真剣な顔で答える。

「しかし、何か変なんだよな」と言うと

「変?」と聞くお菊に

「ああ、ひかりちゃんって学校とか友人関係とかは真面目な優等生って感じじゃねえか?でも男関係はひどいもんだ。簡単に股を開いちまうわ、それで妊娠してすぐに諦めるわ。どうも整合性が取れねえんだよなあ」

と首をひねった。

「ま、股を開くって…」と言うひかりだが、羅夢は気にせず続ける。

「それが人間って奴じゃねえか?って言う見方も出来るが、もうなんか気持ち悪いんだよ」

と言うとお菊も「うんうん」と頷いて言う。

「なんだか私って…アバズレだったんですね」

というと羅夢も頷いて答えた。

そして

「まぁ、アバズレで間違い無いな。あんな男のために自殺しちまうなんてよ」

と言うとひかりは涙をポロポロこぼして

「あんな男でも私は……あれ?好きだったのか覚えてないから…なんだろう?」

と自問自答している。

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