司録と言う仕事
「え?ここって?」
「ああ、ホテルだね。大人がキスしたり裸で抱き合ったりする場所さ」
「ふ、二人って付き合ってるの?」
「まあ、どうだろうね?でも、友達同士であってもこんなことしてるんだよ」
「でも……なんかひかりさんが可哀想……」
「まあ、あいつが望んでるからいいんじゃないか?」
「ねえ、〇〇君、私、初めてだから……」
「え?マジで?そんな可愛いのに?信じられない」
「へへへ……そう?」
「で、どんな感じ?」
「え?う~ん……ちょっと恥ずかしいかな……」
その後の映像が流れすべて見終わってからついに原因が判明した。
ひかりの友人は他の女に乗り換えてしまいひかりは捨てられたのだ。
「そう……そうだったのね。納得しました。まあ、自業自得ですけどね。あんな風に遊び歩いてれば、そんな男に引っかかるわよ」
「そ、そんなぁ~」と泣き崩れるひかり。そんなひかりに黄鬼が告げる。
「まあ、自殺は仏教じゃ最も罪の重い行為なんだよ。元々はね、仏教は日本ではほぼ滅びかけててね。日本人の信仰する神道も仏教もどっちもダメだったんだ」
「どういう事?」
「まあ、簡単に言うとこの事案は衆合地獄ですね」
「じゅうごう?なんですか?」
「色欲の罪を犯したものが堕ちる地獄さ。まあ、君は堕落してたわけだし、因果応報ってところかな」
「こ、酷い……そんな……そんなぁ……」
「ま、まあ……あの……その……元気出せよ?俺も頑張るからさ」と励まそうとする黄鬼にひかりは涙目になりながら感謝した。
「あ、ありが……とう……ございます」
こうして彼女の処遇が決まりその手続きに入った。その時、黄鬼はある提案をした。
「閻魔様、ひかりちゃんなんですけど……今すぐ衆合地獄に落とすのは早いんじゃなないかと……」
「ほう、それはどういうことかね?」と聞くと黄鬼は答えた。
「えっとですね……彼女の場合は色欲よりも自分の将来への不安や生きる希望の喪失が原因で自殺した可能性が高いです。だからこそ今、この場で落としてもまた同じ事を繰り返すだけだと思います」
それを聞いた閻魔は納得した様子で言った。
「ふむ……一理あるな……ならば猶予を与える事にしよう」と言ったので黄鬼は驚いた。
「え?本当ですか?」と言うと閻魔は続けた。
「運が良かったな。普通特例は認めないのだがここにはお菊君がいる。おかしな言い方だが自殺者の先輩という訳だが」
「は、はあ」
「お菊君ならわかるだろう。君も数百年拷問期間があったのだから」
「はい、一時期はもう狂ってしまうのではないかと思いました。何度も何度も思い出す忌まわしい記憶。私は逃げるように皿を数える事で正気を保っていました。そんな私と同じ立場になっていたひかりさんには同情せずにはいられません。彼女を助けたいです」
「うむ……そうか……分かった!ではお菊君の下につけるとしようか。お菊君が良ければの話だが」
「ひゃい?私がですか?」声裏返ってしまってる。
まあ、驚くわな
「ああ、そうだ。お菊君はどうだ?」と聞くとお菊は少し悩んだ後、答えた。
「分かりました。私で良ければ……」
そう答えると閻魔は
「うむ。ではそうしてくれ」と言ったので黄鬼とひかりはお互いの顔を見合わせて喜んだ。
「やった!ありがとう!お菊ちゃん!」と喜ぶ黄鬼を見て閻魔は笑った。
「フフッ、そんなに嬉しいか?まあ、よい。お菊君、彼女を宜しく頼むよ」と言うとお菊は微笑みながら答えた。
「はい!任せて下さい!」
そう言うとお菊はひかりを連れて閻魔庁を後にした。
それを見届けた黄鬼は
「ありがとうございました!」と頭を下げた後、
「そういえばお菊ちゃんの仕事って何なのですか?今まで気にもしていなかったのですが」
「お菊君は司録をしてもらっている。ある意味相当きつい仕事だぞ」
「司録?何ですかそれ?聞いたことがないですけど」
「そうか?まあ、そうだろうな。司録というのはな、文字通り地獄の帳簿を付ける役職の事だ。罪状や刑期などを細かく記録する仕事だな」
「へえ~なんか難しそうですね……でもそんな難しい仕事をやってるなんて凄いです!」
と言うと閻魔は嬉しそうに答えた。
「まあ、お前や羅夢君達には絶対に務まらんと思うぞ。相当頭を使うからな」
「へえ~そんなにですか?」
「ああ、そうだ。だから彼女を信頼して任せているのだよ」と言った。
「ただ今はお前のせいで現世に皿を買うために休暇扱いにしてるんだからな。早く皿を見つけて来いよ。その後たっぷり遅れた分お前にも手伝わせるから覚悟しておくんだぞ」
「あ、はい……すいません」
「まあ、そのためにも急ぐ事だ」
「はい」
「お前たちが帰ってくるまでの間、多少は罰を与えねば示しがつかないからな。羅夢君にお願いしてお菊君達が帰ってくるまでひかるくんには業火にでも焼かれていてもらおうか」
「あ、あの……そこをどうにか……」と黄鬼は懇願するが
「本来ならば自殺は数百年もしくは数千年の罰なんだぞ。それが数日で済むのだ。その間自分の犯した罪を悔い改めしっかり反省することだな」
「は、はい……分かりました」
そう言うと黄鬼は深々と頭を下げながら閻魔庁を後にした。
そしてひかりは……もちろん閻魔に捕まって羅夢に引き渡された。
「ひ、ひぃ……い、いや……いやぁぁ!」と悲鳴をあげながら引き摺られるようにして業火の中に放り込まれたのだった……。
「ほらお前たちも早く皿を見つけて来んか!」
「は、はいぃ!」
こうして二人は急いで皿を探しに行った。




