虹色の種
##### 後日
「美琴くん。悪いんだけど弁天様に書類を届けてくれないかな?」と氷雨に再び頼まれた。
「え!?‥‥えーと、そのー」
美琴は燃やされた時のことを思い出して躊躇ってしまった。
「ああ、大丈夫だよ。それでこの書類を弁天様に届けて欲しいんだよ」と言って書類を渡された。
「はい……わかりました……」と言って美琴は渋々ながら受け取ると再び天界に向かった。前回と同じように門番に書類を見せると通してもらえたので中へ入っていった。
前回と同じように中へ入ると広大な庭園が広がっておりその中央には大きな池があり小さな島がありそこに橋がかかっている。美琴はその橋を渡りながら思った。
「ふう……また燃やされるのは嫌だなあ~」と思いながら進むと前方から前回とは違う侍女が現れ美琴を見るなり走ってきた。
「あ、あのー……弁天様に書類をお届けに参りました」
と伝えると侍女は美琴の顔を見た瞬間、眉間にしわを寄せて言った。
「あれ?あなたこの前燃やされた人?」と聞いてくるので美琴は
「え?あの……はいそうです」と答えると侍女は驚いた表情をした後で
「やっぱり燃やされたんだ!」と言ったので美琴は驚いた。
「え?燃やされたって事は知ってたんですか?」と聞くと侍女は頷いた。
「ええ、そりゃ有名よ。だって穢れを落とす為とはいえあんな高温の炎で焼かれたんだから」というと美琴は
「はい……あれは大変でした……」と答えると侍女は笑いながら言った。
「でも凄いわね~、普通なら見ただけで逃走ものなのに」
と褒めているのかよくわからない言葉を掛けられた。ので
「私だって逃げ出したい気持ちでしたよ。でも縛られて身動き取れない状態で放り込まれたので…」
というと侍女は
「そうなんだ……」と同情気味に言った。
そして弁天様の屋敷に辿り着くと前回と同じように屋敷の前に別の侍女がいたので書類を渡すと
「ではこちらへ」と言われて部屋へ案内されるとそこには弁天様がいた。彼女は美琴の顔を見るなり
「あら、あなた確か燃やされた子よね?大丈夫だった?」と声を掛けてきたので美琴は
「はい……なんとか……」と答えると弁天様は笑いながら言った。
「そう、ならよかったわ。それで今日は何かしら?」
と聞かれたので美琴は氷雨から預かった書類を渡した。
「これをお渡しするようにと言われまして」と言うと弁天様はそれを読み始めた。
そしてしばらくしてから言った。
「ふーん、なるほどねぇ~。まあいいわ、これは受理します」と答えたので美琴はホッとして安堵のため息をついた。それを見た弁天様は微笑みながら言った。
「そういえば、あなたの名前、まだ聞いてなかったわよね?」
と言われたので美琴は慌てて名乗った。
「柊美琴と申します」と答えると弁天様は頷いた後で言った。
「柊美琴さんね。覚えておくわ」と言った後で続けて
「それで?あなたはその……地獄で働いてるんだって?」と聞いてきたので美琴は頷いた。
「はい、そうです」と答えると弁天様は笑みを浮かべながら言った。
「そう、まあ大変でしょうけど頑張ってね」と言われて美琴は少し嬉しくなった。
「ありがとうございます」と答えると弁天様はさらに続けて言った。
「あなた、これからの予定はあるの?なければお茶でもしない?侍女達も紹介するわよ」
と言われて美琴は嬉しくて笑顔で答えた。
「ぜひお願いします」と言うと侍女達の紹介が始まった。その中には先日、美琴を縛り上げ炎の山に放り込んだ侍女もいた。その侍女は
「私の名前はルンルンと言います。あ……あの時はすいません」と言って頭を下げてきたので美琴は笑顔で答えた。
そして彼女も一緒に楽しく談笑をし楽しい時間を過ごすことができたのだった。
その後、弁天様とお茶を飲みながら色々な話をした後、屋敷を辞する事にした。
「今日はありがとうございました」と弁天様に挨拶すると弁天様は笑顔で答えた。
「いいのよ。また遊びに来なさいね」と言って送ってくれた。
美琴はお礼を言って屋敷を後にすると今度こそ天界から出て行った。
##### その後
羅夢が拷問に明け暮れている。
「おら!燃えろ!もっと苦しめ!」
と言っている羅夢だったが
「こんにちわ!…うわ…酷い所ね‥とても見てられない…」
そう言って羅夢に近づいてきたのはルンルンだった。
「誰だよ、あんた?まあ、誉め言葉と取っておくがな」
と返す羅夢に
「はじめまして、私の名前はルンルンといいます。それより、美琴さんいるかな?」
「ルンルン?お前か?美琴ちゃんを縛って燃える山に放り込んだ奴は?」
と睨みつける羅夢だったが
「うわ~~こわい、あなた鬼?」
と怯えながら話すルンルンだったが羅夢は怒りを抑えきれずルンルンを捕まえようとすると……
「ちょっと待って、話せばわかるって…キャー!」と逃げ回る
ルンルンと追いかける羅夢……
「おい!待てって!頭には来てるけどお前をどうこうする訳じゃないって!」と追いかけながら叫ぶ羅夢に、
「え?何?私、何かした?」
と混乱するルンルン。
「お前が美琴ちゃんを縛って燃える山に放り込んだことだよ!」
と怒る羅夢。
「あ~、あれか~……あれは弁天様の命令だったから」
と答えるルンルンだった。
「それは解ってるって。穢れを消すためにやったんだろ!だから怒りはあるけどお前には恨みはねーから」
「ふーん……ま、いいけど……それでさ、美琴さんはいないの?」
「いないけどどうした?」
「ちょっと話があって……」
「そっか、それじゃ呼んでこようか?」
「あ、ありがとうございます。じゃあお願いします」
そういうと羅夢は獄卒に指示を出し美琴を探させた。しばらくすると獄卒が戻ってきて
「見つかりましたよ」と教えてくれたので羅夢とルンルンは美琴の所へ向かった。
美琴の仕事場にやってきた二人。何やら書類を作成していた。
「美琴ちゃんお客さんだぞ!おーい、客だぞ!」
と羅夢が大声を出すと青嵐が反応した。
「何よ!お客さんって!」
と怒鳴り返す青嵐に羅夢は笑いながら答えた。
「お前じゃなくて美琴ちゃんのお客さんだよ!」
というと美琴が顔を出してきた。
「あのー……どちら様でしょうか?」
と尋ねる美琴に対して羅夢は
「美琴ちゃんに会いたいって人が来てたぞ」と伝えると美琴は少し考えてから
「あ、ルンルンさん!」
と気づいて駆け寄ってきた。そしてルンルンの姿を見て少し驚いた表情をした後、嬉しそうに微笑んだ。
「こんにちは、ルンルンさん」
というとルンルンも笑顔を返した後、美琴の手を取って言った。
「あなたにプレゼントがあるの。あとえーとこの人…」と言いながら羅夢を見る。
「私の名前は羅夢だ!」
「羅夢さんにもお願いしたいのですが」
「私にも?」
と意外そうな顔をする羅夢にルンルンは微笑みながら言った。
「はい!是非!実はプレゼントと言うのはこれ何ですが」と言いながら虹色の種を差し出してきた。
「これは?」と羅夢が尋ねるとルンルンは答えた。
「これは睡魔の花の種です。この種を煎じて飲むと強烈な睡魔に襲われて丸一日寝てしまいます。まあ、個人差はありますが大体1日程度です。」
と言った。それに対して羅夢が聞き返した。
「え?飲むの?植物じゃないの?」と聞くとルンルンは答えた。
「いえ、ちゃんとした植物ですよ。植えれば花になってまた種がとれますよ」というと羅夢は再び尋ねた。
「花?……そうなんだ」
と呆れたように言った後で羅夢は
「で、その種で何をするんだ?」と尋ねた。それに対してルンルンは
「この種を美琴さんに飲んでもらうつもりだったのですが……」と答えた。
それに対して美琴が慌てて言った。
「え!?寝ちゃうんですか?いやでもちょっと寝不足だったので助かりますけど……でも私が寝ちゃったら誰が仕事するんですか?」と困惑しながら言う美琴だったがルンルンは
「いえ、今すぐ飲めという訳じゃなくて、ほらこれからも地獄で働いてると穢れがまとわりつくでしょ。そしたら不動明王の炎の中に飛び込まなくてはならないでしょ。その時の苦痛をなくすために寝てもらおうと思って」と言って安心させるように微笑みながら言った。




