弁天様
妲己は続けて言った。
「あんなのが女神様なんて言われてるなんてほんとに人間ってお目出度い生き物よね」と嘲笑うように言った。
それを聞いた羅夢は
「ああ、確かにな。俺もそう思うよ。あんた達みたいな奴らにいいように利用されるなんて……情けない限りだよ」と皮肉っぽく言った。
それに対して妲己は何も言い返さなかったが内心ではそう思ったのだった。
そして妲己は言った。
「まあ、いいわ。とりあえず終わった事だからね。それにしても今回は大失敗だったわ……」と残念そうに言う妲己に対して羅夢は言った。
「そうでもないだろ。少なくとも妲己にとっては美味しい展開だったんじゃないか?」と羅夢が言うと妲己はニヤリと笑って答えた。
「まあね。しかしヒミコが出てくるとはさすがに予想もしてなかったわ」と言う妲己だったがその表情には余裕があった。
それを見て羅夢は確信した。
ああ、やっぱりこいつは魔王だな……と
羅夢は呆れながらも妲己を連れて衆合地獄を後にしたのだった。
##### 等活地獄
「おい、聞いてくれよ美琴ちゃん!」
羅夢が興奮気味に話しかけてきた。
美琴は不思議そうな顔をしながら尋ねた。
「どうしたんですか?そんなに慌てて」と言ったが羅夢は興奮冷めやらぬ様子だった。そして話し始めた。
「いや、実はさっき地獄に送り込まれてきた奴がいるんだけどそれが……」
そこまで言ったところで美琴が口を挟んできた。
「ちょ、ちょっと待って下さい!いきなり何の話ですか?」と困惑する美琴に対して羅夢は続けた。
「だからさ、さっき地獄に送り込まれてきた奴が居たんだよ!」と言った後で羅夢は思い出したかのように言った。
「そういえばまだ詳しくは説明してなかったな」
と言って羅夢は説明を始めた。
「それでその男は現世で妲己に嵌められた哀れな男さ」と言うと美琴は驚いたように言った。それを見て羅夢は続けて言った。
「まあ、妲己に騙された時点で男としては終わりだろうけどな」と言った後で羅夢はさらに続けた。
「それでさ、可哀そうな面もあるけど、ちょっと遊んでやろうと思ってな」と言ったところで美琴が慌てて止めに入った。
それに対して羅夢は言った。
「まあまあ落ち着けって。遊んでやるは冗談だよ。」
そう言うと羅夢は美琴に言った。
「美琴ちゃん。お前にもいい経験になるはずだ」と言って二人は衆合地獄へと向かったのである。
羅夢達はレーアエンタープライズの社長を衆合地獄に送り込む準備を進めていた。
「さて、これで完了だな」と羅夢が満足げに言うと美琴が尋ねてきた。
「あの、この人は一体何をしたんですか?」
「まあ、簡単に言えば人を騙して金儲けしようとしたんだよ。その結果として大勢の人に迷惑をかけて命を落とすことになったんだ」と答える羅夢だった。
「え?でもそれは妲己さんがそうなるように仕組んだんですよね?」
「そうだな。だがそれも自業自得というものだ。妲己の能力に魅了された時点でこいつの運命は決まっていたんだよ」と答える羅夢だった。
「じゃあこの人はどうなってしまうんでしょうか?」と不安そうな表情を浮かべる美琴に対して羅夢は言った。
「どうなるもこうなるもすでに衆合地獄にいる時点で察しはつくだろ」と言った。それを聞いて美琴はハッとしたような顔をした。
「そうですね……」と小さく呟く美琴だったが心の中では複雑な気持ちになっていた。
そうしているうちに衆合地獄に到着した一行。
「こいつはこの獄卒に任せるからあとは頼んだぞ」と羅夢は地獄に到着してすぐさま一人の獄卒に社長を押し付けるように渡した。
「お任せください!」と意気揚々に答えるとそのまま連れていかれた。
「あの……いいんですか?」と恐る恐る尋ねる美琴だったが羅夢は平然と答えた。
「いいんだよ。どうせあいつにはもう用はないからな」
そう言うと羅夢は踵を返して歩き出した。
その時、連れていかれる途中だった社長が何か叫び声をあげていたが羅夢たちはそれを無視してその場を去って行った。
その後、衆合地獄の奥では激しい拷問が繰り広げられていた。
「うおおぉぉっ!!助けてくれぇぇぇー!!くそーあのメギツネめー」
そんな叫び声が響き渡っていた。
「ふっふっふ……こんなもんじゃ終わらないぞ」と鬼たちは笑いながら責め立てていった。
#####
「美琴くん、ちょっとお使い頼まれてくれるかな?」と氷雨が美琴に言った。
「何でしょう?氷雨様」と答えると羅夢も
「私もついて行ってあげるよ!」と言うが
「いや、羅夢君には無理だ」
と拒否された。
「なんで?私だってお使いぐらい出来るわよ!」と抗議するが
氷雨は
「いや、今回ばかりは君には無理だ」
と言うので
「なんでよ?」と尋ねる羅夢に対して氷雨は答えた。
「いや、今回のお使いはこの書類を弁天様の所へ持って行って欲しのだが羅夢君には天界に入れないだろ」
それを聞いた羅夢は
「え?天界?だったら確かに無理だわー…、でもそれなら美琴ちゃんだって無理よね、地獄の住民で天界に入れるのって閻魔様と氷雨様だけのはずでしょ?あれ他にもいたかな?とにかく限られた人だけのはずでしょ?」
と聞くと氷雨は
「いや、美琴くんなら大丈夫だ。実は美琴くんには天界に行くことができるんだ」と答えた。
「えー!私って限られた人の一人なの?」と美琴も驚いている。
すると氷雨は
「美琴くんはそもそも地獄へ落ちるような人間ではなかったからな。呪われて魂を強制的に地獄行きにさせられただけだからね。もちろん呪われて落とされたとしても悪事を働いてれば同じことだがね」と言った。
それを聞いた美琴は
「そうだったんですね……」とだけ呟いた。
羅夢はそのやり取りを聞いていて
「そんなの初耳なんだけど……」とつぶやいた。それを聞いた氷雨は言った。
「そうだろうね。大抵呪われる人間の方は何かしら悪事をやってる事が多いしね。そもそもこんなケースは初めてだしね」と言った。
それを聞いた羅夢は「そうか……」と言ってそれ以上は何も言わなかった。
そして氷雨は美琴に向き直ると改めて依頼した。
「というわけで美琴くんよろしく頼むよ」と言ったのであった。
「はい!わかりました」と元気よく返事をする美琴を見て羅夢も納得してくれたようだった。
「それじゃ早速行ってきますね!」と言って美琴は書類を持って天界へと向かった。その姿を見て羅夢は
「まあ、気を付けてねー!」と声をかけて見送った。
美琴は天界の入口に立っていた。そこは白亜の宮殿のような建物で見上げると遥か高くに天界の入り口が見える。そして門番に止められてしまった。
「おい、お前はここで何をしている?」と警戒心丸出しで質問してきた。それに対して美琴は
「あの、これを弁天様に渡しに来たんですけど……」と言って書類を見せると門番はそれを確認してから
「ああ、それは閻魔様からの書類だな。そちらの方から入ってくれ」
と言って道を開けてくれたので礼を言うと中へと入っていった。中へ入ると広大な庭園が広がっておりその中央には大きな池があった。そしてその池の中央には小さな島がありそこに橋がかかっている。美琴はその橋を渡りながら思った。
「わぁ~凄いわぁ!さすが天上界ね~」と感嘆の声を上げた。
橋を渡り切るとそこには立派なお屋敷が建っており門の前には侍女のような女性が立っていた。そして美琴の姿を見るなり駆け寄ってくると
「ひぃーーーー!穢れた分際でこんな場所に来るとは!」と突然縛り上げられてしまった。驚く美琴だったが侍女は構わず話を続けた。
「この穢れた生き物め!なぜここまで入って来れたの?」と言うが答えようがなかった。
そこへ氷雨からの使いの連絡を受けていた弁天がやって来て言った。
「確かに穢れがまとわりついていますね…確かにこのままここに置いておくわけにはいきません」
といって筋斗雲を呼び寄せ侍女に命令した。
「この穢れた女性を燃やしてきなさい」
それに対して美琴は恐怖から悲鳴を上げた。
「あーーーーー!!」
「ほほほ、その穢れた声が聞こえない位遠くで燃やして来なさい」
とニヤリと笑う弁天だった。
「はい!」と返事をし侍女は筋斗雲に美琴を乗せて飛び去って行った。




