妖艶の女帝 玉藻前
「やれやれ。やたら上機嫌だったから嫌な予感はしてたんだけどね。しかし一体何があったのやら」と呟きながら羅夢は黄鬼を探しに飛び出すのだった。
「お~い!黄鬼~!どこ行ったの?」と叫びながら走り回る羅夢だったがなかなか見つからない。
「まったくどこに行ったのかしら?まさかサボりかしら?」とブツブツ言いながら探していると
「お~い!羅夢さん!こっちです!」と声が聞こえたので振り向くとそこには青嵐が手を振っていた。
「青嵐さん!黄鬼知らない?どこ行ったんだろう?」と言うと青嵐は指を差しながら言った。
「ああ、黄鬼ならそこにいますよ。あれ?」
と指を差された方向には確かに黄鬼がいたのだがなぜか泥酔していてフラフラしていた。
「ちょ、ちょっと!黄鬼!あんた何してんのよ!」と叫ぶと彼は
「ああ……羅夢様……。ごきげんよう。ぐへへ」と答える。
「おいこら、テメエ!デートすっぽかして何で泥酔してんだ?説明しろ!」と羅夢が詰め寄ると黄鬼は怯えた表情になりながら弁解を始めた。
「ひぃっ!すみません!これは違います!誤解なんです!」と言うと彼は事情を話し始めた。
「実はさっき衆合地獄で働く知り合いから美味しい酒が手に入ったから一緒に飲もうと言われまして……つい出来心で……」と言うので羅夢は呆れたように言った。
「ハァ……まったくあんたねぇ……。まあいいわ。ほら氷雨様の所へ行くよ!」
「え?」
「え?じゃないわよ!お菊ちゃん泣いてたわよ。なんでデートすっぽかしたの?」と尋ねると黄鬼は慌てて弁解を始める。
「そ、それは……その……実は今日どうしても外せない用事がありまして……」
「ふ~ん。どんな用事かしら?」と聞くと彼は躊躇しながら言った。
「えっと……実は最近知り合った女にデートに誘われまして……」と言うので羅夢はさらに問い詰めた。
「はぁ?それどういう事?」と言うと彼はしぶしぶ話し始めた。
「いや、あの……実はその……今日初めて会ったばかりの女なんですが……その……」とモジモジしながら答える黄鬼だったが、そこで
「もしかしてその女って金髪碧眼で派手な服着ててスタイルが良くて巨乳で美人な女だった?」と羅夢が尋ねると彼は驚きながら答えた。
「な、なんで解るんですか!?そうです!その通りです!」と言うと羅夢はため息をつきながら言った。
「やっぱりな。青嵐あんたもその女知ってたでしょ?」と聞くと青嵐は頷いた。
「ええ、あの女は確か最近衆合地獄で噂になっている魔女ですよね。名前は確か……」と言うと
羅夢は続けた。
「そうね。確か名前は玉藻前とかいう名前だったわね。魔界からやってきたとかいう触れ込みで男を誘惑しては骨抜きにしてしまい最終的には破滅させる女で有名らしいわ。まったく黄鬼め……そんな女の甘言にホイホイついていって……」と言ってため息をつく羅夢に青嵐は言った。
「まあまあ。とりあえず氷雨様の所へ連れていきましょう。」と言うと羅夢は渋々同意した。
「そうね。しょうがないわね。ほら黄鬼、行くわよ!」と言うと彼は抵抗する事なく大人しく従ったのであった。
道中
「あんたねえ衆合地獄の鬼が浮気しようってどういう了見なの?あんたもいっぺん拷問した方がいいのかもね」
羅夢の言葉に黄鬼は
「は、はい‥‥す、すみません」と弱弱しい声で答えた。
青嵐も呆れた表情を浮かべながら言った。
「まったくあんたって子は……。これだから男は信用ならないのよ!」
「はい‥‥すみません」と申し訳なさそうに答える黄鬼だったがその時後ろから声が聞こえてきた。
「あら、あなた達も黄鬼さんと同じところに行くの?」と振り返るとそこには美女が立っていた。
その女性は金色の長い髪を持ち碧い瞳が印象的な美女だった。その女を見て羅夢と青嵐は顔を見合わせた。
「この女が例の魔女か……」と呟く羅夢に青嵐も頷いた。
「ええ、間違いないわね。どう見ても只者じゃないわ」と言う二人に美女は微笑みながら言った。
「あなた達が噂の羅夢さんと青嵐さんですね?初めまして私は玉藻前と申します」
と言うと彼女は優雅にお辞儀をしたので二人も挨拶を返した。
「こんにちは。私は青嵐です。こちらは羅夢さんです」
と自己紹介をする二人に玉藻前はニコッと微笑んだ後
「ところで黄鬼さんはこれからどちらへ行かれるのですか?」と尋ねると羅夢は答えた。
「あんたのせいでね、これからこの腑抜けになったこの馬鹿を拷問にかけるんだよ。あんたも拷問してあげようか?」
と睨みつけながら言うと玉藻前は微笑みながら言った。
「まぁ怖い!でもそれは困りますわね」と言う彼女に羅夢は更に睨みつけて言った。
「ふざけるな!あんたみたいな女がいるから男どもが苦しむんだよ!とっとと出ていけ!」
と怒鳴る羅夢に対して玉藻前は怯むことなく微笑んだまま言った。
「まあまあ落ち着いて下さいまし。私はただあなた達とお話がしたいだけですよ」と言うので羅夢はさらに睨みつけて言った。
「お話?笑わせるな!お前みたいな淫乱女と話すことなんて何もないね!」と言うと彼女は微笑みながら言った。
「でも私のような者がいるからこそ衆合地獄のような地獄がある訳でしょ?」
「ぐ…、まあ、確かにそれは否定せんが…」
すると玉藻前は
「でしょう?ある意味私達は最高のビジネスパートナーになれると思うの」
「ほう?中々面白そうな話だな」と興味深そうな顔をする羅夢。
「だったらちょっと待ってろ!まずはこいつを氷雨様の所へ連れて行かなくてはならないからな」
と黄鬼の首根っこを掴んで引きずって行く。
氷雨の所についた三人及び玉藻前。
「なんだ?お前も一緒についてきたのか?久しぶりだねえ」と氷雨が尋ねると羅夢が
「お知り合いなのですか?」
「ああ、昔からのな…。しかし相変わらずだな華陽夫人。いや今は妲己でしたかな?」
すると玉藻前改め妲己は
「何よ。まだ、その名前で呼ぶの?私はもう魔界では玉藻前という名前なんだからその名で呼んでほしいわね」と拗ねる。すると羅夢が
「おいおい。あんたたちどういう知り合いなんだよ」というので妲己が説明した。
「こいつが生きていた時、殷王朝っていう時代でね。その時の私の名前は妲己。魔界と妖魔界を支配していた女帝よ」
「へえ~。すごいんですね!」と青嵐が驚くと妲己は自慢げに胸を張る。
「それで、黄鬼が浮気したっていうのは本当なのかい?妲己?」
すると妲己は
「別に浮気はしていないわ。ちょっと一緒に食事をしただけでしょ?」と答える。
「ほんとうかなあ?氷雨さんどう思う?」と羅夢が尋ねると
「さあな。私はその現場を見たわけではないから何とも言えんが」と言ってチラッと黄鬼の方を見た。
すると黄鬼は冷や汗を流しながら答える。
「は、はい……。あの……確かにその女とは食事をしましたが……」
「それだけなのかい?他のことはしていないんだな?」と確認するように聞くと彼は慌てて首を振った。
「もちろんです!それだけです!」
「どうする?お菊ちゃん。とりあえず反省の意味も込めて拷問しとこうか?」と羅夢がお菊に尋ねると彼女は悩んだ末に答えた。
「いえ……、今回は大目に見ます……。でも次はありませんからね!」と言うと黄鬼は安堵の表情を浮かべた。
「ありがとうございます!これからは誠心誠意あなたに尽くします!」と土下座をしながら言う黄鬼だったが、その姿を見て氷雨はため息をつきながら言った。
「まったく……あんた達二人とももっとしっかりしなさいな。まあ今回は見逃してあげるからこれからは真面目に働きなさいよ」と言うと二人は揃って返事をした。
「「はい!わかりました!」」
こうして今回の騒動は幕を閉じたのであった。
「ほんじゃ黄鬼はもういいわ。お菊ちゃん今日はどこかで食事して帰りなさい。ご馳走してあげてね」
と羅夢が言うと
「え?いいんですか?」とお菊が聞き返すと彼女は笑顔で答えた。
「いいのよ。今日は特別だからね!」と言うと彼女は喜んで黄鬼と一緒に食堂へ向かった。
「さて、と」
二人を見送った後氷雨は妲己の方に向き直った。




