牛頭と馬頭
等活地獄
そこで待っていたのは二体の巨大な鬼である。その名は牛頭・馬頭であり彼らがこの等活地獄の獄卒長を務めている。そしてその二人は仁王立ちをして美琴達を待っていた。
「お前らよく来たな!俺達の地獄見学ツアーへようこそ!」と豪快に挨拶をする牛頭に対し青嵐と美琴は平然としていた。
「おや、羅夢は来なかったのかい。一言文句を言ってやりたかったのに」と牛頭が言うと
「そうだ!あの羅夢には迷惑ばっかりかけられてるからな」と馬頭も続く。
「えっと。羅夢さんがどうかしたのですか?伝えたいことがあれば伝えておきますよ」と
美琴が聞くと牛頭が答える。
「いやな、羅夢がケルベロスとオルトロスをどこかから連れてきて騒ぎになっただろう?」
「いえ、私は解りませんけど」と美琴が答えるが
「美琴ちゃんが来る前の話だしね。それがどうかしてのですか?」と青嵐が尋ねる。
「いやなに。あの二匹が来たおかげで俺たちの地獄の門番の仕事がなくなったじゃねえか」と牛頭が言うと馬頭も続く。
「そうだ!そうだ!まったく、あいつらのせいで仕事がなくなりましたよ!」と二人は口々に不満を漏らす。
それを聞いた青嵐は呆れた様子で言った。
「あのねぇ……あんた達が仕事をサボって遊んでただけでしょうが!」とツッコミを入れると二人はムッとした表情を浮かべて言った。
「「なんだと!?俺達が仕事をサボってるだと!?」」
「はい、そうです。いえ、サボるというよりも、あなた達は獄卒の仕事以外にも色々な場所で現場を仕切ろうとする癖がありますよね。はじめは衆合地獄の長だったのに色んな仕事に手を出しすぎてオーバースペックになって羅夢さんに仕事を取られた経緯もあるでしょ」と言うと二人はギクリとする。その様子を見て青嵐はさらに畳み掛けるように言った。
「それで最近は閻魔庁の仕事を手伝うことも増えてきたとか。でも本来ならそれがあなた達の本来の仕事のはずですよね。それなのにあなた達ときたら他の仕事ばかりやって肝心な自分の持ち場は放置状態。まったく嘆かわしい事です」と青嵐が言うと牛頭と馬頭は黙り込んでしまった。
「うっ……確かにそうだが」と馬頭が言うと牛頭が続く。
「しかし、しかし俺たちは一生懸命働いているのだぞ!」と反論すると青嵐がまたツッコミを入れた。
「そうよね。中途半端に色んなことやって最後は投げ出してるけどね」
「「うぐっ!!」」と牛頭と馬頭は言い返せなかった。
そんな光景を見た美琴は苦笑いをしながら言った。
「あの~そろそろ次の見学に行きたいのですが……」と言うと青嵐がそれに同意した。
「そうね。そろそろ移動しましょうか」と言うと二人は再び歩き出した。
等活地獄の中央には大きな湖がありそこでは罪人たちが亡者を鞭で打つ姿があった。
「わあ~すごい景色ですね!まるで映画のセットみたいです!」と美琴は興奮気味に言う。
それを見た牛頭は苦笑しながら言った。
「昆虫も触れないような清楚な娘さんに見えるのに凄い肝っ玉だな。あれ見て怖くないのかい?」
と尋ねると美琴は笑顔で答えた。
「いえ、全然怖くないです!むしろ楽しそうに見えます!」と言うと青嵐は驚きながら言った。
「え?そうなの?最初は拷問道具を見ただけで涙を流しながら逃げ回っていたのに」と聞くと美琴は笑顔で答える。
「はい!最初は怖かったですが今は何とも思わないですね。むしろ凄いなーって感心してます」と言うと青嵐は呆れたように言った。
「あなた、本当に変わってるわね。まあいいか。それより次の見学に移動しましょう」と青嵐が促すと二人は次の見学場所へ向かった。そこは等活地獄の中でも一番過酷な場所であり通称血の池地獄と呼ばれている場所だ。
そこには無数の亡者が血の海に浸かりながら苦しみ喘いでいる姿があった。
「うわ~これは凄いですね!まるで地獄絵図そのものです!」と美琴が言うと青嵐が答える。
「ええ、そうね。でもこれが普通なんだけどね」と言うと美琴は笑顔で答える。
「そうなんですね!でもこれが普通なんですね!勉強になりました!」と元気よく言う美琴を見て青嵐はため息をつく。
「はぁ……もういいわ。なんか調子狂うわね…」と頭を抱える青嵐だったが美琴は気にせず進んでいく。
それを見て青嵐は諦めたように言った。
「わかったわよ。じゃあ次の場所に行きましょうか」と言うと二人は次の見学場所へ向かった。
その後も様々な場所を見学した二人だったが特に問題もなく無事に終える事ができたのであった。
終わった後、馬頭が
「そういえば最近やってくる亡者達がおかしいのよね。あなた達の方は大丈夫?」と青嵐に質問してきた。
「おかしいとはどういう風にですか?」と青嵐が尋ねると馬頭は説明し始める。
「いやね。最近やってくる亡者達がさ‥みんなじゃないんだけど、なぜか、ステータス、オープンとか不思議な事言ってる人が多いんだよね」
と馬頭が言うと牛頭も続ける。
「ああ、それ俺も聞いたことがあるぜ。確か異世界から召喚された勇者とかなんとか言っていた気がするが……」
「ハア、ここでも同じなのね。結構いるわよ。特に私達を見ると妖精だ!エルフだ!ハーレムだ!と言いながらどや顔でステータス、オープンていうのよね」
と青嵐が言うと馬頭も頷きながら言う。
「うんうん、本当に困ってるんだよね。あの変な連中になんて説明したらいいのかわからないし。羅夢は何か言ってなかったか?」
と馬頭が尋ねると彼女は首を横に振って答える。
「いや、特に何も言ってなかったな。羅夢さんの前でステータス、オープンなんて言おうものならその場で頭潰されて閻魔様の所へ連れて行っちゃいますから」
と青嵐が言うと馬頭と牛頭は納得するように頷いた。
「なるほどな。確かに羅夢ならやりかねないな」と牛頭が言うと馬頭も続いて言う。
「ああ、そうだな。あいつならやりかねないな」と言うと青嵐は笑顔で答える。
「ですよね。それで実際にやらかしてるんだから本当に困ったもんです。まあ私達も困ってるんですけどね」と言うと牛頭と馬頭は苦笑いをした。
その後しばらく雑談をした後解散となったのであった。青嵐達は衆合地獄に戻ってきた。
「青嵐さん、等活地獄楽しかったですね!」と美琴が笑顔で言うと青嵐は呆れたよう
「‥‥ハァ」
青嵐は大きなため息をついて
「そろそろあんたも戻る時間でしょ?いい加減羅夢さんのもとに帰ってちょうだい!私はもう疲れたわ‥」
「え~~っ!もう少しだけ見て回りたいのに~」
「ダメです!帰りますよ!」と言って青嵐は強引に美琴を引っ張って戻って行ったのであった。
#####
「羅夢さん。黄鬼のやつ見なかった?」と氷雨がやってきた。
「あれ?さっきまでそこで上機嫌にスキップ踏んでたんだけどな。」
黄鬼とは衆合地獄で働いている獄卒だ。彼は羅夢に仕える下級の獄卒の中でも結構偉い存在なのだ。普段は真面目な性格なのだが今日は妙にテンションが高いように見えた。
「何かやけに楽しそうだけどなんかあったの?」
「楽しそう?黄鬼が?だったらなんでデートすっぽかすんだ?本来ならプライベートごとは私の関与する事ではないんだが…」
「まさか!あいつ!デートすっぽかしたの!?誰とのデート?」
「町娘のお菊ちゃんだよ。まったく泣きながら私の所まで来てね…ほとほと困ってるんだよ」
「はあ?あの野郎!お菊ちゃん可哀そうだよ。私が話をつけてくるよ」と言って羅夢は飛び出して行ってしまった。




