ー4章ー 26話 「帰還の約束」
──時は戻り現在。
ベルムランド城門前にある木陰で、レオルドとリはゼルに衝撃的事実を告げていた。
普段から感情を表に出さないリゼルであったが、セリオンが生きているという話に、堪えきれず泣き崩れてしまった。
「……大丈夫……じゃないよな。死んだはずの仲間が生きているなんて聞かされたら、そうなるわな」
「……うぅ.…何で……何で教えてくれなかったの!?セリオンのアホッ!!」
嬉しさと憤りが混ざり合った複雑な心境ではあったが、そうなった経緯を聞いて少し落ち着いた。
「まぁ勇者がベルムランドに侵攻したって事実が風化するまでには、時間が必要だったってことさ。アイツも心の休息が必要だったし。知らせなかったのは悪かったと思っているけど……グランゼルに嗅ぎつけられたら、生かした意味がなくなるからな………すまん!」
「……いえ、セリオンを助けてくれて……ありがとう」
もしレオルドという男がその時に居なかったら、セリオンは間違いなく命を終わらせていただろう。
リゼルはバルクス王とレオルドの懐の大きさに、心から感謝した。
「それで、セリオン……じゃなかった。カイルは今、ベルムランドで何をしているの?」
「アイツは今、ベルムランド兵の指導をしてくれているよ。グランゼル王は相変わらずみたいだからなぁ……せめてもの詫びってのがあるんじゃないか?お陰でうちの若い兵は、みるみる強くなったよ。いやぁ、有り難い有り難い」
冗談交じりに言っているが、レオルドはセリオンに感謝していた。
初めは勇者の剣を鈍らせるのは忍びないし、思い詰めた心を忘れる事ができるだろうという思いからの提案だった。
しかし時が経つにつれ、ベルムランド兵や周りの人間から慕われ、いつしかセリオンの心の闇は晴れていった。
過去は消えない……カイルとして生きていったとしても、あの出来事を忘れる事はできない。
それでも前を向いて、セリオン・アーディアの心を持ったまま、カイル・シルフォードとして生かされた答えを探していこうと、心に決めたのだろう。
セリオンはカイル・シルフォードとして、新たな人生を一歩一歩、着実に歩み出していた。
「そう言えば最初に魔王復活の兆しが……って言ってたよな。それって今、結構ヤバい状況?」
レオルドはリゼルの話を思い出し、状況を整理しようとした。
グランゼル再侵攻と、魔王復活の兆候……二つが重なれば、ベルムランド王国はかなり窮地に立たされるのは明白。
「いえ、まだ差し迫った状況ではないけど……警戒は必要ね。こちらも何ができるか話してみる……セリオンを救ってくれたお礼に」
「そうか、そいつは助かる。まぁ魔王が絡んでくるんじゃぁそろそろアイツも出番ってヤツだろうな……。リゼルさん、今英雄達は何処に居るんだ?」
何かを決めたかのようにレオルドが英雄の居場所を聞いてくる。
「魔物の森よ。緩衝地帯だから気が付かなかったでしょ?」
「……流石は英雄様達だ、正直あんな所に居るなんて、誰も思わないぞ」
「連絡ならボルン商会を使うと良いわ。彼らも拠点を森に移し始めているからね」
「そうか、その手があったか!……リゼルさん、近いうちにカイルをアンタらに返す。アイツのやるべき事はここにはないからな」
「そう、分かった。長い間セリオンを匿ってくれて、本当にありがとう」
リゼルはレオルドと約束をして、ベルムランドを離れた
。
遂にセリオンが帰ってくる。
もう二度と戻ってこないと思っていた人と再び会える。
その喜びを胸に、足取りも軽く森へと向かうのだった。




