ー4章ー 24話 「勇者セリオンの処遇」
グランゼル軍が敗走した後、勇者セリオンを討ち取ったとして、生き残ったベルムランド兵達が一斉にレオルドの元へと駆け寄った。
「さすがはレオルド隊長!まさかあの勇者セリオンを討ち取るとは!」
うつ伏せに寝かせられたセリオンの偽装遺体を、間近で確認しようとするベルムランド兵。
「待て!そいつは俺の一撃で、見るも無惨な状態になってしまった。敵とはいえ、同じ騎士……いや、世界を救った者として醜態を晒されるのは本望ではないだろう?」
その言葉に、勇者の顔を拝もうとした兵士達の手が止まった。
「お前たちも騎士の端くれなら、間違った行いであったとはいえ、今ある世界を守ってくれた勇者に手を合わせてやれ……それが、せめてもの手向けってヤツだ」
無意味に攻め込まれた事には、遺恨が残る……だがそれ以上に今を生きられているのは、勇者セリオンを始めとした英雄と呼ばれた者たちが、魔王を封印してくれたからに他ならない。
レオルドの言葉にその場にいた全員が納得をして、静かに手を合わせた。
「俺はセリオンの遺体を丁重に葬ってやりたい……こんな所で野晒しは忍びないからな。お前たちは残存兵を纏めて先に城へ帰還しろ!」
こうしてグランゼルによるベルムランド侵攻は敗北に終わり、セリオン・アーディアという一人の英雄が表舞台から姿を消したのだった。
勝利報告をするため、レオルドとベルムランド兵に偽装したセリオンは王宮へと来ていた。
レオルドによってその命は繋ぎ止められたが、生かしたのはレオルドの独断……ベルムランド王がこれを許すとは限らない。
生かされはしたが、この先どうしていけば良いのか。
セリオンの心は、未だ闇の中にあった。
謁見の間にはバルクス・ベルムランド王の他に、関係大臣や記録官が控えていた。
「報告の前に、バルクス王だけにお耳に入れたい事がありまして」
そういうと、王が手招きしてこれを許した。
暫くするとレオルドの報告を聞いたバルクス王は、命令を下した。
「報告に参った二名を残し、他の者は退席せよ」
バルクス王の一言に、全員が困惑の表情を浮かべたが、王の指示という事でレオルドとセリオン以外の者は、謁見の間から退室していった。
「して、そこの兵。顔を見せよ」
セリオンは恐る恐る兜を外し、正体を明かした。
「勇者セリオンは、今回の襲撃の指揮をしていましたが……どうも事情がありそうなんですよ。世界を救った者が国の方針とはいえ、こんな事に喜んで加担するとは思えないんですよねぇ。なので、セリオンの処遇は話を聞いてからでも良いと、私の独断で連れて参りました!」
バルクス王は少し驚いたが、レオルドの常識に囚われない考えに納得した。
「相変わらず面白いな、レオルドは。分かった……勇者セリオン、申してみよ」
セリオンはこれまでの経緯をありのまま話した。
愛する人や、その家族の事、グランゼル王の野望、旅立とうとしていた事、死のうとしていた事。
今回の事で少なからずベルムランド兵に被害が及んだのは紛れもない事実。
これが罪に問われないなどとは思っていない。
一時レオルドという男の気まぐれで延命されたのだとしても構わなかった。
そして、セリオンの話を静かに聞いていたバルクス王が、口を開いた。
沈黙の部屋に響く王の声は、セリオンの未来に何を与えるのだろうか。




