表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/97

ー4章ー 23話 「勇者、戦場に散る」

狂気に満ちた戦場……散っていく生命。


無機質な音が響き渡る中、一箇所だけまるで別世界のような場所があった。


セリオンとレオルドが対峙している少し小高い所だ。


「……その口ぶりだとお前さん、国の総意ってヤツに従って攻め入った……って訳じゃなさそうだな」


周りから見れば死闘を繰り広げているような二人だが、達人同士のそれはまるで稽古をしながら会話をしているようなものだった。


「もうあの国には戻れない。生きていると分かれば、グランゼル王は何をするか分からない……逃がした愛する人たちさえも」


虚ろな瞳に涙はなかった。


だがセリオンは嘆き、ずっと心の中で泣いていた。


勇者、英雄……そう言われるほどに武を極めた男が、今命のやり取りをしている戦場で死を求め泣いている。


「……分かった、俺に任せておけ」


そう言うとレオルドはセリオンを押し倒し、すぐ近くに居たグランゼル兵を斬り倒した。


「レオルド隊長!ありがとうございます!」


「いいって。そんな事よりほら、あっちで苦戦してる奴を手伝ってこい!」


「はい!」


レオルドたちの他に、この場所に居るものは無くなった。


近くで戦死していたベルムランド兵の遺体をセリオンの近くへ運び、鎧を剥がし始めるレオルド。


「……おい、ボサッとするなって。お前も鎧を脱げ」


セリオンは何をしようとしていのか意図が分からなかったが、言われるがままに着けていた鎧を脱ぎ始めた。


そして亡くなったベルムランド兵の鎧を着るように言われ、遺体にはセリオンの鎧が着させられた。


「よし!セリオン・アーディア、お前は今、死んだ。その剣は俺が預かる……倒したって証でな。お前は……そうだな、俺とセリオンを倒したベルムランド兵のふりでもしておけ」


呆気にとられるセリオン。


「そんな事でベルムランド兵を出し抜けるとでも思っているのか?」


グランゼル兵に関しては、隊長が死んだとなれば指揮は急激に下がり、敗走するだろう。


……もしバレたとしても、どの道死ねる。


そう思ったセリオンはレオルドの言う通りにする事にした。


「聞けーー!!グランゼルの英雄、セリオン・アーディアを討ち取ったぞーー!!」


レオルドはセリオンの剣を高々と掲げ、大声で勝利宣言をした。


それまで必死に戦っていた兵士たちは一斉に手を止め、レオルドの方へと視線を向けた。

掲げられた剣を見て、両軍共その意味を理解した。


「ウォォォォォォォォーーー!!」


歓喜に沸くベルムランド兵の声が、戦場にこだましていく。


「て……撤退!撤退だーー!!」


グランゼル兵達はセリオンの死が意味するところを理解し、グランゼル王国へと急いで退却していった。


「さぁ、ここからが本番だ。まさか勇者様に演技をしてもらう事になるとは思わなかったけどなぁ。ま、成り行きだ、しっかり演技してくれよ!……事情は後で聞かせてもらう」


「……すまない、恩に着る」


こうして勇者セリオン・アーディアは、ベルムランドの地でその命を失った。


セリオンの死は瞬く間に各国へと伝えられる事になった。


……本当の事を隠したまま。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ