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ー4章ー 21話 「勇者の選択」

今から10年前。


魔王封印を成したオルセアを始めとする英雄5人は、世界を救った後、グランゼル王国の野望に加担させられるのを危惧して、それぞれが研鑽の旅と称して各地へ散った。


セリオン・アーディアも例外ではなく、彼はアステルド方面へと旅立とうとしていた。


旅立つタイミングが一番遅くなったセリオン。

彼はグランゼル兵や民からの信頼が厚く、別れの挨拶に時間が掛かっていた。


……だが、このタイミングが悪かった。


「急報!!魔物の残党がグランゼル領内へ向かっております!」


この知らせに正義感の強いセリオンは、動かざるを得なくなった。


魔王を封印したとはいえ、完全に魔物が消滅した訳ではない。

セリオンは事態の収拾に当たった後に旅立とうと考えたのだった。


この機を逃さなかったのはグランゼル・ドラクマ。


魔物を討伐して報告へ来たセリオンに対し、脅しをかけてきたのだ。


「セリオンよ、確か婚約者がいると聞いたが……彼女は元気なのか?」


セリオンは嫌な予感がしていた。

なぜこの場で婚約者の事を聞いてくるのか。


「確か彼女は下町の鍛治職人の娘だったな……あぁ、名前は……エフィナ・ローウェン。そんな名だったか」


どうやら色々と調べているようだった。


「彼女が一体なんだと言うのですか?」


「実は彼女の父親が、長きに渡り税を滞納していてな。お前のよく知る間柄ということで、温情をかけておったのだが….流石にこれ以上は他の者の目もある。国として示しがつかんだろ?」


何が狙いなのか全く分からない。


言いたい事は分かるし、確かに滞納は良くないだろう。


だがエリシアの父親は、数年前から体を壊し病床に伏せっている。

その申請も国へ届け出たと聞いている。


なのに、何故……?


「こちらとしては、彼女に肩代わりしてもらってもよいのだが……英雄の妻となる者に、そんな過去はマズいだろ?」


「何が仰りたいのですか!?」


怒りを抑えたつもりだったが、つい語気を荒らげてしまった。


「実はな。魔物の大侵攻も収まったこの好機に、ベルムランドへ侵攻してもらいたいのだ。奴らも大分戦力を削がれた事だろうしな。セリオン、お前が動いてくれるのであれば、この事は水に流そう……それは、お前にとっても、彼女にとっても最前の未来が約束される、とても良い案だと思うのだがな」


ドラクマは脅迫と言っていい条件をセリオンに突きつけた。


もしここで断れば、彼女の身が危ぶまれる。

彼女を連れて旅に出たところで、父親の身の安全は保証されないだろう。


セリオンは暫く声を出す事ができなかった。

怒り、憎しみ、悲しみ……色々な感情が目まぐるしくセリオンの中を駆け巡った。


(何故こんな事になるんだ……)


セリオンは選択の余地がないまま、仕方なくベルムランド侵攻を引き受けた。


「あぁ、それと。我が国も立て直しが必要でな。お前を国王軍統括に任ずる。ベルムランド侵攻には、錬度の浅い兵しか連れて行けないだろうが……お前の指揮なら問題ないだろ?」


もはや何も言えない状態にさせられてしまった。


経験の浅い兵士を率いてベルムランド侵攻など、自殺行為に他ならない。


その晩、セリオンはボルン商会を通じて、エフィナと父親を密かにアステルド連合国へと逃がした。


翌日セリオンは兵士を掻き集め、ベルムランドへと向かって出発する。


……もうこの地には戻らないと心に誓って。

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