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ー4章ー 19話 「近衛騎士隊長レオルド・クレイグ」

グランゼル王国から南東に進んだ先にある、ベルムランド王国。


国の後ろ側に連なる山々。


現在この山の一部から採れる鉱石類が一番純度が高く、大陸最大の鉱山として知られている。


グランゼル王国が侵略しようと目論んでいるこの鉱山は、城と城下街がその侵入を阻むかのように配置されているため、そう簡単に奪う事はできないようになっている。


ここを奪うとなれば、道はただ一つ。

ベルムランド王国を壊滅させるしか方法はない。


グランゼル王国の王、グランゼル・ドラクマは、執拗に軍事的衝突を作り出し、ベルムランドの戦力を削ぎ、長期的計画でこれを奪おうと画策していた。


ベルムランドもその事は分かっているため、どのように攻め込まれても守れるように、幾つもの作戦を長年に渡り練り上げてきた。


唯一想定外だったのは勇者セリオン・アーディアが指揮する部隊が攻めてきた事だろう。


彼は魔王封印に貢献した人物の一人。


それはベルムランド王国にとっても、世界を救った英雄と賞賛される存在。


そんな彼が鉱山を奪うために部隊を引き連れて現れるなんて、夢にも思わなかっただろう。


そんな複雑な心境を抱える国に、今リゼルは一人で魔王復活の兆しがあると、情報を伝えにやってきたのだ。


リゼルが到着すると、城門の前には十人規模の小隊が二つ、両サイドに陣取り検問をしていた。


グランゼルとベルムランドは現在停戦状態にあるが、この警備体制は侵略を想定したものだろう。


リゼルが検問の列に並んでいると、一人の兵士が近づいてきて、まだ順番ではないにも関わらず声を掛けてきた。


「おい、女。随分と軽装だが、我が国に何用で訪れた?」


周りを見渡すと、その殆どが商人や物資を運んでいる人達だった。


それに比べ、リゼルは数日分の食糧が入った袋一つ。

警戒している立場からすれば、怪しいと思われても仕方がない。


しかし今は世界の危機が迫っている……そんな事を気にしている場合ではない。


「剣聖オルセア様の遣いの者です。今世界が置かれている状況をお伝えしに参りました。是非ベルムランド王に謁見を願いたい」


その言葉に兵士が直ぐさま反応した。


「剣聖オルセアだと!?……お前、ここがどこだか分かって言っているのか?ベルムランドは、その英雄と呼ばれた一人が率いる部隊に、何のいわれもなく攻め込まれたのだぞ!謁見など承認できるわけがなかろう!早々に立ち去れ!」


当然の反応だった……勿論リゼルもその事は承知している。


その兵士の怒号は周囲に響き渡り、視線が一気にリゼルへと向けられた。

ヒソヒソと嘲笑うかのような声が辺りから漏れ聞こえる。


だが、今は世界の危機がせまりつつある状況。


それはベルムランドも例外ではない。


このまま何も知らずにいたら対策は遅れ、ベルムランド王国は壊滅的被害を被るだろう。


この兵士に話しても仕方がないのだが、何とかしようと口を開きかけたその時、明らかに階級が高いであろう騎士が二人の押し問答に割って入ってきた。


「話は聞いた。だが、王への謁見ってのは承認できないな。……その代わりと言っちゃぁ何だが、俺が王に伝えてやるよ」


騎士としての風格、威厳の中に何処か軽い……いや、人当たりの良さを感じさせる人物だった。


「しかしレオルド隊長、この者は……」


「まぁまぁ気にすんなって。……すまない、俺はレオルド・クレイグ。ベルムランド王直轄の近衛騎士隊長をしている者だ。」


幸運にも、たまたま現れた人物が、王直轄の近衛騎士隊長だった。


その立場上、王の側近と言っても過言では無いだろう。


そんな人が話を聞いてくれるとなれば、問題ないだろうとリゼルは思った。

仮に話さなかったとしても、それはベルムランド側の問題……どうするかはこの国が決める事だ。


「分かりました、では貴方にお話します」


そういって検問の列を離れ、人がいない入口付近の木陰へと移動した。


「率直に申し上げます。魔王復活の兆しが出始めています。その証拠に各地で魔物の目撃、被害が出始めています」


それを聞いたレオルドは、少し手を震わせながらそれまでの穏やかな表情を険しくした。


「……遂に始まったか」


レオルドは静かに深く息を吐いた。



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