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最凶  作者: なっしー
22/130

022 破壊神

ムスターファ視点です。

破壊神伝説…。

今から約500年前にこの世界は滅亡の危機を迎えていた。

勇者と聖女率いるパーティーは返り討ちにあい、あろうことか魔王の軍団すら叶わなかったという。


世界を管理するハイエルフは各国の王、エルフやドワーフ、権威のある魔女を招集し世界一丸となってこの危機に立ち向かう。


「破壊神にはおそらく、いかなる攻撃も魔法は効かないであろう…」

「事態をココまで(こじ)れさせたカッツネラ教国はどう責任を取るつもりだ!」

「我が国の聖女は暫くは歩くことすらできないダメージを受けている!この状況で我が国だけ責めるのはおかしかろう!」

「うちの国も勇者は恐怖のあまり外へ出てこない…。どんな攻撃を受けたらああなるのだ?」

「今更責任をなすりつけてるんじゃない!今は対策を議論しているのだ!」


ハイエルフのムスターファはその状況に溜息をつく…。


…1時間が経ったところでムスターファは両手を叩き注目を集める。


「解決する方法が一つある!」


皆が一斉にどよめく…。


「皆承知の通り世界の危機なのだ。どんな事でも協力するかね?」

「…、わかった」

「では破壊神を今後世界管理者と同等、若しくはそれ以上の地位に置き各国トップは破壊神にひれ伏すように。絶対者に対して中庸(ちゅうよう)は無い!」

「なんだ…と⁈」

「破壊する対象が管理する対象になればこの世界は残るだろう。もちろん反対すればその国はどうなるかわからないが?」

「「「「「っ!」」」」」

「我が国は主神以外を認めることはできん!」

「…ならばカッツネラ教国は滅びの道をいくということですね?」

「…いや、しかし…」

「そもそも、カッツネラ教国が破壊神を倒そうとしなければこんなことにはならなかった!」

「っ!そうだ!ムスターファ卿!お主も不老なのだからどうにかならんのか!」

「私の場合は種族的なものが大きいので参考にはならないだろう。そしてほぼ『不老』ではあるが『不死』ではない。かの者とは根本が違う」


そう、根本が違うのだ。彼女はただの『不老不死』ではない。彼女の主張が正しいならば彼女は『接触者』、いや『神に愛されし者』なのだ!そんな彼女何かあれば本当にこの世界は神に見捨てられる!


「とりあえずかの者とは私が交渉しよう!かの者に世界を委ねる事でよろしいかな?」

「「「世界管理者であるムスターファ卿に一任する!」」」



「…ということなのですが、如何でしょう?」

「フザケるなっ!そんなめんどくさいコトなんでやらなければならない?」


彼女は眉間に皺を寄せる。


「そもそも、勇者だの聖女だの魔王だのがいきなり襲いかかってきたから撃退しただけだし…。まあ、いい加減しつこいからチョット本気出したけど…」

「それについては申し訳ない」

「いきなり破壊神呼ばわりされた時はマジでムカついたけど!」


そうなのだ。今回の件カッツネラ教国が他国の信者を中心に扇動して、破壊神認定をするコトで彼女を倒して不老不死の法を手に入れようとしたのだ。宗教国家はタチが悪い…。


「それなんですが、貴女を今後『天魔の魔女』とお呼びし、世界の管理者として働いて頂きたいのですが…」

「そんな称号も仕事もいらない。今後私に関わらないで欲しいだけ!」


うーん、ここら辺が落とし所…か?


「ならばユキ様、私達は勝手に『天魔の魔女』とお呼びします。いつまでも『破壊神』ではダメでしょう?また、ユキ様は世界中の国をフリーパスで何処へでも行けるようにしましょう!その代わり、私の、『世界の管理者』の依頼をたまに受けて頂きたい」


ユキ様は顎に手をあてて考えている。

いい感触だ!


「如何ですか?今よりも行動が自由になりますが?」

「わかった。それで手を打とう!」


それから私とユキ様の長い友情の歴史が始まったのさ。



訪れたユキ様は不在だったので、弟子のマールさんと超存在のミクさんにそんな話をしていた。2人?は私の話を聞き入っっていた。


「だから『破壊神』ってキーワードは禁句だからね!」

「そんなコトがあったんですね!」

「ユキサマ、カワイソウデス」


ん?嫌な予感が…!

部屋の隅に空間の揺らぎができて…


「ム〜ス〜タ〜ファ〜!」

「やあ、ユキ様!お早いお帰りで…!私は急用がっ」


私も転移して逃げ出す。

危なかったっ!

とはいえ、超存在の様子は大丈夫そうだし…。

マールさんの眷属化が気になるところだが…、今はまだなんとも言えない…。

とりあえず、今度ユキ様のご機嫌うかがいに美味しい物を持っていくか…。


ムスターファ、懲りぬヤツ。

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