011 光の塔
光の塔はデートスポットとしても観光地としても有名です。
カッツネラ教国の中心にその塔はそびえ立つ。
カーツ教会総本山の光の塔である。中は教皇、枢機卿、大司教、司祭の居住区なり職場だったりなのだが、夜になると白く輝いて見えるのでついた名が光の塔である。
この国は宗教国には珍しく、国の運営は議会が行い、聖職者は国の運営には関わらないらしい。
と言ってもこの国自体信仰の中心なので自ずと政教一致となってしまっている。
そんな国の裏路地をフード目深に被った外套姿の2人が目立たぬ様に進む。
「先生はこの国で結構嫌われていますよね」
「私もあまりこの国は好きでは無いのでお互いさまかな?」
宗教国にありがちなのは、自分の信仰以外の考えは認めないのである。
私の場合、高次元の存在を知っているので人が創り出した神は到底信じるコトはできないし、世界樹の影響で『不老』のコトも輪廻から外れているとかで敵視されている。
そのクセ『不老』の秘密を独占するなとか言ってくる訳の分からない連中である。
昔は暗殺者を向けられたコトもあったし…。
「まああまり長居はしたくないかな?」
「そうですね」
大通りに出ようとする所でお約束のチンピラ2人である。
「おっと、ココを通りたければ通行りょ」
ドスンっと2人は道に倒れる。
めんどくさいので『昏睡』を放って先を急ぐ。
「聖都といっても治安は悪いのですね」
「まあ、人が営む以上善人だけでは成り立たないのさ、…と、着いたぞ」
光の塔である。
結構列の長い1階の受付に並ぶ。
総本山といっても教会であれば懺悔なり相談なり洗礼なり民が多く参集している。
私達の番になり受付の司祭に用向きを話す。
「フーシェ村のユーリとマゼンダです。フラウ大司教にお目通りをお約束しています」
「少しお待ちを…、ああ、ありました。32番の告解室をお使いください」
「…わかりました」
教会にくるものが皆身分証を持っているとは限らないので、偽名も使いたい放題である。
指定された告解室に入りしばらくするとフラウが来た。
「ユーリ様、マゼンダ様お久しぶりです」
告解室とはいえ光の塔の内部なのでフラウは偽名で私達を呼ぶ。
この男『影』の1人で内偵調査をしているのだ。
いくつかの書類を受け取り…。
「聖女が外遊中か…、新魔王に対しての動きは特に無いか」
「ハっ、最近は新勇者探しもしていない様です」
いくつかのやりとりをしている間、マールは『静寂』の魔法を行使している。うむ、関心関心。
「地下の方も変化は無いな?」
「特に変わったコトはございません」
光の塔の地下は「封印の地」になっている。
これが今回の訪問の目的である。
「…光の塔の下から神や悪魔が出現したら笑えないしな」
「考えるだに恐ろしいです」
「そうやって変なフラグを立てないでください!」
特に問題は無さそうなのでとっとと帰るとしよう。
司教、大司教ならともかく枢機卿や教皇あたりには顔バレしてるし…。
読んでくれている人がいるというのはモチベ上がります。




