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第12層「船旅~義手と魚釣り~」

「ふわぁぁぁ~~~~」


 見張りやデンの義手を作るという作業で溜まった疲労からか、はたまた繰り返される朝の悩ましい日課による寝不足のためか分からないあくびをしながらも一旦休憩のためにと、テーブルに置かれた飲み物を手にして口に含む。


 今朝取れたてのそれは、とても喉越しがよく生産者のティニいわく『栄養満点で健康にもいいので私みたいな希少族はそういう意味でも重宝されるんですの』という言葉通りに目が覚めていき、それに感謝してまた作業を再開する。


 ここ3日でやったのは、ソウリョの力を拝借して自分の腕を参考に、手の動きとかの原理を知ることとそこからどうやって動かすかということ、そのための構造作りといったことなどに時間を費やされていたのだが、現在はそれらのまとめに入っていて今の工程が終われば、いよいよ錬金術式練成(アルケミクリエイト)を用いた義手製作に着手ができるといった段階だった。


 非常に面倒な工程を経ているような気もするが、これが身を結べばラウンジ内で働いている奴隷達で腕や足がないものたちにも作ってあげられるということを考えれば今の苦労も、この話を引き受けたことも良かったのかもしれない。


 まぁ、代わりと言ってはなんだが......毎朝のティニの乳搾りに付き合わされることとなぜかアラーネが魔力暴走抑止(へその下にくちづけ)行為前に、あえて胸まで出しては意味のない開脚をしたり、迷宮空間内にも関わらず護衛という名目でそんなアラーネへの行為の時に毎回付き合うオーリエも、まるでアラーネに対抗するかのようにどやーとその超乳をつきだしてきたりとここ最近は、特に自家発電がはかどって仕方ない毎日であった。


 オーリエはともかくとして、アラーネの気持ちやらティニの純粋な気持ちとかには感謝したいところだが、ぶっちゃけやりすぎだと思えなくもない出来事の連続である。




「さあて、できた」


 俺は細かい設計図のようになってしまったそれを掲げては改めてそれを見た。


 錬金術師の側面を併せ持つ俺としては、ただの義手じゃつまらないと試行錯誤した結果に生み出された義手である。


 そのための俺の腕の犠牲はいかほどのものか、試作数はおそらく数百くらいにも及ぶことになると思う。だがそれが実を結んだことで完成された義手工程は、いよいよ改造された義手とこの設計図とを錬金術式練成(アルケミクリエイト)で組み合わせるだけとなった。


 構造としては、シンプルにしている。

 一般的に動かす分には神経と骨をつなぎ合わせれば問題ないし、そのためにわざわざ自分の腕を使っての試作という積み重ねがあるからだ。じゃあ何に時間を費やしたかといえば、主に追加された戦闘用という分野での話である。


 元々うまくいっていたものに対して、さらに何かを追加させるというのは並大抵のものではなく戦闘用に動作させるための開閉式の部分から動力となる魔石を収納するスペースまで一つ一つ丁寧な作業が必要になったのは言うまでもないことだった。


 奴隷達で片腕とかの場合は、それぞれにカスタマイズされた純粋なる義手となるのだがデンたちの場合は、イシャがこういう時のためにと取っておいたこともあるので直接元々の腕を改造する形で作り上げたので、1からに比べれば随分と作業が軽減したのは言うまでもないことだった。


「よし、じゃあ早速――錬金術式練成(アルケミクリエイト)


 発動すると、彼等の義手と設計図が光に包まれるとじょじょに合わさっていき、やがて1つの義手が生み出された。


「あとはこれを彼等に繋げば完成だ」


 最後の工程は、接続となるがこれは彼等の皮膚をイシャに摂取してもらってイシャの力で皮膚を増幅したものを使用しての連結をさせることで完成となるので、船内連絡用でそれっぽく作った連絡管を開いて問いかけた。


「あー業務連絡、業務連絡。デンたち牛人族の義手接続希望者に告ぐ。義手が完成した。取り付けるので、俺の作業部屋へと集合されたし、以上!」


 そうして意味もなく、連絡管にビシっと敬礼をしていると――


「......宵闇様?その手を水平にさせて左の眉毛に押し付ける所作は?」


「あ......」


 そういえばこの場には、義手の技術も教わりたいとしてリリィがいたことに今更気付いた。


「い、いや~これは~......そうだ!訓練だよ、訓練。ほら、俺の生まれた地ってのはさ、地震が多かったからそういう訓練に事欠かない習慣があったんだ。これはその頃の......所謂名残という奴で......あ、あはははは~~」


「どのような危機的状況下にあってもそういった考えをお持ちとは......さすがは宵闇様ですわ!」


 と、リリィは感激しているがただのごまかしであるため純粋な彼女を騙すことになったそれについて少し胸が痛んだのは言うまでもないことである。


 しばらくすると、立ち上がって船内活動の手伝いをしてくれているデン率いる牛人族の面々が扉を開けて入ってきた。


「迷宮主殿、義手が出来たとの連絡を受け参上した」


「お、じゃあ順番にここへ座ってくれ」


 手始めにとデンが座ると、俺は義手接続口に手を当ててある力を拝借する。


「ソウリョ・シナプス」


 光ったと同時にそのまま逆の手でナイフを取り出すと、皮膚に覆われた部分を切り取った。


「ぐっ......!......ん?痛くない?」


「神経をこちらで支配しているし、今は痛覚を麻痺させてるんだ」


「な、なんと......そのようなことまでできるのか」


 関心するデンを置いておき、俺はナイフを義手に持ち替えると生々しく剥き出しとなった接続面の神経部分と義手を繋げる作業に移った。神経をそれこそ針の糸を通すよりも難解である作業に要する集中力は額に汗をしての作業となるが、リリィがそばでちっちゃい手に乗せられたハンカチで拭ってくれるため安心して作業を終えることができた。


 神経をつなぎ合わせたら、むき出しのままだが指示する指を動かしてもらいながら進めて骨、皮膚と全ての作業というか手術を終えるとどっと汗が噴出してきた。


「ふぅ~~~。ありがと、リリィ」


「いいえ、宵闇様」


 そう声をかけると、健気にまた噴出した汗を拭ってくれるリリィ。


「こ、これで......できたのか?」


「さっきは指一本ずつとかだったけど、念のためにぐっぱーしてみてくれ」


 ぐっぱーと言うフレーズは理解できなかったようだが、俺が自分の手で教えるとそれに従ってやってみた。皮膚の色に多少の変化が見えられるものの、元は各々のモノだし問題なく機能しているその義手に他の牛人族たちも歓声のようなものが上がる。


「"普通に使用する"分じゃ特に制限なく動かせるはずだ。さあて、ちゃっちゃと残りの3人の分を接続するから順番に座ってくれ」


「は、はい!」


 と、次々に俺は義手を接続していきやがて全員分の義手を接続し終えた。


 誰も彼もが、戻ってきたとも言える自分の義手に感動をしているようでしきりに感謝を伝えてきた。


 俺といえば集中の連続による疲労感が半端ない状態だったが、まだ試すこともあるので気を抜かずにいた。


「本当に、ここに至るまでの間に受けた恩の数々......ただただ礼を言うことしかできないのが心苦しい」


「そこまで感謝してくれるんなら、いっちょ頼まれてくれないか?」


「我らに出来るならいかなることも」


 俺はその言葉に頷くと、敷設されている手作りの棚の引き出しからあるものをデンに渡す。


「これは?」


「大陸外にでちまったから、迷宮とのやり取りができないからな。まぁ現状をしたためた手紙とお前たちに施した義手に関しての資料なんかが入っている封筒という奴だ。うちの働き手の奴隷たちの中にもお前と同じように四肢のどれかを失くしてるのもいるからその治療用にだから、迷宮挑戦ついでに頼むぞ」


 彼等の予定を一緒に食事している時に聞いたのだが、どうやら中央大陸へと戻ったら、迷宮に挑戦して実力を伸ばしつつも、より組織に貢献できそうな魔法の武器やらを得ようと目標を持っているようだったのでそれならばと彼等に頼むことにしたのだ。


 デンはその言葉を聴くと、しっかりとにぎしめてたまわったとだけ伝えた。


「あとは......ああいうピアス野郎にも対応できるようにとその義手でできることなんかも追加しておいたから、ちょっと付き合ってくれ。リリィはどうするんだ?」


「宵闇様が教えてくださったことをまとめるために海風を受けながら船上に移動して自習をいたしますわ」


 そういってよいしょと飛び降りるようにして椅子から降りると、彼女用の扉を開いて出て行った。


「じゃあ、デンたちは一旦各々の武器を取ってきてくれ」


 俺の言葉で分かったという了承とともに、武器を取りに言った後にまたここで集合をして船の中に設えた鍛錬場に移動した。




「それじゃ説明させてもらうぞ」


 その言葉とともに順番に説明していった。


 魔動義手は、その義手の動脈が通る部分に魔石が設置されている。

 先にも述べたように開閉式であるため、外から魔石を入れ替えることも可能だ。


「魔石とは......あの迷宮内に出る魔物から手に入るもののことか?」


「そういうことだ。で、それらはただの魔力の素としての力しかない。じゃあどういう部分が追加されたのかというところだが」


 そうして俺はダミーというか試作の義手を手にあることを念じる。


「――戦闘手段バトルギア


 すると、義手全体が光り、それはやがて義手全体を赤いコーティングがなされたかのような状態となった。それを見ていた牛人族たちも驚きの声をあげる。


「人族に限らず生き物には、各々が属性というものを持ち合わせているらしい。俺は、訳あって無属性だからちょっと魔法の力を借りて発現しているだけだけどな。今お前達につけている義手はそれらを魔石の魔力を抽出する形で対価にして各々の属性の力を発現することができるってわけだ」


「それが、迷宮主殿の言う追加というものか」


「ああ」


 試してみろと俺は、ポーチから素材を出して造形型の迷宮魔法を発動させる。


土人形造形ドドールクリエイト


 すると、手に持った粘土状の土が人型へと造形されていき土人形へと変わっていった。


「この人形に各々の武器で、俺が言ったように戦闘手段バトルギアと念じながら攻撃してみてくれ」


 俺の言葉に頷くと、まずはとデンが先頭をきるように武器を構えた。


 そして俺と同じように戦闘手段バトルギアと発動させて赤く包まれると、そのまま手に持った両刃の斧で土人形をなぎ払う。すると、赤い義手から両刃の斧へと伝わった光から火を噴出して、さながら"燃える斬撃"となって土人形は容易く切り裂いた。


 両断された後の土人形はきえることなく、そのまましばらく燃えていた。


「こ、これは......」


「デンは火属性ってことか。じゃ、次な」


 彼の驚きをほおっておき、俺は残りの人数分の土人形を創造させていく。


 結果から言えば、2人が同じ火属性で残りの1人は風属性というものだった。


 レッド主族......だったか、火と親和性を持つものが多数だがやっぱり血の遺伝的なものによっては、今のように風という結果もあるのを知れてよかった一幕である。


「ちなみに、その魔石ってのは基本は迷宮でしか取れないからな?」


「つまり、この力を使うならば迷宮に是非とも通わなくてはいけなくなる......迷宮主殿とはなんとも意地が悪い」


 呆れるような納得したかのようなそれに俺は笑って答えた。


「俺は迷宮創造主。迷宮の利益に絡めるのは当たり前のことだ」


「ふっ、確かにな。この力があれば迷宮までの道程にも困らない。その"ふうとう"とやらの届け物はまかせてもらう」


「おう、よろしくな」


 そうして彼等とのやり取りを終えた俺は、船上に出ることにした。




「順調......そうだな」


「入れ食いも入れ食いだ。改めてなんだと思うぜこの釣竿はよ」


 俺が作った単純な返し付きのただの釣竿だが、こちらの世界じゃ珍しい釣竿らしいが、それが良かったのか、餌としてポーチに入れておいた迷宮"集落"産の小麦で作られたパンくずがよかったのかは分からないが順調な釣果を発揮していたのでよしとしようと思う。


 釣果の結果は例を挙げるとすると、見た目完全にスズキだが体長が1mとでかいスズキだったり、見た目完全に鯖なのに体長がイワシくらいだったりとあちらの世界とはなんかあやふやな感じの魚がほとんどだった。


 マグロが1cmしかないなんて、絶対に間違っているとしか思えないし、軟体系の不思議な魚も釣れたが、食べてみた感じ味がカニっぽいものとかもあるなど異世界パワーをまざまざと感じられたというものだ。


 そしてたまに魔物も釣れるときがある。

 唯一、そこらへんの知識がありそうなジャックスからすれば海の魔物とは陸の魔物とは違い、そもそも魔物狩りがわざわざ海に潜ってまで狩ることはなく、そのくせ下手な大陸よりも大きい海ということもあってその種類と数は多いとのことだった。


 そんな中で、魔素に犯されて魔物化したらしいシーグルというまるでイルカに一角獣のような角を生やしたかのような魔物だったり、シーモンという海の中に住むという海猿の魔物なんかも現れたので討伐後にそれぞれ港町に着いてから売ってみたり、錬金術の素材として使用してみる予定である。


 また船上だけに現れるだけではないらしくたまに船が揺れるので、船底などを水中監視眼シーイービルアイで確認すると船底から崩そうと攻撃を加えようとしているようだが、対策のための魔道具によって駆逐されているので今のところ問題はないようだった。


 そんな船上に出ると、先ほど入れ食いだと騒いでいた釣りと見張りというダブルな任務に就くジャックスに、鍛錬以外の暇つぶし目的で同じく俺お手製の網で漁をするパワフル担当のアベさんと様子を見ながら私もやってみたいヨ?オーラを放つ舵担当のオーリエ、そして船上にテーブルを置いて優雅にお茶を飲みながらも俺が渡しているノートと資料などとともに勉強に勤しむリリィの姿があった。


 アラーネ、ティニ、デニアの3人は夜番に備えて今は眠りについている。


 こんな感じで進んでいた順調すぎる旅は、やがてある一つの樽をジャックスが釣り上げるところから新たな展開へと向かうのを、このときの俺は未だ知る由もない、それは東大陸に着く前の6日目午後のことだった。

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