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第11層「船旅~今後の計画と新たな一歩~」

 さて、そんな母乳の話を終えて落ち着いたところで、デニアから"あ、そういえば"と言う声が聞こえてきた。


「迷宮主、兄上が目覚めて、あなたに礼を言いたいってそれを伝えるためにここにきたのよ」


「別に俺は――」


「いいからきなさい!」


 そう言って強引に手を取って俺をデンたちに割り振った部屋へと引きずるように連れ出していかれた。


 やがてデンたちの部屋扉の前まで来ると、一度ノックをして応答が返されて失礼しますとデニアが告げて中にそのまま引っ張られた入った。


「兄上、迷宮主を連れてきたわ!」


 俺は、デニアのその言葉によってベッドの前に手をぐいっと引っ張られて立たせられた。呆れると言うか、呆然とする牛人族一同。


「......だからお前と言うやつは、こうしてもらっている相手に対してこんな強引に手を引っ張ってくるなとあれほど」


 そんなことを呟こうとするデンに俺は待ったをかけると話しかけた。


「まぁそれは後でやってくれ。で、どうなんだ?調子は」


 俺の言葉にデンは起き上がろうとするも、デニアによって押さえつけられる結果となり本当にすみませんと言った表情を浮かべる彼等にはさすがの俺も同情をせざるを得ない心境だ。


「重ね重ね、迷宮主殿には度重なる無礼な態度と......我々の傷を癒してくれた恩について誠に感謝に絶えないと思っている」


「いや、いいって」


 俺の言葉にほっとしたのか、続けてデンが話し出す。


「ご覧の通り今は体力回復ということで、安静に過ごさせてもらっているが迷宮主殿の部下というイシャ殿のおかげで明日にでも問題なく動けるようになるということと聞いた」


「そっか」


 そんな軽い返事にも気を悪くすることなく、デンは話を続けた。


「本来であれば我々が迷宮主殿の下へ出向きと思っていたのだが、妹がそれならば連れてくると話を聞かずに言ってしまったためこのようなことに......」


「......ああ、それは大丈夫だ。もう嫌と言うほどに性格が分かってしまったから」


「本当に申し訳ない......」


 こんな猪突猛進的な妹を持ったデンに俺は同情的な目を向けてしまうとともに、がんばれという声援を送りたいと思う。


「改めて、我らが受けた傷を癒してもらっただけに留まらずこうして寝る場所も与えてもらったことは感謝の念に耐えない。今はただ感謝を述べたいと思う。心からの感謝を」


 そうしてベッド上でもできるらしい最上の彼等の礼とやらを受けた俺は、気になったこともあったので聞いてみることにした。


「......その感謝の気持ちを返してもらえるという意味で少し聞きたいんだが、あいつらはお前らと同じレジスタンス組織に属しているだろ?でも、お前らはピアスをしていないが、あいつらはピアスをしていた理由ってのはなんなんだ?」


「ああ、ピアスのことか」


 俺の質問に少しふむと少し躊躇するような仕草となるが、デンはこれも恩に報いるためとして語りだした。


「本来であれば組織の内部的情報を開示するのは、ルール違反ではあるが......おそらく知っているものも多いと思うので帝国に住まうものなら知っている事情を話させてもらうと――」


 そこで語られたのは、つまり亡国の亡者共アン・レジスタンスの実態のようなものということらしかった。


 現在の盟主にして設立の立役者となった"聖女"と呼ばれる二つ名を持った旧・レーデルハインド公国という小さな国の王女だった『アンソワージュ=レーデルハインド』が作ったレジスタンス組織は当初、そのレジスタンスという名に相応しく亡国を再興させるという目標のための帝国打倒を誓い、地下活動をしながら帝国の弱点となる部分の調査、作戦によって帝国へ奇襲をかけるといった活動ができていたという。


 しかし近年ではレジスタンス活動にふさわしくない――例えば、酒場でレジスタンスに属すという名目での酒代踏み倒しや、一般人への暴力や強奪といった盗賊まがいの行動を行なうものが組織内でも増えてきたということらしかった。


 そのため、盟主のアンはある作戦によって基準を分けることにしたようだ。


「それが、ピアスのあるなしってことか?」


「ああ。ピアスをつけていればそれは過去にそういった乱暴や、反レジスタンス的活動をしていたという証拠となり、人目見ればそいつがどういう奴かを知ることができたためレジスタンス内でも明確に区分けができるようになったし、レジスタンスの意義に反するとして処罰をやりやすくなったことで改善しつつある状況であった」


「改善しつつあるって......それじゃ改善はまだできてないってことか?」


「改善どころか......より悪くなったと言ってもいいだろうな。同組織の同胞をそのようなもので判別、区別するというのはどういうことだと声をあげたものによって組織は真っ二つに、な」


「なるほど」


 俺が永世中立的な視点で考えていたことが間違いじゃないことが証明されたかのような事態であるのは察することができた。やはり組織やらそういうのに関わらないほうがよさそうだというのはこれである程度実証できたことになる。


「ピアスのことについて聞きたかったのだろう?ならば、このくらいで勘弁してもらいたい」


「ああ」


 違う組織に首を突っ込むとロクなことにはならないと理解したし、俺から突っ込んで行くこともないので話はそれで終わった。


「それで......こちらも聞きたいことがあるのだが」


「なんだ?」


「この船はどこへ?」


 そういえば言ってなかったな。


「東の大陸の......海図とリリィの記憶を元にした地形としては半島っぽくなっているところの内海へと今は向かっていると聞いた。えと――」


 俺はポーチから書き写した海図を取り出すと、広げてデンに見せる。


 そこには東の大陸全土ではないが、大陸の西沿岸部が書かれている。

 大陸の形というか、向かっているところを一目見て思ったのは、日本の千葉県――房総半島をくるりと真横へ反転させたかのようなイメージを思い浮かべた。


 その半島から沿岸部の南は東京湾をさらに抉ったかのようになっていて、東の大陸にある港町というのはその湾内にあるということらしい。


「お前らを乗せたのは、デニアが自ら介護したいという希望を考慮してのことだし、あっちに着いたら港の船に乗って中央大陸まで乗せてもらって引き返すといい」


「......そうだな、何から何まで世話をかける。それにデニアにも感謝する」


 その言葉にデニアは、腕を組みますますプイっとあらぬほうを見ているが顔は赤いのでどうやら照れているらしかった。


「この船はだいたい1週間で着くらしいから、それまで自由にしててくれ」


「この腕では自由もくそもないがな」


 千切れかけに等しかった腕は、イシャによって千切られると表面を皮膚で覆う治療をして対処したため、今は4人ともが片腕がない状態となっていた。

 

 ポーションでの治療はさすがにそこまでの重症には効果がないので、そういう処置をしたとのことだったが多分ジョイやソウリョがいれば、あいつらの力で元通りにはできたと思う。


 結果的にイシャしかいなかったので、腕を切り落とすという対処しかできなかったのが俺としてもなんとなく悔やまれるものだった。


 だがそんなことを言っても始まらないので、俺は当たり障りのない返しをすることにした。


「......ま、恨むならあのピアス野郎を恨むことだ」


 そう言って、俺は安静になと告げて用はもうないということもあり部屋から出るのだった。


 地図を見ながらも、甲板へ出るために入港した後のことを考える。


 ひとまずリリィたちが住んでいたとされる南にはとても大きな湖があり、リリィや彼女の仲間の記憶からすると自らは西へと逃亡をして3日ほどの地点で囚われの身となり、4日ほどで沿岸を見かけたといっていた。


 そこからそれを辿るようにして、半島を回るルートで最終的に湾内にあるという港町から船に乗せられたということだ。


 俺達のことはそこで聞いたらしく、計画の立案は船の中でということらしい。


 この海図は海図らしく内陸が全く乗ってないが、港町に着けばおそらく湖の情報は集まるだろうと思うので俺達はそれに賭けてまずは港町へと航路を進めている。


 そんなことを考えていると、ちょっと待ちなさいよ!と元気にかけてくる牛人族一のツンデレ女・デニアがデンの部屋からこちらへやってきた。


「なんだよ?」


「あ、あの......」


 そうしてもじもじする姿になんていうか少しグっときてしまう愚かな俺自身になんとも言えないものを感じるのだが、こちらもこちらでやることがあるという思いから再度問いかけると、一度目を瞑ってよしっと気合を入れると言い放った。


「頼みがあるの!あ、あの......ティニの喉もどうにかできたんだし、兄上の腕も......そ、その......なんとかできるんでしょ?だ、だからなんていうか......あーもう!あたしの体どうにでもしていいから治しなさいよ!」


「......」


 ポカーンとする俺に、デニアは腕を組んでフンとあらぬほうを向いた。

 あまりのその頼み下手というかそういう意味でのポカーンなのは言うまでもない。いや、それよりもだ。


「......なぁ、この世界の人族ってのはまず取引に自分の体を提示するってのは伝統か何かなのか?ティニもそうだったし」


「だ、だって......男って結局、そういうことしたいだけなんでしょ?」


「......あー......。............はぁ~~~~~~~~~~~」


 俺はなんとも言えない長いため息を吐いて考える。


 まぁ、おそらくだが俺もこんなトラウマがなければそうだろうとは思う。


 オタクの話から30歳まで我慢すれば魔法使いになれるとかっていう都市伝説を聞いたことあるけど若い美空である今の俺がそれくらいまで我慢できるかといえば出来るわけがない。デニアやらティニは上玉ともいえるほどのスタイルをしているということもあるけれど。


 それにどこの世界であっても、まず先に来るのは金か女かってものだろうというのはなんとなく理解できる気がする。


「いいか、俺は――」


 俺が自分のトラウマを教えた上で断わろうとそう口を開いた瞬間のことだ。


「迷宮主様ぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~」


 何事だと思った俺が振り返ると、あちらからその豊かな揺さぶりを惜しげもなく見せ付けながらも駆けてくるティニの姿があった。

 見事ともいえる光景に俺は呆然としていると、ティニは容赦することもなく俺の頭をかかえこむかのように抱きつきながら俺へ言い放ってきた。


「迷宮主様、お聞きしましたの!妹様のこと御可哀想に思いました......それに女性にトラウマまであるなんて!......初めてとは言え、私は祖母から夜の業を教えられておりますので、どうか迷宮主様のトラウマの克服のきっかけとなれば私を喜んで――」


「ちょっと待ちなさいよ!」


 そう言って俺をティニから強引に引き離した。


「あら、デニアちゃん?......はっ!もしかしてデニアちゃんもお聞きしましたの?それならば、2人で!」


「だから待ちなさいって!どういうことよ!?」


 そんなやり取りの後に、ティニからデニアへ何かをぼそぼそと伝えられた。


 誰だ、俺が話していいよとも言ってないのに語ったのは......。


 ふとそんな俺の後ろに見知った気配があったので、振り返ると――


「ガウ!」


 右手をシュタっと挙げたアベさんの姿があった。


「あ、アベさんかよ!」


「ガウガウ~」


 あとは若いもん同士で~と手を振って去って行くアベさんに俺はただ何も言えず見送ることしかできなかった。


「迷宮主!話は聞いたわ。その年で女を知らないなんて、不憫でしかないわね!」


「うるせえ!」


 あっちの世界じゃ俺くらいの年でも女を知らない人なんてごまんといるんだ。

 という思いは当然口には出さない。


「ま、でもそれなら話は早いわ。兄上の腕を治してもらう代わりにあたしが相手をしてあげるから治しなさい」


「迷宮主様!私もご協力を!」


 さあさあさあさあとでも言うかのように迫る2人に俺は結局、デニアとの取引は武力で、なぜかティニとの取引という名のトラウマ克服方法は毎朝の乳絞りでという取引を交わすことで俺はしぶしぶデンたちの腕やらを魔道具で作ることとなってしまうのだった。

アラーネのヘソの下に口づけを。に続いて、

ティニのもにょもにょを毎日揉むという1歩を踏みしめることに。


作者からすれば、爆発しろです。

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