第5層「旅路のとある出会い」
――バシンッ!
「ぐはっ......」
ドサっという音とともに、吹き飛ばされた俺は超回復によって自分の体が癒えるのが分かる。現在、俺は鍛錬の最中でその組み手はアベさんだった。
避け方、それから守り方という後衛職においてもっとも大事な部分に集中したおかげで殺すつもりのアベさんともようやく組み手――いや、攻撃を捉えられるほどのレベルとなっていた。
......ま、それでもアベさんには5Gほどの重力がかかっていて、の話だけど。
あの頃――エウレシアの町へと向かう前の時よりも、毎日毎日とサボることもせずにポーション中毒にでもなりそうなほどの激しい鍛錬による効果は目に見えて上がっていった。攻撃に関しては相変わらず素人も素人だが、回避と防御に関しては自慢してもいいというほどに磨きをかけたおかげと言える。
アベさんの攻撃というのは、爪や体当たりという野生的な......つまりは、魔物との戦いにおいて参考となるし、人型との戦いはジャックス、オーリエが理想的な鍛錬はやってても面白いものだった。
そんな鍛錬途中に吹き飛ばされて、着地をした俺は緊張感から一時的な弛緩によって全身から吹き出る汗を拭いつつもまだ体力は大丈夫かと様子を見ると、まだ問題なさそうなので構えようとするもアベさんが何やら手を振っていた。
「え?まだ、できるよ?」
「ガウガウ」
なんだろうと、アベさんが熊手で差すほうを見るとそこにはジャックスとオーリエの姿があった。
「......時間だぜ」
「タクト、順番だヨ?」
ああっと、俺は壁掛けの時計を見るともうすでに鍛錬時間を10分ほど超過していたのに気付いた。
この鍛錬時間自体は、2時間というルールが適用されていてジャックスとオーリエもそれらに従って御者台で見張りをしている。今はアラーネの番か。
俺は、そう判断して悪い悪いと声をかけて、休憩スペースへと移動するとタオルで顔を拭いつつも整理運動となる屈伸や体のほぐしを行なうと、飲み物を片手に自分の部屋へと向かうことにする。
これからは、昼食を取った後の錬金術研究だ。
色紙と呼ばれるもの、それは前にも作られた。
しかし前に作られたものではあのラーレンのときのように相手に通じない場合を考えるとそれらは進化させていかなければいけないものである。
そういった考えから現在でも研究を重ねては、今の成果である専用武器"武紙2色紙"が出来上がっていた。
ちなみに現段階での2色紙は、主に水に特化させている。
性質は反発と吸収だ。反発にかかろうとした経緯は後々大陸を越えての迷宮を作る上で水に溶けずに活用できるかもと考えてのことだ。
つまりは、紙で船を作るという考え方。
これは俺の迷宮創造の力を合わせれば、耐久性など無視して行なえるという考えからくるものだったのはいうまでもない。
残る1つの吸収性は、たまたまキッチンペーパーを使って揚げ物を吸い取っていた時にパっと思いついたものだ。水属性であるところの洋上移動における相手の水属性攻撃を吸収することで回避できるんじゃないかという発想に繋がったそれらで研究が始まった経緯がある。
1年を要して作られた2つの色紙は、主に水色の吸水効果の紙と青色の反効果のある紙で完成させた。
水色紙は主にきっかけとなったキッチンペーパーとトイレットペーパーが使われており、青紙はインクジェットプリンターというラベルで防水といった書かれ方をされていたのでそれと、こちらの接着効果がある草を小人族から分けてもらってそれも混ぜて作ってある。
ちなみに応用の形で、月の者というジャンルのためにレティとジョイから提案という形で水色紙と青色紙とで作られたそういう"品"も現在は魔動自販機、D.C施設問わずに流通させたのは言うまでもない。
というか、どれくらいが理想かとかはもちろんこの2人を通じて折衝を繰り返して後に思いついた『なぜ、エロナにまかせなかった』というのを後悔したこととなった。
さて、そんな色紙は現在は他の色紙についての研究をしているところだった。
1年ほど、競馬場作りとともに平行して作られたそれに比べれば課程として経験できたこともあってスムーズに研究はできているのは僥倖と言えた。
「7色もできれば......俺としても満足なんだけどな」
と、いう愚痴を言いつつも俺は自分の長所で短所な集中力を切らさずにその後は一言も話すことなく研究に没頭をするのだった。
「タクト、着いたぜ」
鍛錬、研究とを交互にして時にはアラーネのヘソに口づけを交わすこと3日目。
最初の陣構築場となるところへとやってきた俺は、ジャックスの言葉に分かったと返して馬車を降り、背筋を伸ばした。
辺りは木が茂っているところで1歩外に出れば、すぐに街道に出るところだ。
中継地点というのはもちろん、だだっ広いところへ堂々と張るものじゃなく木を隠すなら森の中とでもいうかのようにそういう隠しやすい場所に構築するものである。しかし、あまり生い茂ったほうまで移動して構築するのもあれなので、木で生い茂る入り口辺りにと決めておいた。
「さて、やるとするか」
と、声に出して囲いを作ろうとした時、馬車のようなものが街道からこちらへと急ぎ足でやってきた。
アベさん、オーリエ、ジャックスといった護衛陣もいち早く気付いていたのかそちらを見ていて、アラーネはアラクネちゃんを抱っこしながら馬車の扉から様子を伺っている。
馬車が目の前で停車して降りてこちらに近づいてきた者たちは、帝国領からやってくる挑戦者に近い格好で誰も彼もが外套からちらちらと覗くそれを見るに、若々しいというかまだ14~15くらいの容姿に見えた。
相手が例え誰であろうとも、という俺は指揮棒を羽織の内に忍ばせて警戒態勢を整えた。
「迷宮主の一行......だと見受ける。相違ないか?」
そうして先頭に出てきて、外套を外して素顔を晒したのは牛の角を持ち、耳も牛耳っぽいものを身につけたかのような青年の顔と、たくましさを感じさせる
体躯を併せ持ったイケメンの部類に入る獣人族の青年だった。
順に外套のフードを外していく者たちも青年と同じような容姿なので、この連中はおそらく牛人族と呼ばれるものらかと判断した。
「......ま、ずっとそれだと確信してつけてきたんだろ?」
俺の言葉に、牛人族の青年は気付いていたのかと呟いた。
本音を言えば、俺は気付かなかった。
だが、おそらくはアベさん筆頭に他の仲間達は気付いていたのだと思う。
当然そのことはバカ正直には言わないけれど。
「知らせどおりにあの"影狼 ジャックス"も連れているなんてとは思ってたけど......信じざるを得ない光景だね......これは」
俺はその言葉にジャックスをチラッと見て知り合いか?と念話で尋ねるも知らないと返されたのでため息をついて先頭の青年に話しかけた。
「それで、俺が迷宮主だとして俺達をつけてきたお前達は一体何の用だ?」
「そうだったな、すまない。......俺は、牛人族の戦士――アールデン=レッドと言う。"レッド主族牛人族タウロ種の1"だ」
......?
("お前、あの人と親戚なのか?")
レッド族という苗字に疑問を感じた俺はジャックスに聞いてみた。
("俺達の種族ってのは血の色によっておおまかに分けられているのは知ってるだろ?レッド、ブルー、イエロ。それの主族に当たるもんは主にみんな苗字がレッドであり、レッド主族って奴のように主族を名乗りそれから自分の血族の名乗りをするんだぜ。1ってのはおそらくタウロ種という種族の1番偉いやつだと思うぜ")
なんかややこしいなと思ったのはいうまでもないことだった。
「俺のことは名乗らずとも知ってるだろうから省略させてもらうけど、そのタウロ種の1さんが何の用だ?」
俺の言葉に先頭の牛人族の御付と思われる者たちが無礼な!とでも言いそうな感じでこちらに罵声でも浴びせようとかするものの、その先頭の牛人族によって制される形となった。
部下の統制はきちんと取れているって感じか。
とりあえず俺はそのことを見届けて、相手の話を待つことにした。
「単刀直入に話そう。我らは、"亡国の亡者共"という組織に属している者だ。我らのことは......そこの影狼殿がご存知だと思うが......」
("だ、そうだが?")
("お前と会った時にも話しただろう?......帝国によって滅ぼされた負け組が一箇所に集まりあって革命を起こそうとしている組織ってやつだ。俺はとある知り合いの恩返しでそうとは知らずに少しだけ首を突っ込んだくらいだからそれくらいしか聞いてないがな")
("もしかして、傭兵長のことか?")
("おう、奴だ")
なるほどなと納得して俺は牛人族の青年に頷いて答えた。
「......分かってもらった上で率直に言えば、我らのために迷宮主であるあなたの創造されたという魔法の武器を供与してもらいたいと言う申し出のためにこうして追いかけさせてもらった」
「ああ、断わる」
俺のその言葉にいきなり断わるとは思わなかったのだろう、青年も御付と思われる者たちもポカーンとしていた。
「理由は、供与するために作っているわけじゃない。あくまで迷宮に挑んで勝ち取った上での褒美というだけのことだ。迷宮に挑みもせずに交渉で手に入るくらいなら今頃迷宮はその権利を得るためにパニックになっていたはずだ。だが、そういうことはならずに今この時も挑戦しているであろう者たちがいるってのは、ここまでつけてきたであろうお前らにも分かるはずだよな?」
「......先のあのラウンジと呼ばれる紛争の原因は、それに対抗する形でとあるが......」
その答えに俺は手を振って答える。
「違う違う。あれは......言ってみれば帝国のとあるバカがケンカ売ってきたから買ったまでのことだ」
そうか、その時からいたのかと俺は納得した。
「ならば、我らと同じく帝国とは袂を分かつ組織だろう。ここは手を――」
ああ、そうか。
言ってなかったなと俺は、後に周知させるようにと覚えておくことにして彼等に言い放つ。
「うちは、どこの勢力にも組することはない。たとえ思想が同じだからという理由で一緒になったところで待っているのは内乱、右左、派閥なんていう元も子もない結果だろうって考えてる。実際、俺が経験したあちらでの学校っていう組織でも同様のことが起こるくらいだ。......それなら最初から組まないで永世中立的な立場にいようと言うのがうちのやり方ってことで。そのなんとかレジスタンスのお偉方にもそんな感じで伝えといてくれ」
そんな俺の言葉に反応したのか、御付のキツメな視線でずっとこっちを睨んでいた牛人族の少女が武器を構えながら言い放った。
「わ、我らの思想は決して間違ったものじゃない。あんたもそこの狼男さんに聞いているはず!帝国から受ける我ら同胞や人族への仕打ちは決して甘いものじゃないこと!それは本当に地獄のようで......だから、だからこそ私達が立ち上がってやっとここまでこれたの! なのに......力がある組織同士が組せずにどうやって大儀のためにって......同じ敵である帝国を打ち破るために協力できないなんていえるの!?」
大儀か。
それは、立派なことだと思った。
ただ――
「それは、交渉相手に対して武器を構えて脅すような大儀なのか?対等な交渉の上で大事なのは相手と同等であることが一番の基礎だって俺は思う。それに、大儀は結構なことだし、そのために君らが頑張ったのは並々ならぬものだというのはなんとなく分かるよ。力ある組織同士が手を取り合って生まれたのが君らみたいな組織で、帝国を打ち破るために頑張っているっていうのもね。ただね、大事なことが1つだけあるんだ」
「大事なこと?」
俺の言葉に先頭の牛人族は、少女を手で制しつつも疑問を投げかけた。
「ああ、俺は帝国を決して敵とは思ってないってことだよ」
その発言にレジスタンスという彼等は、一斉に武器を構えた。
ああ、彼らにとっては敵か味方かにしか映らないのだろうなと俺は納得した。
「おそらく君らは、もしかして俺らが本当は帝国の味方なのかって感じだと思うけどそれは違うよ。さっきも言っただろう?永世中立な立場だって。それにね、俺もやつらにはひどいことをされたクチだ。決して味方になることはないと思う。つまり――俺が言いたいのは、やつらは俺にとってただの"獲物"だってことだよ」
「敵ではなく......味方でもなく......え、獲物......?」
「そう、獲物。罠を目の前に置くのが俺ら、その罠にかかるのが帝国であり、エウレシア側のそういう連中であり、この世界に暮らす全種族のそういう連中――つまり、交渉してきた君らも含まれているってことだよ」
その言葉にもうすぐにでも飛びかかれそうなほどの殺気が襲ってきた。
だが――
「ぐっ!?う、動けない......」
そんな彼等は1歩たりとも動けずにいた。
「......私が糸で縫いとめているから当たり前」
後ろに回っていたアラーネが自身の見えないほどの糸で縛っているからである。
「ま、殺気を飛ばすほどの理不尽さやら何やらを考えてのことだと思うから、ここはこっちも手を出さずにおくけど、2度目はないからその辺よろしくな」
そうして手をフリフリとしながらも、俺は自身の作業をするためにそいつらをほおっておいて陣を構築するのだった。
知らない方のため用ですが、
現在ISSでは地球をLiveできる映像をNASA、
そして高校生がお届けしているサイトを公開しているみたいです。
自分が住んでいる地球というところは、とても綺麗だなと感動的でした。
この感動を分け与えたいと思ったので、下記にURL乗せておきます。
よかったらどうぞです。
①ISS HD Earth Viewing Experiment(ユースト版)※多分学生版
http://www.ustream.tv/channel/iss-hdev-payload
②Live_ISS_Stream(ユースト版)※多分NASA版
http://www.ustream.tv/channel/live-iss-stream
どこらへんかを回っているかを知りたい場合は下記が分かりやすいです。
③NASA(ドメインがgovだし、おそらくNASA版)
http://eol.jsc.nasa.gov/hdev/
ちなみにどのサイトにも共通しているのですが、
黒は基本的に日の光が入らないところにいるので
時間が経過すれば見れると思います。
グレーは複数のカメラをチェンジしているという認識でいいと思います。




