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第10層「初10層踏破者と色々な動向」

 

 ――ズズーン


 お仕置きの1日を過ごした翌日。

 汗がじっとりと流れ落ちるテント内の作業中、突如呼び出しを受けた俺はパパの部屋へとやってきてその監視眼イーブル・アイの映す光景にただ関心をしていた。


 とうとう、俺ら以外での10層の踏破者が出た瞬間だった。


 モニターを通してみるガンツ=オーガを倒した侵入者たちは誰もが疲労を抱えていたがやりきったというような表情をしてお互いを称え合っていた。


「何事かと思ってきてみれば......中々よさそうな侵入者たちじゃないか」


「でしょー!パパ好みの友情、努力、勝利ーみたいな感じだったからマークしてたんだけど、まさかこんな短時間でクリアするとは思わなかったよー!」


「ナイスだ、レティ」


 そう言って娘の頭を撫でると、えへへとはにかんで笑い照れるレティに目じりが下がる思いだった。


 これまでやってきた侵入者は誰もが10階層のボスに叶うことなく、その手前で脱出をしてここを去っていくという状態だった。何組かはチャレンジしたがあえなく人生をドロップアウトしてしまったりしたが、ここにきて彼らが初めて打ち破ったことで今後のラウンジ内においても活気付いていけると思った。


「初の踏破者として挨拶でもしておくかな」


 命をかけての侵入者に対して、迷宮側がまずやることじゃないだろうけど今後のためにとアベさん、ジャックスを伴って転移陣によって、ちょうどラウンジへと帰還したタイミングで侵入者達の前へとやってきた。


 誰も彼もが、疲れた顔をしていて疲労の深さが如実に表れている様子にそうだよな疲れるよなと自分でも経験があるために少し同情的となった。


 6人というあの時の俺達と同じ人数のその侵入者たちは、目の前に現れた俺達に誰も彼もが驚きを隠せない様子だった。


「あ、あんたらは......まさか......」


「俺は迷宮創造主のタクト。初めまして、初の10階層踏破者の侵入者たち」


 俺の言葉に周囲で俺達が現れたことに戦々恐々としていた他の侵入者たちは俺の初の10階層踏破という言葉に驚愕な表情を浮かべながら、踏破者たちを見つめては仲間たちとゴニョゴニョやり取りをした。


「......俺達に何の用だ」


「別に用はない。ただ、この迷宮開放以来初めて10階層のボスを倒した者に挨拶をというだけのことだよ」


 俺の言葉に不審な表情を浮かべる者たちに気にせずに、俺は言葉を続けた。


「迷宮はまだまだ先が長くて、俺も15階層までしか今のところは進めてない。お前達がその先まで進めてまた無事に帰ってくるのを楽しみにしているよ」


 そうして、それだけだという感じで振り返った俺に届いた言葉は辛辣なモノだった。


「あ、あんたにどんな力があるのか知らないが、こんな人を人とも思わないような施設を作って何が楽しいんだ?俺達以外じゃ死人も出ているっていうし、この場所でもそちらにとって都合が悪いことはすぐに処刑されてなんて......何を考えてるんだ!?」


 その言葉に俺は立ち止まって、向きなおるとこう告げた。


「じゃあ聞くが、何しにここへきたんだ?お前達は」


「何しに......だと?」


「そうだ。人の庭に土足で踏み込んで家にまで侵入するという意味じゃ間違ってない指摘だろ?ここは、俺が作った縄張りだ。そこへ勝手に侵入しておいてそれはないんじゃないかと思うんだけどな」


「ここは、未開拓領域のはずだ!」


「そう、未開拓領域。つまりはここはどこの国にも属さない領域ってことだ。それで、改めて聞くが......そこを切り開き、名実ともに支配下にした迷宮領域という施設に無断で足を踏み入れたお前達侵入者は一体なんなんだ?」


 俺の言葉にそ、それは......と言葉が続かなくなる踏破者。


「こういっちゃ何だが......魔法の武器がほしい、財宝がほしい、自分の腕を確かめたい――ここはそういう場で、そちらにとっての目的と合っているのであればという善意によってお前達に開かれた場所......ただそれだけだよ。そこで働くこちら側へマナーのなっていない侵入者が手を上げようとした事例なんてのは数え切れないほどあるからと、ルールを作って......何が悪い?」


 宿とか酒場作っといて言うことじゃないという突っ込みがあるだろうけど、それを言うことも迷宮を作った訳なんてのも、もちろんこの場では言わない。


 俺の目的は、その部分こそが本命なのだから。

 反論ができることがないのだろうか睨むだけの踏破者たちに俺は、手を振ってこう言った。


「......ま、頑張って攻略することだ。こちらは偽者紛いを用意していない本物の魔法道具などを提供している。それらが欲しいから来ているんだろう?......深くなればなるほど、魔法が使えなくなったこの現代では相当な値打ちモノの魔法道具が見つけられるだろうから、頑張ってくれ」




 * * * * *




 そう言って去っていく迷宮創造主のタクトとやらは堂々と獣頭族らを伴って去っていった。


「......どうだ?今から襲撃をかければ、俺達が――」


「やめとけ。真ん中の迷宮創造主はともかく、銀毛の獣頭族とあれは"影狼"なはずだ。不用意に手を出せるものじゃない」


「だ、だけどよ!」


「今は耐えるしかないんだ。......俺達の役目は、ここを探索していって帝国へ報告だ。迷宮創造主を手にかけることじゃない」


「くそっ、こんなことをしてまで帝国のために働かなくてはいけないのか......僕たちは......僕たちはぁ!」


 その場にはなんとも言い切れない悔しさの声が後に残るように響いた。


「......ともかく、今は体を休めよう」


 そう言うと、踏破者の青年は宿屋へと歩いていく。

 続くように先ほどまで悔しそうに声をあげた青年や、一言も話さずにローブを深めに被った人族も後に続くのだった。




 * * * * *




「......あいつら、見覚えはねぇが真っ直ぐないい目をしていたな」


「そうだな。背後関係に興味はあるけど、しばらくはここに居るみたいだからレティにも目を配って置くようにしてもらうよ」


「お、てめぇのお情けってやつか?」


 ジャックスの言葉にため息をつく。


「情け? ......俺はそこまでぶれちゃいない」


 正直、初踏破に対しての挨拶という以外に目的はないし、この先彼らが死のうが生きようがどっちでもいいのだ。


 俺は自分の役目をこなしつつも、こいつらを守るために頭を捻るのみ、だ。


 そんなことを考えているとやがてパパの部屋に戻ってきた。


 昼日中ということもあり、昼食を取るために食堂へ行って食事を取った後は、

 食事を共に下サラリーから簡単に午前中に行われた商人達との交渉の結果を聞いた。


 総数で20組ほどの商人がやってきたそうだ。


 ほとんどが帝国領からやってきた者たちだが、数組はエウレシアからも訪れているらしかった。主にこのラウンジ内での商売をということでの話し合いだが、

 帝国領側の商人は誰も彼もが高圧的な態度を終始崩さず、許可を出さなければという脅しまで使ってくるものも居たという。


 現在は気分良く、こちらが用意したそれなりの宿屋に泊まってもらっているので後から俺が奴隷級を発動させてほしいことを頼まれた。


 逆にエウレシア側から来た商人たちは、王女から直接話しを持ちかけられたと最初は半信半疑という感じだったが俺の話と俺が王女を守ったことの経緯を伝えると、何やらあなた様方の迷宮主様には是非ともお礼をなどと言ったのが、大半らしかった。


 ......どんだけ好かれてるんだろう、あの王女。


 そんなことを思いつつも、もちろん会わせることもないので、その場でサラリーがそれならばこのラウンジ内での経済発展に力を入れてくれることで当委員会と王国の橋渡し的な関係性を向上させることで恩返しをとうまいこと切り替えしをして、納得してもらったそうだ。


 彼らが扱うのは主に、南の大陸にあるという港町から仕入れた香辛料や塩、王都側にある街で取引をしているという穀物や調味料といったものから、海産物まであるということだった。


 そういえば最近、魚なんていうものも食べてない。

 明後日からいよいよ別の工事が始まるので、そこでついでに手に入れるつもりだったことも関係していて気にもしていなかったが、食べたいと願っていたレティ、魚は健康にいいというジョイの指摘とそこ以外のルートがあるといいという判断によって彼らにはラウンジ内、及びD.Cとの取引も許可を与えることにした。


 商業ギルドというホステスが迷宮ギルドとは別の部署として新設した部屋へと案内するところまで終わっているそうだ。あとは、ギルド総長でもあるホステスとともに午後から迷宮ギルドとは異なった商業ギルド証のネックレスとマージンなどの話し合いをするとのことだった。


 前述の帝国領とは違う丁寧な対応だったというし、何より手紙を預けられたと読んだそこにはなんていうかあの王女からの色々と暑苦しいとも言える内容のものまで書かれていたそうだった。


 俺宛――しかも当人である俺すらまだ読んでいないのに、検閲のためとはいえ赤裸々にそういうのを読まれると、微妙な気持ちになるがまぁいいやと流すことにした。


 別れ際のあの目はなんとなく察しがつく。


 俺としては特に思うこともないので、適当につき合わせてもらうことにする。


 なお、前述の帝国側からの商人は生命契約(ライフプロミシズ)で縛らせてもらって表面上はお断りさせてもらうが、裏では利用をさせてもらうことにした。


 目的は主に奴隷商との顔繋ぎとその奴隷商経由で別の奴隷商から新たな奴隷の調達をしてもらう狙いだった。人員は後のことを考えれば、今から増やしたところで問題はない。そのための食料なんかはエウレシア側の商人たちによる取引が決まったこともあって余裕が出てくるらしいし。


 そんな報告をされつつ、食事を取り終えると、ちょうどレティから小人忍ミニンジャーの報告があると呼び出されてパパの部屋に戻ってきた。


 そして、現在その色々な進捗について小人忍ミニンジャーから細かな報告を受けていた。


「なお、発見した鉱脈の辺りに、竜爺殿の隣に作られた部屋経由で資材が運ばれて現在炭鉱部屋を建築中。その後、採掘を行う予定となっております」


「わかった。いよいよ、砂鉄製からグレードアップできそうで何よりだ」


 小人忍ミニンジャーから聞いた報告でまず最初が鉱脈発見と、採掘場所外での待機所兼休憩所となる場所の作成からだった。採掘が進み、鉄が安易に取れるようになれば今後はあの大量の砂からいちいち分離する手間隙もなくなるので、俺には吉報以外の何物でもなかった。


「次に、例の工事の件でダイク殿から人員についての割り振りを公道側の労働力が劇的に上がったこともあるので多めに振るという報告が」


「そうか。まぁ、竜爺の公道工事は予想外の結果だからな。冬以降に予定していたあっちの工事が出来ると思うと嬉しい限りだ」


 先ににも述べた明後日予定の工事とは、西側にあるという大きな川からの水引きでラウンジ内を迂回させる形で色々な用途で使えるようにとする水源の確保であった。


 現在は主に以前のチャイブ老との畑の件で水精石ができたので、それを世帯分作っては配布して各々の水源としてきたが、それだと効率も悪いからと以前から考えられていた川を使った水源の確保を行う計画にて効率を図ろうというものがあったのだ。人数も増えてきて、20ダースくらいならすぐにできるとは言え俺やエロナに対する負担が結構大きくなってきたことも所以である。


 魚がついでにというのはここから来ているので、あまり興味を持っていなかった魚が手に入り久々の魚料理かとワクワクする俺は未だ子供なんだと思った。


「それから最後に帝国側からの報告ですが、ここ最近迷宮内に出入りを繰り返して調査等を行っておりましたが......」


「出入りが少なくなったのか?」


「......はっ。公道における魔物狩り、傭兵といった輩による襲撃が引く形で連動しているように見受けられるという報告もあるので」


 動き出すかな?と思った俺は、外に放っている小人忍ミニンジャー頭領チャシブからの情報と摺り合わせる形で聞いてみた。


「帝国南東方面司令がとの見方が強いと思われます」


「そっか」


 あっちも色々と司令官を置くほどには統制が取れているんだなと思いつつも、俺は――


「ま、今は様子見で動きがあればすぐに知らせてくれ」


 そう言って公道の道具作成業へと戻ることにした。


 いつくるか分からない帝国よりも、今は迷宮運営だと改めて思ったのは言うまでもないことだった。

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