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第6層「鉱脈に巣食う影」

紙軽風車ライトブリズ!」


 ――ヒュ~......


「あー涼しいわ~......。ありがと、父さん」


「め、迷宮主様!こちらにもたのんます!」


「......あ~マジだるいって~の~、テンチョーまだこっちに風きてない~」


「......」


 俺を扇風機か何かだと勘違いしてやしないか。


 娘達ならまだ判るが、ここ最近では奴隷達ですらこんな態度だった。

 まぁ偉そうにする気はないし、どちらかというと傅かれるよりもこちらのほうが俺としては付き合いやすいのでそれはいいんだけど......なんとなく思うところがないこともない心境だ。


 そんな付き人みたいな扱いをされる迷宮主の俺は、現在昼休憩中の只中でひたすら涼しさを提供させる扇風機代わりとなる折り紙をひたすら折っていた。


 迷宮公道の改装をすること1ヶ月。


 今は夏本番と言う感じで、7月――天秤月も終わりに差し掛かっている現在はあちらの世界と同じくらいに暑かった。酒場、宿屋ともに報告を聞く限りでは麦芽っぽい状態にさせるために試行錯誤をしたホステスたちの頑張りもあって

 ビールがダントツで人気になったようだ。


 ちなみに、デザートに追加されたアイスの類も人気でその場にいた侵入者曰く、


『俺、次の10階層をクリアしたらこのしゃあべっとというのを飽きるまで食べるんだ』


 と言っていたらしい者までいる始末だったようだ。


 あ、ちなみにその侵入者はあの赤黒オーガに叶うことなく、逃げ帰ってきてシャーベットよりも命が大事とこの迷宮から去っていったそうだ。


 そんな季節である夏の工事は順調だが、あちらにいた時にもオタクが言っていた『夏に沸く』という輩は一月前に比べれば、その数を減らしてはいるがまだまだ元気なようで近場に潜伏しては襲撃をしてきているようだ。


 最初は、敵側がこの俺さえどうにかすればという直接的な考え方によってか、このテントに向かって結構な襲撃をされてきていた。

 しかし、結果としては迷宮の中でも最上に位置する護衛2人にはさすがにどうにもできないと判断したようで、今は小物と思われているギャルオらの配下魔獣をターゲットにして襲撃していると聞いている。


 たしかに小物感バリバリに見えるが、あいつらはふとももから生まれたギャルオが仕込んだ太腿蹴撃リフティングの技術を持っているので、魔動具『サッカーボール』さえあれば、無双も可能なほどに強い。


 無双も可能を裏付けられる理由も存在する。

 迷宮内で手に入れて今現在は使い物にならない魔武器での襲撃だ。


 迷宮内で手に入れたらしき魔武器を意味もなく振り回して空振り、やられる姿はもはや名物である。


 じゃあなぜ、魔武器が意味もなく振り回されるのか。

 別に回数が切れたとかじゃない。


 迷宮外の――人族なんかに振るえば、効果は抜群だろうそれの作者が許可をしていないからである。


 誰があの迷宮を創造し、アイテムを作っているのか。

 それを、忘れている輩が多すぎる。


 俺の子供たちがこんなに可愛いわけがないくらいな存在に、危害を加えさせるような魔道具を作るはずはないのだ。


 そして、そんな輩達と俺の子供たちの攻防を密かに楽しむものもいる。


 迷宮公道の作業員である奴隷達や配下魔獣たちだ。

 コミュニケーションや一種の息抜きになればとトランプカードを生み出して、元々賭け事を基にしたブラックジャックのゲームを教えたことで夢中になったかと思えば今度は、誰がどの警備についている娘息子を襲うかという賭けを新たな楽しみ方として浸透してきているのだ。


 なんていうか、もうちょっとしっかりとした娯楽も必要かなと施設の必要性を感じるエピソードなどと話題には事欠かない事柄を送った1カ月であった。


 そして今に至り、俺を扇風機として扱って魔紙で折り紙を折らせるというジョイにギャルコに奴隷のおっさん。


 もはや、ヒエラルキーはそこまで落ちたかとため息をつきそうになりながら、

 作業部屋へと戻ってきた俺の下へ羽織越しの通信が届いた。


("父上!こちら、鉱脈探索隊警備主任のブシドウ。応答を求む!")


 肩苦しいな~と俺は応答した。


("はいはい、こちら最近めっきり迷宮創造主という役職よりも、迷宮雑用主へとクラスチェンジしたのかなと心配で仕方がないタクトくんですよー")


("父上!任務中の御戯れは――")


("冗談だよ、冗談。そっちも大変そうだが、こっちでも暑さとの戦いで結構必死なんだぞ?......熱中症で倒れる人族も出るくらいだ")


 俺の答えに、ため息で返事をするブシドウ。


("ご苦労重々承知しております。父上、こちらから緊急の報を届けたく")


 俺は、通信をしながらも作成中の公道幅土馴らし型の魔道具の作業に手を付け始めたところで再び手を離すと首にかけたタオルで顔を拭って、近場にいるメイドに声をかけてテント内のパパの部屋的な休憩部屋となる部屋に飲み物を持ってきてと要求して移動を始めた。


「かしこまりました」


 部屋を移動して隣の休憩室の椅子に腰を下ろして、その報告を聞くことにした。


("いいよ、報告頼む")


("御意。実は――")


 そうして報告された内容とは、鉱脈探索における中で見つけた珍しい生き物についてのことだった。身の丈1mから2m前後、鋭い歯をしていて攻撃的かと思いきやこちらを攻撃することはなく、何やらガジガジと石っぽいものを齧ってはペッと吐き出すという奇妙な行動をする生き物だそうだ。


 そういったことが起こった場合にと、一応、あちらから攻撃されなければ様子を見て、報告してくれという専守後攻とでも言えそうな決め事がされているのでトラブルまでには発展してなさそうだった。


("石を齧って吐き出す獣か。......見てみないことにはなんともいえないが、その吐き出す石っていうのは、何か特徴とかはあるのか?")


("形容されるべき言葉でいうなれば、宝石に近いものと存知まする")


 宝石......宝石か。


 宝石にも化石化したものやら、天然で作られた時間経過によりできたものとかもあるけどもしかしたらあの時あのモス野郎が使った琥珀の石に辿り着けるかもしれないなと思った俺はすぐに立ち上がってその妙な生き物というのに該当するものはないかを確認するべく3氏族のうち、土竜頭族と兎頭族の長の住まいまででかけることにした。


("俺は今から、知識を持っていそうなじいさんたちに聞いてくるから作業は一旦停止してその獣の見張りを置いて作業員たちは安全と思われる場所で待機。とりあえず獣だけは刺激しないようにだけしておいてくれ")


("御意!")


 そんなやり取りの中、ジャックスとアベさんに断わって居住区へとやってきた俺は早速2人の長の下へと転移した。


 突然現れた俺に驚いた顔をしたが、何かあったのかと冷静に対応してくれた。

 まず来たのは土竜頭族の長・モグドー老の住まいだ。


「おお、迷宮主様。いかがなされたのじゃ?」


「突然ですまないな。実は、鉱脈探索中に――」


 そうして俺が一連のブシドウからの報告を聞くと、モグドー老はほむほむと顎鬚をなでながら考えてそれはおそらくと答えてきた。


「ジュエロンと呼ばれる宝石を洗浄するという獣ですじゃ」


「ジュエロン?宝石を洗浄する?」


「はいですじゃ。そのジュエロンというのは、主に宝石に纏う魔力を食料として地中にて生活をする我ら土竜頭族の亜種とも呼べる獣ですじゃ」


 亜種か。


「大抵は刺激さえしなければ、無害な生き物で非常に大人しくまた宝石に価値を見出すものからも昔からこう呼ばれて見つけ次第捕えて買う習慣があったと聞きますじゃ」


「それはなんて?」


「"原石磨き"ですじゃ」


 原石磨き......。


「ジュエロンの前歯はとても細かく、そして強靭ですじゃ。それらで周りに纏わり付いた魔力素を食べてそれを終えるとそこらへんに食べカスとなったピカピカに磨き上げられた宝石を捨てるということですじゃ」


「宝石には一切興味がないってことか」


「はいですじゃ」


 なんて贅沢な獣だろうと思うも、それならばひょっとして利用ができるのではと思った。


「捕獲後の飼育とかで注意点とかはあるのか?」


「そうですじゃ......地中を好むという性質を持っておりますから、飼う場所も地中がよろしいと思いますじゃが......手に入れるおつもりで?」


「ああ。利用できるものなら何でも利用する。これは、俺が決して変わらない復讐と同じくらいの定義を持った信念だからな」


 ありがとうと情報を聞き終えた俺は、兎頭族のほうへと寄る事はなくそのままレティに伝言をして迷宮"集落"へとゲートを使って転移した。


 所々に見える穀倉地帯は順調に生育ができているようで、汗水たらして働く小人族の面々もどこか満足そうな感じで仕事をしている様子だった。


「おい、いきなりちょっと鉱脈のほうへ行くとか......どういうことだ?」


 ちゃっかり俺の位置を探っていきなり飛び出す形となった俺に呆れたジャックスの声が聞こえたほうへと振り返る。そこには、ジャックスの他に作業中だったのだろう黒いタンクトップに"たわわな実"を包んだオーリエとアベさんもいた。


 扇情的なその格好に僅かな動揺を示すが、振り払って彼らに説明をした。

 そんな奴聞いたこともないとジャックス、ガウ?と、自分も知らないというアベさんに、戦うノ?と好戦的なオーリエに対して答え返した。


「利用できるんなら、飼い馴らしたほうが得だからな。温厚で大人しいそうだし、とりあえず何かあってもいいようにだけ準備してきてくれ」


 俺の言葉に分かったと答えた彼らは、各々準備をした後に再度集まって早速彼らの鉱脈探索場となるエリアへと向かうことにした。


 だいたい迷宮"集落"の穀倉地帯から、探索場へと向かうと普通であれば4日ほどはかかる距離だが、もちろんわざわざそんな苦労は前もって潰している。

 事前に一緒に出向いてあちらで迷宮創造(ダンジョンメイカー)にて条件に合う場を作ってゲートで通れるようになっているからだ。


 そんなゲートを通じて向かうと、迷宮軍の旗とD.Cの旗がたなびく陣のような場所が鉱脈探索入り口に敷かれていて、俺に気づいた足軽の面々が大殿と声をかけてきて事前に話が通っていたのか、こちらへと案内をしてくれた。


 足軽を先頭に先へと進むと、土竜頭族が複数で掘り進めたかのような跡のある穴が至るところに通じていた。そこを崩壊しないようにと木の添え木で支えられていて、魔道具製の松明がゆらりゆらりと揺れていた。


 慎重な足取りで結構狭い穴を通るに、オーリエも強引に背を丸めて移動して辛そうだったのだがそんな中でふと、そのオーリエですらも悠々と背を伸ばせる空洞とも言える場所へとやってきた。


「ここから空洞か。最初からだよな?」


「はっ!......しかし、周りには"人的"vな採掘痕はなく何やら鋭利な牙で削り取っていっているように見受けられました!」


 その言葉にどれどれとその壁に手を当てると、確かに爪じゃない牙でりんごに齧りついたかのような跡とそれが繰り返し突きたてられて削られているかのような跡が見つかった。


「......これがジュエロンかもしれないな」


 そう呟きながらも、空洞内をひたすら進むとやがて灯りが複数見えた。

 おそらく鉱脈の探索隊たちだろう。


「お疲れさん。ブシドウはいるか?」


 ソナー役の兎頭族、採掘役の土竜頭族、そして足軽たちに順に声をかけてから護衛長であるブシドウの行方を聞いてみた。


「はい、殿でしたらしばらく先にてここへあの獣がこないようにとバリケードを作っております」


「そっか。とりあえず、君らは引き続きここらで待機をしててくれ」


「御意でございます!」


 そうしてジャックスたちを先頭に、アベさん、俺、オーリエの順番で連携陣を取って移動を始めた。


「なんかこうしていると、アラーネちゃんと一緒に迷宮攻略してたみたいだなぁ~おい」


「......楽しかったネ」


「ガウ?」


 そんな暢気な話に俺がそうだなと相槌を打とうとしたその時――



 ――ビャアアアアン!!!!



 と、先のほうから大音量の獣の声が聞こえてきた。

 一気に緊迫感が増した俺達は、慎重よりも迅速にと走り始めた。


("おい、ブシドウ!無事か!?")


("父上、それがしたちは無事ですが......しかし......")


 何だその間はと思った時にちょうどその現場となる場所へ着いた俺が見たのは、驚愕に値する光景だった。





 洞穴の奥――


 目にも眩しいほどの部屋とも形容できる場にいたのは、リスが2mほどまで成長したかのような巨大な獣の首を噛むように加えてこちらを睥睨する......俺が結構好きなファンタジーの王道......西洋のドラゴンの姿だったのだ。

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