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第2層「プロローグ~2ヵ月後の運営(下)~」

この話の終わり際に第1章時点でのラウンジ内地図を挿絵挿入しました。

参考になれば幸いです。

 迷宮ラウンジの西側に開かれた奴隷達の宿舎でもある場所――通称『奴隷居住区エリア』へと移動してきた俺を待っていたのは、得意げな顔で俺を見つめる男女だった。


 格好はあの旅や町で見かけた奴隷たちほどの悲惨さはなく、むしろどことなく気品がありそうな面倒臭そうな感じの薄汚れた格好をしていた。

 環境としてはこれでもまだマシなのだが、この人たちはこれでもまだ現状に満足できない――いや、それどころかこの居住区を自分達の物にしたいという欲目がランランと輝いていた。


「それでやってきたけど、交渉ってなんだ?」


「これだけ人のいる前ではなんなので……どうかこちらへ」


 そうして恐らく自分たちの居住しているところなのか、そちらへ手を丁寧に広げて案内しようとしていた。これだけ人を集めたこの男がなんでわざわざそんなことをするかなど、背景が丸見えな俺には問題なくわかっていた。


 だから分からせるために伝えようとした瞬間――


「タクト様!」


 そうして、居住区のある一角とは別方向から現れたのは同じ奴隷服に身を包みながらも表情は輝くようなとある姉弟の姿だった。


 そのまま俺の下へとやってくると跪いて何やら伝えてきた。


「そいつらの外の繋がりのあった魔物狩りの連中を捕らえて退治してこちらへ引っ張ってこようとしたんだけどなぜか入れなかったから、入り口に縛っておいたわ!」


 姉のほうは、まだ13か14くらいであるが元がそれ系の人族だったのか年齢に見合わない実力を兼ね備えた緑と赤が混じったかのような髪色で女の子には珍しい感じの活発的な短髪の少女だった。


 元は傭兵の長を勤めていた父に随行していたそうだが、ある任務の途中で父を亡くした後に食料を満足に取ることができずにいた時に、弱っているところを奴隷商に捕まって弟とともに売られることとなり、病弱な弟の薬代のためにもと我慢をして農業をしていたところへソウリョと出会うことになった縁でこちらにきた経緯がある。


 弟のほうは姉と同じ髪色だが、こちらはとても細長くてヒョロっとしている9歳くらいの少年だった。しかしこの迷宮で生活を送るうちに病弱というよりも栄養不足によるところのものが改善したおかげで以前よりも顔の表情も明るくなって姉とともにこちらの頼んでいる仕事もきちんとしている様子だった。


 そんな2人とともに、あの時にやってきた奴隷の子供や俺よりも年上っぽい女性などはなぜか俺のことを尊敬してやまないようで、今ですらも結構熱っぽい目で見てくる。


 俺に年下の趣味はないので、もちろんなんとも思わないけど。


「そっか、お疲れさん。……ってことらしいぞ?」


 俺の問いかけに今までバカ丁寧に接していた男は、急に顔色を青くすると俺の前――いや、そこに行く前までに誰かに足を止められた。


 常に"隠れて"俺を護衛する役に付く小人忍ミニンジャーの短い刀から光る刃は首元でピタっと止められていて、これ以上先へと行かせない様にするかのようだった。


「……ま、分かっていたことだから驚きはしないけどな。こっちは良かれと思って雇った者に手を噛まれるってのはそれなりにショックなんだ。迷宮主が命じるよ、"黙って"この迷宮から"出て行け"」


 そうして指をラウンジの森への入り口方面へと向けた。


 項垂れる男や女達は何やら喚こうとするが、命令を受けたことで口を閉ざして後から来た足軽たちが両サイドに抱えてその場を去っていく。


 その上で足軽の1人に、声かける。


「……この子らの居住区入り口に魔物狩りが繋がれているから、そいつらは処分しといてくれ」


「御意」


 俺の冷静な指示に足軽も頭を下げながら答えるとその場を去っていく。

 振り返って俺へ一抹の不安な表情を浮かべる奴隷たちの顔を見て一言呟いた。


「俺は君達を信頼して雇っている――その言葉だけは忘れずにね」


 すると、一斉に跪きながらも迷宮主様にはよくしてもらっているだの、逆らうなど一切考えたこともないだのと各々自分の言葉で感謝の気持ちを語ってきた。


 若干名が俺の手を取って、感謝にと自らのたわわな胸元へと押し付けようとしてくるのは毎度のことながらなんとも言えない感じだ。


 とてももったいないと思いながらも、そういうのはいいと頭を撫でて立ち上がり捕り物をした姉弟のところへと行く。えと、確か――


「アルムとファナだったな。ホントに"毎度"ご苦労さん。特別扱いしてやれるわけじゃないが、甘言に流されずにきちんと信頼に答えてくれた今この場にいる者たちと現場で作業してくれてる奴隷たちへの"連帯報酬"という形で礼をさせてくれ」


 言葉と共にポーチから、日頃はあまり飲む機会のない飲み物を出して渡すことにした。森林調査中に新たに発見した生姜とほぼ同じようなものだったことから亜空間部屋にある炭酸池とで作ってみたジンジャエールである。


 驚くことにジンジャエールはこの世界の人族にとってはとても美味な飲み物なのだそうだ。なので、一計を案じて今回のようなことが起こった場合にも、耐えた奴隷には報酬として渡すことにしている。


 ようするに餌付けではあるが、今のところ不満もないようで嬉々として受け取ってくれるのでしばらくはこれでもよさそうだ。


「あ、ありがとうございます! あ、あの!これのためもあるけど、ホントはタクト様のためにも!」


「……ああ、感謝してるよ。その気持ちは受け入れられないけど」


「お姉ちゃん、またダメだったね」


「モジョ様もおっしゃってたわ。父の乳はそれほど容易じゃないって!だから諦めないわよ」


 あいつが絡んでたのか。


 どうもねちっこいずる賢い絡みというか、アタックというかそういうのでなんとなく予感みたいなのは感じていたが……被害者がここにもいたとは。


 今のところ誰ともそういう気を起こすことはしないので、いくらアタックしようとも無駄だけど言っても聞かないし、現在では放置の一途だ。


 俺のどこが良いのか全く理解できない戸惑いみたいなものもあるが、目的がこの子らの同族ともいうべき人族の間引きによる負い目も多少はあることは否定できないと思っている。


 各々礼を言ってジンジャエールを受け取っていく奴隷達を見送りつつも、アルムとファナのほうへと目を向けてお前らも仕事があるなら戻れと声をかけて俺は居住区から出て行くことにした。




 * * * * *




「ダメだったわ!」


「悔しいね、お姉ちゃん」


「でも、あたしは諦めないわよ!」


「さもしいね、お姉ちゃん」


「それってどういう意味なのよ?」


「モジョ様が、お姉ちゃんが振られるたびに言うといいっていうから言ってるだけで意味は分からないよ、お姉ちゃん」


「そう。それじゃ多分、いい意味に違いないわ!アルム、仕事に戻るわよ!」


「前向きだね、お姉ちゃん」


「モジョ様と約束したからね! 押し倒せた暁には、タクト様の乳をこの"しゃめ"っていうので撮るって!」


「堂々と押し倒す発言をするお姉ちゃんにボクはびっくりだよ!」


「そんなに褒めないでよ!」


 一連のやり取りを終えた2人は、自分達も仕事に戻るためにと歩き出した。


 そんなやり取りがあったことはもちろんタクトに伝わるはずもなく、アルムの手を繋いで歩く喜色なファナの姿をただじっと監視カメラは映していた。




 * * * * *




 奴隷の居住区を出た俺は、その南側に新たに作られた子供達の配下魔獣たち以外の宿舎や、馬車用の馬、プーたち警邏隊が乗る馬の魔獣・ホワイスたちの宿舎となる魔獣厩舎へとやってきた。厩舎自体は、列ごとに作られていてその列の中央にはゲートが設置されており、そこを通るとあの迷宮"集落"に作られた牧草地へと繋がるように設計されている。


 魔獣たちは現在総勢60頭を数えるほどになった。

 ウルグルフを筆頭に、あれからも迷宮"集落"へと続々と罠に掛かった魔物たちがやってきてはいたがまさかここまで増えるとは思わなかった。


 ま、今はもう魔物たちも学習したためか、襲撃自体がなくなったのは魔獣房の限界もあったので僥倖だったのは言うまでもない。


 その迷宮"集落"は、中央のゲルのような大きな建物はそのままに以前からの計画の通りに穀倉地帯へと姿を変えていた。


 場所的にも理想的なので、酪農もできるようにしていて新たに牛の魔物でも牛乳を生み出してくれるホルスタイン種を、触った記憶、見た記憶、匂いを感じた記憶通りに再生のオーブで生み出して成育をしているといった状況だ。


 おかげで牛乳やチーズなども手に入るし、食の幅が広がったことで奴隷たちにも受けがよくなったのはもちろんのこと、酒場でも結構な人気になっているようだった。


 閑話休題


 事務所的な場所へと入ると、そこで勤めている奴隷達に一言挨拶をして状況を聞いてみる。主にここに勤めている奴隷たちは元・酪農に精通している人たちだ。


 最初は魔物という未知の生き物に戸惑っていたが、2ヶ月も経つともうすっかりと慣れたようで今も状況を見た限りで仲良くやっているそうである。


「それで最後にですが、迷宮主様。こちらを」


 そう言って手に何かを乗せて見せてきたものを手にとって見た。

 黒っぽい色のそれはネットで写真を見た黒曜石のようなものと似ていた。


「これは?」


「はい。2週間ほど前からなのですが――」


 そう言って話を聞くと、なんとも不思議な感じのするものだった。


 厩舎を掃除している最中にたまたま発見して、石が紛れ込んだのかと処理したが次の日も同じようにある魔獣の厩舎から見つけられたらしい。


 報告するべきか迷ったが、手を煩わせるのもおこがましいと生み出す瞬間を見るまではと報告しなかったそうだ。


 そうして昨日、ようやくその魔獣が生み出す――いや、吐き出す瞬間を見たこともあって今日やっと報告ができたと胸を撫で下ろしていた。


 疑問に思いながらも分かったと感謝を伝えて、その問題の魔獣の厩舎へと向かった。


 厩舎に入って、その魔獣房へとやってきた。

 狼の魔獣ウルグルフの魔獣房なのだが、周囲を見てみてもきちんと奴隷達が清掃しているためか汚れや不潔さを与えるものはなかった。

 と、藁っぽい柔らかい草の隙間にホントに偶然だが、小さい毛の付いた小石のようなものが見えた。それを摘んでよく見てみると先ほど受け取った石と同じような輝きをした石であることが分かった。


「......これもか?」


 気になった俺はその後も色々な魔獣房を巡っては手に入れた黒曜石っぽいものを探したが、結果としてはウルグルフしかないことが分かったのみだった。


 不思議だな~と思いながらも、俺は事務所へと戻ってきて今後はもし見つけたら取っておいてほしいことを告げて魔獣厩舎を出た。


 その足でD.C施設内のエロナの作業場所にやってきた。


 魔石っぽいこういう魔法懸かったものは、その担当に聞いたほうがいいという理由だが、部屋をノックしても出ないのでどうやら出払っているらしい。


 先ほどのやり取り後にでも用事で出かけたかと思い、また後で訪れることにするかと俺はガラケーで時間を確認した。


 昼を少し過ぎた時間だったので、ちょうどいいとそのままD.C内の食堂へと向かうことにした。


 食堂は長テーブルが並べられており、そこに引き椅子というシンプルな感じになっている。食堂に入ると、昼を少し過ぎたということもあってまだまだ昼御飯中という光景が見て取れて、それぞれ担当となるメイドたちが給仕をする様子が見えた。


 ちなみに酒場のほうでは料理経験のある奴隷達が働いているが、ここではD.Cという組織で奉仕婦長という役職についていることもあってオフクロやその配下部隊となるメイドたちがその全てを担っている。


「父さんも今から食事かい?」


 そこへ偶然訪れたのだろう、サラリーとジョイの2人が歩きながら話しかけてきた。



「まあな。お前らもか」


「そうそう、父さんと話しておかないといけないと思ってね」


「なんだ?」


 そうして話しを聞くためと食事をするために、席に着いた。


「旦那様、お食事はどういたしますか?」


「えと、適当に――」


「父さん、さすがに不老不病といえど食事はきちんと採りなさい」


「あ、はい。じゃあ野菜関係のやつで適当に」


 オフクロ配下の魔獣・メイドの1人が俺達の注文を取って来たので、俺は適当に腹を満たすものを頼んだ。食事に関しては特に欲がないための注文だったが、ドクターとしてなのかジョイに窘められると野菜中心の料理を頼むことにする。


「それでどうしたんだ?」


「帝国側の動きをね、僕なりに予想してみたんだけど」


「ああ、そういえばそんなことを言っていたな」


 帝国側がどう出ようとも、こちらにとっては別にどうとでもできる空間内にいる限りは関係がないということもあって気にしてはいなかったのだが、俺とは違って勘が働くサラリーは役職もあってそういうわけにはいかないようだった。


「今のところは、森の入り口となる部分からと迷宮の入り口から見える動きとしては数人が入り込んでいるようだけど現在じゃあまり目立った動きをしていない感じだったよ。おそらく、僕なりの考えであればどこかでこの迷宮の存在と有用性に気づいた段階で今のようにはいかないと思っているけど、父さんはその場合はどうするんだい?」


「ん~~......」


 本格的に動いた場合の対処か。

 ま、考えたところで変わらないのだけど。


「......別に普通に対応するつもりだけどな。俺にとっては、痛みを伴うトラウマを作ってくれた相手が所属している国だからっていう恨みっていうかイライラ?みたいなのは感じているし、人間としてそこは許せる部分じゃないって今は思っているのもあるからな」


 以前までの俺であれば、おそらくこんな考えはしなかっただろう。

 実際に被害に遭うことでこういう考えに至れたといえばそれが成長なのだろうと思っている。


「普通に対応と言うのはどういうことだい?」


「ま、交渉する気があるのならそれを跳ね除けるし、それで敵対するのであればこちらとしては願ったり適ったりってわけだよ」


「......なるほど。レティ姉さんに聞いてたけど大分ひどいことをされたようだからね。僕としては話を聞いただけでも腸が煮えくり返る思いだったからちょうどいいよ」


 なんというか、親想いのいい息子だ。

 だからこそ俺は、こいつらを守るためにも動くときは動かないとなと改めて思う。


「私としては、あんなに可愛いピョルナちゃんをいじめるのが気に入らない思いが強いわ」


 お前はそういう奴だったよな。

 ここにきてますますジョイの可愛いもの好きが拍車をかけていると感じる。


「気持ちは分かるぞ......。ケモ耳をいじめる奴は完全に敵だからそれは曲げないでくれ」


 とか何とかいっている俺も相当な感じだけど。


 しかし、帝国か。


 懸念事項ではあったが、そのことも考えないといけないということで食事の最中は主にそのことに関してサラリーと意見を交わす時間を過ごすこととなった。


 他に出た議題としては経済関係と来場者低下のことか。


 今のところ外部の貨幣を得る意味でやり取りしているが、基本的にその得た外貨を使って外と交易をしているわけじゃないので、もっぱら本丸に設置されている宝箱などに銀貨20枚単位とかで適当に入れている。


 それに起因するのか、2ヵ月半前から考えれば侵入者がやってくる数も序々に減っているらしいのでどうにかしたいということだった。


 宝目当てだけじゃ、この世界の人族は寄ってこないか。


 ま、釣り方についてはこちらで考えるが、経済関連についてはサラリーにまかせることにして何か面白いことが思いついたらという感じ話を締めくくると、大分時間が過ぎていたことに気づいた。エロナに用事があるために、頼むよと一言伝えて食べ終えた食器を戻した後に再びエロナの部屋へとやってきた。


 ノックをすると、は~いという舌っ足らずの相変わらず気の抜ける声で今度は応答があった。


 ドアを開くと、つば長の魔法使いといいそうなマジシャンハットと薬品を納めるためのポーチをいたるところに身につけてD.C用の羽織を身につけたエロナが椅子からこちらを振り返った。


「あ~お父さん。どうしたの~?」


「ちょっと見てもらいたいものがあってな」


「そっか~。じゃあこっちに座って~」


 そうして、俺が座るとあ~そうだ~と暢気な声でエロナが何やら伝えてきた。


「鉱脈がありそうな辺りに印をつけたのを、ガスマスク渡したときに預かってるからそれ先に渡しておくね~」


「お、ありがとな」


 手元のエロナ製ポーチから取り出した紙をもらうと、ささっと読み含める。


 それによれば、どうやら山脈が広がる東側のある地点――土竜頭族の洞穴からだとさらに4日ほど向かった辺りに兎頭族の足踏み探査と音の跳ね返り調査によって、普通とは違う種の音を聞き分けたとあった。


 そのためにこれから、土竜頭族と奴隷などの力仕事担当などとともに掘り進めるらしい。


 また、あちらで警備長に属しているブシドウはそのまま従事してもらうことにして作業をするとのことだった。


 そして料理関連について、オフクロから提案があったそうで魚の定期収集をしたいということだった。それはつまり、この迷宮の西にあるという大きな川とここを繋げることを意味するのだが......鉱脈探索だけでも辛いと思うのに、大丈夫かと思えてくる。


 一度その辺聞いてみるか。


 それにしても報告を見る分では、2ヵ月半もかけた甲斐があったというものだな。これで鉱脈が見つかり鉄鉱石やらを採掘できれば、俺らにとっての武器はもちろんのこと商品的な意味で現在の砂鉄製の鉄製品から結構なグレードへとランクアップできるだろうとほくそ笑む思いだった。


 読み終わった手紙を折りたたみ、ジャージのポケットに入れるとエロナが訪問理由を聞いてきた。


「お父さん、それでどうかしたの~?」


 俺は厩舎で取れた黒曜石のようなものを取り出すと、何があったかなどを説明して手渡した。


「ふ~ん。ん~......」


 そうしてしばらく手でコロコロと転がしながらもて遊ぶようにしていると、立ち上がって俺に伝えた。


「これの調査をすればいいんだね~。とりあえず、ウルグルフだけってのが気になるから他の厩舎にいる魔獣も含めて調べてみるよ~」


「ああ、頼むよ」


 まかせて~と暢気な言葉を残してエロナは颯爽と部屋を出て行った。


 この件はこれで済んだな。


("タクト、どこにいるノ?")


("オーリエか?......どうかしたか?")


 一つの事柄が終わった俺へと唐突にそんなオーリエからの念話が届いた。

 聞いてみると、さきほどの鉱脈探索に必要な木材やらの切り出しを手伝っていたらしくてそれが終わったので、これからトレーニングの時間だから、一緒にどうだという誘いのようだった。


「......とりあえず確認するべきところは確認したよな」


 畑部屋から商業スペース......は遠巻きだったけど、きちんと警備が行き届いているしあそこの責任者であるホストとその部下のコンシェルジュがきちんと仕事をしてくれているだろう。あとは居住区も問題ないし、厩舎の件はエロナの報告待ちとなる。


 3氏族の居住区は完全に彼らの自治に委ねているので、俺が見て回ることもない。とすれば今現在で緊急にやることは思い当たらないため、ここ最近のトラブル対処によってできなかったトレーニングをやるべくその誘いに乗ることにした。


 今後対処が必要なのは、奴隷のことと厩舎でウルグルフによって吐き出された黒曜石っぽい黒い石、それから恐らく起きるだろう帝国からの干渉か。


「創造もしたいけど......まずは土台を安定させないとな」


 と、呟いて今後の迷宮運営という分野に思いを馳せながらも俺は、鍛錬のためにトレーニングルームへと向かうのだった。


挿絵(By みてみん)

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