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第1層「プロローグ~2ヵ月後の運営(上)~」

 迷宮"チュートリアル"――


 中央大陸に位置する二つの大陸――その右側の大陸にあって、南にはエウレシア王国、北には神聖エレメンツィア王国とその中央を挟むように位置するどの国も属さない未開拓領域と呼ばれる沈静の森にあるとされる。


 その迷宮には、魔法の力を宿すとされる武器や防具、また魔道具と呼ばれるものが隠されていて、妙な像が両側に建つ大きな洞穴から入ることができるとされていた。


 中には、まるで町の中かとも言えるほどの広い空間が広がりそこには大きな門があってアイテムを探索することとなる本丸と呼ばれるエリアへ通じているとされている。


 探索を進めると下へと降りる階段が敷設されており、階を下ることで、より貴重な魔法の力を宿す武器があるとされている。


 これらはみな少なからずの生還者による口伝からのみだが、実際にそこへ行き手に入れたという見慣れぬ格好の旅人たちの実力、自らと同じ傭兵という肩書きから墜ちていった闘賊たちすらも挑戦した結果にアイテムを手に入れて実力を伸ばす始末だった。


 プライドや欲を刺激されたこの世界、この時代の人族のそういった者たちにとってはその魅力的な力は何よりも手に入れたいものだったのだろう。それが証明される形で帝国は元より、エウレシアのほうへも急激な広がりを見せていたのだった。


 過去20年前に消失した魔法の力を忘れることができない、才能によって魔法を使えなかった者への夢もまたその中にはあるのかもしれない。



 そんな迷宮へ――また1人訪れるものがやってきた。



 酒場で話を聞く分では胡散臭いと思われていたことだったが中の広さはとても広大で、まるで農作地にいるかのような錯覚を覚える。


 彼は傭兵としても長くそれなりに実力を備えたと自負する少々傲慢な部分の強い30代の男性であった。


 周囲を見ると、辺りには各々で組んでいるのか自分と同じ筋骨隆々の男達やそんな男たちに付き従う形で付いている奴隷の姿も見えた。誰かがやってくれば、探るような視線を向けてきて自分よりも弱ければ食い殺す――そんな空気を醸し出していた。


 だが、不思議とそういった空気を身に纏いつつも決してそれを行わないことような素振りを見せることに男は不思議な感情を持った。

 実際に、帝国の酒場じゃそういうことは頻繁に起こるし、それが元で店主が店を閉じるなどしょっちゅうだった。

 しかし、ここではそれが起きない。


 それどころか、起こそうという気概もないと言える。

 目が合ったものも、等しくただ視線を外すだけで後はそれなりにざわざわと男と同業の者たちが何やら語らっているのか少々騒がしい様子のみである。


 この空間に、どれくらいの人がいるのだろうか。


 パッと見た段階ではエウレシアからか帝国からか様々な人種、亜人などがだいたい1000人くらいはいるだろうと彼なりの経験によりいる事が分かった。


 やがて、様子見によってじっとしていた自分へと声をかけてくる人物に気づく。


「いかがなさいましたか? 当迷宮は初めてで?」


 男――というには、間抜けにも前髪の辺りがピョンと跳ねた髪をした初老の男のその姿と当迷宮という言葉から酒場から仕入れた情報通りのこの迷宮とやらの関係者かとあたりをつけてニヤっと笑い、都合がいいとその男へと詰め寄ると、自分の威厳が伝わるように重い声で相手の目を睨みつつも言い放った。


「おめぇ、この迷宮の関係者か? ならばちょうどいい。武器を都合してもらいてぇんだが――責任者はどこにいる?」


「......それならば、当迷宮を探索して入手して――」


 責任者の件を無視する形で武器の入手法についてのお決まりのような案内をしようとする初老の男の態度にイラっとしたために男は胸倉を掴んだ。


 そして――


「......俺のいいてぇことがわからんのか? 殺されたくなければ、とっとと責任者を出してこう伝えろ。武器を差し出せってな。分かったら――」


 そんな中で気づいた。

 自分への周囲の目線だ。


 なぜだ、みなが共通して自分を小馬鹿にするかのような哀れむようなそんな視線を送ってくるのだ。先ほど目があった剣呑な雰囲気を持つ一団の男もである。


 男はその視線が気に入らなかったようで、案内の初老の男を突放すと周囲で目を向ける者たちへ威嚇のためにと自身の使い古された剣を抜いた。


 その瞬間――


「......警告。当迷宮内ラウンジにて剣を抜く行為は禁止されている。殺されたくなければ、すぐに剣を収めて」


 そうしていつの間に傍へいたのか、自分よりも一回りもふた回りも小さい少女然とした妙な衣装に身を包んだ女が人族が男へとそう語りかけてきた。


 全身を見れば着ているのではなく、羽織るような衣装を身にまとい腕には何かをつけて頭をすっぽりと覆うものを着た不気味なそれに警戒を孕んだが、相手が女であるのと自身の実力、そして傲慢とも言えるプライドを傷つけられた形となった男は剣を収めるどころかその少女へと見せ付けるつもりで斬りつけようとした。


 しかし、その剣は無情にも半ばから蹴り折られることとなる。


 男は驚愕するしかなかった。

 自分の自慢の剣がこんな年端もいかなそうな女によって蹴って斬り折られるという結果に。だが、結果はそれだけではなかった。


 何かを噛んではプーっと膨らませてパンといい音を響かせた女はボソッと呟いた一言は即実行に移されるのだった。



「......死罪。 羽脚 "死神鎌"《リッパー・サイズ》 」


「なっ!けっ――」


 呟きとともに後ろ向きになると女は前方向へ強烈に蹴り出し、男とすれ違う辺りで体を捻って足を大きく上げて、それをまるで鎌を振り下ろすかのように男の首へと振り下ろした。


 "蹴って折っただと"という言葉を紡げぬままに、その鋭い蹴りによって首を落とされた男は物言わぬ物体となって血を噴出しながら倒れた。


 後に残ったのは、それを事前に仲間達を失う結果という"経験"をしたことのある者たちの哀れみともとれるため息だけであった。




 * * * * *




「あ~あ。またプーが蹴り斬ったか~。てか、なんで本丸警備のプーがあんなところにいるんだ......?」


 俺はそんなことを呟いて、一部始終を見ていたそれの処理をするこの迷宮の警邏担当でプー配下の魔獣『愚連隊』と警備担当のブシドウ配下の『足軽』の作業を見ていた。



 迷宮を開放して2ヵ月半が経った現段階で未だに変わることのない光景。


 そして、レティーナ様から話を聞いた時よりもさらに評価を下げる光景。


 ここが日本のテーマパーク的な場所じゃないのは分かるし、各々が必死に生きるためにと言うのも分かる。しかし、そこらへんのテーマパークよりは比較的に親切を売りにしているだけに、ああいった低俗な対応をとられると想像以上に不安にもなってくる。


 この世界の人族の行く末みたいなものを、だ。


「――ま、だからこそ間引き甲斐はあると言えるけど」


 それに、迷宮から奇跡的に魔武具を手に入れて外へと帰還するのもいるわけで、そういう連中がここであったことを喧伝してくれるだろうということで落ち着くことにした。


 しかし寝起きで見る光景じゃないな、"あれ"は。

 そんな光景にも慣れている自分にも驚愕ではあるけれど。


 現在の俺は、寝起きの後に一通り適当に身支度をしてこのラウンジ内における俺の作業部屋通称『パパの部屋』に来たばかりだ。


 そこに置かれているエロナ製のホワイトボードのほうへ目を向けた。


 自分の作業について簡単に書かれているそこには、それだけではなく各々の報告とも言えるものも書き連ねてあるため俺が一日どう動けばいいのか把握しやすくなっている。



 さて、今日は......。


 ホワイトボードを見ると、果樹園ができたと書いてあった。

 そして一月に一度のラウンジ内の視察か。


 内容を確認した俺は、一度背伸びをして椅子にかけられている羽織を身につけると、動き出すことにした。



 ――ガチャ


 そんな俺の部屋へノックをすることなく入ってくるものがいた。


「ガウ」


「お、アベさんおはよー。......どうしたんだ?」


 シュタっといつものように右手を上げて挨拶をするこの迷宮の前身となる洞穴前で初めて会ってからもうすでに半年以上もの付き合いがある美しい銀毛の持ち主――アベさんが俺の部屋へとやってきた。


「ガウガウ」


 アベさんはパパの部屋に設置されている付けっぱなしの監視モニターの前に行くと、爪を使って問題が起こっているよーと奴隷達の居住区側を指していた。


 居住区はラウンジの北西に作られており、仮設住宅を参考にしてダイクたちに任せて作られた。北に一列住宅、中列には警備用の詰所、公共施設の湯浴み場、そしてそれぞれの作業場行く用のスイッチ式ゲートが隣接されて、南側となる三列目も住宅という感じで並べている。


 今は、その詰所付近で何やら足軽たちに詰め寄ってはこれみよがしに他の奴隷たちを炊きつけるかのように演説をしている様子が映し出されている。


「......またか」


「ガウ?」


 やっちゃう?と爪を見せるアベさんに俺は首を振って、


「......いや、いいよ。アベさんだとアレすぎるし。えっと――」


 そうして2番目に知り合うことになった狼頭のジャックスへと彼との生命契約(ライフプロミシズ)レベル3による義兄弟級特典の念話で呼びかけた。


("ジャックス、どこにいる?")


("おう、目ぇ覚めたのか。今はトレーニングルームだが、どうした?")


("居住区でまた反乱"演説"だそうだ。申し込みは受付ちゃいるが、自分が特別だとか勘違いする連中はどこにでもいるもんだな")


("......またかよ")


 モニターで見るに何やら他の奴隷達に煽るように、唾をたぎらせて大声で話しかける様子が見て取れる。


 俺は、モニター越しにそんな大声で語る奴隷に対して、ここ最近気づいた生命契約(ライフプロミシズ)奴隷級特典とも言える新たなる"心解"という離れた場所においても発動させた者の心が強制的に読むことができる力を使った。


 なになに、ほうほう。


 ......演説中の彼の心の中は、ようするにここを実効支配したいらしい。


 言っていることは、とても理路整然とした内容だが心の中はドロドロの典型とも言える。


 どこかで見た光景だが、思い出せないが大したことじゃないだろうなと

 改めて画面を見ながらため息を吐く。


 彼のしている無意味な行動に対してだ。


 なんせ、2ヵ月半前にソウリョが手配した奴隷達はほとんどが帝国の侵略という被害者で、難民となったものがほとんどだ。実効支配の悲惨さを知り尽くしている彼らがこの衣食住においてこちらの世界じゃ考えられないくらいの品質を保つここでの生活は理想的なものだと思っているようだった。


 それに、真面目に働いてさえいればお金さえもくれるこんな環境をそんな"煽り"で失うわけにはいかないと言うのが、ほとんどの"心の意見"である。


 若干数は今扇動している奴隷のようなものもいるが、さっきのように心の内にあることを聞けば、ここでの労働条件が気に入らないようだったので、概ね追放処分で出て行ってもらっている。


 もちろん、行く宛てのない彼らは抵抗をするが、この迷宮空間においてそういうのは無駄であって追い出された後は、看板にかけられている力によって一度拒否設定を加えられたらもうこの迷宮の中へ入ってくることもできないので、森へと行くか、迷宮前のところでホームレスをするかしかない。


 迷宮を出れば後はどうとでもお好きにという感じなので、森を哨戒するうちのものに手を出さない限りこちらは干渉はしない。


 現状で彼らに取れる対応は概ねそんなものだが、甘いのかな?


 開放してからというものこういう安易なトラブルは後が絶えなかった。


 今起こっている扇動者もそうだが、彼らは奴隷でも後組となる侵入者に随行してきた奴隷達である。


 奴隷全てに生命契約ライフプロミシズは発動しているが、ハウエルのように人形のようではさすがにアレだったこともあって現状は自我はそのままにしている。


 彼らは随行していた侵入者たちの死がきっかけで、行く宛てのない罪なき人族ということで一応雇ってはいるが、侵入者たちの雇い方か気性か後々に傲慢となる連中が多数だった。そのおかげで、勘違いをする連中も結構いるわけでそんな奴らをわざわざ相手にするのも面倒だと本音では放置したいのだが......。


 それだと元々従順にちゃんと仕事もしてくれる人たちに申し訳ないからな。


("ま、適当に対処しといてくれ")


("おう")


 この件は改めて決めておいたほうがよさそうだなとそんな感じでジャックスとのやり取りを終えてアベさんの訪問してきた用事を終えると、そのアベさんとともに俺は部屋を出て畑部屋のほうへと向かった。



 パパの部屋が設置されている建物から外に出ると周囲には、子供たちの配下用の兵舎や、商談用、会議用、外向き用のいわゆる"官邸"みたいな用途で使用される建物があり周囲には警備のためか、子供達の配下魔獣が動き回っていた。


 ここは要するに迷宮運営委員会――通称『D.C』の本営に当たる。


 宿屋と畑部屋の間に挟むように作られた迷宮の政務、軍務施設として作られたもので基本的にここであらゆる運営に関する仕事がされているエリアである。


 そんなエリアを一言二言魔獣たちに挨拶をして行き、扉を出ると目の前には簡単な仕切りで分けられた商業スペースとなる場所があるが、今はそちらじゃないので畑部屋のほうへと向かうことにした。


 トレーニングルームをD.Cの施設と畑部屋の間に設置したため少し遠くなったが特に問題ないし、こういうちょっとした運動もいいもんだと畑部屋に通じる扉を開けようとする俺の前に何者かが立ち塞がった。


「ん?」


 目の前にいるのは、傭兵崩れといった様相の10人くらいの男達だ。


「てめぇが迷宮主ってやつだな。調べがついてんだ、へへへっ!......命が惜しかったら――」


 特権に生きたい欲を持つ奴隷の起こすトラブルよりもさらに多い、迷宮主と周知されている俺への襲撃という展開にため息をついて羽織に隠れたジャージの袖に忍ばせている指揮棒を男達へ翳して呟いた。


「"息を止めろ"」


 そんな言霊令ワードルールを発動させると、男達は自分の首を掻き毟るかのようにもがき苦しみながらやがて倒れた。


「ガウ?」


 大丈夫か?というのは俺のトラウマのことだろうか。


「......ああ、さすがに慣れた」


 迷宮主が俺だということは、もうすでに知れ渡っている。

 その上でたまにこうした連中が絡んでくる。外であれば、警戒もしてしかも俺のトラウマが誘発されるくらいの人数だが、迷宮内であること、そして散々こんな目に合うともうすでにそれすらもなくなったかのように自然と対応できるようになった。


 そのせいか、先ほどのプーのように即死罪というべき感じで対処する子供達の多いこと多いこと。


 教育的には大丈夫か少々心配であった。


("ヤンキーか、レディース?")


("......あの2人、酒臭かったからシメといた")


 俺の受け答えに反応したのは、先ほどの処刑劇を演じたプーだった。

 ああ、だから2人とその配下たちがいなかったのか。

 

 あの2人は酒に目がないようで、結構な頻度でこういうことが起こる。

 

 ま、自業自得だな。


 呆れているらしいプーへと襲撃を受けたこととその対処をしたので後を任せる旨のを伝えると、俺達はそれらを跨ぐように畑部屋への扉を開いた。


「おおー、やっときたね。久しぶりたね」


「......そうだな。それでどう?」


「こっちたね」


 久々とはいうが、俺が定期的に温室効果を維持するために魔力を込めにくるのでここに来ること自体はそう珍しいことじゃないとは言わないでおこう。


 そうして案内されたエリアに生い茂った果樹園の木は、木の成長としてはかなり短い期間にも関わらず、人材精霊のおかげですごい成長を遂げてみな青々とした様子がみてとれた。


 リンゴのような果物から、バナナのようなもの、梨のようなもの、"堅果"と呼ばれるアーモンドとかナッツ類のものもあった。堅果は酒には定番だって俺の親父に聞いたことがあるから、酒場のメニューが追加できそうだ。


「入手した種がこの短時間で木へと成長して実をつける結果となったのは、こちらとしてもありがたいたね。兎頭族は特に堅果が大好物だからたね」


「おーそうなのか。あ、そういえば......」


 そうして俺は兎頭族、そして土竜頭族といえばと考え付き鉱脈の探索を思い出す。鉱山ガス用の魔道具マスクの追加を渡す予定だったはずだ。


("エロナ?")


("お父さん~? どうしたの~?")


 俺は羽織の効果である通信機能で錬金術の娘・エロナに呼びかけて土竜頭族に納品するガスマスクのことを伝えた。


("あ、それならサラリーお兄さんがやってくれたはずだよ~")


("そうなのか。いや、それだったらいいんだ。悪かったな")


("気にしないで~")


 そうして娘と通信を終えると、気を使ってくれたのかじっと待っていたチャイブ老が話しかけてきた。


「迷宮主、収穫して配給する形と酒場への出荷で分けておいていいたね?」


「うん。そこらへんはお願いするよ。6:4くらいでね」


 6は果物好き、堅果好きの氏族たちへ4はその他の酒場供給やら奴隷住居区という感じだ。あまりは俺らで食べればいいし。


「......なんというか、本当に迷宮主は欲がないたね。人族じゃない、"人間"という種族はみんなそうたね?」


 その言葉に俺はため息をついて答える。


「俺にだって年相応に欲はあるよ。ただ、食事などに関しては特に欲がないだけだよ」


 あちらの世界にいた時と変わらない。

 欲しいゲームのためにとお金がほしい欲はあったし、その欲のために毎度毎度その対価となる勉強を頑張ったものだし。それらと同じようなもんだ。


「人の欲の方向性ということたね?以前聞いたことがあるたね」


「ここに来る侵入者はつまりそういう欲の方向へと偏った連中が来るんだ。実例としては分かりやすいだろ?」


「こんな年まで生きてても、奥が深いたね」


 チャイブ老はそういうと、わては果物さえあればいいとため息をついた。


 そんな彼の肩を叩いて苦笑いをすると俺は今後も頼むよと声をかけた。

 そして、もう特に用事はなくなったと次の場へと向かおうとするとアベさんがいつの間にかいないのに気づいた。


「ああ、アベ殿だったら果物のおこぼれでももらいにいったたね」


「またか......」


 相棒さんは肉食だけでなく、現実の熊のように何でも食べられるらしい。

 あまり食べさせすぎようにとだけ伝えて俺だけ外へと出た。


 視察のこともあり、ついでだとそのまま宿屋の南側にある商業区まで足を伸ばすことにした。未だに数は少ない現状ではあるが、身内の店は一応開いている。


 警備のためにとあえてオープンな露天方式の店々は、チャミル、チャマット共同の装備品補修用の店と、先ほどの通信をした娘・エロナの最下級ポーションと迷宮用の小道具の販売店と服飾担当のチャイムが開く奴隷向けの一般的な服、侵入者用の服などの服飾店が軒を連ねているそこでもどうやらトラブルが発生していたようだ。


 足軽に連行される形で監獄行きとなっていたのは、年端も行かぬ奴隷の少年のようだった。


 ここじゃ少年法とかそういう免除的なものはない。


 罪を犯せば等しく罰せられるし、こちらにとって良い事を行えば正しく評価をする。見たところ俺よりも年下という感じの少年は侵入者に随行したもののようだった。


 その光景は、昔俺自身が警察へと連行される様子にどこか被って見えた。


 迷宮創造主なんてご大層なものに着いちゃいるが、そういうものは一生付き纏うものになると経験しているので覚悟はしている。

 しかしこうして自分より下の子が捕まる様子を見るとなんとなくアンニュイな気持ちになるのはなぜなんだろうなと考えながらその場を離れた。


 そんな俺にジャックスから念話が届いた。


("おう、今いいか?")


("......なんだ?")


("あのピーチクパーチク言っていたやつが、てめぇと交渉してぇんだとよ。俺はトレーニングルームにでも戻っとくから適当に頼むぜ")


("......分かった。詰め所前でいいか?")


("おう")


 そんなやり取りを終えると、早速俺は転移テレポートを発動して詰め所前まで移動することにした。

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