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第48層「進撃の迷宮軍」

残酷描写と直接表現は抑えてますがそういった描写があります、ご注意ください。

 商人が引き連れる規模としては充分な大軍とも言える一団は、国境を目指し先を進んでいた。残りわずか半日となるその道程は順調に思える道でその一団の先頭にいるある傭兵の男はあくびをしていた。


 彼は思う。


 その難易度から考えられない高報酬に最初は信じられない思いだった。

 しかし、蓋を開けてみればそれはあまりにも簡単な依頼であったと振り返る。


 あちらに戻ったら娼婦を囲んでパーティだと、以前参加した時の奴隷との楽しみにほくそ笑むように笑った。


 しかし、その笑いはやがて固まり疑心的な表情へと変わる。


「なぁ、あの目の前に見えるのはなんだ?」


 横にいた男に、その傭兵は声をかける。


 そこにいたのは、馬らしきものに跨った妙な格好で頭を隠した1人の人族だった。

 まだ正確に見えるわけじゃないが、ぽつんとこんなところに1人だけいるその光景は不気味にすら思えた。


 迷子か?とも思ったが、もうすでに依頼は達成されて帰還途中にまさかなと思いながらいるとしばらくして顔がきちんと判断できる位置までやってくることができた。


 チラッと見えるそこにいた顔は、女の――それもまだ少女といってもいい彼の美意識でも飛びぬけて良好な部類の"オンナ"だった。


 いい女を見ればこの世界の人間――人族は、その欲をぶつけたくなるそんな単純な発想が当たり前。そして、そんな環境、そんな世界に生まれた彼も他聞に漏れず、1人ということもあったために特に警戒せずに、個人的に近寄って帰還の暇つぶしにでもと前に出た。


 もうすでに彼の頭になぜこんなところにという疑問はなかった。

 ただ欲を晴らしたい、それは相手が嫌がろうともというある意味純粋なものだった。


「よう、いい女がこんなところで迷子か?――どうだ?帝国まで送ってやるし、今回たんまり報酬があるからいい値で買ってやるぜ?」


 その問いにガムを噛み、暢気に風船を膨らませる少女は言う。


「......ま、判ってたことだけど」


 ――プ~~~


 そう言い放った少女は手に持つ何かを構え、風船を膨らませた。

 そして――


――ドパンッ!


「死になよ」


 決して風船ガムが破裂した音ではないその音に違和感と自らへの不自然な衝撃になんだ?と疑問に思った傭兵の男は、下がやけにすーすーすると思い、下を見てその腹に空白が出来ていることに気づいた。


 血を噴出しながら、"なぜだ"と思いながらも息絶えて後方に倒れる男に、周辺でおこぼれをとニヤニヤして見守っていたその仲間は、ぎょっとして少女の両手に持った筒状のものから漏れている霧状の"水煙"を見た。


 その武器は、消火作業の際にも役立った発砲型の武器で、風圧と水圧を利用することで製造されたタクト"謹製"の水鉄砲だった。


 馬に乗って戦うから騎射的な遠距離攻撃もできるボウガンみたいなのが欲しいと珍しくプーに強請られたこともあって、そのツンとした娘の頼みとあらばと颯爽と取り掛かって、そういえば水鉄砲とかオリジナリティあるよなというところから生まれたものである。


 上部は竹筒の水鉄砲のようになっていて、中に水精石、風精石が内臓されトリガーとなる部分を引くと中に水が生まれ風の力で、圧が生まれるように作られている。


 もちろんそれも石の力によるもので、普通では得られない圧力が中で生まれ、下部に取り付けられた引き金を引くとそれが前方へと一気に発射されるため圧の量――トリガーを引く段階――次第では先ほどの男のように腹を貫通するほどの威力も生まれるほど強烈な力を有する魔道具武器である。


 そんな武器を前に、こいつがやったんだと判断するや否や武器を手にとって危険な武器を持ったものを捕殺をしようとした。


 しかし――


 ―ドドドドド......


 と、彼らの周りにその馬のような乗り物に乗って現れた目の前の少女や少女達の仲間と思われる衣装を着たものたちが同じ武器を手にして現れた。

 

 傭兵の男たちは、自分の運命を呪った。なぜだと。

 しかし、迷宮軍にとって彼らはどうでもいい存在だった。上がる恐怖からなのか、はたまた痛みからなのか分からない怒声罵声悲鳴の混ざった声は辺りに響き渡ることとなった。


 そんな迷宮軍による奇襲によって、戦いの火蓋が切られたのだった。



 * * * * *



 その頃、中段に位置した商人・モッサリーノは自らの奴隷にある処理させているところだった。彼は歓喜していたのだ。ずっと待ち望み、そしてやっと手に入った自分の同志――いや、歪んだ一目惚れの相手を手に入れたことに。


 帝国領につき次第、その契約をしようと思っていたが彼はあまりにもガマンができないためにこうして定期的に自らにこのことを伝え用済みとなったアラーネの語る元凶の元凶たる村女を奴隷化して奉仕をさせていた。


 息苦しく、吐き出そうと咽る女を拳で殴りつけて再開を命じる。


「げひょひょひょ。これでも君には感謝しているんだぁ~ホントであれば、君くらいの下民はすぐに消せるのにこうして"使って"あげているんだからぁ~ね。

 ......判ったらさっさとボクの上に跨るんだよ~?げひょひょひょ」


 すでにそれまで殴られ続けて今のようなやり取りを散々やり続けた結果だろうか、その女は顔の至る所に青あざや切り傷、そして食事も満足に取らせてもらえなかったことによってとてもげっそりと痩せていた。


 そんなことはお構いなしにまた殴って言うことを聞かせようとした矢先――

 何やら馬車の外が騒がしいことに気づいた。


 女を殴ってどけると、モッサリーノは下半身を露出したまま外へその重たい体を動かして出て叫んだ。


「何事だ~!?」


 そうすると、やがて戦闘付近からやってきた私兵らしき男が駆け寄ってきた。


「それが......先頭付近を護衛していた一団へと襲撃がかけられた模様!」


「しゅ、襲撃ぃ~?」


 モッサリーノは考える。

 帝国側、それももう目と鼻の先にとなった帝国国境の橋側からのとはまさかとモッサリーノは聞き返した。


「"亡国の亡者共アン・レジスタンス"か?」


「......いえ、どうやら違うようです。見た目もそうですが、その戦い方が奇抜すぎます」


 どういうことだという前に、今度は後方からとてつもない大爆発の音と風圧によるためか、風が吹いてきた。鼻に感じるそれは彼の知るそういう類のものではなくただただ無味無臭の風だった。


「げひょっ? この匂いは"爆草"じゃないぃ~......なんだ、何者だぁ!!」


 モッサリーノは終始、混乱に包まれるだけとなった。



 * * * * *




 そして、そんな異変は同じく中段で檻に囚われた少女――アラーネの耳にも入ってきた。なんだ?と思うも、栄養を嘔吐によって吐き出されたために糸も出ず空腹によって満足に動くことも出来ない原状ではどうすることもできなかった。


「な......に......?」


 まだ遠くに聞こえる何やら争うような声に疑問に思うも、あのモッサリーノが放ったそんなことのためにというショックと、動けない自分への苛立ちと師匠と呼ぶタクトに迷惑をかけたことによってすぐに考えることをやめた。


 結局、私は何もすることができなかった。

 今彼女はそんなネガティブな考えしか思い浮かぶ他ない状態にあったのだった。




 * * * * *




「おらぁ~!どけやぁ~オラァ!!」


 そう言ってその襲い掛かった一団の一部である部隊――白から黒へのグラデーション模様の羽織を身に着けて、袖に通さず身に着けた上半身裸にサラシを巻いて、捻り鉢巻といった異様な格好の男は、怒鳴り散らしながらも自らの木刀を振り回して、至る所へと殴り込みをかけていた。


 木刀は魔道具製でできている。

 つまり、何かしらの力によって彼は傭兵の男達をなぎ払っていた。

 しかし相手もさすがに戦争屋といわれる傭兵集団で、当初の混乱は序々に落ち着きを取り戻していく。


 それは、ヤンキーに相対する坊主でむきむきの大柄な男も含まれた。


「よくわからん格好で、俺らに襲撃をかけるとはな?どこの闘賊だ、貴様ら」


 その言葉にピクっとしたヤンキーが振り返った。


「あぁ~?おい、コラ。てめぇ、あんなザコと俺らを一緒にしてんのか?あぁ!?」


 ヤンキー特有の下から救うように舐めあげるような睨みに傭兵の男は、鼻で笑うと目の前に隙だらけとなったヤンキーをそのまま右腕で殴り飛ばした。

 すっ飛んでいくヤンキーは起き上がると、また殴られに行くかのように男へと

 迫る。それに今度は自らの手ではなく、武器で切りかかると今度はそれを器用に避けて傭兵の男へと頭突きを食らわせた。


 怯みながらも大したことがない威力に傭兵の男は、ヤンキーの胸倉を掴んで、


「なんだ、これが欲しいのか?......だったら、飽きるまでくれてやるっ」


 そうして、胸倉を掴みながら片手で殴ったり膝を入れたりなど文字通り、ボコボコにしていった。切れた血によってヤンキーはもちろんだが、男も返り血によってその身が赤く染まった。


 そこで違和感に傭兵の男は気づく。

 いくら血で切れて自分につくといっても、ここまで明確な付着はあるのだろうかと。それに流す血に比べて、返り血の量が多いことに気づいた。


 そんな流れからつい、傭兵の男はヤンキーを前へと突放すように投げた。

 へへっと笑いながら、口から流れる血を拭ったヤンキーの目はしたり顔で言う。


「......気づいたところでどうしようもねぇぜぇ?」


 そして、自らの血をまるでばら撒くかのように溢れさせるといつの間にか集まっていた『族』たちの手にあるバケツほどの桶にそれらを注いで投げさせた。


 うろたえつつも、避けようとする傭兵の男の仲間たちだったが、なぜか避ける方向に向かってくるその血をなすすべもなく浴びる結果となった。


「オラァバカだからよくしらねぇけどよぉ?血ってのは、全身に酸素を送ったりするんだとよぉ、でそれがどういうことかはしらねぇが俺はその血を造る肝臓から生まれたぁ~ってことはつまりはぁ~」


 そうして手に取った自らの血を投げるようにして、目の前に"投げた"。

 それはまるで水を吸収するタオルのようにかの傭兵の男の皮膚へと消えていく。


 不気味ともいえるそれを必死で拭おうとするが、どんどんと吸収されるそれは止まることはなくただひたすらに吸収されていった。


「へへっ、レディースの野郎やレティの姐さんほどじゃねぇが悪くねぇ殴りだったぜ!」


 そうして、手の平を掴むようにして握り締めると――


「血死 Die "血の洗濯"《デッド・ウォッシュ》」


 と、呟いた。


 すると傭兵の男がビクンっとした後、まるで鯉のように口をパクパクさせながら両手で首を掻き毟るように倒れ込む。しばらくもがき苦しみながらも、男はやがてピクリとも動かなくなった。


 それは、回りのヤンキーの血を浴び吸収していった男たちも同様であった。


「オラァ!まだまだ流す血はいっぱいあんぜぇ~!」


 そうして彼はまた、別場所へと向かって暴れだす。

 残るものはヤンキーの血に血流からの酸素を根こそぎ取られて、異常な酸欠症を起こしてもがき苦しんだ上の絶望的な死、のみだった。




 * * * * *



「ぐわっ!な、なんだこれ......肉みたいなのが体に!」


 ここでも別の――ヤンキーの女性版ともいえるレディースが生まれた所以となる臓器からの力で鉄パイプに込められた力をも利用しながらも、それらを打ち出していた。


「"シオ"ホルモン 特上乱打グロウ・バッティング!」


 そうして風の力が付与された鉄パイプで打ち出されたものは、風を伴って男達の皮膚にべったりと張り付く。やがて、それらは皮膚へと吸収されていった。


「おうおう、オッサンども!キン○マついてんのに、なさけねぇなぁ~オイィ?あたいのホルモンはそんなに嫌かぁ~? あ"ぁ"~?」


 彼女が飛ばすものは、手から溢れるピンク色のホルモンだった。

 そしてそれも同様に皮膚を通じて体内に入るまで、ヤンキーと同じだった。

 だがそこからは違う。それは――


 それが当たった男達の見た目の変化によって知らしめることとなった。


 付着した部分を中心にそれらは広がりを見せると、やがてそこはとてつもない速度を遂げてまるで老いるように干からびて枯れていき、やがてそこには白髪と皺皺になった男達が転がって、その誰もが老衰で息を止める光景が広がるのみだった。


「しかし、手ごたえがねぇ奴らだなぉ~オイ?――っと」


 ――ドッゴーーーーン!


 商人の隊の前のほう――おそらく足止めしたプーのほうから奇襲として引き連れたエロナ率いる『エロナ錬金師団』による風船爆弾の余波である地響きやすごい音がここまで届いてきたため、少しよろけた。


「さすが、オヤジの力の一部を持ってる姉貴だナァ~オイ!あたいも負けてらんねぇ」


 そうしてレディースは、辺りにヤンキーとは違う枯れ果てたモノを残してはまた再び散っていった。



* * * * *




 傭兵達がみな、彼らヤンキーたちにやられるほど柔な訳じゃない。

 それは、中でも護衛力を発揮できる位置にいる中断付近にいる傭兵達は人一倍も二倍も実力は違っていた。


「無念ー!」


 と、言って倒れ付したのは『足軽』の一体。


「な、なんだこいつらは......まるで死を覚悟したかのような突撃してきやがって」


 ため息とともにその気味の悪い指揮力に毒づくのは傭兵だ。

 傭兵の男――帝国領でも先陣を幾度も勤めるほどの実力者を前に足軽たちには手も足も出せない状況であった。


「お前達、下がれ」


 そうして前に出てきたのは、一際妙な格好をしてこの世界にはない羽織を羽織った理路整然とした様子の男だった。


「貴殿。腕に覚えあろうとお見受けした。ならば、一手お手合わせ願いたい」


 腰に差してある武器を鞘から出したその妙な男は、そう言い放った。

 一手だと?と傭兵の男は思う。


 ここはもう戦場となっている場だ。

 それが暢気に一手手合わせというその言葉は舐めているとしか思えない。


「......てめぇもあいつらやこいつらの仲間ってやつだな。なら、一手どころか全殺しだ」


 そうして男は、1.5mはありそうなほどの大剣を背中から抜くと両手で構えて

 それを妙な格好――ブシドウへと向けて振り下ろした。


 ブシドウは後ろへ下がろうとするも、何やら足に違和感を感じて下を見ると、目の前に迫る男の仲間だろうか、その男が足を両手で封じていた。


「なんと卑怯な......武士の風上にもおけぬ!」


 彼らは武士じゃないのだが、憤慨したブシドウはそのまま刀を封じている男の頭へと突き刺した。そして――


「せっかくの手合いと関心したが、幻滅した。ならば死して冥土へ参れ」


 そう言うと彼は両足を揃えて、右足を踏み出して"歩き"出した。


「歩法術 "観掛倒し"」


 その歩みに傭兵の男は、何を暢気にと一撃を与えようと大剣を振るうがなぜか、距離感が掴めなくなりあえなく空振りをしてしまった。


 そして――


「歩みは人の道。外れし鬼は、からぶるなり――天誅」


 背中にいつの間にかいたブシドウの袈裟斬りに抵抗もなく、ばっさりと両断され傭兵の男は前のめりに倒れた。


「父上に絶賛された"みかけだおし"とやらがここまで効果があるとは思えなんだが、さすがは父上っ!」


 冗談半分の思いつきで歩幅を"相手の予想"を外す歩き方というものを参考にして研鑽を積み実用以上にまで昇華させたブシドウの生真面目さのおかげとも言えることは本人はおろか、技の発案者であるタクトが知る由もないことだった。


「さて、道は切り開かれた」


 周囲を見ると、前方で牽制役と奇襲役を請け負っていたプーがホワイスに乗って回りを穴だらけにして佇んでいた。


「うむむ。武士なれば、そのような水の筒などを使うものではないが......」


「......トトの発明品を愚弄?」


 何よりもトトと呼ぶ父を愚弄されることを嫌うプーは例え仲間でも、前の会議のような険悪な雰囲気をブシドウにもぶつける。力関係などではなく自らの発言にその水鉄砲を作った父上を愚弄したかと気づいたブシドウは慌てた。


「ち、違うぞ!そ、それがしはただ」


「......今はいい。それで、もう終わった?」


「道は切り開かれた。が、父上の容態次第でもう少しかかる」


「......そ」


 そうして2人は襲撃をしてくる傭兵たちをなぎ払いながらも、道半ばの強引な迷宮輪ダンジョンリングを用いた男を心配するのだった。



 * * * * *



「おい、もう大丈夫か?」


「あ、ああ。多少気持ち悪いくらいだ」


 以前に比べれば反動が少なかった強制迷宮空間による森の外への全軍転移は馬車内の迷宮の力も借りたことで多少マシな状態である。


 さすがに出遅れた感のある距離を埋めるためにと無理をした結果だが、アラクネちゃんのだいたいの位置と、サラリーの勘とエロナの魔道具製のダウンジングによってギリギリといってもいいくらいだが、問題なく追いつくことができた。


 頭を振るって、迷宮内の超回復機能であろうとも抜けなかった気だるさがようやく全快した俺は、外へ出た。


 至る所で暴れまわるホムンクルスの娘と息子達を一通り確認すると、本人は問題なさそうだが至る所で魔獣たちの被害もあるようだった。


 俺の周囲にいる娘達ドーターズ息子達サンズは基本的に後方支援タイプのオフクロ、ジョイ、サラリー、モジョ、ホステスにホストたちだ。

 だが、彼らも各々の武器を使って周囲に群がりそうな傭兵団を駆逐していく。


 その勢いはとても止まるものではないようだ。


「愛の鉄槌マザー・フライパニッシュ~!」


 オフクロの巨大化したとてつもない重量のありそうなフライパンをフルスイングで群がってくる傭兵たちを横薙ぎにして吹き飛ばす光景が見えた。


 そんな横倒しになったものたちへと第二射が放たれる。


注射器隕斜ハイポデルミック・メテオ


 そういったジョイの周りにいる『ナース』集団による空へ向けての投てきされた注射器がまるで、隕石のように上空から降り注ぎ当たった傭兵達は咳や腹の痛み、頭痛など様々な病状を訴えては倒れていく。すごい嫌な注射だなあれはとそちらを見てため息をつく。


 そして大惨劇と形容してもいいホステスとホストによる攻撃が襲う。

 もがこうとするが、そこはモジョの髪による束縛によって逃れられることはなく何もできないままに、辛口と甘口の涎によって身動きができないままに溶けていった。


 なんという連携だと関心すらする俺の横には、勘ではこちらから矢がとか呟いては俺の横や前に移動して、持っているビジネスカバンにそれらを納めていく。


「......全く"癇"に障る連中だ。父さんに攻撃などと、死ねばいいさ」


 そうして、カバンを再び開けると呟いた。


「"収益還元"《ハイリスク・ハイリターン》


 するとビジネスカバンに吸収されたものがそのままなのか、カバンの効果なのか凄い勢いで飛び出していっては放ったものへと還元していくかのように襲い掛かった。なすすべもなく矢のお返しに倒れる男達を見るとなんというか哀れに見えてくる。


 なお、近接系は主にジャックス、オーリエが傍にいるから俺は本当に歩いているだけであるのがなんとなく腑に落ちないのは言うまでもない。


 そんな中、羽織の効果でブシドウから問題の男がいるらしい位置が伝達されてきた。心配をかけていたようで、俺はそれに問題ないと答えると早速そちらへと移動を始める。


 時折襲い掛かってくる襲撃者を相手に生き生きとして俺を守るようにジャックスやオーリエが暴れ、駆逐していってはその分進むという方法でもはや数十人となった相手の軍団たちを前に悠々と歩いていく。


 やがて、アラクネちゃんからの位置が間違いじゃない辺りまでやってきた。

 すると――


 豪華そうな馬車から巨体を揺らせながら走ってくる男が姿を現した。


 どうやらこの一団のボスらしき商人と初対面を果たしたのだが――


「げひょ~!こ、これは貴様の企てか!?貴様誰だ!?レジスタンスか!」


「......」


 俺はここに来るまでに交わした会話で、ジャックスに聞いた虫精族について聞いていた。それによれば、件の商人が言うレジスタンスも戦力の当てにしているという『変異体』というこの商人やアラーネのようなものがいると聞いた。


 粉を使うものと聞いて、蝶頭族か?と聞いてジャックスがそうかもしれねぇというのでそうかと納得していざ対面したのだが......。


 俺はなぜか、男を見てとても残念な気持ちで呟いた。


「なんていうか、蝶ってよりもただの"蛾"じゃん」


 俺の呟きは不思議と響き、腕章に伴う機能:通信を通して回りの娘、息子たちの笑いとともに目の前の顔を真っ赤にするという効果をもたらすのだった。

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