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第41層「迷宮"チュートリアル"ロールプレイ③」

「さて、5層目にようやく辿り着いたが......なんていうか、色々"ひどい"から保険の意味も込めて一度戻るか。"今回は"キップもゲットしたし」


「......賛成だ。ここに来るまで何度死んだんだ?」


「3回......くらいだヨ?」


「............お腹すいた」


 思い思いの感想で、今度の迷宮探索では手に入れたキップを片手に帰還陣の置かれているエリアへとやってきた。小部屋が設置されており扉にはご丁寧にも、帰還する際は帰還キップを持って中へという但し書きが書かれているのだ。


 俺たちが迷宮へと入り、死に戻りもオーリエの言う様にこれで3回目になる。


 あの後、落下によって死に戻りをした俺はモジョに挨拶とご褒美のチョップを見舞ってまた改めて挑戦を始めた。


 しかし、ランダム性があるのか1度目と同じマップではあったが、モジョの仕掛けた罠らしきものがとは印象の異なるレーザーっぽい熱線にやられたり、一般よりもかなりでかくて実力が2倍、3倍はある俺達の中では"赤黒級"の魔物というものが突然集団で出てきて、なすすべもなく......ということもあったので、落下からも2回ほど全滅をした。


 4回目の挑戦となる今回も、罠や魔物の種類が結構違ってはいたがレティによって調整がなされたのかそこまできついという内容ではなかった。


 ここで言う死んだというのは、もちろん実際に死んだわけじゃない。

 どういう仕組みでそうなっているのかは知らないが、生命力が著しく低下して維持が難しいと判断された状態となった場合に自身の体が光っていつの間にかラウンジ中央のゲートに送られるのだ。


 仕組みが分からないが、レティも関わっていると思われるこの死に戻りシステムは、記憶が戻れば分かるだろうと今は気にすることはやめにした。


 俺なりに、"1機でクリアしたい"と願っていたことが情けない落下オチという結果で、未だ胸に残る哀愁を消し去ることはできないだろう。


 そんなことを考えながらも戻ってくると、中の空気とは違うのかラウンジ内の空気はなんか新鮮さを感じた。例えるなら満員電車から富士の望む山脈に来たかと思えるくらいの違いだ。


 今回は初めて死に戻りではなくきちんとした計画性の下に帰ってきたので、あることを実行した後は少しだけゆっくりしてから改めて全層を目指そうと思う。


 そんな俺達はラウンジ内中央ゲートから、ギルドカウンターへと向かった。


「おや、お帰りなさいだね~旦那さん」


 ギルドカウンターにいたのは、ギルド総長のホステスが持つ下位組織でその名も『キャバクラ』という見た目が派手な女性型の魔獣集団の1人である。

 ......なんていうか、普段の俺であればドキドキするタイプの奴だけど、魔獣にはさすがに靡かないのか俺には全然来るものがなかったので、ほっとした。


 そんな『キャバ嬢』という名に恥じない妖艶さを持つ女性型の魔獣は、みな同じようでいて髪の盛り方や煌びやかさや着ている服などが全員バラバラながらも、ヤンキーたちの下っ端同様にみんな顔が同じだった。


 個性のある1卵双生児の集団といえばいいのか、そんな感じだ。


 ただ、あのホムンクルスたちの部下であるこの魔獣たちに共通しているのか、あのアラクネちゃんもそうだけど全員どこかしらにアホ毛っぽいのが生えているところがすごい謎であった。


 引っこ抜くと某叫ぶ草のように......まぁ、抜こうとしたら誰でも悲鳴はあげるよなとバカな考えを振り払うことにした。


 そんな魔獣――キャバ子A(命名:俺)は、俺たちを労うとやってきたカウンターの意味が分かっているかのように受け皿を出してきた。


「説明は......ママが必要っていってたけどどうするね?」


「ああ、一応そこも込みでのロールプレイだからな」


「わかったよ」


 そう言うと説明を始めた。


「簡単に言えばここは、迷宮で魔物を倒して手に入れた魔石なんかを買取るための専用の場所さ。ギルドカードにも記載されている貢献度ポイントに加算させる以外じゃ現金での取引も可能さね」


そうして、受け皿をこちらに見せるようにすると、再び説明を始める。


「大きさ、色に応じて金額は変わるけれどね。で、この受け皿は特殊でそういうのを一瞬で判定できる魔法の受け皿ってわけさ。こんなところだね」


 大きさと色で判定か。ソレが参考とされてて目安になっているのか。


「見極め......目安っていうかな、それはどうなんだ?」


 俺は疑問に思ったことを聞いてみた。


「そうだね~。大きさは例えばこの5cmくらいが、銀貨1枚になるけど1cmごとに大きいものを手に入れたら、銅貨で20枚分加算されていくよ」


「つまりは大きさに関しては1cmが銅貨20枚でそれが5cmの銀貨1枚ってところか」


「そういうことさ。ホントに記憶はないのかい?」


「迷宮に関することは......な」



 それ以外じゃ記憶はある。

 こちらの世界じゃ銅貨は100枚あれば、銀貨1枚と同じだとあの部屋で会ったばかりのジャックスからの情報で知っている。あれは迷宮じゃなく、亜空間で仕入れた情報なためか、記憶が封じられているわけじゃないようだ。


「そうかい。で、色に関してだけど......基本は青、赤、黄という魔物の"タイプ"で色が分かれているけど、その色が濃ければ濃いほど――つまりは、濃さによってランク分けされているのさ」


 説明では、獣や人族系統の血の色が赤いものは赤系の魔石を落として、それが桃色→薔薇色→赤の三つの色によって分かれている。ほかには水棲系は血の色が青く落とすのは青系の魔石で色は水色、空色、青で、昆虫系の魔物は黄となっているので黄系の魔石となり、緑、黄緑、黄の順に高いと説明された。


「なぁ~んか......聞いたことあるというか......?」


 俺は、ドサ袋に入れていた宝箱から手に入れたポーションのアイテム情報を見てこれが関係するのか?と思った。これも手に入れて分かったが、3色――いや、青はないから2色しかないけど、手に入ったらもしかしてと疑問に思っていたところだった。


 ちなみに、記憶が戻った後に俺が自ら辿り着いた三原色に由来する効果から着想して、3氏族会議の3色人族を参考にした魔物設定による魔石の3原色ということで納得することは、今の俺には考えられようはずもないことであった。


「色の濃さに関しては、赤系統の魔石なら最低品質である桃色なら買取額は銅貨33枚ってところだね」


 そこから薔薇色で66枚、赤の場合は銀貨1枚だと説明された。

 そしてこの受け皿はそういう集計を自動で行うので不正はされず常に均一らしいが、もし買取額額が気に入らないのであれば、別に換金せずともいいらしい。


 ポイント加算という選択もあるけれど一つだけ注意点があるといわれた。


「まぁ、旦那さんなら"後で"分かると思うけど......こいつは迷宮外へと持ち出すことができないさ。持ち出した瞬間に魔石は溶けて消えてなくなるからね。外側で売りさばこうとしても無駄ってわけさ」


 レートが気に入らない、ポイント加算も気に入らないのであれば自らこの迷宮ラウンジ内で手売りとかをするかしかない。だが、基準が明確に決められた範囲で、しかも商売スペースの区画がある宿屋の南側で商人と取引できても、商人がそれを外へと流すことはできないので結局は取引する意味がない。

 最終的に詐欺を思いつく流れになるが、言われるまでもなく罪になるだろうし、ここは迷宮なのでこちらが許可を出した商人以外は滞在に制限をかけられるという説明を受けた。


 分かったかい?と終えたそれに俺は答えた。


「ああ、大体伝わってきたよ。もう少し噛み砕いて説明すると、分かりやすいかもしれないからホステスにそう伝えていてくれ」


「了解したよ」


 そうして俺たちが倒して手に入れた桃色や黄緑などの魔石を受け皿へと入れて清算した。


「それで、金に換金かい?それともポイントに加算して清算するかい?ポイントレートは銅貨1枚分で1ptになるよ。旦那の換金額じゃ銀貨6枚と銅貨33枚だから、この場合貢献度ポイントは633ptになるけどね」


「633ptで商品と交換は可能か?」


「無理だねぇ。交換は1000ptの黄緑、薔薇色のポーションが最低ランクさ。あとは3000ptで各種魔道具、10000ptで中級クラスの魔武具や魔道具、今のところの最高じゃ1000000ptの旦那さん製最高級の魔武具とかって感じかね」


「なら換金したほうがいいな」


「あいよ」


 俺が作ったというそれに、興味を覚えるがまぁあとでどうせ分かることだと思い分かったとそれらを全て換金に変えた。


 ちなみに後で分かることだが、10000pt級の商品はできているが最高級に関しては材料があれなためにできていなかったのはここだけの話である。


 長々となってそれらの買取について説明を受け、理解したと俺たちは、取引履歴を記録させるという理由でギルド証を提示してくれといわれたので、ソレを渡すと水晶に翳した後に別の受け皿へ金の入った袋とギルド証を入れてこちらへと差し出した。


「一連の流れは以上だよ。どうするんだい?」


「ま、詳細は記憶が戻った後だな。ひとまずこのままでいいとは思うけど、今の俺はただの侵入者だからその点も理解しといてくれ」


「了解したよ」


 そうして別れると、さっきから無言の圧力を放つ女性たち――主にアラーネによってせかされるように酒場であり宿となる酒場宿へとやってきた。


 まぁ、15日も風呂に入っていないからな。

 

 なんとなくは理解できるけれど、帝国からの逃亡中もそういう状態じゃなかったっけ?それとも、何か心境の変化でもあったのかな。


 そんなことを考えつつも酒場宿の中に入ると待ってましたとばかりにある人物(?)が近づいてきた。


「あ~、テンチョじゃないっすか。おかえりっす~」


 そうして近寄ってきたのは、ホステスと同じくできたこの酒場の店長ギャルコを頂点とする下位組織『ギャルサー』という名の魔獣たちである。


 現在は1Fの酒場が営業しているわけじゃないので、人数はそんなにいないが本格的に営業すれば、接客担当がギャルコを含めた『ギャルサー』とギャルオを含めた『クラブ』で持ち回りを担当するという流れである。


 宿屋の店主がギャルオで本来はそちらが担当になるが、人数が人数でもあるし軽そうな少女にしか見えないギャルサー軍団たちばかりではあれだということもあっての理由だ。


「「おかえりなさいませ!旦那様!」」


 さらに厨房からやってきたのはメイド服に身を包み、サービス業というよりも私、屋敷で給仕してますとでもいいそうな少女型の魔獣だった。この子達がオフクロが長となる下位組織『ハウスキーパー』というメイドの魔獣である。


 2階が宿になっているが、宿泊客なんて当然いない。

 それで暇だったのか奉仕するために、降りてきて料理でも作っていたようだ。


 この子らは誕生してから何度も言ってるが、旦那様はいい加減やめてほしい。


「あ、ああ。オフクロは厨房か?」


「はい。旦那様のためにと腕によりをかけてお料理中です」


「あーあ~しら(私ら)、お酒しか作れないしぃ~ギルドカウンター側は姉さんたちが担当だから暇なんだよねぇ~だからぁ~料理なんてぇこのコらにまかせてぇ~あ~しら接客する?ってぇ~そんなわけぇ~」


 いちいち伸ばすイライラするような喋りだが、これでも真面目に仕事している分評価できる。今だって、カウンターに座った俺たちへと冷えたグラスに氷を製造するだけの魔道具から氷を入れて酔精草を入れた飲み物を渡された。


 匂いからすればお茶?のようなそれを、すっかりお酒を覚えた俺は一息で飲み干した。


「アァ~うまいな」


 未成年者による喫煙、飲酒は法律により禁止されていますはあちらの世界のこと、もうすでにこちらの世界にいて年も取らない俺には関係ないとばかりに勢い込んで一気に飲んでしまったが胃からくる熱に少し飲みすぎたと後悔した。


「お嬢様方、お風呂の準備はできておりますのでどうぞこちらへ」


 そういってメイドたちはそれぞれ1人ずつがアラーネとオーリエに声をかけてきたので、俺は金の入った小袋からお金を渡した。


 確か銀貨1枚だったよなと思いつつも。


「だ、旦那様はこの迷宮の――」


「今は1人の侵入者だってレティとか君らのボスであるオフクロからも聞いているはずだ。そのように扱ってくれ」


 そう言って再び出されたウーロン茶のような酒を今度はちびちびと飲んだ。


「......かしこまりました」


 と、いって礼をしたメイドを連れた女性二人は大丈夫?とでもいいそうな感じでこちらを見るが先に入ってきてくれと手を振って見送った。


「カァ~!これがあるからやめられねぇな!」


 ジャックスも隣で酒に舌鼓を打っている様子が垣間見えた。

 俺は飲みっぷりを賞賛しながらも、ご機嫌にボトルに入った酒をジャックスのグラスへと注いだ。


「お、悪いな!......ングングング......プファァ~!ところで」


「あん?」


「いつ実行するんだ?」


「ん~......まぁ、今のところは15日ぶりの飯と酒を楽しもう」


「......きっと怒るぜ?」


「ソレを含めての侵入者ってやつだ。俺だってそれくらい覚悟をもたなきゃな」


 そんな話しをしている間にも、おフクロ特性の出てきた肉の串焼きと畑で採られたであろうサラダやポトフのような野菜の煮込み料理というバランスが考えられた料理が出てきて腹を満たした。


「てんちょ。迷宮のテストォ?それ終わったらぁ~出す料理の料金をちゃんと決めたいってぇあのメガネがいってたよってぇ~ギャルコさんがいってたっていうかぁ~」


「ああ、分かった」


 そうして俺はやがてやってくる機会のために今は大人しくしながら待つことにした。そうしてフラフラになったジャックスが2階へ上がり眠りに行くと、俺はあることを実行をした。


――ガシャァン!


 と、誰もいない俺達と接客員だけの酒場内にグラスの割れる音が響いていた。

 俺が投げたものである。


「ちょっ......」


「ああ?んだぁコラ?......こっちは客だぞ?なんか文句あんのか?」


 そう言って、『キャバクラ』で俺の世話役のキャバ嬢が青い顔をしてどうしようという表情をしていた。


「ご、ごめんってゆーか......あ、あのぉ」


「なんだぁ?なんでそんなにビビってやがるんだぁ?コラァ~?舐めてんのかぁ?おぉ~コラァ?......えと、俺が悪いんじゃないのかぁ~?コラァ~?」


「......」


 そうして俺が一方的にキャバ嬢に慣れない絡みをしていると――


「どうしたんだよぉ?」


 ギャルオの"後輩"『クラブ』の魔獣たちがそう言って2階からやってきた。

 逆に酒場の入り口からは、『D.C』という腕章をつけ、木刀を片手にしたヤンキーとレディースの『族』と『チーム』もやってくる事態にまで発展した。


「おい、キャバ嬢てめぇ~大頭になんかしたよぉ?」


 おいおい!そっちじゃないぞ。


 これはあれか?失敗か?とそんなことを思った矢先に『族』と『チーム』の魔獣たちが現れたほうから呆れたレティがブシドウとプーを連れてきた。


「もーパパ! 演技下手すぎだよ......」


「あぁ~?やんのかぁ~コラァ~?」


「まぁいいや、とりあえず連行!」


「......父上、今はレティ姉上の命もあるので御免」


 それはあれか、俺よりもレティ優先って意味か?

 そう考えるとなぜか悲しくなってくるな。


「......はぁ~、真面目すぎ」


 何やらビクっとすることを呆れたプーに言われる始末。ここまでやることに意味があるんだと自分へ納得をさせた。

 

 そうして俺はブシドウとプーに両腕を抱えられながらも最後に――


「えと......お前ら落第だぞ。本番までに"俺が迷宮創造主だから"って考えは失くしてくれ。いいか?この格好の時の俺は、ただの侵入者だ」


 という捨て台詞を残して今回の自分への失敗に舌打ちをしつつも、今後に期待だと大人しく連行されていくことにするのだった。

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