第30層「二束の草鞋的な旅~錬金術~」
「......ふぅ~」
おそらくこのフレーズをあちらの世界にいるオタクな友達が聞けば、賢者モードだ!とでも言いそうなそれはまさにその通りであった。事後ってのは本当にそんな感じになるんだなと思いつつも、おれはその白いのが入ったのを目薬サイズの木製の瓶に入れた。
なぜこんなことをしているのかと問われれば、思春期まっただか中の俺がオーリエのおかげでモンモンとしたからとも言えるし、とあるゲームを休憩中にやってた時にピンときたから実際に一石二鳥だとやった感もある。
とあるゲーム――それは、『エロナの工房』というR15指定物の錬金術を題材にしたゲームだ。錬金術見習いのエロナというちょっとえっちぃ女の子がその力を用いて依頼やら王国に定められた指定の薬を作るという内容で、この工房シリーズの定番であるなぜかゴムで作られた"それ"に話しかけると『ご~む~』と言って蕩けるような表情をすることが人気となったゲームらしいとオタクな友達は言っていた。
内容はあれだけど、やり込み要素は強烈だったので俺は夢中になってプレイしてオールコンプリートまで果たしたゲームだ。
その中にあるキャラクターが呟こうとして中断するものを見つけたのだ。
錬金術にとってもはや当たり前ともいうべきもの――
ホムンクルスだった。
そのゲームのホムンクルスな女の子が、ホムンクルス作りに大事なものはというものの中で呟こうとしたあるものを直感した俺は、休憩のためなのか、先ほど風呂上りのオーリエにあてられてモンモンとしてしまったのかもはや分からない状況で試すことにした。
レティが生み出されたきっかけともなった"血の記憶"とやらを参考にすれば、"聖なる液の記憶"は大事だろうと思う。
「あとは血と肉か。血は俺自身のを使って、肉も俺のでいいな」
そうして俺は、部屋に立てかけてある作りかけの剣を手に取ると、南無三と唱えつつ腕を切り落とした。当然のように襲う激痛を堪えるが、瞬間的にそこから腕が再生して痛みはなくなる。プラスの恩恵に感謝だが......なんというか、肉を切らせて骨を絶つというフレーズに喧嘩を売ってそうなイメージだった。
血も、こうなることを予見して置いていってくれたのかレティーナ様の持っていた短剣で傷つけたために無理ない範囲で流すことができた。
レティーナ様の短剣で傷つけ、俺の短剣で傷つけば治る仕組みがよく分からないがこれもプラスの恩恵かとと増血剤を飲んで落ち着いた後に、説明書に書かれていた主人公・エロナの絵をノートに写し書きした紙をそれらの上に乗せた。
「よし!錬金術式練成"ホムンクルス"」
発動すると光を放ちつつ、魔力が5割ほどと血液の3割が抜ける感覚がした。
フラっとするが、増血剤の作用のおかげで体調が元に戻ると同じくらいに光が収まった。
素材を置いていたところを見ると、そこには150cmに満たないくらいの茶色い髪でショートカットの少女が横たわっていた。見た目、エロナの工房に出てくる主人公のエロナのまんまだった。お胸は残念さんである。
素っ裸であるため、俺はバスタオルで包んであげると同じくらいに眼を覚ました。
「ん......あれ?」
「目覚めはどうだ?」
「うん。なんかよくわからないけど、お父さんが生み出してくれたってのはなんとなくわかるよ~?」
そう言ってニパっと笑うと、はっと何やら顔を赤くしてバスタオルを手繰り寄せながらもおろおろと何かを探していた。
「どうしたんだ?」
「も、もぉ~。は、恥ずかしいから何か着るもの~」
そういうので俺はため息をつきつつも、そういえば妹も体を拭くときもなぜか恥ずかしがっていたなと思い出して俺はレティ用の服を押入れのケースから取り出した。
「あ、そういえばレティのじゃ小さいよな」
あの子はたしか、140くらいだったはずだ。
150に満たないといってもさすがにきついのかもしれない。
「それは大丈夫だから、お父さんは少しあっちを見てて~!」
なんとも、エロナのボイスのままで言われるその舌ったらずな話し方にまさか性格もそうじゃないよなとある一種の危機感を覚えながらもどうするのかを聞いてみる。
「錬金術で"リサイズ"するんだよ~!お父さんの"手"の知識からなんとなくやり方はわかってるから」
「そ、そうか」
手の記憶ってなんだろ?
気になったが分かったと了承しながら背中を向けつつも、黙って盗み見ると何やらキョロキョロとした後に彼女は押入れの隅に置かれているダンボールにあたりをつけたのかそちらへと行って、ダンボールの中のものがないか確認した後に口を開いて俺が渡したレティの服をその中に入れた。
何するつもりだろう。
と、気になったが見てないことになっているのでそのまま黙ってみていると、何やら両手を翳して"まわって~ぐるぐる~ぐるぐる~"とまるで洗濯機をハンドパワーとかで回すような超能力的なことを行っていた。
やがて光を放ってそれが収まると、あの声で――
「できたぁ~!」
と、言って少しだけ大きくなった服を広げて頷いていた。
「で、できたのか?」
俺を放置していたことに気づいたのか、彼女は一旦間を置いた後にちょっと着替えるといって風呂場のほうへと向かった。
着替えてきた後にもういいよ~といわれたので振り返ると、レティのワンピースの服がぴったりな様子で着こなす姿が見えた。
「どうやったんだ?それ......」
「錬金術だよ~!お父さんがやってることを真似すれば、あたしだってこれくらいできるんだから~♪」
と、自慢げにする姿に俺はなんていうか......まんま、ゲームのキャラだなと思ってしまった。
それよりも確認が必要だ。
「それで体に違和感とか、そういうのはないか?」
「違和感?......別にないよ~?」
「そうか」
ってことは、成功したってことでいいのだろうか。
レティとのあの繋がってる感覚は全くないけど、素っ裸にも反応しないということはつまりはそういうことなのだろうと思った。
「それでそのお前の錬金術ってのはどういう仕組みなんだ?さっき、ダンボールに服を入れてハンドパワーみたく回していたけど」
といったところで失言に気づいた。
「お、お父さん......見てたんだね~!盗み見なんて~エッチだよぉ~!」
「わ、悪かった......悪かったって。それで、どうなんだ?」
「うん~なんとなく、何かをかき回したほうがやりやすいなって思ったからで原理としてはお父さんのやり方と同じだよ~?」
ゲームでも確かに壷に何かを入れてかき回す描写の後にアイテムが出来上がるって感じで魔女を連想したけど......なるほどな。
俺がイメージしたものと、俺の記憶が参考になっているからなのか。
錬金術も錬金術式練成と方法は同じらしい。
「血が抜ける感覚みたいなものはあるのか?」
「ううん。ただ、服をリサイズしただけだし血液はそこまで必要なことはないよ~?だって魔力と素材力があればあるほど、必要な血液の対価もちょっとで済むし」
「え?」
なんか聞き捨てならないことを言われた気がする。
「どうしたの~?」
「いや、血の対価ってそこまで必要なものじゃないのか?」
「必要ないけど~?」
いや、だってポーションですら結構血が必要なのにと思った俺はこの分野にはとても詳しそうな彼女の前で試しに、錬金術式練成を発動することにした。アイテムはなんでもいい、そうだ賢者の石でもいいか。
あれも一応は錬金術で生み出されるものだし。
俺は一旦、待ってもらって手ごろな石を3個ほど外から持ってきてから効果を考えて、それを紙に書いたものを乗せると錬金術式練成を発動した。
【アイテム情報】
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アイテム名 :賢者の石(Rank:G2)
効果 :精神安定(中)
アイテム説明:持つと思わずふぅ~っと言っちゃいそうなほど精神が安定し、
落ち着いてしまう不思議な石。
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よし、思った感じにできた。
それを娘に見せる。すると――
「これを見てあたしが思うに、お父さんのは逆に血の対価を上げすぎて質がとてつもないことになっているところがあるよ~?」
どういうことだろう。
「じゃあ今度はあたしが同じものを作ってみるよ~?」
そう言って、俺が持ってきた石の一つを手にとってさっきのダンボールへと入れるとまたぐるぐる~ぐるぐる~と奇怪な言葉を発しながら光が収まり、できた~!(それはいちいち言わなけりゃいけないのか?)とそれを俺に、はい、これ~と言って見せてきた。
【アイテム情報】
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アイテム名 :賢者の石(Rank:S4)
効果 :精神安定(中)
アイテム説明:持つと思わずふぅ~っと言っちゃいそうなほど精神が安定して
落ち着いてしまう不思議な石。
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「ランクのところが、シルバー――つまりは銀貨4枚分の価値なのに、同じ効果か」
同じ効果を持ちつつも、価値のみが高い俺とは違いリーズナブルな価格になっている。
疑問的に思いながらも必死で考えると、俺と彼女では少し違うものがあることに気づいた。
彼女はダンボールを媒介にしているが、俺は言ってみれば"直"にやっている。
つまりはこのせいか?と試すと、俺の予想が当たったかのようにさっきの直に比べれば、血の抜ける感覚はまるでなく、3つ目の石が価値をS14――銀貨14枚分くらいの価値まで落して完成した。
「そうか、直か媒介を使うかでこんなに変わるのか......」
これじゃあ血の消費分の価値がまるで無駄である。
今後は何かの......媒介となるものを作ってそれごしにしたほうがいいだろうと思った。
「何か、分かったの?」
「......ああ。お前のおかげだ、エロナ!」
そう言って、まんまゲームのキャラの名前付けを行った俺は、褒めるようにさらさらの髪を撫でた。くすぐったそうにしながらも、何やら嬉しいのかえへへっと笑いながらもそれを受けるエロナ。
妹に感じていた庇護欲のようなものをかきたられるそれに、俺はボソっと呟いた。
「しかし......娘がまた1人とか」
俺としてはなんというか、部下とかそういうのをイメージしていたけどエロナは俺のことをはっきりと『お父さん』と言っている。17歳童貞には辛い現実だと思う。
そんなことを思っていると、娘がこちらに来てペコっと頭を下げた。
「名前もつけてくれてありがとう~!これからよろしくね~!お父さん」
俺はその笑顔にこんなにかわいい娘でなおかつ、錬金術という方面でも活躍してくれそうな彼女にま、それもいいかと思いつつも頷いて、黙って頭を撫でた。
こうして俺の邪な考えの結果に生まれたホムンクルス第1号となる錬金術師の娘・エロナのおかげで俺の錬金術式練成も一歩先に進むこととなった。
休憩していたはずだけど、いつの間にか仕事している自分がなんというかだ。
その後、旅の工程の間中――
俺はエロナの錬金技術もあったり、自身の欲発散のために自家発電し続けて、さらに15体のホムンクルスが誕生することになった。
17歳のまさに......これが性春である。
エロナは、錬金術に関しては相当なものだった。
質は数段劣るがジャックスの見極めじゃあこの世界じゃそれなりの品質だったし俺たちが手に入れるには手頃な質だと絶賛されたこともあって、彼女には今迷宮用の宝箱の中身となるアイテムを作ってもらっている。
ダンボールじゃあ味気ないと、俺は陶器の食器などを素材にして大きな壷の魔道具とかき回すための杖を作ってあげた。
見た目も大きめのウィザードハットをかぶった可愛い西洋の魔女チックにしているので、かき回す姿はとても理に適っていてとても似合っていた。
そんな可愛い娘がいる一方、先の思いで今度は男女の別はなくしてランダムに生成できるように考えたのだが、何がそうなったのか明確に個性の違うホムンクルスたちがいた。
「テンチョー、お姉が呼んでんだけどぉ~?」
俺がギルドシステム作りをしている最中に声をかけてきたのはそんな個性の1人だった。
見た目は日焼けサロンで綺麗に焼いた、現実世界でももう絶滅傾向にあろうその娘は俺のことをなぜかテンチョーと呼ぶ。見たまんま、見せパン、見せブラ、ルーズソックスを履いてブレザーっぽいものをつけた少女はどこからどうみてもコギャルである。なので、名前も――
「ギャルコ、お前――なんで俺のことをテンチョーって呼ぶんだ?」
「え~?そんなのテンチョーの名づけくらいにどうでもいいじゃん?......何、ギャルコって?超適当だしぃ。バカなの?アホなの?死ぬの?......てか、早く行かないとマジヤバイんだけどぉ?娘のいうことくらいマジきいてほしいっていうか――」
という何やら愚痴のようなそんな感じで話す俺の"太もも"から作られたこの子のほうが遥かにヤバいんだが。
俺のネーミングセンスを否定されたことに一瞬イラっとしたが、このコはこんなコだと自分に納得させた。
しかしと思う。
何をどうしたら、錬金術のあのエロナみたいに素直でいい子が生まれたのに、一方ではこんな子ともう1人の同じ属性を持つ"息子"が生まれるのか、知っている人がいたら小一時間教えて欲しいものである。
俺の四肢はおろか、あらゆる部位、あらゆる内臓から作られたホムンクルスたちの個性は、今後も俺の頭を悩ませることは今このときもはっきり感知できたのはいうまでもない。
そんな中でようやく俺の不思議な旅は、1週間にも及ぶ旅はある発見にて幕を下ろすこととなった。
書いてて思いましたが、この物語の賢者の石が不憫でなりません。
でも......これ以上は今後また。
ホムンクルスは要所要所で登場する予定です。




