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第29層「二束の草鞋的な旅~小人忍《ミニンジャー》~」

 土竜頭族の洞穴への旅をしながら迷宮"チュートリアル"に戻って作業という不思議な旅をする俺は、早速彼ら小人忍ミニンジャー部隊が修行をしている居住区の併設されている修行部屋へとやってきた。


 小人忍ミニンジャー部隊とは、小人族の忍者部隊のことを指す。


 きっかけは俺が大鬼族たちの件が終わり、部屋での親睦会みたいなのを開いた際に見せた俺の生まれた世界の技術やら、道具やら、遊具などを見せた時のことだった。その中で持っていた無双系の忍者マンガや同じく無双系、暗殺系のゲーム、二次元オタクのツレから――結果的に借りパクになったそれらのアニメとかからなんだけど、なんというか忍者のストイックな生き方が好きな小人族もいたらしくて、小人族20人くらいがその影響からか申し出を受けた。


 最初、俺は断った。忍者というものは、相当過酷だって物の本にも書いてあったし何より物作りや畑などをまかせている現状でも相当世話になっているのにと思っていたからだ。

 

 しかし、彼は言ったのだ。

 迷宮主が思う以上に我らも我らなりに感謝をしている、と。


 そんな忍者志望の彼らの男気を、同じ男の俺が理解しないはずはない。


 今から行く修行場にいる隊長さんがまさにそれを説いた人物だった。


 雰囲気としてものほほんとした感じの小人族からは、考えられないくらいの気質だ。


 そして、承諾したからには手を抜くことはできないとあの因縁の町へと行く前に彼らのために場を作って、情報伝達第2段階のために成り行きを見ていたが、彼らは順調に修行をしている様子だった。

 彼らの修行相手であり、修行場の監督役でもあるレティに彼らをまかせていたので、その人となりは聞けている。


 土竜頭族の洞穴へと向かう前に、ジャックスやアベさんにも動きを見てもらって問題ないようなら武防具をと、この3日間は暇さえあれば彼らの武防具、飛び道具を作っていた。

 

 一応修行場となる部屋には、不死設定と超回復機能をつけておいたが即死級の修行以外では痛みから知ることもできるからそれらはつけないでくれと、自分たちを追い込んだこともあるとのことなので、これからは彼らの男気と実直さを見習いたいと思う。


 そんな彼らの修行場は、居住区に隣接されている。

 広さは一般的な総合体育館ほどだが、種類ごとに修行場が分かれているために彼らの体躯ではちょうどいい広さになっている。


 水の池を作り出し、その上に木の棒を差してその上を移動する修行場や、水に並べた丸太の不安定な足場を重力付加によって駆け抜ける修行場、特に法則性のないランダムな射出で打ち出される軟式のゴルフボールくらいの球が飛び出る速度調節機能付きの修行場などになっている。


 ほとんどがマンガの受け売りだけど、効果を上げているのは明白だった。

 元々チャビンが見せたような素早さが彼らにあることもあってか、今ではアベさんですら追いきれない時があると聞いた。


 真面目な彼らの気質によってこの部屋に来るといつでも緊張感が漂っている。たまに血の匂いを感じることもあるくらいなので相当なのだと思う。


 そんな修行場の中でも現在は木剣を打ち合う鍛錬場にやってきた。

 できた武器防具を渡すために。


「レティ、お疲れ」


 この部屋の管理者でもあり、迷宮共感によってこの場にいながらも他のところも管理ができる存在の娘・レティシアへと労いの言葉をかけながら近寄った。


「あ、パパ!」


 そう言って手加減して抱きつくレティを抱きとめると、鍛錬で打ち合っていたのだろう小人族側のこの隊の責任者が近寄ってきた。


「主。きた......か」


 小人族というのは言っちゃあ何だが、基本的に能天気な種族だ。

 それでいて物作りも得意だけど穏やかで気性も激しくないので、付き合いやすいといえる。しかしこの小人族――名前は、チャシブは名前負けしないほどに渋い性格をしている。口調もだけど、彼は小人族という種族に生まれたのが間違いであるかのように愚直でまっすぐでそれでいて冷静さを併せ持つという忍者になるべくしてという男だった。


「よ、ご苦労さん。どうだ?鍛錬のほうは」


「ああ。開きはあるが......みな、各々の生き方を見出しかつ......それに向けてまい進しているようで鍛錬にも......余念はない」


 最初は結構寡黙な人だったが、忍者マンガに傾倒していくにつれこんな残念なしゃべりになったことに俺はある種の後悔はある。男気はあるんだけどな。


「そ、そっか。それじゃ出来た武器、防具とかもう渡してもいい頃かな?」


「アベサン殿やジャックス殿が判断したのならば、問題はない......と思う」


「分かった」


 そういって俺は、リュックに入れておいた武器と防具、飛び道具などを一通り出すことにした。その間にチャシブは、彼の仲間を各所から呼び寄せた。


「アイテム名が各々見えていると思うけど、一通り説明していくよ」


 そういってまずは武器を見せる。

 柄も含めて50cmにも満たない小刀とも言えるそれはきちんと反り返っている刀だった。そして――


「これの柄の先についているストラップがあって、これを撫でながら――」


 そうして俺は、苦無と念じると刀の中に入っていた苦無を取り出した。


「これは"暗器の忍刀"という、収納機能付の忍刀で撫でながら取り出したいものを念じるとこうやって出すことができるんだ」


 そうして、また収納と念じると苦無は刀の中に納まる。


「収納って念じればこうして刀を納めることができる。一刀一刀に相当量の魔力をつぎ込んであるから、極端な出し入れをすることがなければ、それが失われることはないけどそこは気をつけて欲しい」


 そうして俺はその刀に魔力を込めて回復させた上でチャシブたちに手渡していく。


「もちろん、武器としても使えるからどうしても必要な時は、刃物として使ってもいいよ。ま、探索や諜報に必要なのは各々渡してあるあのポーチに収納するようにして緊急時にって使い方をしてくれればいいと思うよ」


 その言葉に彼らは思い思いに礼を言って、了解したと下がっていった。


「それじゃあ、今度は防具だけど――」


 そう言ってまずは鉢金を手にとって、自分の額につけた。


「これは頭につける防具で"忍の鉢金"というものだ。これには2つの機能が付けられている。まずは――」


 俺は心の中で『"ドレスアップ"頭巾』と言って、変衣機能を発動させる。

 すると、鉢金から黒い布が出て俺の頭から顔まで覆ってまさに忍者という感じになった。


「忍者は言葉を余り発しないから、直接言葉を発するということはしないようにしているから心の中で"ドレスアップ"頭巾って唱えるとこんな風になる」


 おぉーという歓声に彼らなりの感嘆さが伺えた。


「チャイムが作ってくれたものを俺なりに強度メインで合皮させたからそれなりに丈夫だから、相当な負荷でも無い限り破れにくいと思うよ」


 こういった裁縫系が得意なチャイムがいてこその質である。


「もう一つの機能だけど、鉢金の中央にあるこの魔石を触って"暗視"と念じれば、この鉢金の中に付与されている暗視ナイトビジョンが発動して、梟眼きょうがんと念じれば、同じく付与されている梟眼オウルアイが発動するんだ。効果時間は、ずっと使い続けても8時間くらいはあるから、問題ないと思う」


 俺はそのまま頭巾を鉢金に戻した状態でチャシブに渡した。


「戻す時は何を解除させたいかを念じればいいだけだよ」


「ありがたい」


 そうして鉢金を渡して次に手甲も渡していく。


「これは手につける防具で"忍の手甲"。刀と同じように収納させることができるから咄嗟の時なんかは主にこの手甲に取り出したいものを発動させれば、すぐにソレを使うことが出来るから便利だと思う。基本は手裏剣、苦無、寸鉄、煙玉なんかを仕込んでおいたよ」


 そうして手につけて、思い思いに使い出していた。

 取り出し方なんかは今後の練習次第だと、俺はその手甲に付与されている魔法も説明した。


「ちなみにその手甲にも魔法が付与されていて、非力な小人族のサポートができるようにと3段階の力が発動できるようになっていて、猪力ボアパワー馬力ホースパワー象力エレファンパワーが発動できるから要所で力が要るときがあれば、ソレを使ってくれれば人並み以上に力も発揮できると思うよ」


 三つの力向上魔法は、レティにあの馬車の馬の脚力を測ってもらって生まれた魔法だ。象力エレファンパワー馬力ホースパワーの10倍くらいに力が向上するので力作業にも困らないだろう。反動も消せるように設計しているのでそこも問題はない。


「次に......衣は最後にして、足具なんだけどこれは"忍の足袋"といって衣にも使っているけどある羽毛が使われているから消音性は抜群だ」


「ある羽毛とは?」


「オウルバードだよ。あの2mの体躯から取れる生え変わりの羽毛を使ってるから音が立ちにくい仕様だ」


「なるほど」


 そうして履き方を教えた後に、最後となる衣を広げた。


「最後のこれは"忍の衣"で、手首から足首全身で着るタイプの衣服だ」


 そうして機能を説明する。

 忍の衣は全身黒になっていて、足袋にも使われているオウルバードの生え変わりの羽毛を万遍なく使用している。魔物の捕獲は今でも継続しているのでその数は今や30羽にも上る。


 後々、夜限定ではあるが、彼らの移動手段用にも考えている。


「これは変衣機能もさることながら、あることも使用可能なんだ」


 そういって俺は、俺用に作られたジャージ型の忍服へと変衣させると、レティに頼むことにした。


「レティ。一撃俺に攻撃してくれ」


「はーい!」


 そういって、レティの致死的なパンチがやってきてヒヤっとしたが、瞬間――


 ヒュっと音を立てて、俺自身は後ろに下がりレティの拳には木の人形が突き刺さっていた。


「こんな感じで、明確な攻撃の意思があって攻撃を受けると木の人形が身代わりになって着ている人は後ろや横に移動するんだ」


 いわゆる身代わり機能である。忍者といえば、身代わりの術だし。


「ただし、これは万能というわけじゃなくて一度しか使えないからそこは気をつけておいてほしい。もちろん今後も改良する気まんまんなんだけどね」


 今回は時間がなかったので、あれだったけど今度じっくりやる時は回数も増やそうと思っている。


「というわけで以上がこちらから提供する武防具だよ。慣れるまで時間はかかると思うから、無理しない範囲でこれらを活用してくれ」


 そうして彼らは思い思いに礼を言って、早速という感じで俺が渡したそれらに着替えていった。


 うん、もはや脆弱な小人族という感じはしない立派な姿だ。


 着替え終えて、俺へと傅く姿はいっぱしの忍者に思えた。


「我ら小人忍ミニンジャー一同、迷宮主を主として今後の任務を全うすることを誓う」


 照れくさいその誓いに俺は――


「ああ。よろしく頼むよ」


 そう言葉を返して、去っていく彼らを見送った。


 こうして、編成された小人忍ミニンジャー部隊は後々も俺の助けになっていくこととなる。


「パパ、それで他の迷宮施設とかは順調なの?」


 礼を言って離れていったチャシブや小人忍ミニンジャー部隊の鍛錬を見ながらもレティはそう聞いてきた。


監視眼イーブルアイ付与がされた2個1対の監視カメラは一応50%ってところかな。システムに組み込むためにはまたお前の力を借りるけどそこは頼むぞ」


「うん!まかせてよ、パパ!」


 そういって撫でられるのを待つかのようにしていたレティを優しく撫でながらも考える。


 本格的な人員が必要な気がする。

 錬金術による生産体制なんだけど、それは今のところ俺しかできない。

 

 それをなんとか打破したいために質は劣るが、迷宮魔法から派生させた"迷宮錬金術"という迷宮内を循環している魔力と生贄となる迷宮に生み出された魔物を対価に作るものなのだが、要領は俺の錬金術式練成(アルケミクリエイト)と同じだし、許可すれば誰でも使えるものだ。


なので......方法というよりも、人員のほうだ。


 小人族には頼めない。

 俺の魔力を取り込みすぎて、魔物化にでもなったらあれだし。


「んー、考えてもアレなときは気分転換だな」


「そのほうがいいよ!ここはレティにまかせて、パパは少し休んでてよ!」


「......そういや、俺の考えはお前には分かるんだったな。オイラ、コロっと忘れてたよ」


「似てないよ、パパ」


「......」


 と、いうやり取りをした後、俺は気分を入れ替えるためにも一度馬車の様子を見て少し休憩するから何かあったらレティにと言伝をして部屋に戻った。

暗視ナイトビジョン

暗い中でも視界がクリアになる効果を持つ魔法


梟眼オウルアイ

500m先まで見渡すことができる効果を持つ魔法


猪力ボアパワー馬力ホースパワー象力エレファンパワー

力が向上する魔法で、順に筋力が2倍、5倍、10倍と上がる。

動物の力を参考にしているためにこのような魔法名になった。


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