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幕間「帰還の途中」

帰還中の一幕です。

「せーの!」


 ―バシッ!


「「叩いてかぶってじゃんけんぽん!」」


「......」


「よし!勝った!」


「......なぁ、タクト」


「なんだ?」


「この遊び、なんで俺が叩かれて始まるのか分からねぇんだが」


「"叩いてかぶってじゃんけんぽん"なんだし、こういうもんだろ?」


「......そうかぁ?」


「......多分な。俺も詳しいことは分からないけどたしかこんなもんだ。んじゃいくぞ」


「......あ、ああ」


 照れくさい誓いを終えた俺たちは現在、迷宮"チュートリアル"への帰還の途にある。しかし、馬車を手に入れたおかげで歩くこともせずに心の中で馬たちの体調から位置を知ったり、指示までこなすことができるおかげで御者はアベさんか、オーリエか、ジャックスが手綱を持つこともなく監視するだけで後は、比較的に今のように過ごしている。


 馬車内は現在、迷宮"チュートリアル"ラウンジの4分の1くらいの規模があり、部屋を各々に作った後は共有部として居間やトイレ、風呂、トレーニングルームまで作られていて完全に外からの大きさとは異なる広さの居住性を持つ移動型要塞へ生まれ変わっていた。


 色々な情報を調査したジャックスからある程度聞いた今は日本のテレビで度々やっていたのを思いついてやっている状態だった。やり方は完全に忘れているので、遊びの名前そのままにやっているのだが、多分これでいいだろう。


 移動距離として4日ほどの距離があった行きも、帰りはこのペースでいけば半分の2日ほどと見ている。


 そんなことをしている間にもう日も差し掛かった時間になったようで、当番だったアベさんがガウっと声をかけてきた。


「んじゃ、停車させて馬を馬屋に収めて飼葉をあげてから夕飯にしようか」


 御者台も馬用に広くしてそのそばには、記憶にあった宿屋の馬屋よりもさらに快適性を上げた馬屋の空間を作った。おそらく、馬が馬車で寝泊りできるとは誰も思わないだろう。


 そうして馬一頭ずつやってきたので、撫でて労い飼葉を与えた俺は外へ出て、馬車の中で作ったバーベキューセットもどきを設置してから肉やあの町で買いあさった野菜などを焼き始めた。


「迷宮に帰ったら、どうするつもりだ?」


「ああ。あんたが手に入れた巻物に効能のある草の巻物っぽいものが記されたものがあったからそれを下に一度本にして薬物の書や武器、防具といったものの書、それから素材の書も......か。それらを作ったら迷宮内で"告知"できる仕組みを作ったりする予定だよ」


「なんだそりゃ?」


「つまり、迷宮にいながらにして俺が作った本の内容が迷宮にいる協力者やあんたらに理解できるようにするってことだ。言ってみれば、生命契約(ライフプロミシズ)の応用とでもいえばいいかな」


「位置を知ったり、相手の色々が分かるっていうのを逆に利用ってことか?」


「ま、そういうことだ。知るんじゃなくて知らせて理解させるって意味の迷宮魔法――教授令ティーチングだ」


「便利なもんだな、迷宮魔法ってのはよ」


「俺の武器はこれだからな。まぁ、迷宮外でも自衛くらいはできるように色々考えてはいるがな」


 今来ているジャージのみという格好から見てわかるように、俺は自衛手段を全く考慮せずにただアベさんたちの力を頼りにしてしまったがゆえに今回のことは起きたと考えている。それならば、二度とああならないように俺自身にもそういう自衛手段が取れるものを考えておかなければいけないだろう。


 まぁ、次に外に出るのはいつになるやら......だが。


「迷宮"チュートリアル"の本丸はもう完成してるんだ。テスト攻略でまずは第1層から順番に攻略して手直しをしていって問題ないと分かったらラウンジの改造を終えて、いよいよってところだな」


「そういやあの小人族ってのは相当な器用さだったな。レティの御嬢の協力もあったがまさか1ヶ月17階層もできるとは思わなかったぜ」


「それが彼らの役割って奴だろうからな。本当に感謝して、温泉くらい提供したいところだよ」


 浴槽を頼んでいるので、出来上がり次第それを配置してアベさんたち用にコピーして作った俺の部屋を貯水場のようにしてゲート機能でそれを各世帯に送らせる水道を作れば風呂として利用できるように考えているし、着いたら作ってあげようと思う。


「温泉ってのは自然によって作られた風呂らしいがそんなにいいもんか?」


「いいなんてもんじゃないぞ?温泉は日本人の魂だ。妹の湯治で行ったことがあるんだけどな、あれはジャックスみたいなおっさんや俺みたいなピチピチの17歳であっても万国共通の安らぎの場所だ」


「しれーっと俺との若さの差を強調してんじゃねぇよ。狙いはオーリエちゃんの肌の質向上じゃ――」


「よし、てめぇ、わんこ。今度は"叩いて殺してじゃんけんぽん"だ!」


「殺されること前提じゃねぇか!てか、じゃんけんできねぇよ!」


 当たり前だ。もっとも今ついちゃいけない恥部を突いたも同然なんだからな。

 久々に自家発電しようかな。


 そんなやり取りをしていると、そのオーリエとアベさんがやってくる。

 風呂に入ってさっぱりした様子の2人はどちらもスベスベな肌ともふもふの毛皮に別々の欲望を掻き立てるものだが、我慢して網で焼いた肉などを2人に渡しながらも今後のことを考え始めた。


 戻って早々にまずは小人族の進捗を聞いて、迷宮本丸内のテスト攻略後にその手直し、そして中身入れた宝箱の設置をして魔物のドロップ品の設定とか、ラウンジ改造とかもあるな。


 小人族主導でやっているアレの成果次第では近隣は愚か、大陸中に網も張れそうだ。


「しかし白草や、黒草ってのもあるとは思わなかった」


 赤、青、緑と回復の三色草があの迷宮前の森で見つけたけど、白と黒もあって白い草は浄化作用があり黒い草は毒かと思ったが、黒燃草というものでこれって一種の火薬か?とでも言いそうなほどの燃焼性を持っているそうだ。


 草のまま燃やせば野営などに向き、細かく刻んでとある物と混ぜ合わせれば爆発効果も生まれるものになるらしい。これで赤の体力草、青の魔力草、緑の傷草と白と黒の草もあるということで新たに他の色の草もあると言える。


「......ブツブツと相変わらず独り言が多い奴だな」


「ガウガウ」


「タクトは寂しいんだヨ、きっト」


 外野が何か言っているが、気にせずに考えているとそういえばと言うオーリエは恐ろしいことを言ってきた。


「ジャックスに聞いたケド、"叩いてかぶってじゃんけんぽん"って遊び教えて?」


「ガウ!」


 ......。


「ジャックス......てめぇ!」


「どうも可笑しいと思ってたんだ!しこたま人の頭叩きやがって!」


「いや、あれで合ってるはずなんだ!」


「はずってなんだ、はずって!それに俺ばかり叩かれる意味がわからねぇよ!......ま、揉んでもらってこい!」


 といってゲラゲラ笑いながら去るジャックスを阻むように2人が俺の前に立つ。


 両方とも俺の身長を超えているため、その興味深々な表情も今は恐ろしく感じた。


 逃げ場を失った俺は、その後2人に教えて対戦開始した瞬間に叩いてのフレーズで殴られて意識を失う結果となった。


 その時に思った。


「あれ?俺が間違ってたのか?」


 と。


 ちなみに早々に俺がリタイアしたため、ジャックスの悲鳴が野営地に一夜中響き渡ったのは別の話だった。

教授令ティーチング


タクトの知りえた情報を迷宮内の指定する範囲で発動させると、その知識が頭の中に入っていく要領で物を教えることができる魔法。


告知通り、再開は3月10日(月)からです。

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