第20層「人族の町で」②
町に入り、資金を得て宿が無事に取れた俺とオーリエは早速、宿から外に出たのだが、出た瞬間にどこかの馬車がこちらを危なく横切っていった。
咄嗟にオーリエが俺の首根っこのフードの部分を掴んで引き寄せてくれたおかげで大事には至らなかったが、危なかった。
「タクト、だいじョウブ?」
「ああ、助かったよ。ありがと」
「無事なら、それでいいヨ?」
といって頭を撫でられる。
彼女からしたら俺は弟とかそういう感じなんだろうか。
こんなに頼もしそうな人が姉なんて素敵すぎるな。兄弟は妹しかいなかった俺からすればまさに理想だろう。そんなことを考えつつも、先ほど轢かれそうになった馬車は北のほうへ向かって走っていくのが見えた。荷馬車のような感じだが荷物が少なくて小山がこんもりとしていて帆で全体を覆っているので、帆馬車でいいのか判断がつかない。
俺は関係ないかと頭から忘れることにして、さっさと用事を済ませようと武器屋へと向かうことにした。
町人の情報を便りにこの町で唯一の武器屋に着いた。
遠めで見ても、立派な煙突があり、そこからはモクモクと体に悪そうな煙を上げているのでおそらく鍛冶込みの武器屋なのだろうと思った。さてと、今回はさっきのように見た目で説得や交渉なんてできない。ジャックスは情報収集のために酒場へ行ったのだ。飲み優先だったら無論、お仕置きだ。
ジャックスがいない中でどうなるかは分からない。
まぁ相手次第ではあるが、それでも見た限りいけそうだし、"俺なりの対処法"でやればいいと早速扉を開けて中に入った。
キーンキーンキーン!っという何かを殴る音が店内に響く中、部屋を見渡すと、無造作に飾られた剣や2mほどの槍らしきものといったものが壁に掛けてある。
意匠も中々見事そうなもので、所々、その腕が認められてか補充がされていない空いているスペースなんかもチラホラとあった。また、店頭には包丁や短剣といった小物が並べられているので、強盗とかにあっても手元に武器があるから対処が楽そうだと感じた。
そうやって見ていて気がつくと、奥からの音は聞こえなくなっていてぬぅっという様子で筋骨隆々の男が奥から部屋に入ってくる。最初は彼なりに愛想よくいらっしゃいと言うが俺たちを一瞥するなり――
「おい、ここはガキが来る場所じゃねぇんだ。それとも、でけぇ姉ちゃんが"売り"でもしにきたか?」
と言ったので、ため息をついた後にわかったよと言って俺はその場に屈むとこの建物を覆うほどの魔力を込めて発動する。
「迷宮創造"武器屋"!」
そうして迷宮空間にした後、続けて大男に目線で魔力を送り言霊令を発動した。
「て、てめぇ......さっきの光はなんだ!?なにしやがっ――」
「"だまれ"」
言霊令の効力により、大男は口を閉じる。顔は驚愕そのものだが俺は構わずに話す。
「見た目が長身のチャイナドレス着た遊女っぽい女を連れた小男だとあんたには映った事はまぁ謝らんでもない。だから手っ取り早く迷宮魔法で言いなりにさせてもらった」
「めいきゅう......"魔法"だと?」
「いや、そういう情報は与えるつもりはないから気にしないでくれ。とりあえず......"黙って、聞かれたことに答えてくれ"」
そして俺は淡々と質問をし、彼も顔の表情とは別に淡々と答えていく。
こうしているとジャックスのあの時を思い出すな。
この武器屋にはどれくらいの武器があるのか、また鉄鉱石みたいなのはあるのか、砂鉄から作った場合はどうすれば強度が上がるのかなどなど。結果から言えば、20ほどの在庫があり、鉄鉱石もあるし、砂鉄からなどというのは知らないとのことだった。砂鉄うんぬんは残念だったが、軽い感じで製法を聞いた時に引っかかったワードが飛び出した。
"精錬"というキーワードだ。
それにピンときた俺は、ゲームの鍛冶師スキルなんかでそんなのがあったと思い出したのだ。たしか、不純物の鉱石からそれらを炉を使って分離させて鉱石から金属のみを取り出す方法とかいうのだったはず。なるほどと思った。
そして命令して早速大男の工房へと案内をしてもらい、その不純物とやらの成れの果てと出来上がった金属とやらを順に触って臭って目で見て覚えた。
その場で、こんな時のためにと持ってきていた砂鉄を取り出す。
そして、プリントペーパーと『迷宮魔道書』を取り出して、ペーパーの4W1Hの項目表にそれぞれの条件を書いていった。
『発動時間:即時
発動場所:迷宮全域 発動者:迷宮主
対象:手に持つ俺の想像する物質
効果:不純物と純粋な金属を分離させる』
そして、最後の魔法名をポーチに入れた和英辞書で調べて、そのままの意味で精錬と記したそれを迷宮魔道書へと挟む。
すると、光ってそれが自動的に魔道書へと収まった。現在の俺の迷宮魔法作成方法である。試しに手元の砂鉄に先ほど生まれたばかりの魔法を発動させた。
光も何もなくパッと、俺の右手には何やら鉄屑のようなもの、左手にはインゴット状の固形物が現れた。左手がどうやら純粋な金属というやつらしい。そして、そんな一連の行動を驚愕と恐怖とほんの少しの好奇心といった目で見ていた大男に俺は手間賃だとそれをカウンターに置いておいた。その上で――
「オーリエ、この武器屋にある武器を全てココに並べて欲しい。で、店主。"あんたは武器を並べ終えたら全ての値段を俺に教えろ"買い取るからさ?」
そうして俺も手伝いながら、20個ほどある武器を全て並べるととたんに店主が値段を語りだした。
一番安いもので銀貨2枚の包丁のような刃物で、一番高級そうなものでも金貨3枚分だと彼が言うので、並んでいるものの中から、短剣、剣、槍、斧、槌、弓全てを銀貨200枚分で購入できるものを選別させた。
殺人犯だが、窃盗犯ではない俺はきちんとお金は払うつもりできている。
さっきのインゴットは後処理の時にあると目立つのでこっそりと奥の棚に入れておいた。
てなわけで、俺は全てをリュックに納めてカウンターに銀貨200枚がきちんと入った袋を置いて店主に、
「いい取引をさせてもらったよ。さて――」
そう言った後魔力を込めて店主に、
「"俺が入ってきてここから去るまでの間の記憶は、俺が出ていったら全て忘れろ"」
と、命じた。
「じゃ、オーリエいくか」
「うン」
俺とオーリエは店を一旦出た。そして、少し時間を置いて再度入り直す。
そして――
「迷宮創造空間解除」
と、迷宮空間を解除した途端に奥に行って再び現れた店主が、また先ほどのような一瞥をした後に全く同じセリフを吐いた。
「あ、すいません。そういうのじゃないんです。それで......防具屋ってどこかわかりますか?実は主人の使いでして」
なんの疑問も抱かずに、そしてさっきのことなどまるで忘れているかのようなやり取りを終えた後に店を出た。
オーリエは終始疑問的だったが、宿に帰ってからでも話せばいいだろうと武器屋でやった手順のままに今度は防具屋でも鎧、兜、盾、小手、具足を200枚分買って手間賃として同様に生み出した迷宮魔法の皮加工《プロッシング=スキン》で加工した魔物の皮を提供して店を出た。
武器屋、防具屋を巡り終えると、もうすでに夜の帳が下りているところだったので、今日はこれまでと宿に戻ることにする。
部屋に帰ってきて早速、迷宮空間化させた部屋でオーリエから変衣の指輪を受け取り、指輪内に収納している漆黒シーリズを取り出した。迷宮魔法の分析で分析した後に、精錬を発動した。
装備は全て原型を留めなくなったが、以前漆黒の鎧以外の町に行って何かヒントになった場合にと作った新たなデッサンの描かれたノートの切れ端をポーチから出して、錬金術式練成で全てを作り直した。
今度の配色はマント以外全て真っ白だ。光の属性が宿っているため、薄々と光っている感じがする。赤いマントは、この時のためにカラーチャートとやらの青をA4ペーパーに全色青に印刷した紙とで錬金したため、今は青になっている。どこからどう見ても聖騎士と言えるものだった。
狙ったわけじゃないが、なんかこう......FF4の闇騎士から光騎士へと変わるイベントを思い出した。
【アイテム情報】
------------------------------------------------------------------
アイテム名 :光の洗練兜(Rank:G2)
効果 :集中力向上(中)【自動発動】
アイテム説明:脆弱な黒の装備品が、洗練された姿となり光の人材精霊が
宿り僅かに光り輝く兜。
------------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------------------
アイテム名 :光の洗練小手(Rank:G2)
効果 :器用さ(中)【自動発動】
アイテム説明:脆弱な黒の装備品が、洗練された姿となり光の人材精霊が
宿り僅かに光り輝く小手。
------------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------------------
アイテム名 :光の洗練盾(Rank:G2)
効果 :防御時、中程度の威力軽減【自動発動】
アイテム説明:脆弱な黒の装備品が、洗練された姿となり光の人材精霊が
宿り僅かに光り輝く大盾。
------------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------------------
アイテム名 :光の洗練鎧(Rank:G2)
効果 :疲労回復(中)【自動発動】
全てを装備しているとセット効果で、物理攻撃25%軽減
アイテム説明:脆弱な黒の装備品が、洗練された姿となり光の人材精霊が
宿り僅かに光り輝く鎧。
------------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------------------
アイテム名 :光の洗練具足(Rank:G2)
効果 :俊足(中)【自動発動】
アイテム説明:脆弱な黒の装備品が、洗練された姿となり光の人材精霊が
宿り僅かに光り輝く具足。
------------------------------------------------------------------
【アイテム追加情報】
------------------------------------------------------------------
アイテム名 :光の防具シリーズ
セット効果 :物理攻撃25%軽減
------------------------------------------------------------------
出来上がった全てを見て、これはなんか出来過ぎな感じがした。
というか終わった瞬間にベッドへパタリと倒れた。コントロールしたつもりだったが、それ以上に対価が必要になったのだろうか魔力も5割は減ってしまっていた。
改めてみると、全て"光の"というのが着いていて、精錬作業で得たのかどれもこれも高級感覚溢れる装備になっている。時価のところにあるランクというのが気になるし、"G2"とはなんだろうかと気になったので俺は、造血剤を久々に飲んでしばらくしてから、適当に錬金術式練成で包丁に火の属性を宿したところ、それはS30となっていた。
つまりは、あれかなと俺はG=金貨 S=銀貨と捉えることにした。
試さないとあれだが、もしや銅貨はブロンズのBじゃないかと思った。
想像でいえば、おそらく時価が値段に変わったのは俺の知識にこの世界の貨幣に対する価値感が備わったからだろうと思う。最初は498円とあちらでの定価表示で次は時価ということはおそらくジャックスに曖昧に聞いたことによるものだろうし、今ははっきりとそう書かれているのは、きっとそういうことだろうと納得した。
ていうか、それよりもセット装備効果なんていうのもあるとは思わなかった。 全部装備すれば、結構なものになるんじゃないか?全部中になっているし。 コレが俗に言うチートとかいうものなのだろうか。
まぁ、オーリエが丈夫になるのはいいとその日の活動は、錬金疲れもあるためそのまま寝る、という結末で終えることにした。
精錬
不純物と金属を分けるためだけに生み出された魔法
皮加工《プロッシング=スキン》
何も処理していない皮を加工して綺麗にする効果がある
分析
手に持つものを精査して何がどんなものであるかを本人の覚えた知識に依存する形で調べることができる。
FF4はファーストファンタジー4と読みますよ。最後の幻想じゃないので、お間違えの無い様。




