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第14層「"娘"の実力」

 夜泉――いや、こっちの世界で言えばタクト=ヨイズミか。

 17歳 童貞 娘ができました。


 テーブルに横たわり目を開けない様子の自分の血の繋がったと言われるレティーナ様いわく、"娘"に俺は目を向ける。


 その容姿は、140cmくらいの身長と手足は細くて、黄色に近い金色の髪を持つレティーナ様とは違い、どちらかと言えば薄い金色――プラチナブロンドとでもいうべき綺麗な髪を背中まで伸ばしているこの少女はとても俺には似つかわしくないほどの容姿の優れた姿をしていた。

 "血の記憶"とやらを利用し、デッサンや特徴を描いた木人人形の絵と俺の血で作られたらしいこの子が俺の娘だと言われてもはいそうですかと納得ができるはずはない。


 多少の起伏を感じさせる体に白いワンピースのようなもので身を包む姿は、どこかの西洋人形かとでもいうべき感じがする。見た目は完全に中学1年生くらいの――そう、生きていたら俺の妹くらいの年齢くらいだ。

 まさか、それを狙って?とか、俺が妹に恋愛感情を向ける変態に見えていたのかとか、ある意味斜め上の考えが様々に巡るが、やがてレティーナ様の声にはっとして、まずは話しを聞くべく意識を目の前のレティーナ様に向けた。


「この子は、先ほども言ったとおりあなたの血を分けた娘とも言うべき存在です。成長する要素以外にも新たに力を与えております」


「成長する要素はありがたいですけど............新たな力とは?」


 俺の疑問にレティーナ様は出されたすでに時間が経ちぬるくなっているであろう麦茶を一口飲むと、言い放った。


迷宮共感(ダンジョンシンパシィ)という力です」


迷宮共感(ダンジョンシンパシィ)............」


 鸚鵡返しのように返しながらも、口を開きそうな様子を悟った俺はレティーナ様の説明を待った。


「ええ。迷宮と共感し、迷宮を知り、その上で迷宮内のありとあらゆるものと感覚共有をすることで自分の手足のように操ることも出来うる力ですね。ただ、生まれたばかりのためその力はまだまだ未熟の域だと思えますが」


 いや、――いやいや

 充分、とんでもない能力だと思うぞ。と口が開きそうになったが堪えた。

 それほどまでの力なのだ。パッと考えただけでも有用な応用力がそれだけあるのだから。


 聞きかじりで聞いた知識だが、確か『共感覚』というものがある。

 それは例えば、音に聴覚以外の感覚――色を感じる色覚で認識できたり、匂いに嗅覚以外の形を感じる視覚で認識できたりとつまりは、本来感じるはずのない超感覚とも言える知覚現象があると、説明していたテレビの学者さんが必死で語っていたはずだ。


 あれは感じるだけ、認識するだけだが、それだけでもすごいと当時は考えていたが、ここにいるこの子は直接干渉もできるなんて............。


 例えばその力を使えば、迷宮内のとある場所で生きているのを知覚し、その周囲の状態も感じることができれば周囲の空気を操作して、失くした上で殺すことも可能なのだ。

 極端かもしれないが、つまりそういう生殺与奪権を安易に動かせる存在――

 "迷宮が生命を得た存在"とも言えるといっても過言じゃないと思う。


 そんなある意味危険ともいえる存在に俺は、娘よーとか言って頭を撫でられるだろうか。

 なんせこれまでは自分の力でなんとかできる範囲だったのに対して、今回のはさすがに俺以上の応用力があると認識してしまったので、俺の頭にそんな警戒心が膨れ上がるのは仕方ないことだろう。


 それが表情に出ていたのだろうか、レティーナ様はクスっと笑って心配ないという感じの手を振りながら口を開いた。


「そんな心配そうな顔をしなくてもいいですよ。あなたに話した血の繋がりというものは一般的な血の繋がりとは異なるものです。普通であれば、例え自分の子であっても子の考えも、ましてや親の考えなども理解はできません。しかし、あなたとこの子は繋がっています。つまりはそういうことですよ」


 レティーナ様の言に、思う。

 俺が望まないことをこの子もその繋がりによって分かるし、この子の感じることを俺も感じるとかそういうことか?

 それはツーカーとか阿吽なんていうのを軽く超える次元の話だと思いながらも、俺はひとまず警戒心を下げた。

 レティーナ様が安心だと言ってくれたのもあり、今後はその繋がりを信じてこの子の教育プランだな決めた。


 そうして話が途切れた中で、んんーっという声がした。

 どうやら件の娘が目覚めるようだ。さて、第一声はどう声をかけようかと思ったところでパチっと目が開いた。

 そういえば名前もつけてあげなければと思いながらも、俺はじっと娘を見た。


 目を開いて瞳を見た時、その目がオッドアイという感じで両目とも違う色を放っているのに気付いた。

 左目は黄色に近いレティーナ様の髪と似た色で、右目は娘の髪質に近いプラチナブロンドのような色をしていた。

 髪もそうだけどなんてゴージャスなと思っているとその目が俺へと向いたので、声をかけようとしたその時――


「あー!パパだー!わーい、どーん!」


 という声鈴を鳴らすような綺麗な声でそう言いながら、満面の笑みを浮かべながら両手を広げて俺に抱きつくようにして向かってきた。

俺はよーしよーしとでもいうかのようにそれを受け止めようとしたのだが、迫ってくる迫力になぜか全身冷や汗が吹き出た時、衝撃は腹へとやってきた。

 車に撥ねられたことはないんだけど、おそらくこんな感じなんだろうなという思いの中、俺は背中に感じる激痛とぶつかったことによるためなのか意識はすっとブラックアウトしていった。


その時に思う。さっき警戒心下げたのにもう上がってきそうだと。






 しばらく意識を失っていたらしい俺は、亜空間内の夕日を浴びて目が覚めた。

 そんな俺に気付いたのだろう娘が俺の寝ているベッドまで近寄ってきて声をかけてきた。


「パパー!ごめんね!つい、嬉しくて思いっきり抱きついちゃった!」


 謝るのはいいけどそのニコニコとした顔に全然反省の色が見えない娘にため息が漏れそうになるも、周りを見渡すとレティーナ様の姿が見えなかったのであの後どうなったのかと聞いてみる。


「あ、レティーナねぇならレティに色々教えてくれた後に書き置き残して仕事に戻っちゃったよ?」


 と、答えを返してきた。


 ん?レティ?てか、レティーナ姉って............。


「レティってなんだ?それにお前、レティーナ様に向かって姉扱いとかバチが当たるぞ?」


「レティはレティの名前だよ!パパ!それにレティーナ姉が言ったんだよ!お姉ちゃんと呼んでくれって!」


レティーナ様本当に心細かったのかな。

失礼ながらもそんなことを考えつつもどういうことだろうと詳しく聞いてみる。


どうやらレティーナ様に名づけられたようでレティシア=ヨイズミが正式名称だと説明をされた。教えというのはここでの一般的な知識――迷宮に関することや俺の知り合いなど――のことらしい。そして、先ほども尋ねた姉扱いに関しては妹がほしかったらしい。


まぁ、レティーナ様に幼い妹がいたらこんな感じかもしれないなとある意味納得はできたけど。あの方は割りとミーハーなんだなとも思った。


 しかし、名づけが取られちゃったな。せっかく考えていたのに。

 金色を連想する子だから............ゴールデンとか、長いからデンちゃんでもいいかもな。


「はぁ~......レティーナ姉のいわんとしていることが分かった気がするよ」


「ん?どういう意味だ?」


「レティはレティって名前で良かったってことだよ」


「え?」


 そんなやり取りの中でも気を利かせてくれたのか、ごまかしたいのかレティシアはレティーナ様の言伝が書かれた紙を持って来た。自然に頭を撫でて受け取って読んでみる。


 "業務に戻る必要があったので戻ります。あなたの娘はレティシアと名づけました。その子とも協力して今後も迷宮運営とお願い事をよろしくお願いします。また、私がわかる範囲での知識も与えましたので併せてお知らせしておきます。それから、あなたの作られた木人人形というものは心細いので記念にいただいておきますね。 レティーナ"


 という文を見て、妹が欲しかったから自分の名の一部を加えたんだなと理解できた。今の今まで話した感じでも親しみやすい子で血が繋がっているからか先ほど懸念したような警戒心を抱くこともなく、本当に自分の娘のような親しみが持てている。そんなこの子を授けてくれたことに感謝した。


そして、今後は俺がこの子を育てなきゃいけないと思った。

たしかゲームで姫を育てるゲームがあったが、関係ないよな。


 あと、木人人形はレティーナ様にもらわれるらしい。

 心細いという理由は分かるけど、何もあんな木人人形でなくても言ってくれればアベさん型人形でもお供えするのに。


 そんなある意味レティーナ様に"お供え"とか失礼なことを考えながらもレティシアに視線を向けると、レティシアは俺の袖を引きながら、


「ねぇねぇ、パパのお友達を紹介してよー!」


 と言ったので、よしっと自然に頭を撫でてベッドから降りてレティの手を握って亜空間から出た。こうしていると思い出すな。妹の手を取ってベンチであの子の知らない外のことを教えるために質問に色々答えてあげてた頃を。


そうか、この親しみやすさはあの頃の妹のような目に似ているからなのか?

心の中で何かが疼いてくるような気持ちでいた。


 迷宮のラウンジ経由に、おそらくいるだろう仲間たちの下に向かうと都合よくチャビンとともに3人が集まっていた。


 声をかけながら近寄ると、アベさんがこちらを見て興味深そうにレティシアを見ている姿と、首を傾げて珍しそうな目で見るオーリエとチャビン、驚愕とでもいいそうな見開いた目で見るジャックスというそれぞれ違った反応が伺えた。


 ともかく紹介だという思いで、俺はレティシアに自己紹介をさせた後に経緯を簡単に説明した。


 納得する中でジャックスだけが1人違うことを言った。


「お前は前からアレだと思ってたけど、まさかここまでとはな............御見それだぜ」


「どういう意味だ?」


「なんでもねぇよ。そんで、その子をオーリエちゃんの訓練相手にするのか?さっきの説明だとそんなこともできそうだけどな」


「あ」


 そういえばそうだった。元々俺は、木人人形に成長する要素ができればと考えてレティーナ様に生み出されたこの子の当初の目的を忘れていた。だけど、彼女の140cmほどの体躯に2.5mの体躯を持つオーリエで果たしてうまくやれるのか不安で仕方なかった。


 俺の不安を感じたのか、レティシアが抱きついてウリウリしていたアベさんから離れて俺のほうに振り向いた。


「パパ、大丈夫だよ!ね、ジャックスのおじさん!」


「俺はまだお兄さんだ!」


「どうでもいいよ!とにかく、私に攻撃してきてみて!ほら、この手にパンチして!」


 どうでもいいってという言葉に、がっくしと肩を落としたジャックスをほおっておき、レティシアはそう提案してきた。

 なんだ?パンチングマシンみたくジャックスの力量でも例の力を使えば大丈夫だからってことか?


「そうだよ!パパ!」


 俺が口に出していないことなのに、レティはうんうんと頷いている。

 本当に繋がっているからか分かるのかなと思いつつ、ジャックスに言う。


「とりあえず、レティシアの言われた通りにやってみてくれ。迷宮内だし、まぁこの子が言うんだから大丈夫だと思うぞ」


 俺の言葉にじゃあ軽くなというジャックスは、どこか緊張した様子で拳を握ってそんなに速度の出ないヘロヘロパンチをレティシアの構えた手に当てた。その何気ない気遣いにレティシアは逆にむっとした調子で言い放った。


「むー!おじさんの癖にバカにするなんて!」


 そういった後にグっと拳を固めたレティシアは、


「やられたらやり返す、"倍返し"ー!」


 そう言って構えも取っていないジャックスに、絶対倍ではすまない速度の攻撃を同じパンチで浴びせた。すると、集落中央から北のゲルの家方向にいたジャックスはそのゲルへ向けて顔を歪ませながら『ひょげひぇ』と謎の声を発しながら吹っ飛んでいった。


 俺の知識からそれを持って来たのか?と呆れながらも、ゲルの屋根に突き刺さる形で足をピクピクとしたジャックスを見ながらも俺は自分で試さなくてよかったと心の中で安堵した。


「レティシア、今のがお前の力か?」


 俺の問いに、レティシアはんーっと言って、


「本当はあのおじさんの"力量"を図って同じ"力量"で返す予定だったんだけど、あのおじさんあんなヘナチョコ放ってきたからイラっとしたのー!」


 と言いながら頬をぷーっと膨らませた。その可愛さに打たれたからなのかアベさんやらオーリエが頭を撫でている。イラっとしたから脛を蹴る俺の血が入ってるからあんなことをするのか?それとも個性なのかまだ判断はできなかった。


だがこれくらいは分かる。

ジャックス、生きろ。


「すごい攻撃だったなー!オイラ、びっくりしちゃったよ!」


 と興奮冷めやらぬ様子のチャビンのように俺もこれが彼女の力かといった思いだった。力量を測り、共感することでその力量で返すことができるなんてまるで合わせ鏡のようなことができるのではと思った。

 そしてその試しをアベさん、オーリエにも行なわせた。アレを見ても、小さい子に手を挙げるのに躊躇するのかアベさんは結構嫌がっていたけどレティシアがこれくらい?といって放った拳を受けて目の色を変えた。まるで、長年のライバルに出会ったかのように。


「ガウ!」


「うわー、アベさんって強いんだねー!――っと!なるほど~これくらい~?」


 と、まるで2人の空気感が全然違うこれから何度も見られるだろう"金と銀の攻防"を見ながら確信した。

 最初こそ、結構精一杯に避けていたり、受けていたりしていたレティシアがだんだんとアベさんについていけるようになっているのである。アベさんもアベさんで段々熱を持ってきているのかその攻撃にイチイチ容赦がなくなっていった。首筋、心臓なんかをフェイントも交えて責めているし。これがおそらくアベさんのいう"殺すための狩り"なのだろうと理解できた。


 俺はその後も2人の戦いを見て訓練方法を自分なりに考えてそれを伝えることにした。魔物との戦闘に関してはアベさん、対人戦や護衛用にジャックスと、まずはそれらをレティシアに実践で教えさせて、そのまま相手の力量を測れるレティシアがオーリエに教えていって最終的に2人で組み手が行なえるように、と。


 それを伝えてもうすぐ夕飯だと言うことで、俺たちが部屋へと戻るときにふと思った。もしかしてこうなるかもしれないからと現れてくれたんだろうか、と。


けど、結果的には助けとなってくれたレティーナ様へは空に手を組んで、感謝を捧げたのは言うまでもない。


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