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第11層「迷宮開拓の方法」

 会議を終えてさすがに限界だった俺は爆睡後の翌日――

 集落に見張りとしてアベさんを残して迷宮の開拓を手伝ってくれる小人族たちを連れて戻ってきた。そこでいつもふつふつと考えていたときにたまたまだったのだが――


 "このゲートも扉が見えるようになれば、許可したものがあけられるようになれば"


 という軽い考えをした結果、不視設定になっていたらしきゲートの扉――アパートなんかの一般的なサイズで材質は木製であろう扉が現れたのだ。本来、鍵を扉を開きたいところに念じてやればそれがドアノブになって開く。扉は見えずにそのまま向こうへと繋がるのだが、俺がそう思ったことによってなのか今では可視されているのである。後ろから着いてきていたチャビンたちも見開いて驚いていたのだが、俺はもっと驚いた。


 彼らは戸惑いの驚きだろうが、俺にはまだまだ謎が隠されていたという喜びの驚きだった。


 とりあえず今はそれどころではないので、ひとまず開いてチュートリアルの迷宮へと帰ってきた。作業室につなげたのでひとまず待機してもらい、俺は自分の部屋から迷宮用の地図と作業用ノートを持って来た。


 そこでキョロキョロとしていたので聞いてみると、明かりもないのになんでこんなに良く見えるのかと疑問視していたようだ。


「それは俺の力によってこの迷宮に"暗所でも見える"というルール――規約みたいなのを作っているからだ」


 その答えにすごい力持ってるんだなとしきりに感心された。

 まぁもらい物の力だから、誇れるようなものじゃないんだけど。


 そんな彼ら迷宮開拓組には現在本丸となっている迷宮の開拓を地図通りに行なってもらうために、あることを覚えておいて欲しいのでこうして集まってもらった。俺は集まってもらっている作業室で車座になって座ってもらい、説明を開始する。


「まずこれは地図というものなんだけど、見たことはあるか?」


 俺が見せたものをジーっと見て、質問してくるのはチャビンだった。


「地図という言葉とどういうものか、は聞いたことはあるよ。オイラの爺様の代だったそうだからなあの集落に来たのは。その集落の前に人族から見せてもらったことがあるって聞いたことがある。............だけど、なんか四角いものの中に文字のような変な模様が書かれてるんじゃなくて見せてもらったのはこの大陸の絵姿だって聞いたぞ?これ、本当に地図か?」


 なんか四角いというのは、方眼紙式で印刷された図で、文字のような変な模様とはおそらく仕切りになるところだろう。まぁ、地図がなんなのかってのが分かればいいんだ。


ちなみに最初はノートの罫線に縦線を入れて、一番上から記号モドキで埋めていたのだが昔やっていた有名なダンジョン探索ゲームからヒントを得て、アルファベットを横方向、数字を縦方向に空白部分に入れた地図をルール付けにより、実際のこの迷宮本丸に関連付けることにした。


最初の線引きなんかも手作業でやっていたが、ちょっと辛くなったので色々考えて、そういえば表計算ソフトを何かで習ったときに同じようなことができたなとソフトのテンプレートを探すと『方眼紙型』というのがあったのでそれをプリンターで印刷をして使っている。


それを並べて、第1層の迷宮空間に置き換えて関連付けるとサイズに合わせるように計A4の用紙6枚が密着して一枚の空の地図になった。

以後はこれを使うようにしている。

そして、彼らにも作業で必要だろうこれの読み方を覚えてもらうために教えているというのが流れである。


「正真正銘これは地図だ。で、これは1階層で、ここから出て左手に真っ直ぐ行ったところにあるラウンジの奥にある場所のことだ。それを真上から眺めたようにして映した場所だと思えばいいよ」


 ふむふむという感じで話しに耳を傾けるチャビンたち。


「なんでこういう風な地図にしているかっていうと、このほうが分かりやすいからなんだけど............この紙の上の空白のところにある文字を見て欲しい」


 そうして、俺は一番右上の1マス目の上に書かれている『A』という文字を指差す。


「この文字はAから順にB,C,D,E,Fって感じで横に続いている。これは見慣れないと思うから後で全部順々に教えていくからまずはこうなってるんだよって思っててくれ」


 俺の言葉に頷いて了承する小人族に俺も頷いて今度は、1マス目の左側の空白部分に書かれている『1』を指差した。


「これは数字の1だけど............ここらへんはわかるか?」


「数字............たしか、爺様にそれは習ったはずだ。少し教えてくれれば思い出すから後でさっきの文字と一緒に教えてくれ!」


「ああ、分かった。それじゃ続きだ。どうしてこんな風に書かれているかっていうと、このマスの範囲を上の『A』と左横の『1』を基準に場所を表しているからだ。こうして交差させれば、ここがどこか真上から見た時に分かりやすいだろ?」


 俺は二つのペンを1マス目に交差させるように置いた。


 んーっと考えながら理解しようとするも中々理解が進まないようだ。

 人に教えることはしたことないからな~............直接連れて行って上から見たほうがわかりやすいかな。

 と考え付いた俺は、ちょっとココで待っててくれと作業室に待たせておいて俺はさっき示した場所まで移動した。迷宮魔法――転移テレポート*1で。


 転移後に4mの壁になっている部分を一時的に全て砂にして消しておく。

 そして、準備を終えてゲート機能を使って作業室にドアを開けて、小人族たちを手招きする。潜ってきたそこをキョロキョロと物珍しそうにする彼らに再び説明をした。


「ここはさっき俺が地図で示した場所なんだけど、上から見たほうが分かりやすいかと思ったから連れて来た。今から迷宮魔法で浮遊させるから全員で手を繋いでくれ」


 魔法という言葉にみな驚いたような顔をするが、またそれは後で教えるよと言ってとりあえず手を繋いでもらう。そうして全員が繋いだところで浮遊レビート*2を発動した。ふわふわと浮遊していく体に驚く彼らをよそに俺は、あの地図の1マス目のちょうど真中らへんで停止する。


「こうして真上から見てどう思う?さっきの地図と形が同じだと思わないか?」


 俺の問いにおおーという声が聞こえてくる。

 そして、チャビンが途端に張り切った声を上げて質問してきた。


「つまり、あの出っ張りの部分までがこの地図のAと1の交差させた場所ってことだよな?あっちは見えないけど」


 1マス目はちょうどT字にしているため、その下の部分を指差しているから理解できたのだと分かった。そしてさっき分かりやすいように砂状にして切り取ってない部分――2マス目にあたる部分はもちろん見えない。


「ここは分かりやすく本来の半分ほどの壁にしたからな。まぁつまり、2マス目も1マス目の右隣にあるわけだからBと1の交差しているところだとこの地図を見るだけで判断できる。慣れは必要だけど、数日は俺も付き合うからその時に分からないことがあったら気軽に聞いてくれ」


「だけど、これだとそのAの1とBの1の境目が分からないよ?」


 その問いに俺は頷いて、地面に手を当てる。すると、光って地面に『B-1』と表示されて黄色い線が回りを囲うように表示された。またおおっという声が聞こえてきたが、構わずに説明する。


「この地図とこの迷宮は"繋がって"いるんだ。つまり、この地図を持っているものは現在どこにいるのかわかるようになっている。もし、今自分がどこにいるのか分からなかったらさっきやったように地面に手を当てて、ここはどこ?と念じれば光って地面に地図の場所が表示されるってことだ」


 俺の言葉になるほどーと腕を組んでふむふむと納得するように頷いていた。

 最初のとっかかりである地図の見方を覚えてしまえば、おそらくはこの人たちはその頭脳ですぐに物にできるだろうと思っている。説明に苦労したけど、なんとなく理解できたようで何よりだ。一先ず俺は、アルファベットと数字を教えるために彼らと一緒に作業室へと戻るのだった。


 その後に昼飯を一緒にとって、細々とした質問に答えた後今度は実際に迷宮の通路作りを教える。

 俺が説明用に空洞化させた区画であるA-1以外はまだ完全に埋まっている状態なので、そこはさっきと同じように地面に手を当てて"どう削ればいいの?"と念じれば削っていい部分は青、削ってはいけない部分は赤と色によって立体的に表示されるので、後は削っていい青の部分を迷宮魔法化させた触砂手サンドタッチ*3を使って削っていくだけとなるため、作業自体は地図の読み方さえ覚えれば簡単だと思う。

 背の問題も触砂手サンドタッチの発動を対象方向に向ければ問題はなくなるだろう。


 その迷宮魔法も慣れないといけないので、ラウンジのほうで訓練をしてもらうけど。


 一先ず、一通り迷宮魔法の使い方などを教えた上でラウンジ作りを練習相手にしてもらって明日から一緒に作業を行なって覚えてもらうようにして開拓組とは別れた。

 

 それから俺は集落へ再生のオーブを持っていき、前日にオーリエにも手伝ってもらい集めた大鬼族の死体を一片も残さず吸収させた。自重に10時間耐えたヤツも残らずにだ。その作業を終えていると、アベさんが右手を上げながらやってきた。


「アベさん、見回りお疲れさん。どう?魔物は襲ってくる気配とかある?」


「ガウ」


 そう言って首を横に振る。なんていうか、おそらく寄ってこないのはアベさんの存在感だと思うんだけど。

 納得して俺は、アベさんに夕方までよろしくと声をかけて別れた。オーリエはたしか今日は分解作業の手伝いだったな。様子を見るためにそこへ向かっていった。


 俺の身長の倍くらいはある家の壁の木板部分を豪快に剥がすオーリエを見て、パワフルだと関心しながらも声をかけた。


「よ、お疲れさん。どうだ?作業のほうは」


 下でちょろちょろと小人族の人たちが動き回っているところなので、そこを避けてゆっくりと下ろし終えたオーリエはこちらを向いて俺の問いに応えた。


「うン。ちゃント、言われたトオリにしているヨ?」


 なんともまだ流暢とはいかない話し方ではあるが、生真面目そうに働く彼女に俺はそうかと言った。

 見下ろすその姿は威圧感を放つこともなく静かな印象であるため本格的にこの後落ち着いたらこの子を護衛として訓練させたいと思っているのだが、どうなるんだろうと期待半分、不安半分である。


ちなみにまだ彼女にはそのことを伝えていない。


 そういえばと俺は彼女のボロボロの皮を繋いだかのような服に目が行く。

 無論、あえてそういうたぷん的な何かには目を向けないようにしている。

 目を 向けたいけど、向けないのだ!

 それはともかく気になっている彼女のボロボロの格好をどうにかしたいと思っているのだ。自分の服のサイズが合うか分からないけど、何着か持ってくるか。


「あ、なんか忙しそうなところ悪かった。じゃ、頑張ってくれよ」


 建築担当らしい小人族の子(?)がチラチラこっちを見ているので、おそらくオーリエに手伝って欲しいだろうとあたりをつけて俺は声をかけてその場を立ち去った。しばらくはこっちで泊まるみたいだし、小人族は彼女を迫害したりしないので俺としても安心である。


 そうして一通り集落を歩き回って確認した俺は、時計を見ていい時間になったのでジャックスを起こしに行くことにする。なぜこの夕方にも差しかかろうとしているときに寝ているのかというと彼には夜の見張り役としているからである。昼はアベさんにお願いしているが、そろそろアベさんの狩りの時間だしジャックスもそろそろ時間になるのでついでということもあり、俺が起こすことにしているのだ。


 迷宮チュートリアルのラウンジに入ってすぐ右手にあるジャックスの犬小屋を迷宮主権限で開くと中では俺があげたベッドで高いびきを上げながら眠っているジャックスの姿があった。

 手元に持っている冷たい水をジャックスの口に入れて、口を塞いでから浮遊レビートで浮かせて精一杯揺らせた。


「アブッゴホッゲヘッな、なん、ゴホッゴホッ!」


「よ、おはよう。目覚めはどうだ?」


「最悪だ!」


 おかしいな、俺なりに心地いい目覚めを提供したのに。

 別に自分がこうして働いているのにこのおっさんが眠りこけているからちょっとムカついてこういう起こし方をしたわけでは断じてないのだ。


「そろそろ起床時間だぞ。とりあえず、飯食わせるから俺の部屋にこい」


「あ~はいはい。ゴホッ!わかったよ............ゴホッ」


 まだ咽ているジャックスは奴隷から拒否できる立場になっても扱い変わってねぇよだのなんだのという独り言は無視してとっとと自分の部屋へゲートを開いて、先に行く。

 そしてそのままコンロに火をつけて彼の大好物である肉を焼いていった。

 また夜中の夜食用にも別に用意して、着替えたジャックスに夕飯の肉を与えた。


「今日はおめぇもあっちで寝るんだろ?」


「いや、厳密に言えば違うが――そうだな、ちょっと考えがあってな」


「なんだそりゃ?」


 ジャックスの疑問に答えるように、俺は説明していった。


「実はな、侵入してきた魔物たちを捕獲しようと思っているんだよ。アベさんだと周辺に住む魔物は襲ってこないみたいだけどもしかしたら、夜中にアベさんがこっちにいる間に来た場合に捕獲できる可能性があるんだ。だけど、その魔物利用方法は考え中だけど」


「魔物を捕獲だぁ?お前があの時俺に使った力みたいにか?」


「あんたに使ったのは一人に対してだ。俺が使える力のうちの一つは迷宮空間自体を管理できるから厳密に言えば、集落で今も発動してるぞ。"敵意、悪意を持って集落に入ってきたものは誰であろうと金縛り"っていうやつだ」


「とんでもねぇな、そりゃ」


 実際とんでもなかったさ。これも魔力回復ポーション分で回復できた魔力を再度、迷宮"集落"用に込めてカラにした結果なんだけど予想以上に最大数を潰すほどってことだった。


「ま、その代償分はしっかり回収させてもらうさ。言ってみれば、今回の魔物捕獲は前哨戦みたいなものだからな」


「どういうことだ?」


「俺が開く迷宮ってのは、つまりはそういうことだろう?魔法と同じ効果の剣だとか傭兵なんていう人を殺して何ぼの人族にとっちゃ喉から手が出るほどほしいだろうし、そういうのをぶら下げてお待ちしてまーすなんて今回とそこまで変わらないじゃないか」


 俺の言葉になるほどなと1つ頷いて納得するジャックス。

 自分の言葉で気付いて改めて聞いてみる。


「そういやその傭兵だとか魔物狩りなんて職業はやっぱりそういう傾向の武器やらを欲しがるもんか?」


「魔法がありふれたここらの奴らはそうだろうな。俺ら西の人間にとっちゃ、全てを自前の力でやったり、妖精族なんて未だに"精霊"とかいう力で魔法が使えるわけだし」


 需要はあるってことか。なるほどなるほど。

 そういや西には妖精族もいるんだったな、精霊を使う魔法ってことは精霊魔法ってやつかな?


 そんなふうなやり取りをしばらくして時間になると、集落へ向かった。

 俺たちと入れ替わる形でアベさんがガウッといって自分の部屋へと帰っていった。


「ジャックスはこのまま見回りしながら見張りも頼む。俺は、チャビンたち迷宮開拓組のところへ行ってくるから」


「ああ、わかった」


 そしてその日の夜は、アベさんがいた昼時にはありえなかったほどの"入れ食い"の光景が目の前に広がった。

 

 徒党を組んでこの集落に来た時に見た『ウルグルフ』が群れで5匹"金縛り"という名の網にかかり、3匹の『オウルバード』が敵意を持って村上空をしようとしてたのか見回りをしていたジャックスを押し潰すように上から降ってきたりと彼にとっては散々、俺にとっては腹を抱えて笑い転げるといった夜は騒がしくも静かに過ぎていった。

*1:転移テレポート

頭に地図の座標(1マス目ならA-1)を思い浮かべて発動するだけで迷宮内のどこでも好きに転移できる


*2:浮遊レビート

迷宮内限定で浮遊できるため、高所作業、地震攻撃に有効である


*3:触砂手サンドタッチ

作業用魔法。触れて発動させると、材質が近いものを砂に変化させることができる。また指向性と範囲を念じればその方向へ発動できる




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