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第28層「大湖の現地視察」

「人族のくだらない話は、終わった~?」


 そう言って入ってきたのは、プラティニア......いや、魔法少女プラティである。俺は人間だからOK――しかし、人族は未だにその悔恨があるのか下らないと切って捨てるのを俺はなんとも言えない気持ちを感じながらも終わったよと返事をした。


 この大陸で目指すのは多分だが、プラティと人族の架け橋になるようなものになるかもな。


「迷宮を作るのは了承したけど~、具体的にどうするの~☆」


「ああ。一応俺にも腹案はあるんだけど......現時点でそこらへんは?」


 俺は、サラリーに聞くとメガネを上げて手を扉の方に向けた。


「その説明は現地でってことで、まずは外へ行こう」


 その言葉に了承する形で俺たちは、研究があるということでエロナと別れてそれ以外の3人で馬車から外へ出ることにした。


 どうやらこの馬車は、迷宮チュートリアルからの労働者となる奴隷達用の通り道となるので、それを考慮して湖の陸側へと場所を移したと移動中にサラリーから聞いた。


 外に出ると、水気を含む空気を感じて見渡すと後方に大湖が広がっている。

 場所的にどこかと聞けば湖の南に位置するところらしい。

 ちなみに俺が転移したのは、南西側だったそうだ。


「テントがもう設営されていってるな」


 辺りには、まるで開拓者たちの村とでも言えそうな規模で色々なテントが設置されていた。迷宮公道の時とは違って移動を目的とはしていないので、車輪とか取っ手はついていない。


 そして現在でもテントが建てられているのか、所々ではそれらの作業に従事している奴隷や3氏族の人々、新たに加わった人形族も主に現場監督的な立ち位置で周辺で忙しくしている様子が伺えた。


「父さんが気絶している間に、プラティさんの協力もあって湖を測量させてもらったよ」


「タクちゃんの息子さんって礼儀正しくていい子だよね~☆」


 そう言って足りない身長ながら、必死に足を伸ばしてサラリーの頭を撫でるプラティ。


「教育の賜物......ですよ」


 と、言ってメガネを上げながらも恐縮ですとでも言いそうなことを言うサラリーに、俺はそんな教育をした覚えはないので、おそらくレティからの教育だと思う。


 あいつは結構いい加減だが締める所は締めるし。


「プラティも驚いちゃったな~。......あんなに小さいのに、まさか自分と渡り合えるレベルにあるなんてさ~☆」


 そりゃ、あいつは迷宮内という自らのフィールドに立てば能力もあるし勝てる奴なんていないだろう。


 つまり、逆を言えば迷宮外じゃ普通の幼女ということだ。


 その点、この幼女化したプラティはおそらくどこでも最恐といえる力を持っているんだから俺のがっかり度も相当なものだ。あ、でも......砂漠とかじゃ弱体化するのかも。


「話が脱線しているよ。 ......とりあえず測量の結果とプラティさんから得られる領域を書いた資料はこれだ」


 サラリーの言葉とともに手渡された資料を見ると、その規模想像絶するほどだった。


 琵琶湖を例に挙げたが、あんなものじゃない広大さだった。

 ......地図から伺えた規模は、海なのか湖なのか分からないカスピ海というあちらの世界最大の湖が優に2つは入るであろうほどである。


 まぁ、あれだけの超巨体で住まうのであれば、ある意味納得もできるけど。


「それの約半分は、父さんに預けるってさ」


 サラリーの言葉にコクコクと頷いて、決めポーズをとるプラティ。

 うざいから辞めてくれないかなと言ったら、また内臓を押し潰されるかもしれないから口は噤むことにした。


「あとは湖の深度と水質だね。2枚目の資料を見てよ」


 そこには、湖内の生命――つまり生き物についての分布図が描かれている。

 淡水魚類、藻類、貝類(?)と......あとは、湖底に作られているロブスタン族の集落がいくつかが湖全体に集落を作っており、湖の中央に町並の大きさと言える集落があるようだ。


 で、肝心の水深は5100m。


 マンション1F天井高3mの場合、1700階分くらいか。

 軽く富士山越えている分、深さはお察し状態だ。

 ......水深規模は超深海だな、完全に。


 水質は、加護があるそうで淡水でも海水でもない聖水と言える部類のものだと書いてあった。


「ちょっと入っていいか?」


「いいよー☆」


 と断わった上で俺は気になったために、湖の中に入ってみる。

 海岸みたいに湖に入った辺りはまだまだ深さはないが、奥に広がる広大さから言って中央とかに進むに従って深くなっていくのだろうと思った。


 そして適当に湖の水を掬うと、口に含んでみる。


 喉へとするっと入るかのような喉越しとでもいうのか......水の味は味はないけど水道水のようなカルキくささなども感じないので清涼水みたいだ。

 しかしそれだけじゃなく、まるで体に染み渡ってきて癒されるとともにものすごく生命に溢れているかのような――そんな印象を与えてくる。


「うまいな......それになんか生命力溢れるって感じだ」


「でしょー☆ プラティが目一杯加護しているからね☆」


 さすがは水の司竜と呼ばれるだけはあるかと俺は思った。


「......水圧とかは――ああ、もしかしてそれも水の加護か?」


「そうだよ~☆」


 つまりは水の加護が得られれば、水圧が無視できるらしい。

 ん~ということは......迷宮ギルド証にそういう機能を付随しなきゃいけなくなるな。


 俺はノートを取り出すと、気になるところを書き出していく。

 そんな中、突然目の前からジャックスが以前釣り上げたザリガニ型の甲殻を持つロブスタン族たちが湖から現れた。


「こちらにおいででしたっチョ? おお、迷宮主殿もご一緒でしたっチョ」


 ~っチョというのは、彼ら固有の語尾だろうか。

 そのインパクトある語尾に、少し吹きそうになったが失礼だろうと俺は耐えることにした。


「ああ、挨拶もなく申し訳ないな。俺は、迷宮主創造主タクトって......迷宮主殿って言ってたし......知ってるか。ま、とにかく......よろしく頼むよ」


「ロブは、ロブスタン族で長を務めておるロブガイと言いますっチョ」


 そうして差し出されたハサミに手を合わせて、友好的に接することにした。


「貴殿には、シーアと......ロブの同胞であるロブタフの亡骸を丁寧に扱っていただいたことを聞いているっチョよ。また、シーアと仲良くさせてもらっているリリィ殿も救い出されたとか......ほんに感謝したいっチョ」


 ロブガイさんはそう言うと、両手?を横に開いて上下に揺らしていた。


「!」


 俺はその姿にヤバイと、よく芸人がやる噴出すのをこらえるために後ろを向く動作を慌てて行った。


 だって、どこからどうみてもフォッフォッフォッフォだったのだから。


("......と、父さん、これが彼らの最大の礼らしいよ............っ!")


 そんなことを念話で伝えながらも、サラリーでさえ肩が揺れていた。

 これは最初、相当なインパクトだったのかもしれないな。


("そ、そうなのか......俺は、バル○ンの真似でもして緊張を解しているのかと思ったよ")


("そんな緊張の解し方はないよ、父さん")


 ラジオ体操に同じようなものなかったかと思ったが今は関係がないので、笑いを抑えきった俺は、無難にありがとうと伝えて誤魔化すことにした。


「? ......それよりも、プラティ様。何やら迷宮主殿が迷宮を作るからと、若い衆に協力を仰ぎたいとお聞きしましたっチョ」


「うん~☆ あの管理者と賭けして負けた分はちゃんとお手伝いしないと☆」


 俺は思うが、あんたが手伝えば言いだけなのではと思うけど。


("父さん、竜にやらせるとか......竜爺じゃないんだから失礼だよ")


("プラティと同じ種の竜爺には失礼じゃないのか?")


 どんだけ竜爺は未だ下に見られているんだろうかと思うと、不憫だ。


「あ、もちろんプラティも手伝えるところは手伝うつもりよ~☆ えっと、なんだっけ......用水路作るんでしょ?」


 ――用水路?


「ああ、そうだった。父さんには見せてなかったけど......これが各の町とのやり取りを記したものだよ」


 どれどれと書類を見てみると、そこには穀倉地帯用に湖の水を供給する代わりに収穫量の何割かとあちらの交易品の一部を貰い受けるという......なんともこちらにメリットありまくりの交渉結果が記されていた。


 しかし、さっき口に含んだ水の質を考えれば。これらの交渉も成り立つかと納得もする。


 馬車の中で聞いた寝込むほどの交渉とはこういうことか。


 主に北西の町は、漁業産業らしいので用水の必要はないが、件の弱みを握ったがために漁獲高の1割をこちらへと『献上』するそうだ。これも、過去と現在に渡る(当時の北の国は完全に巻き込まれ)水竜様への罪滅ぼしのためとかなんとか。


 それから酪農地帯となる北の町。......ここは豚、牛、羊、鶏といった牧場が多数あるらしいので、用水はありで、そこからの生産品を提供する代わりに提供と記してある。北東の町は果樹園、南東は茶畑が広がる地帯だそうだ。


 南は、豆類で大豆、小豆、コーヒー豆と記されていて、大豆ということは久々に納豆が食べられるかもと少し嬉しくなった。そして南西の町はサトウキビらしきものがあって黄色の砂糖粉といったものも市場にあったそうだ。


 これら全ては用水ありだそうだ。


 総合的に見るとオフクロ筆頭に服飾のチャイム、畑担当のチャイブ老辺りも種ゲットに動きそうだから嬉々として色々と取り組みがありそうだと思う。

 俺としては納豆さえあれば......あとは、卵かけごはんができればいいかなというくらいしか思わないけど。


 それにしても、それぞれの取引率を見るに俺は思わずため息が漏れる。


「お前これ......ボッタくりすぎじゃないか?」


「それくらいで丁度いいんだよ。この大陸における水竜様っていうのはそれほどに畏怖を感じさせる存在なんだしね」


「人族なんて、ポポポーイって滅ぼせばいいのに~☆」


 だから、そこの魔法少女は物騒なことを言うなよ。


「とりあえず用水路とかのほうはそっちにまかせる。ノウハウもラウンジでできていあるだろうしな。......俺は迷宮を創造しなくちゃだし......そういや、この場合どうなるのかな」


「どういうことだい?」


 俺は迷宮創造(ダンジョンメイカー)について語った。

 あの迷宮"チュートリアル"の場合は主に岩肌が囲いとなって、明確な魔力伝達の基準みたいになっていたのだが、今回は液体である。


「ん~~。......まぁ試してみるしかないよねー☆」


 と、さらりと軽いことを言う魔法少女に俺はそれもそうかと一度試してみることにした。


 チャプっと湖に手を入れて、このまま一瞬でパキっと凍らせて寒いから服着込んで~とか言えそうだなとバカな考えをしながらも、俺は意識を集中させて発動させた。


迷宮創造(ダンジョンメイカー)"大湖《プラティニア=レイク》"」


 すると、光が手の先から出てそれがスーっと水面を伝って湖全体へと広がりを見せていった。


 ほう、綺麗ですっチョというロブガイさんの言葉に同意するようにその光景は俺でも同じことが言えそうなほどに神秘的な光景に映る。


「プラティ、分かるか?」


 俺の言葉にプラティはちょっと待ってね~とオーバーアクションでステッキを振ると、うんうんふむふむと考えてなるほどーと納得をした。


「基準としては、タクちゃんの3mっていう天井高計算で行くと......今のでこの湖10分の1の範囲と、大体3階分相当の高さでなんか違う空間を感じるよー☆」


 こんだけ広いのに、幅は10分の1、高さは9mが迷宮空間化ってなんか出来すぎな気がすると俺は疑問に思った。


「タクちゃん、魔力の種類が1つ追加されたでしょ?それのせいだよー☆」


「あ、そういうことか......」


 なるほど、ここで水属性の魔力が作用するのかと俺は思いついた。


「とりあえず久々に迷宮空間カラーシートを取り出して、だいたい半分になるくらいまで創造していくのが最初の作業ってことになりそうだ」


「そうなると、実際の作業というのは明日からになるっチョ?」


 それが、そうでもない。

 なんせ湖の水を固定化させる手段がないのだから。


 ルールで水を固形化とかでもいいのだが、相手は液体。

 俺であれば水属性の魔力もあるので、容易だと思うのだが規模が規模だし、俺にも他に色々やることとかがあるので第三者でも出来る手段が必要だ。


 じゃあプラティの力をと思うのだが......さすがにそれだと自分たちでという定義が崩れるし、俺が考えている別の協力のこともある。


 マッピングはすでに草案だが、できているのでそれに従って多分あの迷宮で経験のあるチャビン主導で行なっていくものだろう。――となれば、やはり彼らでもやれるような道具――


 そうだ。

 道具でならば種族に囚われずに誰でも使用できるので、それで補えればいいのだが......と考えた俺は、先に集まっているみんなへ事情を説明した上で解散してもらって1人になり、こちらへ出る際に途中で別れたエロナへ通信を放った。


("エロナー、ちょっといいか?")


("どうしたの?お父さん~")


 俺は事情を語ると、ん~それか~と悩むエロナ。


("私もね、おそらくそうなるんじゃないかな~って思ってたからこっちでも色々と試行錯誤してたんだけどね~")


 どうやらエロナもエロナなりに考えて今現在も研究をしていたようだ。


 ホントにこういう時は頼りになる娘だと関心するとともに、俺はしばらくその場で考えることにした。


 水を固形化。

 つまりは氷......。


 いや、氷じゃ......だめだ。

 そういうのは、北の大陸とかで嫌というほど作れそうだしと考えたところで、頭に引っかかったあるモノを連想した。


 こう......ここに来るまでの間に固形化をさせて投げたりなんかをした人物だ。


「..................そういえばティニは、秘伝で魔力凝縮っていう技術で自分の母乳をキャンディのように固くしていたっけ」


 あれを、魔道具に置き換えることができればどうだろうか。


 物は試しと、俺はティニがいる場所をエロナに聞いてみた。すると――


「ティニちゃんなら、デニアちゃんと一緒にラウンジに行ってるみたい~」


 ラウンジか、そういえばあっちには顔出してないしと俺は久々に古巣となるラウンジへと向かうことにした。

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