第23層「降り注いだ結末の」
禁忌種『オーク』という生きとし生けるもの全ての敵と言える脅威から住民達を先導して避難をさせる中、とうとう住民達は我慢の限界を超えてしまった。
それは――本当にくだらないことからである。
――ドサッ!
クリアムは、そんな音が聞こえたと同時に後ろを振り返ってまた老人がかと思ったのだがそこにはあんちゃんと憧れを抱くタクトよりも5歳くらいは上と思われる女性が赤子を抱きながら赤い顔をして倒れ伏した光景が見えた。
周囲の人たちが協力し起き上がらせる中、クリアム自身も傍によって声をかけようとした矢先に突如自分を襲う衝撃が右頬から感じられ、受身を取ることもできずにそのまま吹き飛ばされてしまった。
オークの仕業かと思ったクリアムだったが、そこにいたのは異常な目をした畜生の分際でと先導を断わっていた住民の男であった。
「もう~~......耐えられねぇ!! ふざけんじゃねぇ! さっきからじじいにばばあ、それに今は子連れの女と足手まといばっかりが足引っ張りやがる! いつになったら南の門に着くんだ! やっぱ、てめぇらが先導するから進めるもんも進めねぇんだ!! どうしてくれるんだ!! ええ!?」
「お前、さっきの傭兵の言葉を忘れたのか!? こんなところで揉め――」
バキッ――!
諌めようとした男に今度は、別の男がまるで罵倒した男を擁護するように顔面へ一撃を放っては異常者とも言える目つきで殴った奴を睨んでいた。
周囲で襲撃を警戒していた傭兵が発見し、まずいと思ったのかその殴った男を羽交い絞めにして制止させる。
だが、男は苛立ちが納まらない様子で口から涎を飛ばしながらも罵倒した。
「んだよっ!! 離しやがれ! てめぇら、傭兵なんかは戦うのが当然な奴らだろ!! こんなところにいねぇでさっさとオークどもを殺してこいよ!? 俺たちはこの町に生まれてこの町で育って傭兵どもに金を払う立場の人族様だぞ! それにさっき能書きを垂れていた傭兵のクソガキは、心の病気だかなんだかしらねぇが、たかが傭兵の分際でこの町の住民である俺らに説教くれやがって!! 畜生どももだ! なんで人ですらない奴に従う必要があるんだ!?」
そんな男の爆発された感情は、抑えていたあらゆる住民の中に芽吹く導火線に火をつけていくこととなっていく。それを切欠にあらゆるところからありとあらゆる文句、憤り、嘆きが言葉や暴力、果ては関係のない女子へ襲撃と暴走がだんだん広まっていった。
その光景に、クリアムは呆然となってしまう。
今まで協力していた住民達がまるで全く別の者たちに見えてしまうほどに。
そんなクリアムへも住民は襲い掛かってきた。畜生の分際で! やっぱりお前達が! そんな意味不明な言葉を吐きながら、周囲にいるクリアムの仲間である畜生たちにも、別の区画の畜生たちにもそれは同様に、である。
護衛をしていた傭兵たちも、ただ指を咥えていたわけではない。
しかし、それらを抑えようとするためには、如何せん数が違いすぎた。
訓練された戦争屋であるところの傭兵たちであっても、数という圧倒的な差は埋めることができるはずもない。そればかりが、自らが護衛をしていた住民から逆に暴力という返礼を振るわれてしまうその様子は狂気孕む様相を呈していた。
悲鳴、罵声、怒声、ありとあらゆる声などが周囲から聞こえては消えていく。
「な......なんで......」
そんな様子を見ながらも住民に殴られ倒れたクリアムは、さらに自分へ馬乗りとなった住民の呪詛のような罵詈雑言で罵る様に宿るその目には、悲しみや慟哭を表すかのような表情が見える男の姿はこういうことかと思った。
それはあの日、作戦を語った後になんであいつらの味方になるようなことをと憤った自分にタクトが語ったこと。
『いいか? クリアム。お前は大人でいろ。まだ子供であるお前に大人でいろってのもおかしな話だけどな。だが、時にはそうする必要があるんだ。 今後......イラっとすることもあると思うし、理不尽だと思うことも、殺したいほどに憎むことすらあるだろう。だがな、そういう時こそ冷静に自分の立ち位置をしっかり考えてから行動しろ。目の前で泣いて暴れる自分より下の子にお前はどうする? つまりはそういうことだよ。 ......ああ、そうだ! ついどうしてもって時に冷静になれるいい方法があったっけ......。 えと、たしか――』
クリアムは、タクトに教えられたその冷静になる方法を行なった。
それは、手のひらに指で"人"という字を書いて飲み込むという明らかにタクトの間違った緊張の解き方の対処法だった。
しかし、そんなことを知らないこの世界の住人であるクリアム少年は、それを愚直に行なう。するとどうだ。憧れのタクトから教わったいわゆる暗示ゆえか心が冷静になっていったのだ。
そんな不思議なことをする姿に馬乗りとなった男は、ポカーンとなるがその隙を突きクリアムは一言謝ると、刀で鳩尾を突いて気絶させて丁寧にどかして立ち上がった。
そんな中、もはや歯止めが効きそうもない今も続く住民同士の喧騒の中――
彼等にとって、さらに最悪なことが起こる。
それは、警備が手薄になったのを本能で感じ取ったからなのか、脇道からオークたちの群れが唐突に現れた事に端を発するものだった。
当然、それを目視した住民たちは、パニックに包まれる結果となった。
そのため、パニックを起こした住民の逃亡が原因でドミノ倒しが起こり、押し潰された住民は命を落とす結果となったり、避難方向とはまるで反対方向へと逃げる住民たちや物陰に隠れようとした者たちも、奇襲をかけてきたオークと鉢合わせとなった結果に八つ裂きとされては殺されるという被害が加速してしまうことによって、混乱の連鎖がさらなる混乱を招き寄せていくこととなっていく。
そんな中でようやくオークが襲撃をしてきたことを知ったクリアムは考えた。
「ど、どうする......落ち着いても、状況がこうじゃ......どうすればいいんだよ、あんちゃん!」
あっけなく殺されていく住民の男達と、衣服を破り捨てられては犯されていく住民の女達を前に、クリアムはそのあまりの凄惨な光景に頭が麻痺したように動かすことができずにただ立っているのみであった。
そして、そんな中でたまたま視線を移したところに見えたある光景――
知り合いの畜生の少女へとオークが押し倒そうと襲い掛かったものを見た瞬間、また再びタクトの言葉が蘇る。
『いいか?急を要する時は、お前が大事だと思うものだけを救え。2つをまとめて救うなんて考えるよりも、まずは確実に助けられるその1人を助けてやれ。......それが経験談からくる秘訣って奴だ』
それに従って迷わずにクリアムはその場へと駆けつけると、刀の師匠である糸目の老婆に教わった通りの刀技を発動させた。
「妙来無抜流――"無猫息裁"!」
生きとし生ける肺呼吸を行なうものならば、誰もが持つ"呼吸の繋がり"をクリアムの刀は正確に刀を"抜かず"に切り裂いた。
すると、斬られたオークはそのまま呼吸ができないのか首を抑えてはもんどりうつ様にして暴れた後、息絶えて動かなくなった。
「......大丈夫か?レム」
「うん。危なかったけど大丈夫! ......ありがと! さすが、クリアムの刀はばあちゃんに認められるだけはあるね!」
「俺なんてまだまだだ......あんちゃんの言葉を思い出して動けたくらいだし」
だが、そのおかげで仲間を失うことなく動けたことにもまた改めてタクトへ感謝したいという思いを抱くことになる。それと同時に、自分が咄嗟に仲間のために動けたことにあんちゃんのいう"冷静な行動"ってこういうことなのかなと気付くが、今はまず救わないとという思いでレムを伴って動き出すことにした。
「レムいくぞ!」
「うん!」
レムという少女は、頷くと背中から逆手で持つ肘ほどの長さを持つトンファーと小刀と組み合わせたかのような武器を手にした。
そして、そのままクリアムの指示に従うように頷いて返事をすると周囲で被害にあっている住民を救うために共に動き出した。
混乱するその場で護衛役の傭兵たちも、懸命に反撃を行なっていった。
もはや、住民同士のケンカどころじゃないと戦っていたが先ほどのオークによる奇襲が原因となり、重症を負いながらも金で雇われた彼等なりの仕事へのプライドもあってか、震えて行動できない住民たちを中心に守ろうとしている様子が至る所で散見された。
しかし、混乱というものは一箇所で起こるものでもなかった。
先頭集団という自分たちの先頭を歩くものたちの現状を知った中段の列に並んでいた住民達もやがて波及するようにしてパニックとなっていき、やがてそれは後方集団へも波及していくことに、誰の目で見てもそれらは瓦解寸前というようなものに見えてきていた。
クリアム、またレムと呼ばれた少女、傭兵たちも懸命にオークを始末しては住民の仲立ちをしていくのだが、それだけで混乱が落ち着くわけもなく、あちらこちらと逃亡をしようとする住民などに押し合いへし合い状態となり、自らたちでさえも身動きができないその時、もはや彼の目にも崩壊という言葉が頭を過ぎっていた。
そんな時だった。
ある住民の男が、自らの頬に何かが掠るのを感じたのは。
ふと、なんだと頬についたそれを指で拭って見てみる。
付着したそれは............赤い――血?
住民の男は思った。
誰かが襲われた血がここまで飛んできたのかと恐怖に包まれてやがてパニックに陥ることとなった。
そんな住民の男へまるで邪魔と言わんばかりに1匹のオークが襲い掛かる。
それを見て、"だめだやられる"と目を閉じて、自分の最後を呪った。
しかし、いつまで経ってもその衝撃はやってこない。
それどころか、サーという音とともに冷たいものが自分の頬、体といたるところに当たりその感覚から雨かと感じたのだ。
なんだと慌てて目を開けたその光景に絶句することになった。
そこに広がるもの――それは、まるで血のような赤い雨が降っているかのような――そんな光景が広がっていたからだ。
また、その赤い雨の水滴に改めて肌に感じた違和感に気付いた。
それがどことなくベトっとしているように感じたからだ。
そしてそこで住民の男はそういえばと気付くことになる。
自分を襲ったオークがいたはずだ、と。
住民の男は、慌ててそちらへ目を向けるとそこには何やら苦しそうに蠢くオークが地面でのた打ち回っていた。
疑問に思って見ていると、しばらくして襲撃してきたオークは動かなくなる。
その光景に呆然となる住民の男であるが、今はそれよりもとオークという脅威に理解していたこともあって、ある行動のために物を探す素振りを取った。
首輪を解かれた畜生とかの非ではない。
本当の意味での脅威だと教わった住民は、建物に建てかけてあったスコップを見つけるとまるでとどめを刺すようにして動かなくなったオークを潰していくのだった。
オークを見たら、体ごと壊せ――これが彼の教わったものだったからに他ならないのである。
襲撃をかけてきたオークが突然苦しみだして動かなくなるという現象は、そこだけではなくあらゆる列の周囲でも起こっていた。
赤い雨に当たって苦しそうに蠢くオークたちに、住民たちはその赤い雨という視覚の衝撃と冷たいという感覚で冷静さを取り戻したこともあってか、疲れた顔をしながらも共通の敵であるオークどもへと随所で懸命に止めを刺していった。
「どうなってんだ......こりゃ」
「......」
驚いているのは、本来彼等よりも率先してオークを殺す立場にある傭兵達だ。
そして、傍にいたクリアムもレムもそうである。
「クリアム......これって......?」
「わ、分からない......分からないけど......なんか暖かい感じが」
それは冷たい水と合わさるように、まるで何かの息吹を感じるようにクリアムは手のひらでそれを受け止めるようにしていた。
――ズーンズーンズーン
そんな時だった。
遠くから何か、大きなものが足を踏みしめてくる音が聞こえてきた。
そんな中で念話が届く。
("クリアム!聞こえるか!?")
この声は......
("あんちゃん!......もしかして、この赤い雨――")
その言葉を遮るようにタクトは伝えるだけ伝えてきた。
("まぁな。状況を見るにあとのザコは、住民でも葬れるくらいだろ? で、悪いんだが......そんなザコじゃない奴が俺のほうへとやってきた。俺はある事情で動けないから悪いが、こっちへ助けにきてくれ!")
その言葉で改めて辺りを見ると、こちらは先ほど包まれたような凶器的な雰囲気は一切なく、今は一丸となって襲撃してきたオークへ住民たちの手でそれらが駆逐されていく様子が伺える。
("わかったよ! あんちゃん!")
クリアムは、それを見てこれもあんちゃんの力か? と納得した上で、傭兵達に声をかけてあんちゃんを助けることを伝え、急ぎ足で後方の噴水へとリムとともに駆けつけた。
そして、そこにいた10mを超えるであろう巨大なオーク4匹と戦うジャックスたちと、噴水の中で噴水の水を巻き上げるようにしてすごい高さの赤い水を上空へと放つ人魚のシーアがいた。
肝心の人はというと、その光景に思わず2人は絶句をする。
子供は絶対見ちゃダメと言えそうな体勢で、なぜか涎を垂らしながらもティニの胸に口をつけ、両腕をだらんと真っ赤になった噴水に垂らしている奇妙というか、もうすでに変態的な様子のタクトがそこにいたのだ。
「な、な、な......」
レムはその様子に、顔を真っ赤にして手で顔を覆った。
クリアムも真っ赤だったのだが、少年という年齢からくる興味深々の目でほんの少し羨ましげに見ていたのは言うまでもなかった。
("............何も言うなよ? 分かってるんだよ、俺が今理想上の変態だって......ってそうじゃない。 悪いが今は、こういう事情で手が離せないから、お前らの力であの巨大オークを倒してくれ")
その言葉に頷くしかないクリアムは、レムにあいつを倒すぞと声をかけて巨大なオークへと斬りかかるのであった。
* * * * *
「あぁ、迷宮主様、そこは敏感ですのぁ!」
「へんぶぁふぉふぇふぉふぁべるふぁ!(変な声をあげるな!)」
「あ......あぅ~......」
しまった、声を上げたら余計にと思った俺は慌てて飲む作業を再開させた。
これまでもこういった争いの場で色々と経験しちゃいるが、おそらくここまで変態的な行動でみんなを支えることはなかったはずだと思う。
そんなことを思いながらも、俺は意識を集中することにした。
両手の手首を切り裂いたことで、血が抜ける感覚とともにその血が今含んでいる母乳によって、瞬間的に出来上がる造血効果の凄さに感心しながら。
カラクリは簡単で、俺は不病不老の体、そして性別も男という特徴を持つ。
それはつまり作用としてプラスだということだ。
プラスといえば、レティーナ様が生はプラス、死はマイナスという言葉から、
奴らオークどもも同じく異常な性欲、繁殖力、成長力を鑑みればプラスということになる。
それは磁石で言えば反発するというこれらに辿り着いたのも、そもそもあの時不意打ちで食らったオークの一撃からとなっていた。
オークによって傷つけられた時に僅かに付着したらしい奴らの血か、肉か、爪かは知らないがそれはとても嫌がるように傷口で暴れて、その後すぐに垂れる俺の血とともに噴水に沈んだのだ。
何かあると思った俺は、ジャックスに頼んで試した結果――
同じ結果が得られたことで俺は俺のプラスの血と男という性別を駆使して、オークどもへ反発させることで弱らせられるんじゃないかと思いついたために、今の図式が出来上がっているのである。
結果的には、それが功を奏したようで大きさで言えば大型、中型、小型には効果が抜群で、すでに該当する大きさのオークは片がついて、今は噴水の周囲で物言わぬものとなって散らばっている。
しかし、今目の前にいる巨大なデフォルトタイプのオークキングっぽい出で立ちのものらには効かないようで、奥にて様子を見ていたらしい4匹は急にこちらへと襲撃をかけてきた。どうやら門を破ったのもこいつらみたいだし、見た感じは多分オークたちのボスだろうと推察した。
俺の仲間が力を合わせて4匹同時に相手にしていたが、どうにも疲労やら武器の違いで苦戦していたこともあり、クリアムを呼んだことで今はそれぞれの数で対峙する結果となっていた。
「ふぉっふぉふぃふぃふぉ(ちょっと位置を――)」
「あぁ~!」
ダメだ。喋るとティニの甘い声に別の部分がプラスしちまうと、俺は喋るのを止めて無言で位置を変えて事の成り行きを見守ることにした。
ジャックスとオーリエは、それぞれ1対1で戦えており、こちらへチラチラと視線を向けては睨んでくるデニアとまぁまぁと肩を叩くアラーネは2人で1匹を相手にしている。
そして駆けつけてこちらを見て爆笑をしてきやがった老婆と同じように何かを堪える側近らしきボロの格好の男4人で1匹と、最後の1匹にはさっき駆けつけたクリアムと知らない少女に任せることとなった。
こういうとき、主人公で剣ができる奴だったら華麗に最後を決めるクリアム的なポジションだろうという思いもするし、今の俺は激しく情けなく様子を見に来たらしい住民も男どもはその見事なものに唾を飲み、女は軽蔑するかのような目で俺を見ているのが分かるのを感じると今回のこの一件は実に俺にとっては、不利益をこうむるものだなと改めて思うのだった。
そんな中でそれぞれの戦闘は、やがて終局へと至りつつあった。
「八卦宵――"内槍"!」
オーリエは、無手の技を発動させると、跳躍しては巨大オークの後頭部へ移動し、真っ直ぐに伸ばした右腕をまるで鋭い槍のように肘鉄という槍先で後頭部を突き刺すほどの衝撃とドゴォンという音をオークへと与える。その衝撃は凄まじいようでオークは額の辺りが突き出すように顔が歪んだ後に、巨体を前のめりにしながら倒れていった。
そして、いつの間にか討伐を終えた老婆とその側近達も感心するような動きでジャックスも専用武器の『緒虎羅』で技を叫びながら放つ。
「影狼――"スロート・ファング"!」
まるで喉元に食らいつく狼の牙のように、巨大オークの喉に『所虎羅』を装備した手で掴みかかると、そのまま自身の体を回転させて深く喉元を食い破っていった。その攻撃に巨大オークは暴れるのだが、もはやすでに喉から首の骨があるらしきところへと達したそれは軽い音を立てて折りきると、カクンと首が垂れ下がったと同時に巨体は糸の切れた人形のように後ろへと倒れていった。
その横ではデニアがいつの間にか"ミノタウロスモード"となって、アラーネの見えないが強靭だろう糸のためなのか動きが遅い巨大オークの腹めがけて戦斧を振り抜く様子が見えた。
轟音を立てながら振りぬかれた戦斧はその怪力も合わさってか、あっさりと巨大オークの腹をぶち抜いて上下に分かれたままに崩れ落ちる結果となった。
そして、最後のクリアムたちもまたその小柄な体躯を生かしては巨大オークの攻撃を避けてまるで弱点を探って動き回る様子が伺えた。少女が注意を払わせるようにして動き回ってどこかの何かを見つけたのか、クリアムに何かを叫ぶとクリアムは、抜刀流の構え――俺からすればカッコいいその構えのままに巨大オークの正面――頭の位置まで跳躍をするとある技を発動させた。
「妙来無抜流――"猪芯伝針"」
鞘に収まったままという中で、巨大オークの額――眉間へ見えない速度で突きを放ったクリアムが着地と同時にその攻撃らしきものを受けた巨大オークはそのままビクンと一震えとともにゆっくりと後方へ倒れ伏していった。
なんだ、今のは......。
と思った俺だったが、早速俺はみんなへ伝わるように念話で伝えた。
("みんなお疲れ!......ボスはこれで倒したと思うけど、まだオークの残党がいるかもしれないから住民と手分けをして捜索をしてくれ......お、俺も、シーアもさすがにちょっと色々限界が近いから......なるべく......その......早めに頼む")
その言葉に俺の様相と俺の行動にため息が漏れる中で、行動を始めていく。
し、仕方ないだろう!
と言い訳をするが、もうそんなことを言う気力も尽きてきた俺はただひたすらにティニの乳を吸うことに集中するのである。
こうして俺としては、格好のつかないまま南西の町へと襲い掛かったオークたちの全滅を確認したことで、ようやくという思いとあらゆる限界と我慢を耐え切ったことで気が抜けた結果、意識を失うこととなった。
俺って戦いの度に絶対意識を失って終わることが多いような気がするのだが、気のせいだろうか?
そんな疑問を与えた今回の南西の町に於ける全ての戦いは終わりを告げた。




