第七話 探しに
チャイムが鳴り、一日の授業が終わった。
ずっと、昨日のことが頭から離れなかった。
黒い怪物。
魔法少女のお姉さん。
そして、私自身が変身したこと。
「かほちゃん」
「ん?」
隣の席に座っている、みのりが不安そうな顔をしてる。
「今日は、朝からなんだか元気ないね」
「え!? そ、そんなことないよ!」
「やっぱり……体調悪いんじゃない?」
「大丈夫大丈夫!」
ぶんぶんと手を振る。
「んー、ちょっと寝不足なだけだよ!」
……これは、本当だしね。
「そう……?」
「たしかに今日も寝坊してたみたいだけど……」
なんだか嘘をついてるみたいで嫌だな……。
『実は私、魔法少女なんだ!』
『昨日は怪物をやっつけたんだよね!』
……なんて言って、信じてくれるかな?
いやいや! 私だってまだ信じれてないのに!
ふと、みのりの胸元に目がいく。
昨日プレゼントした赤いチャーム。
そういえば……みのりは何もなかったのかな?
うーん……と考えていると。
「かほ、授業中もぼーっとしてたもんな〜」
ほなみも珍しく心配そうに近寄ってきた。
「え!? そうかな……?」
「うん。いつもなーんか騒がしいのに、今日は静かで妙に授業に集中できたし」
「うっ!?」
心配されてたはずなのに、なぜか大きなトゲが胸に刺さる。
え? 私、普段どんな感じなの?
「いっぱい食べて、いっぱい寝ろよ〜」
「でないと、なんか物足りないからさ〜」
ほなみは、いつもの調子で笑う。
「そうだよ」
みのりも優しく微笑んだ。
「いつも元気もらってるし……」
「明日はフルーツいっぱい持ってくるから、みんなで食べよ!」
「みのり、明日は休みだよ〜」
「あっ……」
少し照れたように笑う、みのり。
「そうだったね……」
……あ!
そうか、明日は休みなんだ!
明日なら時間を気にせず、あの森をゆっくり見て回れる!
魔法少女のお姉さんにも会えるかもしれない!
なんだか急に、胸のモヤモヤが少し軽くなった。
「じゃあ今から、新しくできたケーキ屋さんに行こうよ〜」
そう、ほなみが提案した。
フルーツの話してたら、甘いもの食べたくなったのかも?
「あ……あそこ、行ってみたかったんだよね」
「うん! 行こう! 私、桃のケーキ食べたい!」
「お〜! 調子戻ってきたんじゃない?」
「桃はちょっと早いかも?」
「えー!?」
甘いケーキを食べながら、たくさん笑って、たくさんおしゃべりして。
気づけば、あっという間に時間が過ぎていた。
◇
ベッドに寝転び、手にしたチャームをじっと見つめる。
……。
「もしかして、このチャームが私をあの森へ案内したのかな?」
今思えば、自分の意思で森に入ったわけじゃなかった気がする。
そういえば。
みのりと別れるときもそれとなく、
『昨日、なんか変なことなかった?』
って聞いてみた。
そしたら――。
『実は、帰って靴下見たら……左右違うの履いてたんだよね……』
って、ちょっと恥ずかしそうに笑ってただけだった。
みのりにもそんなとこあるんだなー……
って、そうじゃなくて!
……。
やっぱり、あの森がおかしかったのかな?
今日の帰りにも見に行こうかなって思ったけど、放課後、寄り道して遅くなっちゃったし……。
でも、明日はあの森で探検だ!
部屋の隅に置かれたリュックを見る。
いざというとき必要そうなもの、いっぱい入れといたし!
楽しくなって、お母さんにはお弁当までお願いしちゃった。
「よーし!」
なんだかピクニックみたいで、ワクワクしてきた!
「おやすみ!」
チャームを枕元に置き、ゆっくりと目を閉じた。




