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終わりを告げるフィシクロニア  作者: 遅刻パン


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2/17

第二話 何気ない日常

 爽やかな五月の風が吹き抜け、校庭に咲く花や草木の香りを運んでくる。


 無事にプレゼントを渡し終えて、ほっとした途端……お腹空いた。


 そういえば、今はお昼休みだっけ。


 お弁当の包みをほどき、今日のおかずは何だろうと考えていると――


「あれー?」


 この、のんびりとした声は――


 稲葉ほなみ。


 わざとらしくニヤニヤと、ツインテールをしたもう一人の親友が、私の顔を覗き込んできた。


「あれあれー?」


 ほなみは、私とみのりの胸元のチャームを交互に見ながら、


「私の分はー?」


「いやー……材料足りなくなっちゃって」


 みのりへのプレゼントを何度も作り直しているうちに、材料を使い果たしてしまったのだ。


「じゃあ私も、今のうちにおねだりしちゃお」


「白色がいいな〜。お米みたいで」


 そう言うと、どちらが顔かと思うほど大きなおにぎりにかぶりついた。


「もちろん! そう来ると思って、白のレジン用意したんだよね!」


 二人から「おー!」と称賛の拍手を受け、ちょっとだけ鼻が高くなった。


 そうしてようやくお弁当を開く。


 今日はレタス、トマト、チキンのサンドイッチ。しかもチキンは照り焼きだ。


「いただきます!」


 ◇


 お弁当おいしかったー!


 この後デザートに、フルーツの盛り合わせをいつもみのりが用意してくれて、みんなでつつく。


 みのりはそれを取り出しながら、ふと口を開いた。


「そういえば最近、自然災害多いよね」


「そうそう! この前も堤防壊れたって聞いたよ!」


 三週間前、突然の高波が近くの堤防に押し寄せたらしい。


 規模はそこまで大きくなかったみたいだけど、老朽化のせいか、真ん中から綺麗にボキッと折れたとか。


「あそこ古いし、もう使われてないからね〜」


「今年は雪もすごかったし……なんかまだ春って感じしないね」


「うちのリンゴも、今年はちょっと遅いみたい」


 確かに、言われてみたらおかしなことが続いているかも。


 他にも一部の山で木々が突然枯れたり、霧がなかなか晴れない日が多かったり……ここ最近、そんな話をよく耳にする。


「天気がおかしいのかな?」


「うーん……」


 ほなみが空を見上げる。


「なんか違う気がするんだよね〜」


「違う?」


「うまく言えないけど……なんか引っかかるな〜」


「引っかかる……?」


 そのとき、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。


「あっ、もうこんな時間!」


 急いでお弁当を片づけ、立ち上がる。


「早く戻ろ!」


 ほなみの言葉が少しだけ気になったけど、チャイムの音がその疑問をかき消した。


 ◇


 すべての授業が終わり、私たちは校門へ向かった。


「じゃあ、またね〜」


 ほなみは大きく手を振り、


「かほ、明日は寝坊するなよ〜」


「なんで知ってるのー!」


 ジャムの拭き残しでもあったのかな? 口元を確認している間に、そのツインテールは姿を消した。


「き、きっとよくあることだし、当てずっぽうじゃないかな……?」


 フォローなのか、なってないのかわからない、みのりの言葉に少し胸を痛めつつ、二人で駅までの道を歩いた。


 ◇


「じゃあ、また明日!」


「かほちゃん……!」


「ん?」


 いつもの分かれ道。


 いつもより少し力強い声に振り返ると、みのりの頬がほんのり赤く見えた。


 少し日が傾いてきたからかな?


 みのりは胸元のチャームに触れ、少しうつむきながら、


「プレゼントありがとう。大切にするね」


「どういたしまして! 前の石すっごい褒めてくれたからさ! これしかないなって!」


 最初にチャームを作ったとき、上手にできたのが嬉しくて、すぐに写真を撮ってみのりに送った。


 すると、すごく褒めてくれて。


 さっそく制服につけておいたんだけど……今日みたいに寝坊して全力疾走してる間に、どこかに落としたみたいなんだよね。


「えっ……私、そんなに言ってた……?」


「言ってたよ?」


「……なんか恥ずかしい」


「じゃ……じゃあ、また明日ね……!」


 素早く身を翻し、早足で駅へ歩いていく。


「えっ? あ、うん! またねー!」


 声は届いたかな?


 言い終わる頃には、みのりの姿は見えなくなっていた。


 今日はみんな、なんかせっかちな日だな。


 そんなことを思いつつ、私は駅を後にした。

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