第十一話 怪物の行き先
遥か上空。
お姉さんは、持っていたムチを槍のように鋭く変形させ、狙いを定めていた。
次で倒すつもりだ!
「待って!」
慌てて高く跳び上がり、お姉さんの横に並ぶ。
「もう一度だけ、お願いします!」
「私にやらせて!」
お姉さんは驚いたような顔をしたあと、少しだけ微笑んだ。
「わかった」
うん!と自分に気合を入れ、そのまま真下を見る。
木の外殻の隙間から見える赤い宝石が、光を反射しキラッと光る。
「よし!」
上空を蹴り、一気に急降下した。
そのまま宝石に手を伸ばし、
「やああーーー!!」
《パアァ……!》
触れた瞬間、私と怪物の宝石が輝き始めた。
こうして触れると、より強く、鮮明に感じる。
やっぱり……この子たち、同じところをぐるぐる回ってるんだ。
なんとかしてあげなきゃ。
あたりを見渡すと見えてくる。
ほんのわずかな風……。
違う。
なにかぼんやりとしたものが流れる川のような。
でもきっと!
この流れの先がこの子たちの……!
「行き先は……あっちだよ!」
触れた右手から左手へ、ホースを伝ってノズルから水を出すように。
私は怪物から湧き出るモヤを、その川の先へ向けて流し込む。
どうやってるのかは私もよくわからないけど、
体が、それを当たり前のこととして知っているように動いていた。
そして怪物を形作っていたモヤはすべて流れに乗っていき、赤い宝石は少しずつ、光の粒となって消えていった。
◇
終わった……。
怪物が消えたあと、そよそよと心地よい風が吹き始め、
枯れて倒れてしまった木々の多くは、何事もなかったかのように元の姿を取り戻していた。
お姉さんは興味深そうに枯れた倒木を見ている。
「あ、あの!」
「ん?」
聞きたいことがいろいろあったはずなのに……なんだっけ……。
すると、お姉さんが口を開く。
「自然とひとつになれてたな」
「え!?」
「ジャンプとか」
あっ!
「そういえば、なんか人間離れした動きしてたような……」
空から見下ろした景色を思い出す。
「しかし……これはどういうことだ?」
お姉さんは枯れた倒木を指差した。
「えーと……どれですか?」
「これは、ついさっき倒れた木だ」
「そういえば……怪物の光で木が枯れて……倒れて……」
お姉さんは少し考え込む。
「怪物……か」
……。
「この木は、その『怪物』が消えてから急速に朽ち始めた。」
たしかにさっきまでしっかり『木』だったもの。
それをお姉さんが軽く握ると、ボロボロと土のように崩れていく。
「これって、どういうことですか?」
「自然へ還ろうとしているんだ」
「還る……?」
サイクルってやつ?
学校でそういうの習ったと思うけど……たぶんお姉さんが言いたいことは違うんだろうな。
「いや、わからないならいいんだ」
お姉さんは立ち上がる。
「ただ……私が怪物を倒したときは、1度もこうならなかった」
独り言のようにつぶやく、その横顔は少し寂しそうにも見えた。
「何かわかったら、教えてくれ」
そう言って去ろうとするお姉さんを引き止める。
「えっ!待って!」
「お姉さんは誰なんですか!?」
「千穀中学3年、“黒岩のりこ”だ」
そして、『のりこさん』は風のように去っていった。
「行っちゃった……」
千穀中学3年か。
先輩だったんだ……でも見たことないかも?
……。
月曜日に探してみよう!
変身とか怪物とか、なんだか不安だったけど仲間ができた……って。
「……変身?」
私は自分の姿を見返した。
「あー!」
「どうやって戻るのー!?のりこせんぱーい!」




