47 王都では
47 王都では
連合軍の兵士たちは、思いがけず王都での滞在を楽しむことになった。
王都へ乗り込むまでは、誰もが戦になると覚悟していた。ところが門は開かれ、王族や貴族たちから援軍として歓迎された。温かい食事を振る舞われ、宿舎まで用意されたうえ、自由時間には町へ出ることも許された。
武器を預けた兵士たちは、最初こそ用心しながら大通りを歩いていたが、華やかな店が立ち並ぶ光景を目にすると、次第に表情を緩めていった。
「この店だ。この飴を、前に護衛へ行った奴が買ってきたんだ」
一人の兵士が、色とりどりの飴を並べた菓子店を指差した。
「妹が食べたがっていた。店の名を聞いておいてよかったぜ」
「俺が聞いた話では、焼き菓子の店は噴水広場の近くだそうだ」
「待て。先に髪飾りを見に行かないか。あれを買って帰ると約束したんだ」
以前、王女や令嬢の護衛として王都を訪れた者たちが持ち帰った土産は、国元で評判になっていた。兵士たちは覚えてきた店の名や、簡単に描いてもらった地図を頼りに、目当ての店を探して歩いた。
一方、王都に残っていた商売人たちは、店先へ押し寄せる兵士たちを満面の笑みで迎えた。
「いらっしゃい! 遠いところをよく来てくださった!」
「この町から逃げなかったのか?」
兵士に尋ねられた店主は、胸を張った。
「戦になるか、商機が来るか、一か八かの賭けでしたよ。どうやら私は勝ったようですな」
「なるほど。俺たちの財布が戦利品というわけか」
「とんでもない。皆さんは王都を助けに来てくださった援軍でしょう? 歓迎の印に、少しばかりおまけしておきますよ」
店主はそう言いながら、菓子を一つ多く包みへ入れた。
「それなら、もう一箱もらおう。こっちは母親の分だ」
「毎度ありがとうございます!」
菓子店だけではない。小物を扱う店には、妻や娘、姉妹への土産を求める兵士たちが集まった。
「この髪飾りは、どんな髪の色に似合う?」
「奥様の髪は何色でしょう?」
「茶色だ。少し明るい茶色で……俺がこういう物を選ぶと、いつも趣味が悪いと笑われる」
「では、こちらはいかがです? 落ち着いた色合いですから、きっとお似合いになりますよ」
店員に勧められた髪飾りを、兵士は真剣な顔で見つめた。
「よし、それをもらおう。それと、こっちの小さいのも包んでくれ。娘が二人いるんだ」
別の店では、花や小鳥が描かれた便箋を前に、屈強な兵士たちが頭を悩ませていた。
「これは可愛すぎないか?」
「妹への土産なら、そのくらいでいいだろう」
「いや、あいつはもう十四だぞ」
「だったら、こっちの花模様はどうだ?」
「それは母親向きじゃないか?」
戦場では勇ましい兵士たちが、家族への土産を前に途方に暮れている。その様子を見ていた女店主は笑いを堪えながら、相手の年齢や好みを一人ずつ聞き、品物を選んでやった。
可愛らしい便箋や封筒、色鮮やかな紐、書きやすいペン、飾りのついた小箱などが、次々と売れていく。
王都から一度逃げ出した商人たちの耳にも、その噂はすぐに届いた。
「小国群の兵は略奪どころか、金を払って買い物をしている」
「町は安全らしい」
「店を開ければ、品物が飛ぶように売れるぞ」
避難先から戻った商人たちは、慌ただしく扉を開き、看板を出した。荷車で商品を運び込み、店先に台を並べる者まで現れた。
「王都名物の焼き菓子だよ!」
「土産なら、うちの文房具を見ていってくれ!」
「遠い国まで持ち帰るなら、壊れないよう丁寧に包みます!」
呼び込みの声が通りに響き、閉ざされていた町が急速に活気を取り戻していった。
いつ戦が始まってもおかしくなかった。その緊張から解放された反動もあったのだろう。兵士たちの財布の紐は驚くほど緩んだ。
「こんなに買って、持って帰れるのか?」
「帰りは荷が減っている。食料を積んでいた荷車が空くだろう」
「なるほど。なら、もう少し買っても平気だな」
「お前、それで三度目だぞ」
「家族が多いんだ!」
誰もが笑い、食べ、珍しい品物を手に取った。
兵士たちは王都を思い切り楽しんだ。
出陣したときには想像もしなかったほど大量の土産を抱えながら、彼らは国で待つ家族の笑顔を思い浮かべていた。
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