両家の話し合い 18ブランコの後に続く話です
「18 ブランコ」の後に続く話です。投稿してませんでした。
両家の話し合い
メイナード侯爵一家と国王一家が、ひとつのテーブルを囲んでいた。
「アリスを置き去りにするなんて」
王妃ステラが口火を切ると、メイナード侯爵夫人ポーレットは鋭く彼女を睨みつけた。
「あなたたちと一緒にいると思ったのよ。アリスが素早く状況を判断し、馬車へ戻るよう知らせた時、王太子殿下はそばにいたでしょう?」
「バーバラもいたでしょう」
ステラは報告書の該当箇所を指で叩きながら反論した。
「アリスは責任感が強いから、全員が避難したことを確認しようとしたのよ」
「その責任感の強い娘を置き去りにしたくせに」
王妃が吐き捨てるように言うと、メイナード侯爵夫人ポーレットの目に怒りが燃え上がった。
◆◇◆◇◆
アリスの兄チャールズは王太子エドワードに目配せし、部屋の隅へ移動した。
チャールズは妹のバーバラを、エドワードは姉のメアリーをそれぞれ伴い、言い争いを続ける親たちから離れた。
「アリスのことは心配だ。だが、わたしたちが直接捜しに行っても役には立たない」
エドワードは声を抑えて切り出した。
「そこで、アリスが使っていた執務室を調べた。執務室といっても仮の部屋だ。本来、婚約者というだけのアリスに政務を任せることなど、あってはならなかった。だが……わたしはアリスに執務の代行を頼んでいた」
チャールズの肩がびくりと揺れた。
だが、何も言わず、エドワードの続きを待った。
「アリスがいなくなったあと、その部屋へ行ってみると、父上と母上が処理すべき書類が残されていた。それだけではない」
「わたくしは、たまたま少し頼んだだけよ!」
メアリーが慌てて口を挟んだ。
「普段から頼んでいたわけではないわ!」
エドワードは姉を一瞥した。
「姉上、静かにしてください」
冷ややかに制すると、再びチャールズへ向き直る。
「姉上の書類もあった。さらに、宰相をはじめとする文官たちが処理すべき書類まであった。アリスを手伝っていた文官に話を聞いたところ、本人に見つからないよう、こっそり置いていかれたものもあれば、宰相から渡された書類の中に紛れ込ませてあったものもあるらしい」
エドワードは苦々しげに唇を噛んだ。
「初めのうち、アリスは書類を本来の担当者へ返していたそうだ。だが、戻しに行く時間が惜しくなり、自分で処理するようになった。そうして働き続けているうちに判断力が鈍り、最後には、とりあえず自分が処理すればいいと考えるようになってしまったそうだ」
「それで、その仕事はどうしたの?」
メアリーが身を乗り出した。
「わたくしの分はどうなったのよ。婚約者から届いた手紙への返事なのよ。最優先の仕事でしょう! まさか、やっていなかったの? アリスのくせに……」
メアリーが最後まで言い切る前に、チャールズが勢いよく立ち上がった。
「落ち着け、チャールズ」
エドワードも立ち上がり、チャールズを制した。
「姉上も、これ以上は控えてください」
チャールズは怒りを押し殺しながら、ゆっくりと腰を下ろした。その目は、メアリーを鋭く睨みつけたままだった。
「ここでは落ち着いて話せない。別室へ行こう」
エドワードの提案に、チャールズはうなずいた。
「わたしは関係ないわ。何もしていないもの」
バーバラは不満そうに呟いたが、チャールズは彼女の肩を抱き、そのまま歩き出した。
エドワードもメアリーを立たせると、逃がさないように肩を掴んだ。
四人が部屋を出ていったことに、双方の親たちは気づきもしなかった。
◆◇◆◇◆
メイナード侯爵ウィリアムも国王も、妻たちの姿が信じられなかった。
アリスが行方不明になってから、すでに何日もたっている。
時間を置けば冷静さを取り戻したはずなのに、二人は責任を押しつけ合うばかりで、冷静に話ができない。
彼らは学院時代からの仲間で、かつては非常に仲が良かった。
現王妃ステラとメイナード侯爵ウィリアムは姉弟である。ウィリアムは姉より一歳年下だったが、姉とその仲間たちの交流を羨ましく思い、同時に姉を守りたいと懸命に勉強し、一年早く学院へ入学した。
当時王太子だった現国王とダイナ公爵令嬢だったポーレット――彼女は今やメイナード侯爵夫人となり、チャールズ、アリス、バーバラの母親である。
ウィリアムの姉ステラ――国王に嫁ぎ、王妃となった。
ステラが王室へ嫁ぐ際、メイナード家は伯爵家から侯爵家へ昇爵した。それは、嫁いだあとも姉の力になりたいと願い、努力を重ねたウィリアムが勝ち取った地位である。
騎士団長夫妻や宰相夫妻も、学院時代からの仲間だった。
彼らを中心とした学年は、在学中から多くの成果をあげてきた。卒業したあとも互いに支え合い、この国を動かしてきたはずだった。
それなのに今、王妃ステラと侯爵夫人ポーレットは、激しい憎悪を込めて互いを睨み合っている。
「伯爵家の娘だったくせに、王妃になるなんて。わたくしは公爵令嬢として生まれ、王妃にふさわしい女性になれるよう、幼い頃から努力してきたのよ。それなのに、あなたが選ばれた」
と侯爵夫人ポーレットは吐き捨てるように言った。
王妃ステラも負けじと言い返した。
「公爵家の娘だから何だというの? 昔から身分を鼻にかけて、嫌味ばかり言う女だったわよね」
「よりによって、あなたの娘が王太子の婚約者になるなんて」
王妃ステラが長年胸に秘めていた感情を吐き出すと、ウィリアムが声を震わせた。
「姉上、その言い方は……」
ステラは弟へ顔を向けた。
「ウィリアム、あなたは可愛い弟よ。今でもそれは変わらないわ。だけど、アリスは嫌いなの。この女の娘だと思うと、憎らしくて堪らないのよ」
ステラが冷酷に言い放つと、ポーレットも嘲るように笑った。
「そこだけは気が合うわね。わたくしもアリスが憎いわ。たかが侯爵家の娘の分際で、王太子妃になるなんて」
「そんな理由でアリスを虐めたのか!」
ウィリアムが激昂した。
「朝食を与えず、昼食まで取り上げて……まさか、夕食も食べさせていなかったのか!」
すると、王妃と侯爵夫人が声を揃えた。
「「夜はそちらで食べていたのでしょう?」」
今度は国王とウィリアムの声が重なった。
「「何だと……?」」
「娘を飢えさせるなんて、公爵家流のしつけなのかしら」
王妃が鼻で笑うと、侯爵夫人も言い返した。
「弟を騙して、その娘を陰で虐めるなんて。伯爵家上がりの王妃らしいやり方ね」
二人が醜く罵り合う中、ウィリアムは絶望を込めて姉を見つめた。
「姉上……アリスが可愛いから長く引き止めている、夕食も一緒に食べさせていると仰っていたのは、嘘だったのですね」
「そんなつもりではなかったわ!」
王妃ステラは慌てて否定した。
「初めのうちは、本当に一緒に食べていたのよ。だけど、あの子は仕事があると言って、だんだん遅れるようになったの。それで用意しなくなっただけよ。食事を取っていないことくらい、親なら顔を見れば分かると思ったわ」
言い訳を重ねながら、ステラはウィリアムの手を取った。
「アリスは可愛い弟の娘よ。確かに腹が立つこともあったけれど、なんだかんだ言っても可愛がっていたわ」
しかし、ウィリアムはその手を激しく振り払った。
「もう騙されません」
低い声だった。
「わたしは、娘がほとんど家に帰ってこない寂しさにも耐えていた。王宮で大切にされているのなら、それが娘の幸せにつながるのならと、自分に言い聞かせていたからです。それなのに……」
ウィリアムの目から、姉に対する敬愛の情が消えていく。
「姉上。あなたは最低だ」
絞り出すようにそう告げると、ウィリアムは言葉を失っている国王へ向き直った。
「アリスと王太子殿下の婚約は破棄させていただきます。娘はどこかで生きているはずです。わたしは諦めません。必ず捜し出し、あなた方に奪われた娘との時間を取り戻してみせます」
王妃ステラの目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「ウィリアム、わたくしは本当にアリスのことを愛おしく思っていたのよ。あなたの娘ですもの。だから、わたくしの服をあげたり、一緒に服を仕立てたりもしたの……」
「服ですって?」
侯爵夫人が、いやらしい笑みを浮かべた。
「あの地味な服のこと? あなたが王太子の婚約者だった頃は、伯爵家の成り上がりにふさわしい下品で派手な服ばかり作っていたのにね。それに比べて、アリスの服ときたら……上品だったわね。何度も着込んだ服には、新しいものにはない奥ゆかしさがあるもの」
「それはよかったわ。アリスは、家で一着も服を作ってもらえないせいか、わたくしのお古まで大切に着ていたわ」と王妃が嘲笑った。
(服を作っていない? では、アリスのために組んだ予算はどこへ消えた……?)
ウィリアムは怒りで爆発しそうになるのを、必死に抑え込んだ。
(今は口にするな。これ以上ここにいたら、何をするか分からない)
「ウィリアム、すまない」
ようやく国王が口を開き、深く頭を下げた。
「アリスにも謝りたい。こちらでも捜索隊を出し、全力で捜させる」
しかし、ウィリアムは冷ややかに断った。
「頭を下げていただく必要はありません。捜索も、こちらで行います」
「だが……」
「あなた方に任せて、娘が見つかるとは思えません」
ウィリアムは国王に一礼した。
「それでは、失礼いたします」
妻であるポーレットには声をかけることもなく、ウィリアムは部屋をあとにした。
その背中を見送ったポーレットは、ステラに向かって吐き捨てた。
「ふん。これで、あなたも弟を便利に使えなくなったわね」
ポーレットは肩をすくめ、夫のあとをゆっくりと追った。
「あきれた女……」
ステラはぽつりと呟いた。
しかし、その声に勝者の誇りはなかった。
◆◇◆◇◆
四人は別室へ入ると、護衛と侍従を全員、廊下に控えさせた。
扉が閉まった途端、メアリーが声を上げた。
「ひどいわ、チャールズ! お父様に言いつけてやるんだから!」
「本当よ。お兄様ったら、ひどいわ」
バーバラもメアリーに同調した。
エドワードは二人を冷ややかに見た。
「二人とも黙れ」
王太子の命令を帯びた声に、二人はようやく口を閉ざした。
静まり返った室内で、エドワードはゆっくりと話し始めた。
「わたしは、アリスが毎日母上の部屋でお茶を飲み、王妃としての心構えや礼儀作法を教わっているのだと思っていた。そして街へ出た時、あることに気づいた」
エドワードは当時の光景を思い出すように目を伏せた。
「平民の学校に通う孤児たちが、古びた教科書を抱え、嬉しそうに歩いていた。気になってあとをつけると、近いうちに訪問する予定だった孤児院へ入っていった」
そこは、エドワードとアリスが訪問し、建物の点検を行う予定だった孤児院だった。
エドワードが施設を確認している間、アリスが子どもたちに本を読み聞かせる手はずになっていた。
「わたしは良いことを思いついたつもりになり、予定になかった新しい教科書を買い込んだ。そのことをアリスに話すと、彼女は、きちんと予算が決められているのだから勝手なことをしないでほしいと、わたしを咎めた」
「そうよ、お姉様は冷たいのよ!」
バーバラが割り込んだ。
「お父様だって、そのことでお姉様を諭しましたわ。可哀想な孤児たちにリボンや新しい服を買ってあげることまで非難したんですもの!」
「黙れ、バーバラ。勝手に喋るな」
エドワードの鋭い叱責に、バーバラは息を呑んだ。
チャールズもまた、非難するような目でエドワードを見つめていた。
「その孤児院の状態は、わたしが思っていたよりはるかに悪かった」
エドワードは話を続けた。
「建物には倒壊の危険があり、急遽、修繕工事を始めることになった。だが、そのための予算は足りていなかった。足りない分をどこから捻出するのか、誰に頭を下げ、どの計画を遅らせるのか。その処理を、すべてアリスに押しつけていたのだ」
エドワードの拳が震えていた。
「わたしが真相を知ったのは、ずっとあとのことだ。それまでは、子どもたちが新しい教科書を喜んでいるとしか聞かされていなかった」
自分の愚かさを噛み締めるように、エドワードは言葉を続けた。
「そしてわたしは、王太子妃となる姉を手助けしたいというバーバラと一緒に、下見と称して先に孤児院へ行った。多忙なアリスとはゆっくり話せないからと、自分に都合のいい言い訳をしてな」
エドワードは乾いた笑みを浮かべた。
「本当は、子どもたちから直接感謝されるのが心地よかったのだ。そこでリボンや服を購入した。大した金額ではないと思っていた。だが、臨時費を当てにして金を使った結果、孤児院の修繕予算がさらに圧迫された」
「でも、たったそれだけのことで……」
バーバラが言いかけたが、エドワードは視線だけで黙らせた。
「アリスは困惑していた。当然だ。だが、わたしはアリスが強く言い返してこないことをいいことに、自分のほうが冷静で思慮深い人間だと思い込んでいた」
エドワードは自嘲するように笑った。
「アリスの執務室で真実を知った時、わたしは初めて、自分がどれほど愚かだったのか思い知ったよ」
それから、エドワードはメアリーへ目を向けた。
「母上と姉上へ書類を戻しても、何故か数を増やして再びこちらへ回されてくる」
「わたくしは知らないわ」
メアリーが顔を背けた。
「姉上は、本当に他国へ嫁ぐおつもりなのですか?」
エドワードが尋ねると、メアリーはむっとした顔で弟を睨んだ。
「もちろんよ」
「わたしとしては歓迎します。ですが、嫁ぎ先となる国の状況を理解しておられるのですか?」
エドワードは侍従を呼び、お茶を運ばせた。
侍従が退出し、再び扉が閉じられるのを待ってから話を続ける。
「わたしは一週間かけて、アリスの部屋にあった書類を、本来処理するべき部署や人物へ戻した。戻したはずの書類が再びこちらへ回ってくることもあったが、そのたびに突き返した。アリスと共に働いていた文官たちの助けには、本当に感謝している」
エドワードは目の前の茶器には手を伸ばさなかった。
「だが、わたしが使い込んだ孤児院の予算をどう穴埋めするのか、今も頭を悩ませている。王宮の文官たちは、連日遅くまで残って仕事をしている状態だ」
そして、呆れたようにメアリーを見た。
「姉上宛ての書類も、何度も突き返しています。ですが、そのことをご存じないようですね。一度、ご自身の側近を調査したほうがよろしいのでは?」
「わたくしに命令するつもり?」
「いいえ。手紙を書くことすら面倒なら、いっそ予定を早めて、嫁ぎ先へ行かれてはどうかと思っただけです。返事を書くより先に来てしまいました、とでも言えばよろしいでしょう」
メアリーは勢いよく立ち上がった。
「そうするわ! いい考えね!」
手を叩かんばかりにそう言うと、そのまま部屋を飛び出していった。
エドワードは閉ざされた扉を見つめ、肩を落とした。
「礼くらい言っていってほしいものだな」
「……思っていたより、ひどいな」
チャールズがぽつりと零した。
「俺が何も知らずにのんびり過ごしている間に、アリスは……」
チャールズは両手で頭を抱えた。
その時、それまで沈黙していたバーバラが口を開いた。
「ねえ、本当に見つかると思う?」
チャールズが顔を上げた。
「冷静に考えてみてよ。お母様は、もうお葬式の心配をしているわ。お母様は現実を見ているのよ。死んだ人は戻ってこないでしょう? でも、生きている人は、これからも生きていかなければならないのよ!」
「そうだな」
チャールズは静かに答えた。
「生きている者には責任がある。お前にもその自覚があるようで何よりだ」
バーバラの顔に、ほっとしたような笑みが浮かぶ。
しかし、その笑みは次の言葉で凍りついた。
「バーバラと母上の予算は、アリスが穴埋めさせられていた分へ回す。詳しいことは父上と相談して決める」
「冗談じゃないわ!」
バーバラは顔を真っ赤にした。
「わたしの体面はどうなるのよ!」
「体面?」
チャールズは冷たく聞き返した。
「金がなければ保てないような体面か?」
「貴族には必要なのよ!」
「国の予算は、民が納めた税金も含まれている。その金を、お前と王太子殿下は、自分たちが良い格好をするために使ったんだぞ」
「それくらい、いいじゃない! たかがリボンよ! 服だって、庶民が着るような安物だったわ!」
「そうだな。たかがリボンで、たかが服だ」チャールズは冷ややかにうなずいた。
「わかっているじゃないの」とバーバラが言うと
「それなら今後は、自分の小遣いで買ってやれ」
「エドワード!」
バーバラが助けを求めるようにエドワードへすがりついた。
その姿を見たチャールズは、わずかに目を細めた。
「王太子殿下。随分と妹と親しいのですね」
「親しい?」
エドワードは不思議そうにバーバラを見た。
「いずれ義理の妹になるのだから、気にかけるのは当然だろう」
「義理の妹にはなりませんよ」
チャールズはきっぱりと言い放った。
「アリスは生きています。必ず見つけ出します。ですが、見つけたとしても、あなたの妻にはしません」
エドワードが息を呑んだ。
「二度と王室には渡さない。今度こそ、俺がアリスを大切に守ります」
しばらくの間、誰も口を開かなかった。
やがてチャールズは、気持ちを切り替えるように息を吐いた。
「それで、執務は終わりそうなのですか?」
「……それなのだが、想像以上に難航している」
エドワードは力なく椅子へ腰を下ろした。
「バートとヘドラーという二人の文官に教わりながら進めているが、彼らがいなければ、必要な資料を見つけることすらできない。資料そのものは、アリスがきれいに整理してくれていたらしい。だが、どこに何があり、どの書類と結びついているのか、わたしたちには分からないのだ。情けない話だよ」
「国王陛下は、何と?」
「必要な資料をどうにか見つけ出し、父上に示している。だが……」
エドワードはそこで言葉を濁した。
(本当は、資料があっても父上自身が判断を下せないのだ。わたしが必死に支えているが、このままではいつまで持つか分からない)
チャールズはエドワードの表情から、口にされなかった事情を察したようだった。
「孤児院の予算を穴埋めする金は、どこへ届ければいい?」
「わたしのもとへ持ってきてくれれば、責任を持って対応する」
「分かりました。では、その時に詳しい話を聞かせてください」
チャールズは立ち上がった。
なおも不満そうなバーバラの腕を掴むと、引きずるようにして部屋を出ていった。
残されたエドワードは、アリスが使っていた執務室の光景を思い出していた。
整然と並べられた資料。
処理を終えた書類。
そして、アリスがいなくなった途端、誰にも片づけられなくなった仕事の山。
それこそが、王宮にとってアリスがどれほど大きな存在だったのかを、何よりも雄弁に物語っていた。
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