青年期18
今日は勇者君1人で出勤ですか。傷は全然癒えておらず、ボロ雑巾みたいだけど、治療班に行かなかったのか?
女性陣2人は周りに居ない。それはそうだ。
取り敢えず危機感なさそうなセシルちゃんに言って聞かせるために、もしあそこで介入しなかったらどうなっていたかの予想を話す。
「もしあそこで止めていなかったら、近い将来、氾濫が収まり村へ帰る途中の彼女らは悪阻で苦しんでいたかな?もしかしたら村に帰れず、彼らのウチの誰かの情婦として、この街にとどまる事になっていたかも知れないね。飢えた猛獣の前に肉を放った様なモノだからね。食い物にされるのも一瞬だよ」
セシルちゃんは顔を顰めてるけど、実際そんなもんよ。君もあんまり変わらない状況なんだから気をつけなさい?戦場に女性が出てくるのは普通にヤバいからね?
「それで、あの2人はどうしたの?見たところケイン君とは別行動みたいだけど」
「昨日の夜サーシャさんから相談を受けて、ひとまずは元の配置場所に戻しました。今頃は貴方の村の隊に服属してると思います」
あら、そうなん?結局は冒険者本隊ではやっていけなかったのね。3日は持つかと思ってたんだけど、ダメだったか。ケイン君はどうなるかな…ところでサーシャってのは弓ちゃんの事?あってるのね、良かった。
「どうも人の名前を覚えるのが苦手でね。特徴で記号的に覚えちゃうんだ。だから、セシルちゃんやケイン君は珍しい方なんだよ?その証拠に、君のお父さんはだいぶ出世してても隊長呼びだよ」
「それは何となく察してました。貴方は人にあまり興味がない方なんだなと」
お、見抜かれてる。そうです、私は歯車にしか今は興味が持ててません。
「まぁ、それは良いんだけどさ。なんでケイン君はあんなにボロ雑巾みたいなままなのさ?仲間に治してもらえなかったなら、治療班に治して貰えば良いのに、何故治してないんだ?」
「ナタリーさんを落ち着かせるために付きっきり看病していたとかじゃないんですか。」
セシルちゃんも原因は分からないか…
ほな、どうでもええか。俺がやらなきゃいけないお節介でもないしな。
「セシルちゃんも分からないんじゃ、仕方ないね。それじゃ、今日も油断なく安全にやってきましょうか。出番があるまでは俺も暇なんで、適当に堀でも片しながら日課に勤しみますよ」
そういって、勇者君の観察を始める。昨日の勢いは失われて、借りてきた猫になってる。昨日の一件に懲りず、彼には暴れてもらいたいんだけどな。
氾濫12日目
徐々に魔物の圧力が強くなって来た。少しペースが早いかな?勇者君の顔はかなり絶望気味…何を知ってるんだか、少しお話を聞きに行きましょうか。
「今回は前回と比べて、魔物の強化される進行が少し早く感じるんですが、何かケイン君は知ってるかい?」
暗い表情の彼に質問をして見るけど、首を振るばかり。
君はいつからヤレヤレ系の勇者に変わってしまったんだい。
「僕がレベル25で覚える『聖光陣』を取得できていれば、この後スムーズに討伐完了出来ていたのに…仲間とも離れて、1人でチマチマ狩っていたせいで全然レベルが足りませんよ」
「君は色々と変な事を言う…レベルの数値が見えているかの様だし、鑑定系のスキル持ちかな?それでも説明出来ない事も知ってる様だし…君は何なんだい?気狂いにしては行動に一貫性もあるし…」
俺が疑問を勇者君にぶつけると、彼は決意した様に言った。
「アルスさん、俺は実は前世は別の世界生きていて、この世界に生まれ変わったんです!」
うん、知ってるよ。




