青年期15
「何してるんですか‼︎ナタリー!今すぐ治療して!」
何してるの何も、教育だけど?綺麗に落としてやったから、繋ぐのも簡単だと思うが?
お!活きが良いね、勇者君!弓さんが女を救助しようと駆け出す傍ら、勇者君は腰の剣を抜こうとしてる。はい、石爺、足元拘束。バランス崩して倒れたら、両手も拘束。はい、お疲れ。頭に足を乗せてっと。ゆっくりそこで床の味でも堪能してくれたまえ。あとで食レポ聞かせてよ、そこの床の。
「痛いよ!なんでよ!何で攻撃するのよ⁉︎痛くて上手く治療出来ないよ‼︎」
泣き叫びながら半狂乱で喚き散らす幼馴染神官。おう、まだ教育が足りんか?次は腕行くけどかまへんやろ。
「逆に何で攻撃されないと思った?俺は会話の通じない敵には容赦しないと決めているんだ。争うことが確定している敵に、容赦してどうする?お前達もそう思うだろ?」
「お前ならそうするわな。前に野盗に襲われた時も、清々しいまでに容赦なくブチ殺してたしな。今回は警告しただけマシじゃ無いか?」
そらそうよ。野盗の連中は人型の魔物だからな。馬ちゃんを飼育してから、その思いは強くなる一方よ。敵対的な存在は全て化物なんよ。
「一応は善良寄りな人間を自負してるからな。言葉で解決出来るなら言葉で解決したいじゃないか。ただ、目の前のこの女みたいに言葉の通用しない相手もたまにいるからな。なら次の解決手段に訴えるしかないだろ?」
「違いねぇな」
年嵩の連中とガハハしてると、騒ぎを聞きつけた兵士が飛んで来て事情聴取しようとしたところ、相手を見て及び腰に。
「セシル様、コレはどういったことで…」
権力発動です!
「あぁ、兵士さん、済みません。少し阿呆が居たので教育と躾を施してました。村から出て来たばかりの世間知らずが、喧嘩を売っちゃいけない相手に喧嘩を売ったんで、軽く撫でただけですよ」
ニッコリ笑顔でご報告。良く接する事のあるエリート兵士に見られる、ヤバイ気配を敏感に感じる巡回兵。
馬鹿が馬鹿したと即座に理解し、そう言う事ならとあっさり引き下がった。
「セシルちゃん、お父さんには内緒だよ?ちょっと仲間内で戯れついただけだから問題ないよ?」
気さくで接し易いお兄さんの闇を垣間見てしまい、セシルちゃんも青い顔してる。
あ、この子もそういえば初陣の子だった。プルプルしちゃってる?でもお兄さん、結構な人数ヤってるのよ?危険な男なのよ。
「女、さっさと治せ。時間が経てば繋げても違和感が出るらしいぞ?以前、野盗を尋問した際に、色々と試した事があってな。後悔したくなければ死ぬ気で治せ」
嘘なんですけどね?こうやって発破かければ死ぬ気で何とかするだろ。
神官女はボロボロ泣きながら、必死で治療してる。弓さんは恐怖に怯えた目でコチラを見ていて、良い感じ。その調子でお仲間を抑えるストッパーになりなさい。
さて、勇者君だ。
「俺にこんな事をして良いと思ってるのか、このモブが‼︎もし俺に手を出してみろ‼︎世界がとんでもない事になるぞ!」
「いや、君はどうにもしないよ?さて、またどこまで話したか忘れてしまったよ。どこまでだったかな?」
「アルスさんが村に帰って来た辺りですね」
「そうだった、魔法を覚えて帰って来た辺りだったね。その前に、野生の馬を捕獲して村に革新的な事が起きたんだ。何とな、ウチの寒村で家畜の力で糸が巻ける様になったんだ!ここから面白くなるんだ‼︎」
村中に回転狂いと知られている俺の饒舌な語りが、その後暫く続く事になった。その間、踏みつけられてた勇者君はずっと床をペロってた。俺が興奮すると、たまに悲鳴が上がっていたけど気のせい。鼻が潰れていたけど、それも気のせい。
隊長が来て、首根っこ掴まれて誘拐されるまで、俺の独演会は続いたのだった。




