青年期11
「俺はケイン、職業は勇者でサブ職は剣豪だ!飛ぶ斬撃が出せるくらいには鍛えてある!レベルが上がって勇者のスキルが増えていけば、もっと活躍出来る!だから、早めにレベルを上げさせてくれ!出来れば幼馴染も一気にある程度レベルを上げてしまえば、強いスキルで敵を一掃出来る様になると思うんだ!」
勇者君は初手から全力全開だった。
ヤレヤレ系勇者よりは好印象ですよ。ただ、その思いを全部は汲む事は出来ないんだけど。ヤる気に満ちてる少年は応援したくなるね!
「随分と元気な少年だな。俺はアルスっていう魔法使いだ。もっとも、本職は村の何でも屋だな。神官から金貸しまで何でもだな。前回の氾濫で能力を手に入れて、今回は村の連中を引率して来たんだが、その時お世話になった方が思いの外出世していて、お前の事を取り計らってもらった。そこのセシルちゃんのお父さんだ。感謝する様に」
セシルちゃんが黙礼した。この子は良く教育されてる、出来た子や。一方の勇者君は野生の勇者君。自我を少しは抑えなさい。
「君が訓練場で言っていた事を、少し詳しく知りたくてね。何でも、今回はいつもと違う氾濫だとか?何かそれを予知できる様な能力を持っているのかい?是非とも知りたくてね」
勇者君の反応を伺うと、なんと応えたら良いか迷う様な素ぶりで、結局は予知夢的なスキルを持っているという事に落ち着いた、みたいだ。
俺が「知ってる」を深掘りしていった結果、ザルな感じが果てしなく、俺の目がドンドン興醒めになっていく。それに焦りを覚えたのか、ピンポイントでここだけは夢に見た!とゴリ押してきた。いつもは20層相当の敵が最高だけど、今回は30層相当が出てくると。それが街と外で暴れると。まぁ良いよ、そういう事にしとくよ。
それじゃ他に君が勇者で「ちゅ、ちゅよい!」って言うんなら、門番さんの盾を超えてみろって試した。そこそこの見えない刃は放った。確かに雑魚なら狩れそう。門番さんは微動だにしなかった。
…
………
うわ〜使いづれぇ…
飛距離を計測すれば、中距離が精々で。距離減衰で城壁から放つと、迷宮入り口じゃ強い風程度になる。
有効射程10メートルくらい。そして視認出来ないから、味方が注意出来ない。何なら密集してたらFFしかねない。槍先とか斬り飛ばして邪魔する未来しか想像できん。
そんでこの勇者君の性格が明らかに他責思考だ。自己中発言がすんごい。そして、裏付けの無い自信もすんごい。いや、それが勇者の資質なのか?
地雷臭しかしねぇ…
すんごい胡散臭いんですけど…
今の彼を本気で運用しようとしたら、囮役だ。餌ともいう。
村単位で隊伍を組ませてるのに、そことも折り合いが悪いみたい。幼馴染の女性2人とだけ極端に親しくしている様で、村に溶け込んでいる様子が薄い。
という訳で、彼に囮役を提案した。そしたらそうじゃ無い、3人で戦わせてくれと来た。ここでブースト出来れば、後半まで一気に時短出来るときた。俺は頭を抱えた。何だコイツ…人の言葉が通じてるのか?会話が成立しないパターンの人種か?最初の隊長の話聞いてたか、君は?
ヤル気は買うんだけど、滅茶苦茶扱い辛い。たぶん面白い玩具ではある。でも扱い辛い。セシルちゃんの方を見ると、何だこのゴミはって目で見てる。
そうだよね、そうなるよね。
実績無し、自信過剰、女好き、大した力も無い、虚言癖、自己中、他責思考、現実を生きてない……数え役満だろ…
これはもう成るようにしかならんわ。




