少年期9
準備は着々と進んでいった。輜重隊かってくらい最初は荷物を詰め込もうとしたが、足が遅くなりすぎると苦情が入り、程々……
まあまあ兵隊さん、一杯やってきなよ。ウチには良い蜂蜜酒が有るんだ。え?もうちょっと荷物積めそう?いやー悪いね、兵隊さん。都市に兵がいっぱい集まるから、食料の必要性も高まるってもんだ。仕方ないさね!ガハハ!
なんて家で一悶着しながら、都市に商売に行く事を家族に告げた。そしたら、ママンに猛反対された。そりゃ、ママンの兄ちゃんは魔物退治で帰らぬ人になったから、猛反対もするよな。親父は勝手にしろって感じ。妹は心配そうで、弟はなんも分かってない。
でもね、此処でデカい山狙わないと、近々村がパンクするんよな。で、残酷な様だが、これって一種の人口調整なんだろうな…適者生存というか…このイベントを乗り越えた奴らが有る程度力をつけて、外へ入植する。その地で魔物を打ち倒し、新たな迷宮を見つけて隔離し、人類の生存領域を増やしていく。そんな人類に課された試練の真っ只中なんだ!迷宮に呑まれるのも、なんか知らんが試練なんだ!
なーんて理論武装はしてみたけれど、結局のところ実際は村の外を見てみたいってのが根底にある。生まれて10年、大体が畑と家の往復じゃなぁ。さすがに飽きてくる。言ってしまえば、肉が食いたくて肉に飢えていた、幼少期の飢餓感に近い。遠出をしてみたいんじゃぁ。異世界散策してみたいんじゃぁ!
なんて言ってもママンは納得してくれなそうだったので、全力で駄々を捏ねた。駄々を捏ねながら、家にある蜂蜜を荷車に積み、漬物と干し肉をパクリ、保存食のクッキーを焼いた。大麦は製パンに向かない麦で、いつもは粥にして食べてる。移動中に水や薪が潤沢に有るとは限らないので、レーションみたいなクッキーを焼いた。少しでも美味しくなる様に、蜂蜜や木の実を練り込んだ特製物だ。
鍋釜背負って行くなんてしません。煮炊きの薪も道具も個人で持って行くとか荷物でしかない。あっても部隊とかで共有だ。現地に着いたら食料は最低限支給されるんじゃい。
イヤイヤ、行く行く言いながらどんどん準備して行く。クッキー一口食うてみ?なかなかいけんじゃね?
勇ましく武器がなんだの防具がどうだのという若手連中と違って、平服で志願兵諸君にも出来るだけ売り物を担がせようとする俺の姿に、ママンも次第に落ち着きを取り戻した。そりゃ、こっちはデカい山を狙いに行くんだ。種銭も持たずに行ってどうするんだって話よ。
さぁ諸君、いざ城塞都市の救援に参ろうじゃないか‼︎
「なんでお前だけ楽そうな格好してんだよ!」
あ、自分、荷馬車の御者で商人なんで。




