旅空14
「マルク様お久しぶりです。アルスにございま…」
「やめろ,やめろ!気持ち悪い‼︎お前から畏まられるとか寒気がする!背中に鳥肌が立ったぞ!見ろ、この腕!本気で寒気がしたぞ!」
おいぃ、良い歳した大人ぁぁ
「なんだよ、隊長。人が折角、偉くなった隊長に謙ったってのに、コレはあんまりじゃない?」
「俺だって、時と場所ぐらいは弁えてる!こんな私的な場所でお前から謙られても、気持ち悪いし、またぞろ、何か問題を持ち込んできたんじゃないかと勘繰っちまうわ」
酷い言われようだな…俺ってそんなに問題起こしたか⁉︎
結構起こしてたわ!
はい、この話題は此処で終わろう。不毛だわ。過去の悪行をほじくられる予感しかない。ここは即時撤退だ。
「なんか伯父さんの商会に出資してくれて、お互いよろしく儲けたみたいな話を聞いてね。発案者として、一言お礼を申し上げに来たってのにさ…酷い扱いじゃない?」
「お前が発案者だと⁉︎お前、一体どういう事だ⁉︎一族の長老が使命の成就の為にって、えらい剣幕で詰め寄ってきたぞ⁉︎お前!また何かしたのか⁉︎」
うーん、この低評価よ。おかしい…くない…のか?いや、稼いでんだから、やっぱおかしいわ。
「いやいや、隊長もだいぶ稼いだんでしょ?ありがとうはあっても、詰ってくるのは違くない?伯父さんなんかいつの間にか大通りに店を移し替えるほど稼いでたし、出資額によっちゃ隊長だって相当いったでしょ?でもさ、此処だけの話、こっちの稼ぎなんて微々たるもんなんだ。俺の今居る拠点の方だと、ここの8〜10倍は稼いだんだけどさ。ヤバくない?その三分の一くらいが最終的な取り分になったかな?」
お、隊長の顔から表情が抜けて真顔になってる。オモロ!
「あ?じゃぁ何か。お前さん今は富豪なんか?あんな与太ガキだったのに?」
「何言ってんのさ、与太ガキだった頃から大富豪だわ。地平線の彼方まで農場抱えて、そんな遠方の小作人の面倒まで見切れなくて、幾つかの村に分割して下げ渡したぐらいには富豪だったわ」
「はぁー?嘘こけ!お前みたいな…いや、そう言えばお前、開拓してたな?え?本当なのか?」
「村長通り越して木端な貴族よりは農場抱えてたぞ?最終的には全部処分して、身一つで研究の生活送る為に故郷を離れたんだけどな。今なら分かるけど、神様の導きで今の拠点に腰を据えたら、そこでも儲けちまって。アッチでも村長に祭り上げられてて大変よ?」
「お前って、もしかして凄いやつだったのか?」
「んー、俺はただ神様に感謝を捧げて、教義に沿って行動してるだけなんだけど?そういう意味なら、信仰と教義を授けてくれた教会こそが凄いと思うんだけどね。俺が真理を見出せたのは、神の御心に触れたからだし」
「あぁ、お前はそっちも相当だったな…分かった分かった。それで長老がアレだけ騒いだのか。理解した。にしたって使命とは大袈裟な…」
「使命だよ、隊長‼︎この世界に神様の妙技である回転を広めることこそ、俺に課された使命だと確信してるんだから!」
隊長、顔が酸っぱい物食ったみたいになってんぞ?でもコレ事実なんすよ。『天秤』としてじゃない『歯車』としての俺の使命なんだ。
「そんで、そんな使命の成就でもう一件イイハナシが有るんだけど、隊長はどうしたい?別に教会に直で要請しても良いんだけどさ?」
「結局断れなくなるやつだろ、ソレは!」
ま、そうかもしれないね。隊長が相変わらず不憫とツッコミが似合ってて安心したよ!




