拠点暮らし35
「ウェイン様、他の商会に渡してはなりません。絶対に渡してはなりません!言い値で…それ以上で買いましょう。大河下流域でこれは爆発的に売れると予想されます。少し裕福な農家なら、その全ての農家がコレを欲しがります。それ程に画期的です」
丁稚が連れてきた人の前で実演会を再び行ったら、こちらもヤバい食い付きをしてきた。現場知ってる勢はそうなるわな。
今回は試しに、丁稚君に箕を持って頂き、実演の傍で競争もしてもらった。こっちもプロモーションが弱かったと思い、歩み寄った形だ。
現場知ってる勢はニヤニヤと丁稚君の苦行を眺めてた。屋内だからね。風ないと辛いよね?顔真っ赤にしながら、ふーふーするの辛いよね?
悪人顔した…悪い顔して俺たちがニヤニヤしてるのに、丁稚君は必死だ。手を抜いてない事を証明するために、最善を尽くしてる!頑張れ‼︎負けるな‼︎
でも、どれだけ頑張っても絶望的な能率差を見せつけ唐箕が圧勝する!はい、残念でした!
「実際は風の有る屋外でやるんで、コレよりは丁稚君も早いけど、それにしたって圧勝しますよ。今は投入役ともう1人で作業してましたから、丁稚君2人分がコレくらい。どうですか?目に見える形にすると分かりやすいでしょう?」
違いがあり過ぎてわかんねぇわ。熟練農家ならまた違う結果になるのかもしれないけど、10倍近い差はあるんじゃない?目算じゃ分からん差やね。それはつまるところ、圧倒的な差な訳でね。お話になりませんわ。天候に左右されないっていう点も良いだろう?
「で、店主?どうすんの?俺らは別に困っちゃいないんだけどさ。まぁ、今までの誼ってヤツで呼んだんだけど?ちなみに、俺はこの機械以前と以後で農村が変わると思ってるんだけど、若頭っぽい君はどう思う?」
「そこまでかは分からないですが、皆様欲しがるとは思いますね。暫くは、作った側から売れていくかと。それにしてもこちらの品はどちらの方…」
「我が神、ハルモニア様からの恵みです‼︎」
そうだろう?こんな便利な回転器具、流行らない訳がないんでね。まさにコレこそ神の恵みよ!
「ウチの村長が造り始めたんだけど、最初から迷いは無かったからあながち神の啓示を疑えないのがタチ悪いんだよな…」
「先生は回転する物と歯車に取り憑かれてるから、それを神の啓示と呼んで良いなら或いは?」
「黙れ背信者どもめ、聖餐を拒む輩に加護は降りないんだよ。俺は敬虔な教徒だからな。真理に触れて、気付いたんだ。回転こそが神のご意志だと。その為の歯車!背信者は分からんかー。この神の御心が分からんかー。パン食ってるから分からんやろなー」
おう、聖餐を受けたくなったやろ?
今ならしょーがないから、免罪してやらなくもなくはないんだけどなー。
おん?食いもんにイチャモン付けて来る神は嫌だと?
宜しい、ならば戦争だ。覚悟は出来たか?勿論、死ぬ覚悟だ!聖句を唱えろやぁ‼︎
おい待て、その口を空けろ!熱々の粥を流し込んで、しっかりとした道に戻してやる!余計なお世話なんて悲しい事は言うな!コレが免罪!得難い機会だぞ‼︎
そんで店主よぅ、結局お前はどうすんのよ?




